ジャズも色々あって面白い
ジャズ者をやって来て、早30年以上が経過している。子供の頃から、いくつかの楽器を演奏してきたこともあって、ジャズのアルバムを演奏する側から聴くことも多々ある。
もともと、ジャズはこうでなければならない、って、素人的な思い込みや変な思い入れも無いので、聴いていて感動したり、聴いていて気持ちが良かったり、聴いていてググッと心が動くのが、僕にとっての「良いジャズ」と思って長年ジャズと付き合ってきた。
だから、スムース・ジャズが嫌いだとか、フュージョンは認めないとか、ハードバップしか認めないとか、小難しいことは、今までこれっぽっちも思ったことが無い。良いものは良い、悪いものは悪い。でも、ミュージシャンが全力を傾けて生み出した音楽は、どれもが尊敬に値する。アマチュアである我々が簡単に悪く批判できるものでは無い。
なので、これは良いなあ、と思ったら、結構、ヘビーローテーションになるアルバムが多々ある。ジャズ者ベテラン仲間から、ちょっと節操がないのでは、と眉をひそめられることもあるが、良いものは良い。聴いていてググッと心が動くんだから仕方が無い(笑)。
このアルバムもそんな一枚。Kenny Garrett(ケニー・ギャレット)の『Happy People』(写真左)。2001年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Garrett (ss, as); Jean Norris (vo); Randy Razz (g); Michael "Patches" Stewart (tp, flh); Vernell Brown, Jr. (p); Bobby Hutcherson (vib); Charnett Moffett (b); Marcus Miller (bass g); Chris 'Daddy' Dave, Marcus Baylor (ds)。なかなかの陣容。
アルバム全体の印象は、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な感じである。女性の軽いファンキーなスキャットなども織り交ぜて、エレクトリック・ファンクなフュージョン的雰囲気も見え隠れして、聴いていて心地良い、「今時のジャズ」という感じが実に良い。
さすが、マイルス学校の門下生の一人だけあって、どの曲の演奏にも、ビートとリズムをしっかりと押さえて、大事にしているところが、ぱっと一聴すると、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような耳心地の良いこのアルバムを、意外と聴き応えのあるものにしている。
10曲目の「Asian Medley - Akatonbo/Arirang/Tsubasa wo Kudasai」が面白い。「アジアン・メドレー」と題して、日本の童謡「赤とんぼ」、韓国の民謡「アリラン」、そして、1970年代初めの永遠のフォークソングの名曲「翼をください」のメドレーを、ケニーのアルトサックスをメインに吹き継がれる。
う〜ん、「赤とんぼ」と「アリラン」が続きで並存しているところが面白い。米国人、ケニー・ギャレットならではの感覚だろう。でも、これがなかなか聴かせてくれるので、ジャズって隅に置けない。新ジャズ・スタンダードという観点では、まだまだジャズ化に相応しい楽曲が世界に沢山転がっている。
そして、11曲目の「Brother B. Harper」は、10曲目までのコンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な演奏が一変、ハードな純ジャズに変身。
フリーキーに吹き倒すケニー・ギャレット。やはり、ケニー・ギャレットは素性が確かなアルト・サックス奏者。こうした純ジャズ、コンテンポラリーな「硬派ジャズ」も十分に「イケる」。そして、最後の方で「さくらさくら」の主旋律フレーズを引用しているところがご愛嬌(笑)。でも、このラスト曲でのガッツのあるブロウは結構聴き応えあり、です。
小川隆夫さんのジャズ・ミュージシャン紹介本を読むと、ケニー・ギャレットは大の親日家とのこと。「赤とんぼ」「翼をください」「さくらさくら」をジャズ演奏ネタにするところなんざぁ、親日家ジャズメンの面目躍如である。
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