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2010年6月の記事

2010年6月30日 (水曜日)

マイルスとギルのコラボ・その1

うむっ、日本代表、天晴れ「善戦」。パラグアイに引き分け。よく戦った。いろいろ、将来に向けて含蓄のあるゲームだった。PKは仕方がない。PKはゲームではない。PKはサッカーではない。今回のサッカーWCは実りある、印象に残る、明日を感じることの出来る「サムライ・ブルー」の活躍だった。

さて、最近、マイルス・デイヴィスの聴き直しをしている。最近、聴き込んでいるのが、マイルス・デイヴィスとギル・エバンスとのコラボレーション。『Miles Ahead』『Porgy And Bess』『Sketches Of Spain』『Quiet Nights』の4枚がマイルスとギルのコラボの代表的な成果。どのアルバムも、ギルの優れたアレンジと指揮の下、マイルスのペットだけが映えるように仕掛けられた素晴らしい演奏集になっている。

で、僕がこのマイルスとギルのコラボの代表的な成果4枚の内、初めて耳にしたのが『Quiet Nights』(写真左)。まだまだジャズ者初心者駆け出しの頃、なぜかこのアルバム・ジャケットのデザインが僕に対して「おいでおいで」をしていた。なぜかこの『Quiet Nights』を思わず購入。

針を落としてみて、冒頭の「Song No. 2」のマイルスのペットが、リリカルで可愛い。実に愛らしいフレーズの連発。バックのジャズ・オーケストラとのユニゾン&ハーモニーは、ギル・エバンス独特の「音の重ね方」。そのギル独特のアレンジをバックに、マイルスのペットが格好良く映える。

冒頭の「Song No. 2」から、アルバム全体の曲想は「ボサノバ」。このアルバムは1963年のリリース。ジャズ界はボサノバ・ブーム真っ只中。マイルスもそのブームに乗ったか。まあ、レコード会社の要請にのって、ちょっと「ボサノバやってみました」って感じだったのだろう。

Miles_quite_night

しかし後に、マイルス自身はこのアルバムを評価していない。どうも想定した音楽成果のレベルにまで到達しなかったとういうことらしい。マイルスはこの音源のアルバム化に反対。しかし、プロデューサーのテオ・マセロがマイルスの意向を無視してリリースに踏み切る。マイルス怒る。しばらく、プロデューサーのテオ・マセロとは絶縁状態にまで関係が悪化したらしい。このエピソードを初めて目にした時、僕の目は点になった。えっ。これってマイルスにして失敗作なん? ジャズ・アルバム紹介本を見ると、やはり、この『Quiet Nights』の評判はよろしくない。

でも、このアルバム、何回でもリラックスして聴けるんですよね。マイルスのペットのフレーズも音も優しくて明るいし、ギルのアレンジは、ボサノバを単なるボサノバとして聴かせる以上に、クールなジャズとして聴かせるところが実に「粋」である。6曲目の「Corcovado」など、ボサノバの名曲中の名曲だが、決して甘きに流れず、シッカリと硬派なジャズとして、実にクールに演奏されている。

この『Quiet Nights』は、マイルスの美意識が全開で、そのマイルスの美意識をギルがジャズ・オーケストラを使って具現化し、マイルスのペットを引き立てるだけ引き立てています。今の耳で聴いても、マイルスが自ら言うような「失敗作」では無いと思いますが・・・。

まあ、マイルス&ギルのコラボとしては、いわゆる「化学反応」が起こっておらず、単に、普通に優れたアレンジと演奏が素晴らしい、普通にリラックスして聴ける「ボサノバ・ジャズ」アルバムに仕上がっているところがマイルスのお気に召さなかったところかもしれませんね。でも、このアルバムのそこかしこに、マイルス&ギルのコラボしか為し得ない、独特の「音のトーン」を聴くことが出来て、それはそれは素晴らしい響きです。

マイルスには悪いのですが、僕はこのアルバムが今でも好きです。リラックスしつつマイルスのペットを聴くことの出来る、また、ギルのアレンジ&指揮の「魔術」を随所で体験できる「優れもの」だと思います。 
 
 
 
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2010年6月29日 (火曜日)

爽やかで若々しく力強いチック

梅雨を絵に描いた様な今朝の我が千葉県北西部地方。ど〜んと蒸し暑く、中途半端に涼しい。昨日よりはましだが、この激しい蒸し暑さには閉口する。

こんなに湿度が高く、しとしと雨が降る朝は、自分の好きなジャズメンの、爽やかで若々しく力強い演奏を聴いて、せめて心だけでも爽快でありたいと思う。ということで、選んだアルバムが、チック・コリア(Chick Corea)の『Innerspace』(写真左)。

このアルバム、チックのリーダー作として、一応セカンド・アルバムになるんだが、内容がセカンド・アルバムというには、ちょっと異議ありって内容なのだ(苦笑)。

このアルバム、1966年、ヴォルテックスに収録されたチック・コリアのファースト・リーダーアルバム『Tones For Joan's Bones』全曲に、同セッションからの未発表曲2曲、さらに、2年後のヒューバート・ロウズのソロ・アルバムから、チックが作曲した曲を2曲を追加し、LP時代、全8曲2枚組とした変則盤である。ちなみに、CDになってからは、1枚に納まってしまって、LP時代よりもお買い得感は高い(笑)。

ファースト・リーダーアルバム『Tones For Joan's Bones』を持っていないチック者にとっては、願っても無いお徳用CDなんだが、既に所有しているチック者にとっては、残り4曲のために購入すべきかどうか、ちょっと困ったところではあるが、チック者であれば購入せざるを得ないところ(笑)。

でも、これが中々良い内容なので、実は良く聴くアルバムではあるのだ。 まだまだ駆け出しの若きジャズ・ピアニスト、チック・コリアの爽やかで若々しく力強い演奏が全編に渡って聴くことが出来て、チック者にとっては意外と愛聴盤だったりする。
 

Chick_inner_space

 
ちなみにパーソネルは、Joe Farrell(ts, fl), Woody Shaw(tp), Steve Swallow(b), Joe Chambers(ds), Hubert Laws(fl), Ron Carter(b), Grady Tate(ds), Karl Porter(bassoon) 。録音日は1966年の11月と1968年の11月。収録された曲は以下の通りとなる。

1. Straight Up And Down
2. This Is new
3. Tones For Joan's Bones
4. Litha
5. Inner Space
6. Windows
7. Guijira
8. Trio For Flute, Bassoon And Piano

1〜4曲目が、1966年録音の初リーダー作『Tones For Joan's Bones』からの全曲収録なのですが、なぜ曲順が違います。そして、5曲目と7曲目が初リーダー作『Tones For Joan's Bones』の未発表曲の収録。6曲目と8曲目がヒューバート・ロウズの1968年録音『Laws' Cause』からの選曲。なぜかその動機が良く判らないが、これらを集めて、1973年に発売されたアルバムということになります。

素性は怪しいアルバムですが、全編、チックのピアノは申し分ありません。とにかく、爽やかで若々しく力強い演奏で、聴き応え十分。バック・ミュージシャンに耳を向けると、Steve Swallowの弾きまくるウッド・ベースが素晴らしく、Hubert Lawsのフルートも素晴らしい。ウッディ・ショウのペットもブリリアント。しかし、それにも増して、若きチックの弾き倒すピアノの爽やかさと力強さは、なかなかのものです。

ジャケット・デザインがチープでイマイチ。このジャケットを見る限り、手にするには二の足を踏みますが、心配御無用。このアルバム、素性が怪しいと言えば怪しいのですが、若きチックのアコースティック・ピアノを楽しむには格好のアルバムだと思います。 
 
 
 
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2010年6月28日 (月曜日)

日本女子のアルト有望株である

日本ジャズ界では、このところ、女子の活躍が目覚ましい。というか、日本の若手ジャズ・ミュージシャンのほとんどが「女子」。今の日本ジャズ界は「女子」中心に回っている。

今回、久々に有望株に出会った。その名は「寺久保エレナ」。現役の女子高生である。雑誌やネットでの紹介文の触れ込みとしては「山下洋輔、渡辺貞夫、日野皓正など、数々の巨匠との共演を誇る話題の天才少女」。その共演の演奏を聴いたことが無いので、なんとも言えないのだが、今回デビュー作の『North Bird』(写真左)を聴いて、その凄さの一端を垣間見た気がしている。

この寺久保エレナのデビュー作『North Bird』は、その共演ミュージシャンが凄い。ケニー・バロン(p), クリスチャン・マクブライド(b), ピーター・バーンスタイン(g), リー・ピアソン(ds)。伴奏の名手バロンに、ファースト・コール・ベーシストのマクブライド。多彩なスタイルを弾きこなすギターのバーンスタインに、堅実なサポートが売りのリー・ピアソンのドラム。

バックに不足は無い。このゴージャズなバックを背に、寺久保エレナはアルトを吹きまくる。とにかく、寺久保エレナのアルトは上手い。早いパッセージ中心の曲、バラード曲、ミッドテンポなジャジーな曲、どんな曲でも吹きこなす器用さもさることながら、そのアルトの音色が太くてブリリアントで、それはもう正統派は輝かしい音なのだ。

そう、寺久保エレナのアルトは上手い。そのテクニックは現役女子高校生として、かなり傑出したものである。決して大袈裟では無い。どこでどうなってそうなったのかは判らないが、彼女のアルトは正統派で、かつ凄まじいテクニックである。テクニックだけ捉えれば、他に類を見ない、奇跡的な彼女のアルトである。

とにかく、どんな曲でも吹きこなす器用さが素晴らしい。このデビュー作、スタジオ録音なので仕方が無いのだが、サックス吹きに必要な躍動感とアドリブ感が、ちょっと抑制気味ではあるが、確かにこのアルバムでの寺久保エレナのアルトは「上手い」。そう「上手い」んだよな。
 

Terakubo_northbird

 
器用で上手い。これだけではジャズとして、今後しんどいんだが、まだまだデビュー作である。器用で上手い。それも「とてつも無く上手い」。それで十分である。バック・ミュージシャンの選定についても、レコード会社とプロデューサーのセットアップに、そのまま乗っかった感がある。まあ寺久保エレナは現役高校生、デビュー作でもあり、レコード会社とプロデューサーの意向に従わざるを得なかったのだろうし、彼女もそれを判って「乗っかった」のだろう。

アルバム全編を聴き通して、「寺久保エレナのアルトは素晴らしく上手い」以上に、何かを感じたかと言えばそうでもない、というのが正直なところ。でも、その「上手さ」は通常の「上手さ」のレベルを遙かに超えた、超一級品としての「上手さ」である。若干18歳そこそこの女子がここまでアルトサックスを吹き上げることが出来るなんて、最初聴いた時には理解出来なかった。

この寺久保エレナの『North Bird』は、彼女のデビュー作。デビュー作だけに、レコード会社とプロデューサーのセットアップに乗っからざるを得なかったんだろう。「激しく上手い」アルト・サックス以上に、何かを感じたかと言えば「そうでは無かった」。でも、これって、彼女のアルトは凡百であると言っているのでは無い。このアルトの上手さは尋常では無い。それが証拠に、今から彼女の次作が凄く楽しみになっている。

寺久保エレナのアルトは正統派。そして、凄まじいテクニック。この正統派かつハイ・テクニックの寺久保エレナのアルトが、その独特の個性を獲得するのいつになるのか。早くて次作、セカンドリーダー作かもしれない。次作は、自らが選んだリズム・セクションを従えて、ワンホーン作を作って欲しい。その条件下で、寺久保エレナの「本当の個性」が露わになるのでは無いか、と期待している。

寺久保エレナのアルトは素晴らしく上手い。それだけでも聴き応えがあるデビュー作の『North Bird』。そこに彼女の「考える個性」が反映されたら、どんなアルバムに仕上がるんだろう。そして、ジャズ・ミュージシャンには不可欠な「ライブ」での彼女の演奏はどうなんだろう。さすがに、日本女子のアルト有望株である。これからが実に楽しみな若手女子有望株。これから暫く目が離せない、日本若手ミュージシャンの一人である。 
 
