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2010年7月12日 (月曜日)

エレクトリック・マイルス事始め

私はマイルス・デイヴィスが大好きだ。特に、エレクトリック・マイルスは、ジャズ者初心者駆け出しの頃から、現在に至るまで、常に感じ入っている。切っ掛けは、高校時代にFMで聴いた大阪フェスティバル・ホールのライブ録音放送。後の『アガルタ』『パンゲア』であるが、これに激しく感動した。それ以来、エレクトリック・マイルスは、私の大のお気に入り。

さて、FMで聴いた大阪フェスティバル・ホールのライブ録音はさておき、私がエレクトリック・マイルスに初めて触れたアルバムは何だったのか。これは30年以上経った今でもしっかりと覚えている。『In a Silent Way』(写真左)。

動機は実に簡単で、1970年代後半、当時、エレクトリック・マイルスの入門的名盤と言えば、『Bitches Brew』か『In a Silent Way』。僕は当時、貧乏学生。2枚組の『Bitches Brew』は、ちと重荷。ジャズ紹介本を読むと、エレクトリック・マイルスと言えば『Bitches Brew』も良いが、もともと、エレクトリック・マイルスの源流は『In a Silent Way』にある、とあったので、金銭面の都合を優先して、『In a Silent Way』を選択(笑)。

これが、感動に次ぐ感動。ジャズという音楽ジャンルが、ここまで自由で、ここまでクリエイティブな音楽表現ができるとは思わなかった。フリージャズなんて目じゃない。これだけ統制のとれたグループサウンズの中で、圧倒的に自由度のあるインプロビゼーションの嵐。ジャズという音楽ジャンルにドップリはまる切っ掛けを作ってくれた、凄く重要なアルバムである。

特に、LP時代B面の「In a silent way / It's about that time」が素晴らしい。冒頭「In a silent way」の牧歌的な響き。ビートの無い、ただただ漂う様なモードの響き。そして、打って変わって、8ビートをベースとしたポリリズムを基に、躍動的なモードの響き。決して派手派手しくない、どちらかと言えば、クールで冷静なポリリズムのビートなんだが、素晴らしい躍動感。ジャズの創造性が圧倒的。ビートの無い、漂う様な「In a silent way」と躍動感溢れるビートがベースの「It's about that time」の対比。好対照な演奏イメージの対比。美しい。

In_a_silent_way

この『In a Silent Way』は、マイルスのセッションの録音を、プロデューサーのテオ・マセロがテープ編集を駆使して出来上がった、いわゆる「テープ・コラージュ」の成果だと言われる。決して、マイルスの音楽的成果では無い、と。うん、それは言えるかもしれないなあ。

でも、このテオ・マセロの「テープ・コラージュ」のお陰で、マイルスの思い描いていた音楽的イメージが、しっかりと起承転結をなす「一つの曲」として、はたまた、「一つの曲」としてのライブ演奏として、十分に音楽的成果として成立するものだ、ということが証明された、と言えるだろう。8ビートをベースとしたポリリズムを基に、躍動的なモード演奏が長尺の演奏として成立するんだ、ということが、このテオ・マセロの「テープ・コラージュ」で証明された。

後は、曲のコンセプトとそのコンセプトをベースとして、長尺のイマージネーション溢れるインプロビゼーションが演奏しきれるか、が鍵になる。その「長尺のイマージネーション溢れるインプロビゼーションが演奏しきれるか」のプロトタイプが、LP時代A面の「Shhh / Peaceful」にある。

「テープ・コラージュ」の成果ではあるが、エレクトリック・マイルスのプロトタイプがここにある。この演奏に漂う「適度な緊張感」と「クールな躍動感」、そして「広大で自由なインプロビゼーション・スペース」。以降の1970年代、エレクトリック・マイルスのベースとなるプロトタイプがここに提示されている。

この『In a Silent Way』の成果を基に、ジャズ・ミュージシャンに対して、相当に卓越した創造性と演奏テクニックが求められる、かなりハイレベルなエレクトリック・ジャズに、マイルス・デイヴィスはチャレンジしていくことになる。

エレクトリック・マイルスは、ジャズ者初心者の方々には、ちょっと理解しにくいかと思います。1970年代のプログレッシブ・ロックを聴き込んだ経験のある方々には、意外と入りやすいかも。ちなみに私もそうでした。

エレクトリック・マイルスは、ジャズの統制のとれたグループサウンズの中で、圧倒的に自由度のある「希有な成果」です。ゆめゆめ安易に気軽に接すること無かれ(笑)。実に奥が深く、イマージネーションの広がりが圧倒的。今の耳にも新鮮で、新しい発見が多々あり、常に感じ入ることしきり、です。
 
 
 
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