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2010年6月 5日 (土曜日)

Weater Reportの最終作・・・

1970年代〜80年代前半、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、当時のジャズ界を牽引したWeather Report。1980年代に入って、急に失速気味となる。

Weather Report の黄金時代は、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) の4メンバーの時代。1978年から1981年までの4年余りの期間になる。この期間のWeater Reportの音は、完全にグループ・サウンド中心の真に「Weater Reportの音」。それ以前と以降の音は、雰囲気的に「Joe Zawinul の音」。

Weather Reportが、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、ジャズ界の頂点に躍り出たのは、アルバム『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作によるところが大きい。この『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作については、コ・リーダーの一人、Joe Zawinul の功績というよりは、エレベの天才Jaco Pastoriusの功績の方が大きい。特に、Weather Report最大のヒット盤『Heavy Weather』は、Jaco Pastoriusのプロデュースの成果の方が大きいと思っている。

そして、次の『Mr. Gone』に至っては、もうJaco Pastoriusのプロデュースの成果のみの傑作となっている。Weather Reportの2枚組ライブ盤『8:30』を聴くと、Weather Reportの音の要は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人(写真右)のビートとリズム展開に因るところが大きく、そのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスの音が、このWeather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして成立させていた。

逆に言うと、Joe Zawinul のキーボードは、Weather Reportの大衆化、ポップス化には貢献してはいるが、Weather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして捉える時には、Joe Zawinul のキーボードの音の必要性は薄れて来ている。大衆性、ポップス性を全面に出すことにより、Joe Zawinulの目標であった「売れたい思い」は達成されたが、コンテンポラリーな純ジャズとしての芸術性の面では、Joe Zawinulのキーボードはあまり必要が無くなっている。皮肉なものである。

Wr81

実質リーダーのJoe Zawinulにとって、そんな相反する皮肉な現象が明確に感じることが出来るアルバムが『Weather Report '81』(写真左)。1980年代録音の最初のリリースということで、その意味も込めて、アルバム・タイトルは、デビュー盤と同様、グループ名だけを冠した『Weather Report』としている。1971年のデビュー盤と紛らわしいので、一般的には『Weather Report '81』と呼び分けている。このアルバムは、実に当時のWeather Reportらしいアルバムである。

ただ、面白いのは、収録された楽曲の殆どが、コ・リーダーの2人、Joe Zawinul とWayne Shorterが担当しているのにも拘わらず、当時、音の要となっていた、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人のビートとリズム展開が中心となっていて、特に、Peter Erskineの縦横無尽で変幻自在、千変万化なドラミングが素晴らしい。Peter Erskineの代表作の一枚と言っても良いくらいの素晴らしさである。当然、Jaco Pastoriusのベースは素晴らしい。この『Weather Report '81』は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの素晴らしさとそのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスを愛でるアルバムである。

で、Joe Zawinul のキーボードについては、若干響きが「古い」というか、大衆性、ポップス性を全面に押し出し過ぎて、先が読めてしまうような単調さが目立つ。ジャズの面白みは「先の読めないインプロビゼーション」にあるが、このアルバムでのJoe Zawinul のキーボードは、ジャズという観点で聴くと、ちょっと後退気味、停滞気味な音に響く。Joe Zawinul のキーボードでなくてはならない、という楽曲が本当に少なくなっている。

それでも、アルバム全体の出来は良い。冒頭の「Volcano for Hire」は、ポップでキャッチャーな旋律を持った従来のWeather Reportらしい楽曲となっていて、聴いていて楽しいし、2曲目以降の楽曲は、コンテンポラリーな純ジャズな演奏として、インプロビゼーションに重点を置いた、意外に「硬派」な内容になっている。故に、大衆化、ポップス化に貢献していたJoe Zawinul のキーボードが浮いた格好になっているのは、実に悩ましい。

このアルバムの録音の頃には、ベースのJaco Pastoriusは精神障害が進行し、言動にかなりも問題が出てきていた、という。そんなベースのJaco Pastoriusと、素晴らしいドラミングを披露したPeter Erskineを、なぜか、Joe Zawinulは解雇してしまう。当時の音の要、貴重なリズム・セクションを一気に失うこととなる。そうしてでも、バンドのメンバーを再構成したかったJoe Zawinulの本当の気持ちは、いったい何だったのか。

今の時代から振り返ると、このアルバムまでが、Weater Reportの音が、完全にグループ・サウンド中心の、真に「Weater Reportの音」。このアルバムが、Weater Reportの最終作と言っても良いだろう。Weater Reportの音の要は、デビュー当時から、リズム・セクションのビートとリズム展開に因るところが大きい。リズム・セクションのビートとリズムを中心から外し、キーボード中心となったWeater Reportは、次作『Procession』で、バンドの当初コンセプトとは全く違った「別のバンド」として再登場するのだ。 
 
 
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コメント

こんばんは。jamkenです。相変わらず、ウエザーの記事には「そのとおり!」と感心してみさせて頂いています。わたしがウエザーに求める物は、アドリブなのかなんだか解らないメロディーラインとわけのわからないショーターの世界。そしてBASSとリズムセクションの絡みだと思うのです。ウエザーのフェバリットはなんですかと聞かれたら、まだまだ私には答えられません。もっともっと聞いていきたいBANDですので、また拝見させてください。

こんばんは、いらっしゃい、jamkenさん。松和のマスターです。

ウエザーの音世界は、とっつき易い割に、意外と奥が深く、色々な
角度から、様々な聴き方が出来て、とても面白い音世界になっている
なあ、と、ウエザーのアルバムを聴き直して、改めて感心しています。

聴き直してみると、やはりショーターの存在は大きいですね。全ての
アルバムを通じて、様々な事情から、彼の音数は少ないのですが、
その存在感がウエザーの音世界の個性を決定付けています。
 
 

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