 
 
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2010年6月27日 (日曜日)

パット・メセニーの「長年の相棒」

6月24日のブログ(左をクリック)で、パット・メセニーの『Orchestrion』について語った訳だが、このアルバムのパットのソロを聴くにつけ、パット・メセニー・グループ(以下PMGと略)の音世界って、やっぱり、パットの音の個性によるところが大きいんやなあ、ということに改めて感心したした次第。

PMGの音世界は一言で言うと「フォーキーな、アメリカン・ルーツ・ミュージック的な音をグループサウンドのベースに据えて、実に叙情的で郷愁を感じる、力強さとセンチメンタリズムを併せ持ったサウンド」とでも表現したら良いか。実感していただくには実際のアルバムを聴いていただくしかないが、セカンド・アルバム『Watercolors』辺りがお勧めかなあ。

この『Watercolors』で、そのPMGのグループ・サウンドの要となる「キーボード」を演奏するのが、PMGの盟友「Lyle Mays(ライル・メイズ)」。このセカンド・リーダー作で、運命の出会いを果たしている。PMGのサウンドの基本である、叙情的な郷愁部分を大部分、キーボードに委ねて、パットは、自在にギター・サウンドを操れるようになった。

さて、改めて、ライル・メイズと言えば、言わずと知れたパット・メセニー音楽の重要パートナー。PMGには欠かせない存在である。どれだけPMGにとって必要不可欠な存在なのか。それは、ライル・メイズのファーストリーダーアルバム『Lyle Mays』(写真左)を聴けば直ぐに理解出来る。

冒頭の「Highland Aire」を聴けば、まるでPMGのアルバムを聴いているかのような錯覚に陥ります。出だしから、PMG独特のフォーキーでワールドミュージック的な響きに「ニンマリ」。それだけ、ライル・メイズのキーボードの音が、PMGの音の決め手になっているということですね。

ビートの面でも変幻自在で、このビートの「チェンジ・オブ・ペース」も、PMGの十八番ですね。ナナ・ヴァスコンセロスのパーカッションが実によく効いている。ナナのパーカッションの音も含めて、この1曲目の「Highland Aire」を聴けば、ECM時代のPMGの音を強く感じる。
  

Lyle_mays
 
 
しかし、3曲目の「Slink」をじっくり聴けば、ピアノのインプロビゼーションの部分は意外とコンテンポラリーな、正統派ジャズの音の感触を踏襲していて、ライル・メイズの演奏の基本がしっかりと伝統に根ざしていることが感じられます。ライル・メイズを単に「フュージョン世代のキーボード使い」と誤解する人がいますがとんでもない。ライル・メイズのピアノは正統派です。

5曲目「Northern Lights」から「Invocation」〜「Ascent」と3曲メドレーで続く「アラスカ組曲」。自然の音をジャズの演奏に置き換えたような、これぞ「ネイチャー・ジャズ」と呼んで良い、実に視覚的なイメージが湧いてきて、ライル・メイズのセンスに心底感心します。PMGの音世界の中でも良く聴くことのできる、この「自然の音」的な響きは、ライル・メイズによるところが大きいんですね。

2曲目の「Teiko」のどことなく和風・中国風なサウンドが全面に出てくるミステリアスな展開も面白く、ライル・メイズのピアノとシンセがひたすら美しく響く、ラストの「Close To Home」。音楽的なセンスも多角的で、ライル・メイズの音世界の多面性を感じる事ができます。良いアルバムです。

このライル・メイズの初リーダー作を聴いていて、ふと、ウェザー・リポートのキーボード奏者ジョー・ザビヌルを思い出した。ザビヌルのキーボードの音は緻密に準備された「人工的なポリフォニック・シンセの音」。ライル・メイズのキーボードの音は楽器の響きを自然に活かした「アコースティックで強く繊細なピアノの音」。ライル・メイズのシンセサイザーの音は、アコースティック・ピアノの音を惹き立たせる為にある。

ライル・メイズのキーボードの基本はアコースティック・ピアノである、ということをこの初リーダーアルバムを聴いて再認識した次第。やはり、基本をしっかり押さえているキーボーティストは息が長い。 
 
 
 
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2010年6月26日 (土曜日)

「ジャズの小径」6月号アップです

サッカーWC、日本代表が2大会ぶりに決勝トーナメント進出を決めました。日本代表については、大会前の状態が散々たるものだったので、一時は「今大会は日本は出場していないことにする」として、怒り心頭状態でした。

が、大会直前のコートジボワール戦、ジンバブエ戦の状況を見ていた「ん〜、もしかしたら、意外とやるかも」と感じ、ある条件下ではいけるんじゃないかと思い直しました。そのある条件がほぼ満たされた状態での予選の3試合。得失点差の妙や審判の笛にも助けられて、決勝トーナメント進出です。

昨日早朝のデンマーク戦は、ちょっとだけ早起きして、後半から観ました。2点をリードしている状態には、ちょっと戸惑いました。完全な「想定外」です。逆に、タフな後半になるので、精神的にもしんどいなあと覚悟しましたねえ(笑)。

案の定、かなり心臓に悪い展開になりましたが、良く日本代表は耐えました。どころか、後半40分を過ぎて3点目を取ったのにはビックリ。いよいよ、やっと日本のサッカーのレベルも世界レベルになってきたことを少しだけ実感した一瞬でした。

ということで、昨晩は自宅に早々に帰りついて、デンマーク戦のプレイバックを観ながら祝杯を上げました。勝ったという結果が判ってのテレビ観戦は余裕を持ちながらの観戦になるので、酒も旨い(笑)。なんだか「へべれけ」になってしまい、昨日のブログはお休みしました m(_ _)m。

Supersax

さて、今日は、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」を更新しました。月例の更新コーナー「ジャズの小径」の6月号をアップしました。

梅雨入りということで、ジメジメとして、ハッキリしない天気の日が続いています。どんより曇り空、時々雨。時に強く雨が振り、そんな時に通勤時間帯が被れば、足下はベタベタ、ズボンはビチョビチョ。不快なことこの上無しです。

これだけ天気が優れないと、気分までが滅入ってくる。精神的になんだか俯き加減になって、どうもいけない。そんな時はパンチの効いた、アゲアゲのジャズが欲しくなる。パンチの効いたアゲアゲのジャズ。そんな時、良くチョイスするのが「ブラスのアンサンブル」。

ブラスの輝くような明るい響き、そのポジティブに切れ込むブラスのユニゾン&ハーモニーは聴いていると、どんどん心が揺さぶられ、なんだか精神的にノリノリになってきて、実に心地良いものがある。ということで、今月の「ジャズの小径」は、「梅雨空をぶっ飛ばせ」ということで、金管楽器のアンサンブルが中心のジャズから、松和のマスターのお気に入りの一枚をご紹介しています。

ご紹介している金管楽器のアンサンブルが中心のジャズ・アルバムは、アルトのMed Floryを中心としたサックス・アンサンブル、Supersax(写真)の『Supersax plays Bird』。

バーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」(左をクリック)にお越し下さい。「ジャズの小径」のコーナーは11年間分の記事がアーカイブされていて、読み応え十分です。特に、ジャズ者初心者の方々にお勧めです。松和のマスター一同、お待ち申し上げております m(_ _)m。 
 
 
 
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2010年6月24日 (木曜日)

これはマニア御用達でしょう

パット・メセニーは、僕のお気に入りである。今から遙か30年以上前からの「お気に入り」。あの独特のフォーキーで、アメリカン・ルーツ・ミュージック的でネイチャーな響きのギターが大好きである。パットのアルバムはほとんど所有している。どのアルバムを聴いてみても、パットの素晴らしさは変わらない。

で、ある。今年の1月、新しいパット・メセニーのアルバムがリリースされた。今回のリリースは、パットの単独名義。単独名義のパットと言えば、オーネット・コールマンの傾倒し、かなり、フリー・ジャズよりのハードなアルバムをリリースし続けてきたので、今回もかなりハードな内容なんだろうな、と想像していたのだが・・・。今回のパットの単独名義の新アルバムは『Orchestrion』(写真左)。タイトルの「Orchestrion(オーケストリオン)」とは何か。Wikipediaを紐解くと、

「オーケストラやバンドのような音を奏でるよう設計された音楽演奏機械の総称。手回しオルガンのようなピンの突き出た大きな円筒や連続紙またはロール紙型のパンチカードを使って操作される。基本的にはパイプオルガンのようにパイプで様々な音を発生させるが、打楽器も空気圧で操作する。また、ピアノや弦楽器を含むオーケストリオンもある。オーケストリオンはジャズが流行した1920年代のドイツで、最も広く使われていた」

とある。う〜ん、なんなんだこれは。アナログ的な「打ち込みマシン」とでも表現したら良いのか。下の写真、パットのバックにある、カラクリ仕掛けの様なものが「オーケストリオン」。この、20世紀初めより、古くからあるこの「オーケストリオン」を現代技術で再生〜向上させ、現代音楽で十分通用するレベルまで、その機能を飛躍的に弾き上げたものを、今回のパットは「バックバンド」として採用してます。

Orchestrion

この最新式の「オーケストリオン」を活用し、アナログ的な「打ち込みマシン」として、生楽器の自動演奏担わせ、パット・メセニーがフロントで、心ゆくまでギターをプレイするという、奇抜な内容のアルバムが、このアルバムです。

しかし、なあ。このアナログ的な打ち込みマシンである「オーケストリオン」を活用して、ソロギターのアルバムを製作することに、何か意味があるんだろうか。う〜ん、きっとパットはやってみたかったんでしょうね。少なくとも、アーティスティック面では「意味が無い、意味が見いだせない」と思います(笑)。それでもパットはやってみたかったんでしょうね。パット自身も「子供の頃の夢」とライナーで語っています。

きっと、子供の頃に見た「オーケストリオン」。確かにその姿は、アナログ的な感性を持つ我々の世代からすると、実に魅力的な姿をしています。楽器というよりは「化学実験室」のような風情。マッド・サイエンティストが出てきそうな、そんなコッテコテなアナログチックな雰囲気。ジャズはやはりアナログが良い。アナログ回帰。そんな言葉が聞こえてきそうです。

Patmethenyorchestrion

「オーケストリオン」はカラクリ人形の様な音楽演奏機械なので、さすがに、細かいニュアンスや複合リズムやチェンジ・オブ・ペースという面では、人間の手なる演奏に敵うはずもない。60分以上も聴き続けると、さすがに「オーケストリオン」のバックバンドのリズム&ビートには飽きてきます。やはり、バリエーションが足らない(笑)。

それって、パットは最初から判っていたと思います。それでも「やってみたかった」(笑)。この『Orchestrion』というアルバムは、パットの個人的趣味性のかなり高いアルバムだと思います。「オーケストリオン」をバックに弾きまくるパットのギターは、徹頭徹尾、どこから聴いても「パットの個性」が満載です。が、さすがに好きに弾きまくっているので、キャッチャーなメロディーや印象的なフレーズ、リフは影を潜めています。

それでも、パットはやってみたかったんでしょうね。このアルバムはパットの「マニア御用達」。パットらしいギターのトーンが詰まっているので、パットのギター・フレーズが堪能できますが、何もバックバンドが「オーケストリオン」である、このアルバムを選ぶ必然性はありませんね。

他に、パットのギターを堪能できるリーダー作は沢山あります。このアルバムは、パットのマニア御用達。「オーケストリオン」をバックに無邪気に喜々として、ギターを弾きまくるパットは、パットのマニアにとってはたまりません。パットの趣味性の高い、マニア向けのアルバム、と私は評価しています。構えて聴くには「オーケストリオン」のビート&リズムがイマイチ過ぎるんですが、パットのギターを気持ち良く聴き流すには最適なアルバムのひとつではあります。 
 
 
 
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2010年6月23日 (水曜日)

Tower of Powerって知ってる?

