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2010年6月 8日 (火曜日)

颯爽と疾走する「バリサク」

ジャズのアルバム紹介本などで見たことが無いアルバムでも、聴いて見ると「目から鱗が落ちる」、意外や意外、出来の素晴らしいアルバムに偶然であったりすることがある。ジャズ・アルバムのコレクションの醍醐味である。しかも、その確率が他のジャンルより高いのが「ジャズ」。

バリトン・サックス(略称「バリサク」)の名手に、ペッパー・アダムス(Pepper Adams)がいる。もともと、バリトン・サックスの音が大好きで、ペッパー・アダムスについては、ジャズ者初心者の頃から、ブルーノートの諸作にサイドメンとして参加しているアルバムを聴くのが好きだった。もちろん、当時はジャズ喫茶でですよ。

そんなペッパー・アダムスのアルバム紹介にも、ほとんど、その名前が挙がることのない「隠れ佳作」がある。そのアルバムは『Urban Dreams』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Billy Hart (ds), George Mraz (b), Jimmy Rowles(p), Pepper Adams(bs)。1981年のリリースである。

改めて、パーソネルを見渡すと、なかなか渋い布陣である。このメンバーが本気でかかれば、良い内容のアルバムになって当たり前、という感じの布陣。パーソネルを見渡すと期待が高まるのだが、アルバム・ジャケットを見ると、一気に不安になる。なんなん、このジャケット・デザインは(笑)。どう見ても、ジャズのアルバムとは思えん(笑)。実に劣悪なジャケット・デザインに思わず尻込みする。

が、収録された曲名を並べてみて、また前向きに思い直す(笑)。

1. Dexter Rides Again
2. Urban Dreams
3. Three Little Words
4. Time on My Hands
5. Pent Up House
6. Trentino

1曲目の「Dexter Rides Again」の存在が目を惹く。1981年のリリースで、この「Dexter Rides Again」のような、完全なビ・バップ・チューンを冒頭に持ってくるなんて・・・。しかも、ドラムはビリー・ハート、ベースはジョージ・ムラーツ、ピアノはジミー・ロウルズ。誰もが当時、実績もあり、テクニック優秀で、歌心豊かな、職人的な中堅ミュージシャンばかり。

Pepperadams_urbandreams

しかし、である。このアルバムがリリースされたのは1981年。フュージョン・ブームの晩年期。メインストリーム・ジャズ復古の時代は、もう少し先である。この頃は、やっとウィントン・マルサリスが注目され出した頃。なんとか、メインストリーム・ジャズもやっぱり良いよね、って雰囲気になり始めた頃。そんな時代に、ビ・バップ・チューンをバリバリなバップ風に演奏する輩はいるのか、という疑問も心をよぎる(笑)。

で、聴いて見ると、その内容にビックリ。颯爽と疾走するバリサク。それをガッチリ支援する職人芸的リズム・セクション。超絶技巧、疾走感、爽快感抜群なビ・バップの要素を全面に押し出して、ペッパー・アダムスのバリサクが疾走する。こんな速吹きバリサクをあまり聴いたことが無い。おそらく、この時期、ペッパー・アダムスは、年齢的にも絶好調だったのだろう。軽々とバリサクとしてはかなり高速なパッセージを、ガンガンに吹きまくる。うへ〜、と思わず感嘆の溜息が漏れる。

2曲目はブルージーなスロー・バラード的な演奏だが、ペッパー・アダムスのバリサクがブリブリッと低音を響かせながら、情感豊かに悠然と吹きまくっていく。これって、バリサクとしては、とっても凄い演奏なんじゃないだろうか。凄い迫力、凄いテクニックである。

3曲目の「Three Little Words」は、またまた颯爽と疾走するバリサク。4曲目の「Time on My Hands」はスロー・バラード調。5曲目の「Pent Up House」は、またまた颯爽と疾走するバリサク。そして、ラストの「Trentino」は、ミッド・テンポの実に味わいのあるバリサクを味わうことが出来る。そうそう、ペッパー・アダムスをガッチリ支援する職人芸的リズム・セクションは、どの曲でも大活躍である。

ジャケット・デザインは良くないですが、このアルバムって、バリサクの名手、ペッパー・アダムスの傑作だと思います。とにかく、颯爽と疾走するペッパー・アダムスの「バリサク」が凄い。高速パッセージ吹きまくりのペッパー・アダムスのバリサクは驚異的です。バリサクって、こんなに速いパッセージを長々と吹きまくることができるんだ〜、とただただ唖然と感心するばかりです。

アルバム紹介本などに、その名前が挙がることのない「隠れ佳作」。それを見つけることもジャズ・アルバムのコレクションの醍醐味ですが、それを聴いて、ただただ唖然とし、感心し、感動できるのは、ジャズ者としての醍醐味ですね。こんな「隠れ佳作」「隠れ傑作」に、偶然出会ったりすることが多々あるから、ジャズって面白い、ジャズってやめられない(笑)。 
 
 
 
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