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2010年8月12日 (木曜日)

J.J.Johnson の『Dial J.J.5』

昨日、ジャズ・トロンボーンの第一人者、J.J.Johnson の『Blue Trombone』をご紹介した。僕は、この『Blue Trombone』がジャズ・トロンボーンの名盤中の名盤、このアルバムのトロンボーン演奏は、ジャズ・トロンボーンの目標に足る、実に優れた実に内容のある演奏だと思っている。

しかし、ジャズ紹介本の中には、違う見解の評論もある。J.J.Johnson の『Dial J.J.5』(写真左)が、J.J.Johnsonの最高傑作だという向きもある。確かに、『Blue Trombone』と甲乙付けがたい内容ではあるが、『Blue Trombone』より、当時としては「退化」している、と思っているのだ。

ちなみに、この『Dial J.J.5』のパーソネルは、J.J. Johnson (tb) Bobby Jaspar (ts) Tommy Flanagan (p) Wilbur Little (b) Elvin Jones (ds) 。 1957年1月の録音。『Blue Trombone』の録音日は、1957年5月の録音。

面白いのは、リズム・セクションの一角、ピアノのTommy Flanaganは同じだということ。でも、この『Dial J.J.5』のドラムは、当時、若手の最先端の精鋭、エルビン・ジョーンズというのに、エルビンの叩き出すリズムは、当時、過去の流行のフォーマットである「ビ・バップ」のドラミングそのもの。冒頭「Tea Pot」のエルビンのドラミングなんて、どう聴いても「ビ・バップ」そのもの。1957年当時としては、失礼ながら「過去の遺物」である。

しかし、このリズム・セクションって、このアルバムの収録の後、北欧ツアーでかのハードバップのピアノ・トリオの名盤『Over Seas』を輩出したピアノ・トリオとは思えない。ハードバップでは無い、その前の時代の「ビ・バップ」を彷彿とさせるリズム・セクションに終始している。

Dial_jj5

恐らく、思うに、J.J.Johnsonは、テナーのBobby Jasparの参加も踏まえて、「ビ・バップ」時代のトロンボーン・ジャズの集大成をしたかったのではないか。これぞ、アーティスティックな「ビ・バップ」の最高、かつ最終形として、この『Dial J.J.5』を残したかったのではないか。それは、後に控えるツアー、特に北欧ツアーを念頭に置いたセッションではなかったかと。

当時、欧州では「ビ・バップ」が高評価を得て、米国で成立し始めていた「ハード・バップ」よりは、「ビ・バップ」の方が、北欧での「うけ」が良いのでは、という「深慮遠謀」が働いたのではないか。リーダーのトロンボーン奏者、J.J.Johnsonはそんな環境の機微を敏感に察知するミュージシャンだった。実際、その「深慮遠謀」が功を奏して、J.J.Johnsonのトランボーンは欧州で「うけ」にうけた。

それでも、ラストの「Old Devil Moon」では、エルビンはたまらず、ポリリズム溢れる、当時最先端な「ハードバップ・ドラミング」を聴かせてくれるし、リトルのベースは、実に「ハードバップな」ビートに満ち溢れている。北欧でのライブについては「うけ」を狙って、「ビ・バップ」時代のトロンボーン・ジャズの集大成を前面に押し出してはいるが、ミュージシャン魂としては、J.J.Johnsonをして、先端の「ハードバップな」グルーブを表現する瞬間がある。

アルバムは「売れなければならないもの」という商業主義的感覚が、ある意味、こんな中途半端なアルバムを作らせた、とも受け取れる。でも、その内容たるや、先端の「ハードバップな」グルーブを表現する瞬間を垣間見せてくれ、決して「売れる」事を最優先とする「商業主義」に走らない、純粋なミュージシャンシップが見え隠れする、この『Dial J.J.5』は、実に愛すべきアルバムである。

『Blue Trombone』には敵いませんが、J.J.Johnsonのトランボーンのテクニックを愛でる面では、文句の無いアルバムでしょう。スライド・トロンボーンでこれだけの超絶技巧な演奏を繰り広げるJ.J.Johnsonって、やはり、ジャズ・トロンボーンの第一人者と言っても言い過ぎでは無いと思います。 
 
 
 
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