Tower of Power(タワー・オブ・パワー)って知ってますか。知ってるよ〜、って答えた方は、1970年代ロック、クロスオーバー・ミュージックの「通」です。

Tower of Powerは、70年代初頭のオークランドをベースにしたさまざまなバンドで構成された、ロック・ホーン・バンド、若しくはR&Bのバンド。カリフォルニア州オークランドで結成しその後活動の拠点をサンフランシスコに移し、1970年にデビューなので、西海岸ロックの範疇に入る。

1970年代、当時、日本では、それはそれは粗雑な扱いを受けていた。「ブラス・ロック」若しくは「ソウル・ミュージック」のジャンルに押し込められ、ロックのジャンルからも、ソウル・ミュージックのジャンルからも継子扱いされた、それぞれのジャンルの片隅に、Tower of Powerは鎮座ましましていた。

しかし、である。このTower of Power、素晴らしいファンク+R&Bのバンドなのだ。というか、ソウル・ジャズのエッセンスをしっかり引継ぎ、スマートでコテコテなファンクネスが堪らない、そんなクロスオーバーなバンドである。

そのTower of Powerの代表的名盤の一枚が『Back to Oakland』(写真左)。ファンク色、そして、クロスオーバーなジャズの要素をしっかり取り込んだ、1974年に発表された通算4枚目の作品。ジャズ者からすると、このアルバムが一番馴染みやすい。ブラスのユニゾン&ハーモニーをジャズ的に活かしながら、アドリブ交えて展開するインスト・ナンバーの存在が光る。
 

Top_oakland

 
そのインストナンバーの代表格が、5曲目の「Squib Cakes」。オルガン入りの実にファンキーな、実にソウルフルなインストナンバー。ビートはしっかりとR&B。決して、ジャズの様にスインギーではない。でも、そこが「格好良い」んだよなあ〜。ジャズに無い、縦揺れのビートが新鮮。そして、演奏のシンプルさが、この演奏をより判り易く、親しみ易くしている。

「ブラス・ロック」的な展開は、冒頭の「Oakland Stroke」や9曲目の「I Got The Chop」に顕著。ブラスを全面に押し出したR&Bバンドではあるが、ブラスをやや抑え気味に、隠し味のように響かせ、R&B的なビートを全面に押し出して、ソウルフルで「うねるような」グルーヴを聴かせるところなんざあ、実に「粋」である。

R&Bバンドの十八番であるソウルフルなバラードも「てんこ盛り」。3曲目「Just When We Start Makin' It」、そして、6曲目「Time Will Tell」なんざあ、それはそれは、R&B的なバラードな雰囲気が満載である。ボーカル良し、コーラス良し、1970年代の良きR&Bの響きを感じる。う〜ん、良いなあ。

日本では、なぜか継子扱いされていた感のあるTower of Powerですが、クロスオーバー・ジャズのファンの方々、ファンキー&ソウルフルなフュージョン・ジャズのファンの方々、そして、R&Bのファンの方々には絶対のお勧めです。

梅雨の雨続きの日々、雨の憂鬱さにテンションが下がりがち。そんな時、逆に、だから「アガる曲」が欲しくなる。そんな「アガる曲」が欲しい時に、ピッタリなTower of Powerの「ファンク+R&B」。ノリの良さが突き抜けている感じが実に素敵です。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、このTower of Powerは、ジャズ・フュージョン館でかけますね、絶対に・・・。  
 
 
 
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2010年6月22日 (火曜日)

マッコイの優れた「企画モノ」

昨日に引き続き、マッコイ・タイナーのアルバム紹介を「もう一丁」いきたいと思います。コルトレーン一派というだけで、天の邪鬼的に避けていたマッコイ・タイナーではあるが、ジャズ喫茶でマッコイのアルバムを聴くにつけ、マッコイのガーンゴーン、パラパラパラというハンマー打法に加えて、ピアノの「シーツ・オブ・サウンド」奏法が意外と気に入り始めていた1970年代の終わり。

1980年に入って、リリースされたこのアルバムは、実に思い出深い。そのアルバム名は『4x4』(写真左)。1980年3月の3, 5, 6 & 29日の4つのカルテットのセッションを集めたもの。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Freddie Hubbard (tp), John Abercrombie (g), Bobby Hutcherson (vb), Arthur Blythe (as), Cecil McBee (b), Al Foster (ds)。

トランペットのフレディ・ハバード、ギターのジョン・アバ−クロンビー、ヴァイヴのボビー・ハッチャーソン、アルトサックスのアーサー・ブライスという4人が、それぞれフロントとして加わった、4種類の4重奏団が演奏するので「4x4」。これがなかなか面白い。

一般的には「トッピングで、それぞれ味が変わる」ということだが、それは表面上のこと。4書類の4重奏団それぞれの揺るぎのない素晴らしさを発揮しているのが、リーダーのマッコイ・タイナーとベースのセシル・マクビー、ドラムのアル・フォスターのリズム・セクション。当時のジャズ界において、突出した先進性を持ったリズム・セクションの一つだったということがこのアルバムを聴いて良く判る。メンバーを固定した、パーマネントなピアノ・トリオとして活動しなかったことが実に惜しい。

リーダーのマッコイのピアノは唯我独尊、孤高のピアノである。コルトレーン4重奏団時代のガーンゴーン、パラパラパラというハンマー打法に加えて、ピアノの「シーツ・オブ・サウンド」奏法で、疾走しメリハリの効いた、実に男性的なタッチで、「着いてくるなら着いてこい」ってな感じで、グイグイと引っ張っていく。フロントのゲスト・ミュージシャンの存在など微塵もない、まったく気にする様子も無く、まったく迎合することもない。ガンガンに飛ばしまくる重戦車のようなマッコイのピアノ。

そのピアノをガッチリ支えるのが、歌うように粘るビートと紡ぎ出していくセシル・マクビーのベース。このマクビーのベースは驚嘆に値する。こんなに歌うようにベースのフレーズを弾きまくるマクビー。改めて凄いと感心することしきり。
 

Mccoy_tyner_4x4

 
そして、アル・フォスターのドラム。スインギーな従来からのビートとは全く正反対の、シンプルでストレートなポリリズムと粘りのあるビートの供給。コルトレーンのフレーズをドラムで叩き出した様な、真っ直ぐなビート。今の耳にも新しく、驚嘆に値するポリリズム。

こんなに凄いリズム・セクションをバックにしているのだ。誰がフロントを張ったって、素晴らしいインプロビゼーションを展開しまくるに決まっている。

個々のフロントについてコメントすると、フレディ・ハバードのペットは、コルトレーンの様なフレーズを繰り出す繰り出す。確かに1980年当時、コルトレーンの様な高速シーツ・オブ・サウンドなフレーズを吹きまくることの出来るペット奏者は、フレディ・ハバード以外に見当たらなかったかと思う。しかし、ハバードはコルトレーンとリアルタイムで接したミュージシャン。あまりにコルトレーンの様にペットを吹きまくるので新しさは無い。抜群に上手いのだが、コルトレーン4重奏団の焼き直し的な雰囲気に終始していて、ワクワク感は少ない。

しかし、次の4重奏団ユニット、ギターのジョン・アバ−クロンビーをフロントにした4重奏団の演奏は、実に新しい雰囲気に満ちている。決して、シーツ・オブ・サウンドに走らない、決して、コルトレーンのコピーに走らないが、音を厳選してモーダルにギターを響かせるジョン・アバークロンビーは、実にコルトレーン的。でも、決して、コルトレーンの影はつきまとわない。コルトレーンのフレーズを自家薬籠中のものとして、ジョン・アバークロンビーの個性として、実に先鋭的なジャズ・ギターを聴かせてくれる。

次のボビー・ハッチャーソンのバイブも良い。モード・ジャズ時代の代表的ミュージシャンの一人であった、ボビー・ハッチャーソンである。このアルバムでは、実に誠実に、モード・ジャズの真髄を聴かせてくれている。美しいことこの上無し。そして、ラストのアーサー・ブライスのアルトは、コルトレーンの様に吹きながらも、そのフレーズにブライス独自の個性が輝いていて、これはこれで、これまた聴き応えバッチリである。 
 
いわゆる企画モノのアルバムですが、どうしてどうして、なかなか内容のある良いアルバムです。LP時代は2枚組のアルバムだったので、高くて手に入りませんでした。僕の隠れ家的な音楽喫茶で幾度か聴かせて貰い、FM放送で断片的にオンエアされる演奏を、丁寧にエアチェックし、カセットに編集して楽しんだことを昨日のことの様に覚えています(笑)。今では、CD1枚にまとまって、US盤では、デジタル・リマスターされていながら、なんと1300円前後で手に入る様になりました。う〜ん、良い時代になりましたねえ。   
 
 
 
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2010年6月21日 (月曜日)

マッコイの作編曲の才能

ジャズ者駆け出しの頃、遠く大学時代の頃である。もともと、性格的に天の邪鬼である。当時、ジャズの紹介本でコルトレーンが凄いとか、チャーリー・パーカーが凄いとか言われると、なんだかんだと言って、自分で難癖つけては避けて通っていた。

マッコイ・タイナーもそうであった。まず、コルトレーン一派というだけで駄目だった。ガ〜ン、ゴーン、ガラガラドロドロ、パララパララといった、ハンマー打法のようなピアノタッチとモードを全面に押し出した、ハッキリしない、ウネウネとしたフレーズがどうしても好きになれなかった。

まあ、世間が凄い凄いというので、天の邪鬼的に反抗していたに過ぎない。加えて、ジャズ者初心者、マッコイが何をやっているのか、理解出来なかったというのも正直なところ(笑)。あれから、約30年以上が経って、そんな青い天の邪鬼的なところも無くなって、最近、マッコイ・タイナーを聴き直している。

マッコイ・タイナーの全盛期は1970年代だと思っている。天の邪鬼的な性格を発揮しながらも、ジャズ初心者の頃、マッコイ・タイナーについては、ジャズ喫茶の協力もあってかなりの枚数を聴いて、密かに感動したアルバムも幾枚かある。そのジャズ者初心者の頃、感動した一枚が『Sama Layuca』(写真左)。

1974年3月の録音。ちなみにパーソネルは、John Stubblefield (ob, fl), Gary Bartz (as), Azar Lawrence (ts, ss), Bobby Hutcherson (vib, mar), McCoy Tyner (p), Buster Williams (b), Billy Hart (ds), Guilherme Franco, Mtume (per)。
 

Sama_layuca

 
いやいや、当時、若手精鋭のメンバーがズラリ。アルト・サックスのゲイリー・バーツ、ベースのバスター・ウイリアムス、そして、ドラムのビリー・ハーツ、パーカッションのムトゥーメ。ヴァイヴのハッチャーソンは若手精鋭ではないな、ベテラン職人の類やな。

9人編成のジャズ・コンボ。マッコイ・タイナーの作編曲の才が冴え、9人編成の音とは思えない、ビッグバンド・ジャズ的な分厚い音が凄い迫力である。そして、1974年の録音という時代背景から、クロスオーバーチックな展開とフリージャズ的な展開が「ない交ぜ」になって、1974年当時、最先端のコンテンポラリーなジャズの音を聴かせてくれている。

アルバム全体を通してアフリカを強くイメージする曲想と演奏が展開されているところが、今でも新鮮に響く。どの曲がどう、ということでは無い。アルバム全編を通じて、従来のジャズの枠を越えて、エキゾチックな雰囲気が強く漂う。アルバム全体を覆う音とリズムとビートを通じて、アフリカを実に強く感じる。そして、アフリカン・アメリカンのルーツミュージックを、このアルバムを通じて強く感じることができる。そこが素晴らしい。そこが聴き応えである。

