凄い「一期一会」なプロジェクト
ジャズ・ミュージシャンって、自分の腕一本、自分の才能一つで勝負する「個人商店」的な面が強くて、ロックみたいに、ある一定期間、一緒に集まってバンドを組んで、一緒に演奏するということが、あまり無い。
逆に、ロックの世界では殆ど無いんだが、優れた「個人商店」的な強者が、ある一瞬、パッと集まって、凄いパフォーマンスを繰り広げて、あっと言う間に、また別れ別れ、バラバラで活動するということがジャズでは良くある。
この「The Manhattan Project」も、ジャズの世界特有の「一期一会」プロジェクトの一つ。プロジェクトを形成する「強者ども」とは、Wayne Shorter (ts, ss), Michel Petrucciani (p), Stanley Clarke (b), Lenny White (ds), Gil Goldstein, Pete Levin (key,syn)。うえ〜、凄いメンバーである。録音日は、1989年12月。メインストリーム・ジャズが復古を果たし、新生ブルーノートも軌道に乗った、ジャズ復権の時代である。その時代の環境が、この類い希な「一期一会」プロジェクトを生み出したといっていいだろう。収録曲を見渡すと、
1. Old Wine, New Bottles
2. Dania
3. Michel's Waltz
4. Stella by Starlight
5. Goodbye Pork Pie Hat
6. Virgo Rising
7. Nefertiti
8. Summertime
結構、有名なジャズ・スタンダードが選曲されていて、どうせ、ジャズ・ミュージシャンが、ぱぱっと集まって、聴衆に迎合するように、ハードバップな演奏を繰り広げて、はい、一丁上がり的なオールスター・セッションではないの、と思ってしまうんだが、これがなんとまあ、ところがどっこい、ぎっちょんちょん、なのである(笑)。
まず、サックスのウェイン・ショーターが吹きまくっている。ブワーッ、ウネウネウネ〜、ブブブッ〜と、モーダルなインプロビゼーションを、渾身の力を込めて、吹きまくっている。ここまで吹きまくるショーターも珍しい。このブロウを聴けば、やはりウェインのその実力たるや、決して侮ってはいけない、と心から思ってしまう。
そして、ピアノのペトルチアーニが、ショーターに続く。渾身の力を込めて、これまた、モーダルなピアノソロをガンガンに弾きまくる。これが「モーダルなピアノソロなんじゃ〜」って感じで、弾きまくる弾きまくる。確かに、これがモーダル・ジャズ、これがモーダルなピアノソロだと感心してしまう。
加えて、リズム・セクションが凄い。ベースのスタンリー・クラークとドラムのレニー・ホワイト。ん〜っ、この二人って、第2期Return to Forever(リーダーはチック・コリア)のリズム・セクションやん。このリズム・セクションが凄い。全くハードバップな雰囲気は無視。スタンリー・クラークはエレベをベンベン、チョッパーをバシバシやりまくり、レニー・ホワイトは、4ビート基調なのか8ビート基調なのか判らん、とにかくビート最優先、ポリリズムをガンガンに渾身の力を込めて叩きまくる。
スタンダード曲に顕著な「斬新な曲想」、そして「捻りの効いた新鮮なアレンジ」。その新しいジャズのアプローチを基に繰り広げられる、職人芸的でハイテクニックな、新しい響き満載のアドリブ。冒頭の「Old Wine, New Bottles」から、ラストの「Summertime」まで、一気に聴き通してしまいます。それだけ、演奏内容に優れ、聴いていて楽しい、密度の濃い演奏。でも、決して疲れない。
それは、Gil Goldstein, Pete Levinの二人の電子キーボードが奏でる和音中心のバッキング。この二人のキーボードは、決してソロを弾かない、決してテーマを弾かない。和音でフロントモーダルなソロを、彩り豊かにサポートする。この二人のキーボードのバッキングが実に効いている。このキーボードのバッキングが、このライブ演奏を彩り豊かで、聴き易い雰囲気に染め上げでいる。
現在、廃盤状態みたいですが、どうして廃盤状態なのかなあ。米国amazonでは手に入るんですが・・・。DVDは入手可能な様ですね。聴けば判る。良いアルバムです。日本人からすると「ドキッ」とするプロジェクト名ですが、このプロジェクトの内容は凄まじいものがあります。
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