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2010年8月25日 (水曜日)

ECMのユニークなギタリスト・2

ノルウェイのギタリスト「Terje Rypdal(テリエ・リピダル)」。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す、それはそれはユニークなギタリスト。

でも、彼のアルバムを聴くと、一聴して「ジャズ・ギターではない」と思うが、同時に「プログレロック・ギターでもない」とも思う。浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。

1970年代、このテリエ・リピダルのリーダー作をリリース出来るのは、やはりECMレーベルだけだったろう。北欧の冬を思わせる、鉛色の空に凛とした空気。そんな空気の中、鋭く切り裂く様な、ロングトーンでフリーなギターのフレーズ。何処までも自由に弾きまくりながら、その音は「鋭利で冷たい」。しかし、ロングトーンのフレーズの中には、暖かみが仄かに感じるところもあって、アルバム全編を通じて、テリエ・リピダルのギターに飽きることは無い。

そんな彼の代表作、そんな彼をガッツリと体験できるアルバムが『Odyssey』(写真左)。1975年の作品。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, string ensemble, ss), Torbjørn Sunde (tb), Brynjulf Blix (org), Sveinung Hovensjø (b), Svein Christiansen (ds)。さすが、北欧のミュージシャンで固めたラインナップ。誰が誰だか、さっぱり判らん(笑)。

全編に渡って、2ビートとか、4ビートとか、8ビートとか、ビートが立って、リズミカルに展開する演奏は無い。自由で緩いビート、自由でゆったりとしたビートをバックに、漂う様に、彷徨うように、テリエ・リピダルはギターを「吠えさせていく」、ギターを「叫ばせていく」。
 

Terje_odyssey

 
しかし、その「遠吠え」その「叫び」は決して「冷徹」では無い。切れ味鋭い、クリスタルな響きの中に、そこはかとなく漂う「人間的な」暖かさ。メンバー全員が限りなくフリーに近い演奏を繰り広げる。フリーにならない理由は、ただ唯一、ドラムのリズムが、自由でユッタリとしたビートを最低限に供給しているからだ。

プログレッシブ・ロックの様な雰囲気である、という感想が大勢を占めるが、僕は、プログレというより、ブライアン・イーノを代表とする、エレクトリックな「環境音楽」に、その雰囲気は近いと思う。ブライアン・イーノやアランパーソンズ・プロジェクトの様な、シンセを駆使した「ロック的環境音楽」が好きな方にはお勧めですが、プログレ・マニアの方々には、このアルバムの音の奥に潜む「ジャズ的な響き」について、どう感じるか、で、好き嫌いが分かれると思います。決して、諸手を挙げて、プログレ・ファンにはお勧めしかねます。

ジャズとして聴くなら、ギル・エバンスとマイルス・デイヴィスとのコラボ、例えば『スケッチ・オブ・スペイン』が好きなら、この『Odyssey』もいけるかも。エレクトリック・マイルスなら『ジャック・ジョンソン』のB面「イエスター・ナウ」が好きなら、この『Odyssey』もいけるかも。テリエ・リピダルのギター、ソプラノサックスを始めとして、オルガンのソロ、トロンボーンのソロの展開の仕方が、何故かマイルスを彷彿とさせます。

実にユニークなジャズ・ギター・アルバムです。ナチュラル・サスティンの効いた、ロングトーンなギター・プレイが美しい。限りなくフリーに近い感じで、自由奔放に弾きまくる割には、しっかりと印象に残る「フレーズ」を意識しつつ、出来る限りフリーな演奏を繰り拡げるテリエ・リピダルは、そのテクニックも確か、完全に唯一無二は個性を確立したジャズ・ギタリストとして、もっと多くのジャズ者の方々に聴いて頂きたい。そんな気持ちを強くする、とにかくユニークなテリエ・リピダルの『Odyssey』です。 
 
 
 
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コメント

ひまつぶしにモバイルで「テリエ・リピダル」で検索したところ、ここにたどり着きました。30年以上も前に輸入盤店の店頭で流れているのを聞いて衝撃を受けて以来のファンです。ちなみにその時聴いたのはリピダルとデジョネットとビトウスのトリオのアルバムです。私がもっとも好きなアルバムです。今回取り上げられているオデッセイはプログレマニアにもアピールするアルバムだと思います。今までこれほどリピダルの音楽を適切にとらえた文章を見たことがなく、大変感激しました。

いらっしゃい、ちんたろうさん。松和のマスターです。
 
ご来店ありがとうございます(笑)。テリエ・リピダルの『Odyssey』は、
学生時代、聴き込んだアルバムです。僕も高校時代からのプログレ小僧で
このリピダルのギターは、実にしっくりきました。確かに、プログレマニア
にもがっつりとアピールしますね。
 
またのお越しをお待ちしております。
これからもバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

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