そして、当時のジャズを総括したような、ハードバップ的な響きから、モード的な響き、そして、フリージャズ的な響き、そして、エスニカンな、ワールド・ミュージック的な響きが新しい。当時のジャズの最先端のひとつを示した、圧倒的なドライブ感が実に格好良い。

マッコイの作編曲の才能が全面的に開花した秀作といえます。コルトレーンの下で育んだアフリカンな響き、アフリカンなビートを、マッコイの作編曲の才能を通じて、コルトレーンよりも判り易く、聴き易くして、旧来のスイング中心のジャズの枠を遙かに超えた、音楽のジャンルに捕らわれない、実にクロスオーバー的な秀作と言えるでしょう。とにかく、マッコイの作編曲の才能には脱帽です。 
 
 
 
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2010年6月20日 (日曜日)

チャールズ・ミンガスの到達点・2

『Something like a bird』(写真左)。 暴れん坊将軍、怒れるベーシスト&作編曲家チャールズ・ミンガスの最終作である。1978年のセッションである。先にご紹介した『Me Myself An Eye』(5月12日のブログ・左をクリック)と同日セッション。

チャールズ・ミンガスは亡くなるその時点まで、前進するアーティストであった。この『Something like a bird』は『Me Myself An Eye』と併せて、ミンガス・ミュージックの到達点と言えるだろう。ミスガス自身はもはやベースを弾いていないが、メンバーが凄い。

リー・コニッツ、チャールズ・マクファーソン、マイケル・ブレッカー、 ジョージ・コールマン、ペッパー・アダムス、ロニー・キューバー、 ランディー・ブレッカー、ジャック・ウォルラス、ジミー・ネッパー、スライド・ハンプトン、ラリー・コリエル、エディ・ゴメス、 ジョージ・ムラーツ、スティーブ・ガッド、ジョー・チェンバーズ、ダニー・リッチモンド等々、新旧の優秀なミュージシャンを集めに集めて、目眩くバップ・ジャズ・オーケストラな演奏を繰り広げている。日本人ミュージシャンについては、大森明、MALTAの2名が名を連ねている。

収録されている曲は以下の2曲。たったの2曲である。LP時代は、A面、B面1曲づつが配されていた。

1. Something Like A Bird
2. Farewell, Farwell

1曲目の「Something Like A Bird」は、31分12秒という長編であるが、高速演奏、高速展開の目眩くバップ・インプロビゼーション大会。テクニックのある限り、秘術を尽くしつつ、バップ・フレーズを、順番に新旧入り乱れて、ミュージシャン達が吹きまくる。それでいて、音の展開のベースがしっかりしているので、30分以上という収録時間にも拘わらず、緩んだところが無い。

Something_like_a_bird

そして、2曲目のタイトルが涙を誘う。「Farewell, Farwell」、さようなら、さようなら。ロック・フュージョン調のエレクトリック・ギターを大々的に導入し、整然と混沌のコントラストが印象的な、それでいて、揺るぎのない「ミンガス・ミュージック」に仕上がっている。特に、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方が、どう聴いても「ミンガス・ミュージック」なのだ。ダイナミックでスケールの大きい取り回し。ソロイストの最大限のスペース与える、懐深く、大らかな展開。

このアルバムの内容は、伝統的なジャズの展開に則りながら、フリージャズの要素、ロック的な要素、古くはビ・バップな要素、ワールドミュージック的な要素、様々な音楽的要素を無理なく取り入れて、実にスリリングな展開になっている。

少人数でジャズ・オーケストラな演奏というのが、若かりし頃をミンガス・ミュージックであったが、このアルバムでは、優れたミュージシャンを大量に招集して、個性を組み合わせて、王道を行くジャズ・オーケストラな演奏を展開しているところが痛快である。

チャールズ・ミンガスは、1978年の「Me, Myself an Eye/Something Like a Bird」セッションの後、体調が悪化、翌1979年1月5日永眠。LP時代、この1978年のセッションは、『Me, Myself an Eye』と『Something Like a Bird』2枚のアルバムに分けてリリースされ、この『Something like a bird』が最終作となった。

しかし、この『Something like a bird』を聴き終えて、決して、このアルバムが最終作なんて雰囲気は微塵も無い。まだまだ改善の余地を残した感じの「スケッチ風な部分」も残っており、まだまだ、ミンガス・ミュージックは進化する余地を十分に残していたと言える。実に残念である。でも、この「チャールズ・ミンガスの到達点」は、いつでもCDで楽しめる。この「チャールズ・ミンガスの到達点」は、ジャズ者への道の途中、避けて通れないもののひとつである。  
 
 
 
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2010年6月19日 (土曜日)

美人ベーシストの出現である

ジャズはまだまだ進化している。ジャズは、まだまだバリエーションが深化している。そして、この5〜6年、女性ジャズ・ミュージシャンの台頭が著しい。これは何も日本に限ったことではない。米国でもその傾向にある。

エスペランサ・スポルディング(Esperanza Spalding)。ベーシストである。先入観無く聴いたのだが、強靱なビート、歌うようなベースライン、モードもコードもなんでもござれ。それでいて、そこはかと無い繊細感。その繊細感が何故か気になる、う〜ん、と思いながら、アルバム・ジャケットを見て至極納得。

そのアルバムとは、エスペランサ・スポルディングのデビューアルバム『Junjo』(写真左)。そのベーシストの横顔たるや、いやはや、かなりの美人ベーシストと見た。う〜ん、やっと21世紀になって、遂に出てきたのか、女性ジャズ・ベーシストが・・・。しかも、かなりの実力者である。う〜ん、時代が変わりつつあるなあ。繊細感は女性ならではの資質から来るものだったのか〜。

このアルバムの内容はなかなか充実している。エスペランサ・スポルディングは歌も歌える。スキャットも正統な歌唱もOK。歌えるベーシストである。この歌の部分もなかなかの才能なのだ。う〜ん面白い。しかも、ベース自体のテクニックも本格的。

アルバム冒頭の「The Peacocks」を聴くと、現代のジャズ、コンテンポラリーなジャズをしっかりと感じる事が出来る。まず、演奏の質がしっかりしている。というか、かなり先進的な内容をしているところが「ミソ」。音が新しい。ベースのビートが先頭を走りながら、次々と出てくるフレーズは新鮮な響きがする。

Spalding_junjo

このバンドの、そして、リーダーの才能が十分に発揮される演奏が、3曲目の「Humpty Dumpty」。チック・コリアの名曲を、しっかりとその曲の個性を引継ながら、自分達の音を織り交ぜつつ、実に新鮮に響かせてくれている。この冒頭の1曲目から3曲目までの演奏を聴いて、このエスペランサ・スポルディングの作編曲面については、チックのフォロワーであることを感じさせてくれる。

ボーカルとは言っても、スキャット中心なのですが、唯一、ちゃんと歌っているのが、7曲目『Cantora De Yala』は、 スポルディングのベースのみの弾き語り(!)による、暖かな日だまりの様な、ほんのり暖かで、芯はしっかりと通った、意外と硬派な内容。ジャズ・ベーシストの弾き語りは、僕は初めて体験しました。スキャットについては、ジャコ・パストリアス御大の前例があるんですが・・・。

最近、最新のコンテンポラリーなジャズを感じさせてくれる佳作です。実は密かに最近感じているのですが、作編曲を中心に、チック・コリアのフォロアーが出始めているのではないかと。特に、女性ジャズ・ミュージシャンにその傾向が強い。チック・マニアの私にとっては実に良い傾向ですね。やはり、良いものは良い。これからもどんどん増えてくるのではないか、と睨んでいます。

アルバム・ジャケットの横顔写真が実に良い雰囲気を伝えてくれています。ジャケット良し、内容良し。美人女性ジャズ・ミュージシャンということを全く無視して、純粋に新進ジャズ・ベーシストとして、作編曲家として、エスペランサ・スポルディングは期待の新人といえるでしょう。これからが楽しみです。 
 
 
 
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2010年6月17日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・18

ジャズ・ピアニストで、「ファンキー」なジャズ・ピアニストと問われれば、私としては、まず、ホレス・シルバーが浮かび、そして、次にボビー・ティモンズ。

ボビー・ティモンズについては、今年の5月6日のブログ(左をクリック)「ピアノ・トリオの代表的名盤・12」と題して『This Here Is Bobby Timmons』をご紹介した。ボビー・ティモンズのバイオグラフィーについては、この記事をご覧頂きたい。

今回は、そんなファンキー・ピアニスト、ボビー・ティモンズの私の愛聴盤の一枚をご紹介したい。タイトルは『Born To Be Blue!』(写真左)。1963年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Timmons (p) Ron Carter (b) Connie Kay (ds)。なかなか渋い人選である。

このアルバムは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャースで、コテコテのファンキー・ピアノを弾きまくっていたボビー・ティモンズが、そのファンキーなイメージをグッと押さえて、アーティスティックで大人な雰囲気を全面に押し出した、実に趣味の良いピアノ・トリオ盤です。ティモンズ本人からして、自ら生涯最高傑作と評したピアノ・トリオ盤である。

ファンキーなイメージを押さえることにより、気品に満ちたソウルフルな味わい全面に浮き出てきて、ティモンズのピアノタッチが実に美しく響く。そして、その美しいピアノ・タッチの底にジンワリ漂う、ティモンズの「地」であるファンキーな雰囲気。実に趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノと表現すれば良いでしょうか。
 

Born_to_be_blue    

 
若き精鋭ベーシスト、ロン・カーターと、職人的バップドラマー、コニー・ケイとのマッチングが大正解。気品はMJQのメンバーであったコニー・ケイのドラミングに因るところが大きく、趣味の良さは、モード的な雰囲気を醸しだしながらも、しっかりとバップ的なベースのビートを供給するロン・カーターに因るところが大きい。

1963年辺りといえば、ジャズは、ポップな面では、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズが主流となり、アーティスティックな面ではモード・ジャズが主流となっていた。そして、ボサノバが上陸し、ボサノバ・ジャズが当時の流行の最先端。そんな時代の中で、このティモンズの実に趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノは、実にイージーリスニング系であり、実に趣味の良いポップミュージックである。

とにかく、収録されたどの演奏も、ハード・バップな芯のある純ジャズ的な演奏であるが、難しい節回しやジャズ独特の不協和音的なインプロビゼーションは排除され、とにかく、全編、聴き易く、ファンキー&ソウルフルな明るい雰囲気の演奏ばかりで、聴いていてとても楽しく、リラックスして聴き通せる。別の仕事をしながらのBGMに良し、酒を傾けながらの粋なBGMにも良し。

さすがに、ティモンズ本人が、自ら生涯最高傑作と評したピアノ・トリオ盤だけある。もともとジャズは大衆音楽。このアルバムの様な、全編、聴き易く、ファンキー&ソウルフルな明るい雰囲気の演奏がジャズの真骨頂のひとつであることは間違い無い。そして、俗っぽさを徐々に排除しつつ、コテコテのファンキー・ピアノを趣味の良い、アーティスティックなファンキー&ソウルフルなピアノに昇華させていった、ティモンズの研鑽に敬意を表したい。

最後に、このアルバム、ジャケットが良いです。実に雰囲気のあるジャケット写真。もうもうと立ち上る煙草の煙と深い濃紺を基調にまとめられたジャケットは「ジャズ」以外の何者でもない。このジャケットについては、LPサイズのジャケットを手に入れたい。そんな気にさせる実に秀逸なアルバム・ジャケットです。  
 
  
 
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2010年6月16日 (水曜日)

さすがに「これはアカン」やろう

一昨日、「雨の朝に流したいジャズ・ピアノ」と題して、Bill Evans(ビル・エバンス)の『Bill Evans Trio with Symphony Orchestra』について語った訳だが、ビル・エバンスのヴァーヴ時代には、もう一枚、ウィズ・オーケストラなアルバムがある。

