最近のトラックバック

« Verve時代のエバンスはユニーク | トップページ | 熱いぞ! エルビン・スクール »

2010年8月 1日 (日曜日)

マイルスのモード・ジャズ事始め

7月29日のブログ(左をクリック)「1969年のマイルス・デイヴィス」で、ご紹介した『1969 Miles: Festiva De Juan Pins』。

テンションの高い、高密度な演奏。それでいて、激しく自由度が高く、硬軟自在、伸び縮み自由、緩急自在。「へヴィー&フリーキー」なビート。この類い希なビートを叩き出すリズムセクションをバックに、マイルスが吹きまくる。エレクトリック・マイルスの初期のライブ盤である。

このアルバムの面白いところは、収録曲を見渡すと「Milestones」「'Round About Midnight」と、ハードバップ時代の名曲が演奏されているところ。このハードバップ時代の名曲が、エレクトリック・マイルスの中でリニューアルされ、エレクトリック・モードの名演が繰り広げられている。

さて、マイルスの「モード・ジャズ」の事始めとは、どのアルバムか。諸説有るが、僕は、1958年2月録音の『Milestones』(写真左)と思っている。特に、表題曲の「Milestones」におけるマイルスのソロは、モード奏法の極めつけの一つだと僕は評価している。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Cannonball Adderley (as), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds) 。

この『Milestones』の収録曲を改めて見渡してみると、ハードバップ系の究極な演奏と、モード系のチャレンジブルな演奏とが、互い違いに収録されているように感じる。ちなみに、LP発売当時の収録曲は以下の通り。

1. Dr. Jackle
2. Sid's Ahead
3. Two Bass Hit
4. Milestones
5. Billy Boy
6. Straight, No Chaser

1曲目の「Dr. Jackle」は、高速ハードバップの究極的な演奏。これ以上、高速なハードバップな演奏はそうそうに無い。ハードバップのフォーマットで、演奏速度はビ・バップという感じの、「究める」という雰囲気がピッタリなストイックな演奏。同様に、ハードバップの究極的演奏が、3曲目「Two Bass Hit」、5曲目の「Billy Boy」でも追求される。

このハードバップの究極的演奏では、参加メンバー全員が、ハードバップ時代の名手でもある関係上、凄まじいほどの内容を誇るハードバップ演奏になっている。恐らく、コードを前提とした、ビ・バップの延長線上にある通常のハードバップな演奏としては、最高峰の演奏のひとつがここにある。とにかく、ハードバップ演奏のテクニックが凝縮された、非常に高度な演奏ワールドがここにある。
 

Milestones

 
そして、2曲目は、マイルスのソロとコルトレーンのソロが、なんとなく「モード」している。が、マイルスは音を選んで、数少ない音数と演奏スペースの広さを最大限活かそうとする、印象派の様な「拡がりと音の色彩」を狙ったようなモード演奏を繰り広げるが、コルトレーンは徹頭徹尾、マイルスの正反対を行く。音を敷き詰めた様な「シーツ・オブ・サウンド」をベースとして高速パッセージを繰り出し、演奏スペースを音符で埋め尽くしたような、点描画の様な「高密度と音の分解」を狙ったようなモード演奏を繰り広げる。

そのマイルスとコルトレーンの対比が、明快に現れる名演が、4曲目の表題曲「Milestones」。特に、この「Milestones」でのマイルスのソロは絶品である。これぞ「モード」と言って良いソロ。数少ない音数と演奏スペースの広さを最大限に活かした、非常にアーティスティックで、非常に情緒的な、叙情的な、リリカルなソロ。対するコルトレーンのモード演奏は、点描画の様な「高密度と音の分解」を前提としているが故に、その限界が見え隠れするような、テクニック優先のメカニカルな演奏になっている。

しかし、マイルスとコルトレーン以外の他のメンバーは、全くと言っていいほど、モード奏法を理解していない、ということが非常に良く判る。特に、リズムセクションの3人、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds) は、実に辛そうだ。コード進行を主体とせず、モードに基づく旋律による進行に切り替えたものが「モード奏法」なんだが、その切り替えが、リズムセクションの3人の中では、全く上手くいっていない。というか、途中から切り替えを諦めている。

マイルスのモード・ジャズ事始めは、僕は、1958年2月録音の『Milestones』と思っている。でも、そのモード奏法を完全にものにしていたのは「マイルスのみ」。コルトレーンも「シーツ・オブ・サウンド」を前提としたモードには限界が見え隠れしている(よって後にフリーに走ってしまうのだが・・・)。1958年という時代には「モード奏法」は早すぎた。

加えて、僕が思うに、コード進行を主体とせず、モードに基づく旋律による進行に切り替える時、音の色彩やバリエーションが少ない生楽器では限界があるのではないか、と。モード奏法をグループサウンドとして成立させて行くには、音の色彩やバリエーションが豊かな電気楽器が必要になるのではないか、と。よって、マイルスによるモード奏法の完成は、エレクトリック・マイルスの時代の中ではないか、と。この仮説は、エレクトリック・マイルスを順に聴き返していくことにより、明らかになっていく。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。   
 
 

« Verve時代のエバンスはユニーク | トップページ | 熱いぞ! エルビン・スクール »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80793/35983087

この記事へのトラックバック一覧です: マイルスのモード・ジャズ事始め:

« Verve時代のエバンスはユニーク | トップページ | 熱いぞ! エルビン・スクール »

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