『Gary Mcfarland Orchestra With Special guest Soloist Bill Evans』(写真左)。なんともはや長ったらしいアルバムタイトルである。ヴァイブの名手Gary Mcfarland(ゲイリー・マクファーランド)がビル・エバンスをピアノのソロイストに迎えて、ストリングスを加えた11人編成のアンサンブルを従えて録音したアルバム。1962年12月と1963年1月の録音。

ちなみにパーソネルを見渡すと、Phil Woods (cl) Spencer Sinatra (as, fl) Julian Barber, Allan Goldberg (vla) Aaron Juvelier, Joseph Tekula (vlc) Gary McFarland (vib, arr, cond) Bill Evans (p) Jim Hall (g) Richard Davis (b) Ed Shaughnessy (ds)、と、ピアノのビル・エバンスをはじめ、クラリネットにフィル・ウッズ、ギターにジム・ホール、ベースにリチャード・デイヴィスと、なかなかメジャーなミュージシャンが名を連ねているので、このアルバムにも、その内容に期待がかかる。

のだが、これがまあ、絵に描いた様な「不発」。タイトルを読み直してみると、このアルバムって、ビル・エバンスのリーダー作では無く、ゲイリー・マクファーランドのリーダー作。しかし、これがまた、マクファーランドはアレンジ&指揮まで担当しているのだが、当のマクファーランドのヴァイヴすら、映えていない。いわんや、ビル・エバンスのピアノなぞ、付け足し程度の演奏に終始。繊細で叙情的なソロと言えなくは無いが、それはエバンスの個性では無い。良く聴かないと、ビル・エバンスのピアノであることすら判らない(笑)。

Macfarland_evans

編成はちょっと独創的なんですけどね〜。ヴィオラとチェロ二本ずつというストリングス。それに木管(フルートとクラリネット)が加わる。そこに、ジャズお馴染みの編成、リズムセクションはギター、ベース、ドラムス。ソロイストとしてヴァイブとピアノ。

しかし、マクファーランドのアレンジもどこにポイントを置いているか、良く判らない、抽象的で中途半端な内容だし、ジム・ホールのギターもなんだか付け足し程度、さすがにベースのリチャード・デイヴィスは、そこかしこで、ベースをブンブン唸らしているが、これがまた、抽象的で漂うようなストリングスの音色と、完全なアンマッチ。

さすがに、ウィズ・ストリングスもここまでくると、何が何だか判らないですね〜(笑)。もはやこれは、さすがの私もお勧めしかねますね〜。ウィズ・ストリングスのイージー・リスニング・ジャズとしても、あまりにストリングスのアレンジが抽象的で、イージー・リスニングとしてもパンチが足らない。唯一の救いは、ゲイリー・マクファーランドのヴァイヴの音色が柔らかくて美しいこと。

さすがに「これはアカン」やろうなあ。う〜ん、このアルバムは何と言って良いのか。当時、ヴァーヴ・レーベルのプロデューサーのクリード・テイラーって、こんな「変」な内容のアルバムを突如リリースしたりするんですよね。特に、ビル・エバンスのアルバムにその傾向が高く、ヴァーヴ時代のビル・エバンスのリーダー作には、「なんでやねん」とおもいきり首を捻りたくなるアルバムが幾つかあります。この『Gary Mcfarland Orchestra』も、その代表的な一枚でしょう。 
 
 
 
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2010年6月15日 (火曜日)

気分の良い朝、気分の良いジャズ

サッカーWC、日本アウェ−での初勝利。勝ち点3。良いメンバーの人選。ポジティブなプレー。良い試合でした。特に、ディフェンダー4人とアンカーに、とりわけ賞賛の拍手を送りたいと思います。

WC前のテストマッチ数試合の「体たらく」で、遂に切れた松和のマスター。「今年のWCには日本は出場できなかったと思うことにする」とまで切れたんですが、直前の2試合を見て、「もしかしたら意外とやるかも」と思い直して、昨晩のテレビ観戦。やはり勝ち点3は味わい深いものがありますね〜。

ということで、一昨日の週間予報では曇り時々雨の予報だった今日。朝から、我が千葉県北西部地方は「ピーカン」。昨晩の勝利に、実に「気分の良い朝」。こんな時は、気分の良いジャズが聴きたい。昨晩は夜中の2時過ぎまでサッカーを見ていたので、当然「寝不足」。「寝不足」の頭に良い刺激を与えてくれる、ノリの良いフュージョンが良い。

スタッフの『ライヴ・アット・モントルー1976』。もともと、スタッフは、1976年のモントルー・ジャズフェスティバル出演の為に結成されたバンドなんですが、このライブ盤は「そのものズバリ」。こんな音源が今まで倉庫に眠っていたなんて・・・。

スタッフは、1970年代後半のジャズ・フュージョンのスーパーバンド、全員が当時のトップ・スタジオ・ミュージシャンであり、粘りのある8ビートを基調としながら、ジャジーでR&B的なノリ、アドリブ展開などを含めた超絶技巧な演奏テクニックが特徴の、とにかく凄いフュージョン・バンド。メンバー構成は、ツイン・ギター、ツイン・ドラム、キーボード、ベース、といった6名のリズム・セクションのみで構成された(サックスやペットのフロント楽器がいない)グループです。
 

Stuff_montreux_2

 
凄いノリの演奏がこれでもか、これでもかと言わんばかりに続きます。凄いノリですね〜。このノリが、所謂従来のジャズが持つ、横揺れの「スインギー」なノリでは無く、8ビートを基調とした縦揺れの「デジタルチック」なノリなのが最大の特徴。その張本人が、ドラムのスティーブ・ガッドとクリストファー・パーカー。

そして、独特な粘りとグルーブを生み出す基点が、リチャード・ティーのフェンダー・ローズとベースのゴードン・エドワーズ。ガッドとティーが生み出すノリと粘りとグルーブ感をバックに、ノビノビと乾いたファンキーギターを弾きまくるコーネル・デュプリーとエリック・ゲイルのギター。この二人のギターが実にファンキーなんですね。

スタッフは、基本的にライブバンドなんで、スタジオ録音盤はちょっと「おとなし目」にまとまっているので、やはりライブ盤に期待が集まります。この『ライヴ・アット・モントルー1976』の前に、2枚のライブ盤がリリースされていますが、どちらもLP時代のライブ盤なので、演奏がフェードアウトされていたり、曲数が絞られていたりで、なかなか満足できる内容ではありませんでしたが、この『ライヴ・アット・モントルー1976』で溜飲が下がりました。しかし、もっとないですかね〜、スタッフの未発表音源。

サッカーWC、日本アウェ−での初勝利の朝。気分の良い朝、気分の良いジャズ。今朝は、スタッフの『ライヴ・アット・モントルー1976』が「寝不足」の頭に良い刺激を与えてくれて、実に気分の良い朝。そして、改めて、また昨晩の試合の余韻に浸るのだ(笑)。 
 
 
 
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2010年6月14日 (月曜日)

雨の朝に流したいジャズ・ピアノ

今日は朝から「まとまった雨」の我が千葉県北西部地方。いや〜良く降りますね〜。我が千葉県北西部地方も、ほどなく梅雨入りだろう。

僕は雨が嫌いである。雨の日には高校時代から、ろくな思い出が無い。う〜ん、特に高校時代はいかんなあ(笑)。まあ、もともと僕は「晴れ男」なので、雨は鬼門。でも、雨も降らないと、農作物に悪い影響を与えるし、飲み水の確保もままならなくなる。雨は大切なんですよね。

そんな雨の朝。せっかくの雨なので、空騒ぎ的なジャズを流して不自然に明るく振る舞うよりは、ちょっと「しっくりした」趣味の良い、心地良く聴き耳を立てながら雨の雰囲気を楽しめる、しっとりとしたジャズが良い。

そんな気持ちの時に、ちょいと聴くジャズ盤の一枚が、Bill Evans(ビル・エバンス)の『Bill Evans Trio with Symphony Orchestra』(写真左)。ビル・エバンスのピアノ・トリオとストリングスを配したオーケストラとの共演作。クラウス・オガーマン編曲、指揮によるオーケストラとの共演盤です。クラシックの名曲をモチーフにした異色作。

クラウス・オガーマンの編曲が、なかなかの内容で、非常に良くまとまったピアノ・トリオとオーケストラとの共演作に仕上がっています。ピアノ・トリオは、別にビル・エバンスのトリオでなければ、このオガーマンの編曲は成立しなかった、という訳では無いところが、このアルバムの面白いところ。

Bill_evans_trio_with_symphony_orche

しかし、そこは天下のビル・エバンス、クラウス・オガーマンの編曲に、ピッタリ合ったピアノを聴かせてくれる。さすが、隠れ「伴奏上手」。自らの個性を活かしつつ、しっかりとクラウス・オガーマンの編曲に合わせてみせる。

収録されたどの曲も実に良い雰囲気です。エバンス・トリオとシンフォニー・オーケストラが一緒にやったというだけのアルバム、と言われることもありますが、はい、そうです(笑)。エバンス・トリオとシンフォニー・オーケストラがバラバラに入っている雰囲気もあるんですが、この別々のところが良いんですね。エバンス・トリオの部分とシンフォニー・オーケストラの部分、それぞれで楽しむ。それが、微妙にシンクロしていて、意外と味わい深い。

そして、このアルバムの雰囲気が、この梅雨時の雨の日の朝に、午前中の静かな時間に、とてもあうんですね。そぼ降る雨の日にシンフォニー・オーケストラの音があう。そして、エバンス・トリオの音もシッカリとそぼ降る雨の日にピッタリ。

時には、ジャズとは何か、という難しいことは抜きにして、その時、その場所、その雰囲気にピッタリのジャズを聴く、というのも、しっかりとしたジャズの聴き方、音楽の聴き方でしょう。このビル・エバンスの『Bill Evans Trio with Symphony Orchestra』は、この梅雨の季節、雨の日の朝、雨の日の静かな午前中にピッタリなアルバムとして、長年、この季節の愛聴盤になっています。  
 
 
 
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2010年6月13日 (日曜日)

寝不足ノンビリ日曜日

今回のサッカー南アW杯は、試合開始時間が日本時間で言うと、20時30分、23時00分、27時30分(翌日の3時30分)。よって、頭の2試合は時間的に十分観戦できるということ。でも、23時キックオフの試合が終了するのは、25時(翌日の夜中の1時)になるので、ちょっと寝不足になる。

昨晩もそうだった。アルゼンチン対ナイジェリア戦。今回のW杯で初めて、やっと両チームの準備状態が良く、締まった試合になった。あっと言う間の2時間。就寝したのが夜中の1時過ぎ。そして、夏の朝は日差しがきつく、室温も早く上がる。今日の起床は7時。ちょっと寝不足ですね。

今日は梅雨入り前の最後の晴れの一日。ちょっと強く吹く南風は、まだまだ涼しさを運んでくる。でも、その風の中に含まれる湿気は、既に梅雨の到来を告げているかのよう。それでも、昼下がり、涼しさを吹くんだ風は実に心地良い気温となって、寝不足の身体を直撃する。睡魔が襲ってきて、当然のことの様に「昼寝」。良い感じで昼寝の出来る6月である。

さて、そんな「寝不足ノンビリ」な日曜日である。こんな長閑な初夏の日曜日。BGMは、メル・トーメ(Mel Torme)の『Songs of New York』(写真左)。同じ内容で、『Sunday in New York and Other Songs About New York』(写真右)としてもリリースされている。紛らわしいのだが、収録曲を眺めると全く同じなので、この2枚は同じ内容の音源を、ジャケット+タイトル違いでリリースされただけだろう。日本では「ニューヨークの休日」というタイトルがついています。

収録された曲名を見渡せば、このアルバムが、ニューヨークにまつわるボーカル曲を集めた、ニューヨーカー、及びニューユークが好きな旅人にとってはたまらない内容になっていることに気が付くだろう。メル・トーメの甘く明るく力強いボーカルが歌い挙げていく、ニューヨークの日曜日。ノンビリした休日を過ごすのに相応しい雰囲気を持った「ボーカルもの」です。

1. Sunday in New York
2. Autumn in New York
3. Lullaby of Birdland
4. Broadway
5. Brooklyn Bridge
6. Let Me Off Uptown
7. 42nd Street
8. Sidewalks of New York
9. Harlem Nocturne
10. New York, New York
11. There's a Broken Heart for Every Light on Broadway
12. Manhattan
13. My Time of Day

Songs_of_ny

冒頭の「Sunday in New York」が、このアルバムは「心地良く、リラックスできる」内容であることを約束してくれる。メル・トーメの柔らかくて力強い、正統派ボーカル。実に明るく魅惑的なボーカルで、この「Sunday in New York」が歌い挙げられていく。

New York on Sunday,
Big City taking a nap!
Slow down, it's Sunday!
Life's a ball, let it fall in your lap!
If you've got troubles,
Just take them out for a walk.
They'll burst like bubbles
In the fun of a Sunday In New York! 
 
日曜日のニューヨーク。
大きな街も、今日はお昼寝をしている。
日曜だからゆっくり過ごそう。
人生はボールのようなものだから。
もし何か大変なことがあっても、
さっさと取り除いてしまえば良い。
日曜日のこの街に溢れる楽しいことの中では、
そんなの「泡」みたいなものさ!
 
メル・トーメのボーカルが映える、なかなかの編曲と伴奏が、このアルバムの内容を更に引き締めている。録音はロサンゼルスで行われ、編曲はジョニー・ウィリアムス、ディック・ハザード、ショーティー・ロジャースのそれぞれが担当しているみたいです(原情報が英語なので・・・)。伴奏のバンドのメンバーは判りませんでしたが、良い音を出していて、良い雰囲気の迫力を出しています。

他の曲もニューヨークにまつわるものばかりで、ニューヨーク好きの松和のマスターにとっては、聴いていて楽しいこと楽しいこと。特に2曲目の「Autumn in New York」、続く3曲目の「Lullaby of Birdland」、そして、9曲目「Harlem Nocturne」、10曲目「New York, New York」は、とりわけ秀逸です。

メル・トーメの『Songs of New York』を聴きながら、この初夏の昼下がり、ノンビリ昼寝。サッカーW杯での寝不足をここで解消。ル・トーメの柔らかくて力強い、正統派ボーカル。ノンビリした休日を過ごすのに相応しい雰囲気を持った「ボーカルもの」の優れた企画と実に明るく魅惑的なボーカルに「癒され包まれ」、この初夏の昼下がり、ノンビリと「お昼寝の時間」が過ぎていくのでした(笑)。
 
 
 
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2010年6月12日 (土曜日)

興奮静めにリラックス純ジャズ

いよいよサッカーW杯が開幕した。初のアフリカ大陸での開催。独特の雰囲気の中、試合が進みつつある。松和のマスターとしても、iPhone の呼び出し音も「FIFA Anthem」にセットし、携帯が鳴る度、朝、目覚めのアラームの折、「FIFA Anthem」が鳴り響いている(笑)。

いや〜、4年に一度のサッカーの祭典、興奮しますね〜。まあ、その間に欧州選手権があって、最近はテレビで、この欧州選手権も放映されるので、以前と比べて、4年に一度、サッカーW杯の興奮の度合いは、ちょっと静まったんだが、でも、やっぱり興奮するなあ。恐らく、この1ヶ月間は、松和のマスターは仕事で使いものにならないでしょう(爆笑)。

そんな、ただでさえ興奮状態の日々。その興奮を増幅するジャズを聴いてどうする。1ヶ月もたない状態で、決勝トーナメント準決勝あたりで疲れ果ててしまうのは困る。この興奮をやんわり静め、適度にリラックス出来、適度にテンションを維持することをサポートするような、適度なテンションと適度なリラックス度を持った純ジャズ佳作が、今の僕には必要である。

そんな。ややこしいニーズに応えてくれる一枚が、Ron Carter名義の『Etudes』(写真左)。現代Jazzベースの至宝、Ron Carterの1982年発表のリーダー作である。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Tony Williams (ds), Art Farmer (Flh), Bill Evans (ts,ss)。ロン、トニー、ファーマーのベテラン陣に、マイルス組の若手テナー奏者のビル・エバンスが参加した形。ちなみに、サックスのビル・エバンスは、ジャズ・ピアノの至宝、ビル・エバンスと同姓同名。でも、血縁関係は全く無い。

1曲目の「Last Resort」を聴けば、このアルバムが、適度なテンションと適度なリラックス度を持った純ジャズ佳作あることが理解出来る。まず、ベテラン、フリューゲルホーン奏者のアート・ファーマーが好調。ファーマー独特の柔らかでしなやかなフリューゲルホーンのインプロビゼーションが心地良い。そして、サックスのビル・エバンスが意外と健闘している。決して、ベテランの職人芸的なバッキングに怯むことなく、朗々とサックスを吹き上げていくビル・エバンス。マイルス組若手の面目躍如。
 

Roncarter_etudes

 
2曲目「Bottoms Up」は美しいバラード調の演奏。やはり、ファーマーのミュートがかかったフリューゲルホーンが絶好調。そして、やはり、ビル・エバンスのサックスが大健闘。ふふっ、リーダーのロンとドラムのトニーは、このベテラン+若手のフロントをしっかり支えるべく、バックに回って、とにかく、ビートとリズムを維持しまくっているが、これが、このアルバムの成功要因だろうと思います。

ロンとトニーは、その担当楽器の特性を無視して、1970年代は、フロント楽器の前へ前へ出よう出ようとしていました。特に、ロンなどは、アコースティック・ベースの電気アタッチメントを付けて、電気的に音を増幅してまで、前へ出ようとしていた状況には、当時、ジャズ者初心者の僕としても、なんだか嫌〜な気分にさせらることが「しばしば」でした。当時、ジャズ界の人気者、中堅ミュージシャンだった二人。目立ちたい、という気持ちは判るんですけどね〜。

とにかく、リーダーのロンとドラムのトニーは、このベテラン+若手のフロントをしっかり支えるべく、バックに回って、とにかく、ビートとリズムを維持しまくっていることで、この『Etudes』は、適度なテンションと適度なリラックス度を持った純ジャズ佳作に仕上がっている。

いやはや、ジャズとは難しいものですね〜。こういうミュージシャンの気持ちとアルバムの出来が裏腹なところが、実にジャズらしい。いわゆる「ロックとは違う」、複雑で先の読めない「意外性」がジャズの真骨頂なのですが、この一聴して「温和でリラックスした」絵に描いた様な教科書的な純ジャズ佳作にも、この「意外性」が潜んでいるんですね。ジャズって奥が深い(笑)。

興奮静めにリラックス純ジャズ。そんな時は、適度なテンションと適度なリラックス度を持った純ジャズ佳作が一番。今回ご紹介した『Etudes』も、そんな純ジャズ佳作の一枚。このアルバムを聴きながら、ヒートアップしそうな心を静めつつ、今日もワクワクしながら、W杯の試合をテレビ観戦するのだ (^_^)v。  
  
 
 
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2010年6月11日 (金曜日)

Good News from Africa

さあ、W杯である。南アフリカ大会。1970年、メキシコ大会のベッケン・バウワーに感動してから、長年、W杯を見てきた。意外とオールドファンの松和のマスターである。

さて、今回は南アフリカ大会。南アフリカ出身のメジャーなジャズ・ミュージシャンはいるのか? これがいるんですよね。1934年10月9日、南アフリカのケープタウンに生まれたダラー・ブランド(Dollar Brand)。イスラム教に改宗して、イスラム名は、アヴドゥラー・イブラヒム(Abdullah Ibrahim)。

ジャズ・アルバムの紹介本に、よく登場するのが、ソロ・ピアノの名盤、ダラー・ブランドの『アフリカン・ピアノ』。実は、このアルバムばかりが紹介されるので、ダラー・ブランドって「一発屋」と誤解しているジャズ者の方もいるが、それは「違います」。現在でも、バリバリ現役のベテラン・ジャズ・ピアニストとして活躍しています。

『アフリカン・ピアノ』は、ECMレーベルからのリリースであったが、ダラー・ブランド=アヴドゥラー・イブラヒムの傑作は、1970年代のEnja(エンヤ)レーベルに存在する。この事実は、何故か日本のジャズ・シーンでは正しく伝わること無く、ECMの『アフリカン・ピアノ』だけが紹介される不思議な事実。意外と、日本のプロのジャズ者の方々は、ジャズ者としての良心に欠けるのかもしれない。

今回、ご紹介する『Good News from Africa』は、ダラー・ブランド=アヴドゥラー・イブラヒムの代表盤である。Johnny Dyaniというベーシストとのデュオなのだが、ドラムの代わりに、様々な種類のパーカッションが効果的で、どうしてどうして、ダラー・ブランド=アヴドゥラー・イブラヒムの個性が最大限に発揮された、実に聴き応えのあるアルバムである。
 

Goodnews_fromaflica

 
冒頭の「Ntsikana's Bell」が、このアルバムの全てを物語る。いきなり出てくる、アフリカ民謡の様な、土着感溢れる、アーシーなスキャットが、もう既にドップリと「アフリカ」である。アフリカは黒人のルーツ。ジャズは黒人の音楽。アフリカの土着音楽を効果的に取り入れながら、続いて出てくるダラー・ブランド=アヴドゥラー・イブラヒムのアーシーでフォーキーなピアノ・ソロ。雰囲気は「アフリカ」。アフリカのフォーキーな雰囲気、アーシーな左手のビート。そして、演奏のボトムをしっかりと支え、ピアノに絡むベース。

アフリカの民俗音楽の要素を巧みに取り込みながら、左手の低音をメジャーな響きで活かしながら、ピアノの右手が実にアーシーでフォーキーな旋律を紡ぎ上げていく。アフリカの音を基軸にしながら、上質のジャズ・ピアノ+ベースのデュオを歌い上げていく。収録されているどの曲にもアフリカの音の香りがプンプンと漂っている。そして、ガーン、ゴーンと強烈な左手のアーシーなビート。実にアフリカンな展開に自然と心がポジティブに揺れ動く。

特に、このポジティブさが、このアルバムを傑作、名盤の類に昇華させている。演奏はシンプルで、何も難しいことをしていないけど、左手の強烈なビートと右手のアーシーでフォーキーな旋律。展開が実にオープンで、正の方向に拡がっていて、なんだか、そこはかとなく「幸福感」を感じることの出来る、アフリカンな展開。これぞ、アフリカン・ジャズってな雰囲気に、本当に心から音が素直に入ってくる。

しかもタイトルが『Good News from Africa』。良いタイトルではないですか。アルバムリリースは、1973年。アフリカ独立ムーブメント真っ只中。『Good News from Africa』のタイトルに、アフリカ出身のミュージシャンの願い、想いを強烈に感じる事ができる。ジャケット・デザインもなかなかの印象。良いアルバムです。

強盗、盗難のニュースばかりが入ってくる、W杯開催国である南アフリカ。悪いニュースばかりでは淋しすぎる。今一度、南アフリカには頑張って欲しい。そして、『Good News from Africa』を聴きながら、「Good News from Africa」を心待ちにしている松和のマスターである。
 
 
 
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2010年6月10日 (木曜日)

この売り方はないやろ〜、と思う

昨日、マイルス・デイヴィスの『'Round About Midnight』をご紹介した。この『'Round About Midnight』は、さすがに名盤なんで、かなりの回数、再発されている。よって、ネットショップを覗いてみると、輸入盤を含めて、今でも数種類の再発盤が「在庫あり」の状態で並んでいる。

この状態だと、ジャズ者初心者の方々って、どのCDを購入して良いやら、迷いに迷うでしょうね。一番安いやつ、と思ってみても、安かろう悪かろうという言葉が頭をよぎるし、といって、なぜか2枚組の「レガシー・エディション」って、なぜ2枚組なのか判らないし、なんだか割高っぽいし・・・。

このレガシー・エディション(日本盤はなぜか「スペシャル・エディション」と銘打たれている・笑)ってヤツが曲者中の曲者でして、このマイルス・デイヴィスの『'Round About Midnight』は、CD2枚組、収録曲は以下の通り。

Disc1
1. 'Round Midnight
2. Ah-Leu-Cha
3. All of You
4. Bye Bye Blackbird
5. Tadd's Delight
6. Dear Old Stockholm
7. Two Bass Hit
8. Little Melonae
9. Budo
10. Sweet Sue, Just You

1957年3月リリース当時、アルバムに正式に収録されていた曲は、Disc 1の1曲目〜6曲目まで。ちなみに、LPのA面は1曲〜3曲目、B面は4曲目〜6曲目。Disc 1の7曲目~10曲目は、当時、アルバム収録を見送られたボーナストラック。つまり、7曲目〜10曲目は、正式盤の『'Round About Midnight』には収録されていなかったんですね。ジャズ者ベテランは、この正式盤の『'Round About Midnight』の部分は、ほとんどの方が既に所有しておられると思います。

Round_midnight_legacy

Disc 2 (Live)
1. 'Round Midnight
2. Introduction
3. Chance It (aka Max Is Making Wax)
4. Walkin'
5. Gene Norman & Miles Davis
6. It Never Entered My Mind
7. Woody 'N You
8. Salt Peanuts
9. Theme

Disc 2の1曲目は、1955年7月17日のニューポート・ジャズ・フェスティバルのライブ。マイルスが、麻薬禍からの復活の狼煙を上げた、伝説のライブ。ここでは、マイルスは、ミュートでは無く、オープンでペットを吹いています。これもなかなか味わいがあって良いですけど・・・。

ちなみに、この1曲目の「'Round Midnight」は、メンバーが凄くて、マイルス以外のメンバーが、ズート・シムズ、ジェリー・マリガン、セロニアス・モンク、パーシー・ヒース、コニー・ケイと豪華絢爛。ちなみに司会がデューク・エリントンだそうです。ジャズ者マニアには垂涎の音源ですね。

Disc 2の2曲目~9曲目は、1956年2月18日のパサデナでのライブ。8曲いずれも未発表トラック。このライブを聴くと、演奏内容もまずまず整っていて、コンサート・ライブとしては、十分に聴けます。マイルスはもとより、メンバー全員の演奏能力が高いことが良く判り、プレスティッジのマラソン・セッションが、スタジオ・ライブの、ほとんど一発録りだったことも頷けます。

でも、このDisc 1のボーナストラックとDisc 2のライブ音源は、出来としては中程度のもので、ジャズ者初心者の方々、ジャズ者中級者でもマイルスに特別の思い入れの無い方々には、あまりお勧めするものでは無いと僕は思います。マイルス者の方々にはマスト・アイテム、コレクションの対象にはなると思いますが・・・。

特に、Disc 2のライブ音源は、オリジナル盤とは別に、「バラ」で発売するべきものだと思います。Columbia/Legacyは、ちょっと商売っ気が過ぎますね。US盤では1500円程度なので、まだ許せる気がしますが、日本盤では3500円程度もして、日本のレコード会社は、更に商売っ気が過ぎます。ちょっと酷いですね。この価格設定は・・・。この売り方はないやろ〜、と思います。

マイルス・デイヴィスの『'Round About Midnight』は、通常盤が一番。US盤もライナーノーツ(解説シート)が無いだけで、音は全く同じですから、手軽にマイルス・デイヴィスの『'Round About Midnight』を楽しむには、US盤が良いですね。1000円以下で手に入るみたいなので、いや〜良い時代になったものです(笑)。  
 
 
 
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2010年6月 9日 (水曜日)

昔々、僕の「初マイルス」である

マイルス・デイヴィスは、僕の最高のお気に入り。ジャズ者初心者駆け出しの頃から、マイルスだけは別格であった。よって、ジャズ者を志した、駆け出しの初心者の頃、早々にマイルスのアルバムに手を出している。

一番最初の手を出したマイルスは、実は『Circle in the Round』というLP2枚組の未発表曲集。当時、駆け出し初心者の僕は、当然、未発表曲集がなんであるか、全く判らない。当然、一通り聴いても、さっぱり「判らない」(笑)。これはいかん、とジャズ盤紹介本を買いに走り、どうも、この『Circle in the Round』は推薦盤でないことが、なんとなく理解する(アルバム名が見当たらなかっただけだけど・笑)。

このままだとマイルスが嫌いになりそうなので、早々に、ジャズ盤紹介本を参考に、アルバム・ジャケットのイメージだけで選んだアルバムが『'Round About Midnight』(写真左)。直感的に、このアルバム・ジャケットが格好良いと感じ、即買いした。マイルスの正式盤としては、僕の「初マイルス」である。

このアルバムについては、もう色々なところで語られ尽くされているので、ここでは細かくは言わない。一言で言うと、冒頭、セロニアス・モンクの名曲であり、タイトル曲である「'Round About Midnight」に「とどめ」を刺す。

前奏でのマイルスの切り裂くような、鋭くエッジの立ったミュート・トランペット。最初の音から、ピーンとテンションが張る。都会の深夜の静寂に、切り込むような鋭いマイルスのミュート。ハードボイルドである。そして、ファンファーレの様なハーモニーの後、滑るように出てくるコルトレーンのテナー。実にスリリングである。音の魔術師、ギル・エバンスのアレンジとのことだが、これだけ完璧に演奏されると、いや〜素晴らしい。

Round_about_midnight

アルバム全体を見渡すと、プレスティッジ4部作とは違って、しっかりとリハーサルを積んだ様子が良く判る演奏内容である。全編に渡って、コルトレーンが吹きまくっているが、なかなかの健闘。プレスティッジ4部作では、ところどころ、ズッコケているコルトレーンが、このアルバムでは、なんとか持ちこたえている。グループサウンズとしても良くまとまっており、やはり、大手レーベル、コロンビアからのリリース、マイルスをはじめ、メンバー全員、気合いが入っている。

吹きまくるコルトレーンと、少ない音、選ばれた音、比較的短いフレーズを「ププッ」と吹いて、瞬時に「きめる」マイルスとの対比。圧倒的にマイルスの存在感の方が上回る。ジャズのインプロビゼーションは、吹きまくるだけでは無い、音数の多さでは無い、ということを身を持って示してくれる、我らが帝王マイルス。吹きまくるビ・バップはもう古い、とバッサリ切り捨て、新しい響きのハードバップを提示する。ジャズ界のリーダー、マイルスの面目躍如である。

コロコロと右手のシングルトーンで攻めるガーランドのピアノも美しく、シンプルなビートのみで、ガッチリとマイルス御大をサポートし、ついでにコルトレーンを鼓舞する、フィリージョーのドラムとチェンバースのベース。吹きまくるコルトレーン以外は、皆、シンプル。音数少なく、シンプルな展開で、表現したいことを最大限に表現する。実に「クール」なハードバップである。

この『'Round About Midnight』の音は、当時のジャズ界の中で、傑出したハードバップ・ジャズである。圧倒的に素晴らしい、孤高のハードバップ。他のハードバップ演奏とは、明らかに一線を画した、ハードボイルドで、ストイックな演奏。

このアルバム、マイルスの諸作の中で、かなりハードボイルドで、ストイックな内容なので、ジャズ者初心者駆け出しの方には、ちょっと早いかな、とも思います。また、お気に入りの女性の前で、このアルバムをかけてはいけません。あまりにハードボイルドで、ストイックな内容で、ロマンチックな面は皆無。そして、マイルスのミュートは切れ味抜群。どう考えても、女性と二人でシッポリと聴くアルバムではありません(笑)。

夜に男一人で、バーボンのロックを傾けながら、マイルスの切り裂くような、鋭くエッジの立ったミュート・トランペットに切られまくられながら、ストイックにハードボイルドにジャズを聴く、そんなアルバムですね。 
 
 
 
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2010年6月 8日 (火曜日)

颯爽と疾走する「バリサク」

ジャズのアルバム紹介本などで見たことが無いアルバムでも、聴いて見ると「目から鱗が落ちる」、意外や意外、出来の素晴らしいアルバムに偶然であったりすることがある。ジャズ・アルバムのコレクションの醍醐味である。しかも、その確率が他のジャンルより高いのが「ジャズ」。

バリトン・サックス(略称「バリサク」)の名手に、ペッパー・アダムス(Pepper Adams)がいる。もともと、バリトン・サックスの音が大好きで、ペッパー・アダムスについては、ジャズ者初心者の頃から、ブルーノートの諸作にサイドメンとして参加しているアルバムを聴くのが好きだった。もちろん、当時はジャズ喫茶でですよ。

そんなペッパー・アダムスのアルバム紹介にも、ほとんど、その名前が挙がることのない「隠れ佳作」がある。そのアルバムは『Urban Dreams』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Billy Hart (ds), George Mraz (b), Jimmy Rowles(p), Pepper Adams(bs)。1981年のリリースである。

改めて、パーソネルを見渡すと、なかなか渋い布陣である。このメンバーが本気でかかれば、良い内容のアルバムになって当たり前、という感じの布陣。パーソネルを見渡すと期待が高まるのだが、アルバム・ジャケットを見ると、一気に不安になる。なんなん、このジャケット・デザインは(笑)。どう見ても、ジャズのアルバムとは思えん(笑)。実に劣悪なジャケット・デザインに思わず尻込みする。

が、収録された曲名を並べてみて、また前向きに思い直す(笑)。

1. Dexter Rides Again
2. Urban Dreams
3. Three Little Words
4. Time on My Hands
5. Pent Up House
6. Trentino

1曲目の「Dexter Rides Again」の存在が目を惹く。1981年のリリースで、この「Dexter Rides Again」のような、完全なビ・バップ・チューンを冒頭に持ってくるなんて・・・。しかも、ドラムはビリー・ハート、ベースはジョージ・ムラーツ、ピアノはジミー・ロウルズ。誰もが当時、実績もあり、テクニック優秀で、歌心豊かな、職人的な中堅ミュージシャンばかり。

Pepperadams_urbandreams

しかし、である。このアルバムがリリースされたのは1981年。フュージョン・ブームの晩年期。メインストリーム・ジャズ復古の時代は、もう少し先である。この頃は、やっとウィントン・マルサリスが注目され出した頃。なんとか、メインストリーム・ジャズもやっぱり良いよね、って雰囲気になり始めた頃。そんな時代に、ビ・バップ・チューンをバリバリなバップ風に演奏する輩はいるのか、という疑問も心をよぎる(笑)。

で、聴いて見ると、その内容にビックリ。颯爽と疾走するバリサク。それをガッチリ支援する職人芸的リズム・セクション。超絶技巧、疾走感、爽快感抜群なビ・バップの要素を全面に押し出して、ペッパー・アダムスのバリサクが疾走する。こんな速吹きバリサクをあまり聴いたことが無い。おそらく、この時期、ペッパー・アダムスは、年齢的にも絶好調だったのだろう。軽々とバリサクとしてはかなり高速なパッセージを、ガンガンに吹きまくる。うへ〜、と思わず感嘆の溜息が漏れる。

2曲目はブルージーなスロー・バラード的な演奏だが、ペッパー・アダムスのバリサクがブリブリッと低音を響かせながら、情感豊かに悠然と吹きまくっていく。これって、バリサクとしては、とっても凄い演奏なんじゃないだろうか。凄い迫力、凄いテクニックである。

3曲目の「Three Little Words」は、またまた颯爽と疾走するバリサク。4曲目の「Time on My Hands」はスロー・バラード調。5曲目の「Pent Up House」は、またまた颯爽と疾走するバリサク。そして、ラストの「Trentino」は、ミッド・テンポの実に味わいのあるバリサクを味わうことが出来る。そうそう、ペッパー・アダムスをガッチリ支援する職人芸的リズム・セクションは、どの曲でも大活躍である。

ジャケット・デザインは良くないですが、このアルバムって、バリサクの名手、ペッパー・アダムスの傑作だと思います。とにかく、颯爽と疾走するペッパー・アダムスの「バリサク」が凄い。高速パッセージ吹きまくりのペッパー・アダムスのバリサクは驚異的です。バリサクって、こんなに速いパッセージを長々と吹きまくることができるんだ〜、とただただ唖然と感心するばかりです。

アルバム紹介本などに、その名前が挙がることのない「隠れ佳作」。それを見つけることもジャズ・アルバムのコレクションの醍醐味ですが、それを聴いて、ただただ唖然とし、感心し、感動できるのは、ジャズ者としての醍醐味ですね。こんな「隠れ佳作」「隠れ傑作」に、偶然出会ったりすることが多々あるから、ジャズって面白い、ジャズってやめられない(笑)。 
 
 
 
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2010年6月 7日 (月曜日)

ジャズも色々あって面白い

ジャズ者をやって来て、早30年以上が経過している。子供の頃から、いくつかの楽器を演奏してきたこともあって、ジャズのアルバムを演奏する側から聴くことも多々ある。

もともと、ジャズはこうでなければならない、って、素人的な思い込みや変な思い入れも無いので、聴いていて感動したり、聴いていて気持ちが良かったり、聴いていてググッと心が動くのが、僕にとっての「良いジャズ」と思って長年ジャズと付き合ってきた。

だから、スムース・ジャズが嫌いだとか、フュージョンは認めないとか、ハードバップしか認めないとか、小難しいことは、今までこれっぽっちも思ったことが無い。良いものは良い、悪いものは悪い。でも、ミュージシャンが全力を傾けて生み出した音楽は、どれもが尊敬に値する。アマチュアである我々が簡単に悪く批判できるものでは無い。

なので、これは良いなあ、と思ったら、結構、ヘビーローテーションになるアルバムが多々ある。ジャズ者ベテラン仲間から、ちょっと節操がないのでは、と眉をひそめられることもあるが、良いものは良い。聴いていてググッと心が動くんだから仕方が無い(笑)。

このアルバムもそんな一枚。Kenny Garrett(ケニー・ギャレット)の『Happy People』(写真左)。2001年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Garrett (ss, as); Jean Norris (vo); Randy Razz (g); Michael "Patches" Stewart (tp, flh); Vernell Brown, Jr. (p); Bobby Hutcherson (vib); Charnett Moffett (b); Marcus Miller (bass g); Chris 'Daddy' Dave, Marcus Baylor (ds)。なかなかの陣容。

アルバム全体の印象は、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な感じである。女性の軽いファンキーなスキャットなども織り交ぜて、エレクトリック・ファンクなフュージョン的雰囲気も見え隠れして、聴いていて心地良い、「今時のジャズ」という感じが実に良い。
 

Kennygarrett_happypeople

 
さすが、マイルス学校の門下生の一人だけあって、どの曲の演奏にも、ビートとリズムをしっかりと押さえて、大事にしているところが、ぱっと一聴すると、コンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような耳心地の良いこのアルバムを、意外と聴き応えのあるものにしている。

10曲目の「Asian Medley - Akatonbo/Arirang/Tsubasa wo Kudasai」が面白い。「アジアン・メドレー」と題して、日本の童謡「赤とんぼ」、韓国の民謡「アリラン」、そして、1970年代初めの永遠のフォークソングの名曲「翼をください」のメドレーを、ケニーのアルトサックスをメインに吹き継がれる。

う〜ん、「赤とんぼ」と「アリラン」が続きで並存しているところが面白い。米国人、ケニー・ギャレットならではの感覚だろう。でも、これがなかなか聴かせてくれるので、ジャズって隅に置けない。新ジャズ・スタンダードという観点では、まだまだジャズ化に相応しい楽曲が世界に沢山転がっている。

そして、11曲目の「Brother B. Harper」は、10曲目までのコンテンポラリーなジャズとスムース・ジャズの間を取ったような、耳心地の良い反面、硬派な「純ジャズ」な面がしっかり顔を出す、という感じの、上手い具合に「ハイブリッド」な演奏が一変、ハードな純ジャズに変身。

フリーキーに吹き倒すケニー・ギャレット。やはり、ケニー・ギャレットは素性が確かなアルト・サックス奏者。こうした純ジャズ、コンテンポラリーな「硬派ジャズ」も十分に「イケる」。そして、最後の方で「さくらさくら」の主旋律フレーズを引用しているところがご愛嬌(笑)。でも、このラスト曲でのガッツのあるブロウは結構聴き応えあり、です。

小川隆夫さんのジャズ・ミュージシャン紹介本を読むと、ケニー・ギャレットは大の親日家とのこと。「赤とんぼ」「翼をください」「さくらさくら」をジャズ演奏ネタにするところなんざぁ、親日家ジャズメンの面目躍如である。 
 
 
 
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2010年6月 6日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・15

実に爽やかな初夏の一日。今日の気候こそが「初夏」と叫びたい位の「初夏」のイメージにピッタリの一日。日差しは強く、日向を歩けば暑い。でも、日陰に入ると、南風は乾いていて涼しい。う〜ん、子供の頃の「初夏」って感じの今年の6月上旬。今年は天候不順とか言われているが、今日の気候を振り返ると、不謹慎にも「そうでもないのでは」なんて思ってしまう。

さて、今日は「ピアノ・トリオの代表的名盤」の第15回目。今日は、ちょっと新しい、現在のピアノ・トリオにつながる音をご紹介します。Chick Corea(チック・コリア)の『Chick Corea Akoustic Band Alive』(写真左)。1991年のリリース。パーソネルは、Chick Corea (p) John Patitucci (b) Dave Weckl (ds)。

1991年のリリースなので、1970年代のフュージョン時代、そして、1980年代の純ジャズ復古の時代、そんなジャズ激動の時代を経験して来た、ジャズ界のピアノの巨匠チック・コリアと、そんなジャズ激動の時代に台頭してきた若手有望ミュージシャン2人の組合せ。これが、まあ、1940年代からジャズ界に存在している「ピアノ・トリオ」というフォーマットに対して、新しい雰囲気を提供してくれている。そんなところが「聴きどころ」である。

1991年の録音、しかも、チック以外の若手二人は、1980年代、ジャズ激動の時代に台頭してきたミュージシャンである。1950年代から1960年代のハードバップ全盛時代、ファンキー・ジャズ全盛時代のサウンド、ビート、リズムがでないのは当たり前と言えば当たり前。それでも、この「Chick Corea Akoustic Band」を評して、4ビートで無いだの、スイングしていないだの、アナログ的な音でないだの、なんだか旧来からのベテランジャズ者のアマチュア評論家の方が、なんだかんだ、とウルサイのだが、それについては、今回、無視させて頂く。

このバンドはスイングしていない、というのは見当違いも甚だしいのだが、このChick Corea Akoustic Bandは、しっかりとオフビートした、スピード感あるビートを供給しているので、うっかり聴いていると、そのスピード感についていけないと、ビートを見失う恐れがある。1970年代ロック、フュージョンを体験的に経験してきたジャズ者の方々は、決して、そのスピード感ゆえに、ビートを見失うことは無いが、1960年代までのジャズのみを経験して、そこで止まっているベテランジャズ者の方は、このChick Corea Akoustic Bandの疾走感溢れるビートに置いていかれる危険性が高い。

Dave Wecklのドラミングは、1960年代後半から現れ出でたニュータイプのドラマー、ジャック・デジョネット、トニー・ウイリアムス、そして、スティーブ・ガッドなどと同じ、メリハリの効いた芸人的な大向こうを張った、絵に描いた様な意図的なスイング感を抑制し、疾走感溢れるシンプルなオフビートを供給するだけで、他の楽器に更なる自由なインプロビゼーションのスペースを与える、フュージョン畑、ロック畑から吸収した要素を上手くジャズに反映させた、従来のジャズ・ドラミングと一線を画す、新しいビートの担い手としての「新しいタイプ」のドラミングです。
 

Cc_akousticband_alive

 
このドラミングを「スイングしていない」の一言でバッサリ切り捨てるアマチュア評論家の人もいますが、それは明らかに個人的な趣味と個人的な感覚を最優先した、無責任な評論なので、ジャズ者初心者の方々は決して惑わされないようにね。

1980年代以降、純ジャズ復古の時代以降、新しく出てきたピアノ・トリオのアプローチの先進的な「プロトタイプ」的な演奏がここにシッカリと詰まっています。さすが、時代の音の先駆者、牽引者の一人、チック・コリアの面目躍如である。

1曲目の「On Green Dolphin Street」を聴いて欲しい。美しいピアノの前奏を聴けば、しっかりと「これはチックのピアノである」ということが明確。実に個性あるピアノ。そして、超有名なスタンダード・ナンバー「On Green Dolphin Street」のテーマが奏でられ、一気に視界が広がるような、オープンな展開が素晴らしい。この「On Green Dolphin Street」は、僕の大のお気に入りなスタンダード。こんなに美しく硬派に、テンション張って、テクニック高く、歌心を程良くコントロールした、シンプルな「On Green Dolphin Street」は、なかなか聴けるものでは無い。

チックのピアノ・トリオは、ソロ・インプロビゼーションにふんだんにスペースを与えることが特徴だが、ここでもソロにふんだんにスペースを与えている。そんな理想的な環境の中、原曲のイメージを残しながら、3人のインタープレイが非常にスリリング。疾走感溢れるスリリングなインタープレイ。その確かで卓越したテクニックと才能として身についた歌心。いやはや、実に先進的で美しいインタープレイの応酬である。

2曲目の「Now Deep Is The Ocean?」以降、チックの人気曲「Humpty Dumpty」が実に美しく、硬派にジャズを奏で、エリントン・ナンバーの「Sophisticated Lady」のアレンジの素晴らしさに舌を巻き、5曲目の「U.M.M.G.」の疾走感溢れる硬質硬派な演奏にのけぞり、「'Round Midnight」「Hackensack」で、もはやノックアウト状態、8曲目の「Morning Sprite」のダイナミックな展開にて、心から感動し、そして、ラストの「La Fiesta」の突入。

この「La Fiesta」は、チック・マニアの僕としては、「全面降伏的な」名曲名演で、今回は、かなりデフォルメしているが、それでもこの曲の素晴らしさは薄れるどころか、逆に新しい魅力を発見したりする、実に奥が深い名曲名演である。はは〜っ、ラストの「La Fiesta」には、ただただ、ひれ伏すばかりである(笑)。
 
1970年代以降の純ジャズ的演奏、コンテンポラリーな純ジャズ演奏については、自分の耳で確認して、自分の耳で判断する、そんな当たり前のことが重要になります。ジャズ本の評論については、この時代の演奏になると、自分の主観で評価する評論家が実に多くなります。客観的な評価が伴わない分、自分で確認するしかない、ということになります。

今回、ご紹介した『Chick Corea Akoustic Band Alive』がそうでした。古くからのジャズ者評論家の方々からは、結構評判が悪かったですね〜。でも、僕は、たまたま、チックのディープなマニアなので、そんな悪評など気にせず、発売日に手にして、即一気聴きです(笑)。そして、自分の耳で確認して、自分の耳で判断する、そんな当たり前のことの大切さを、初めて思い知りました。これからは、他人の評価は参考程度にしよう、と・・・。  
 
 
 
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2010年6月 5日 (土曜日)

Weater Reportの最終作・・・

1970年代〜80年代前半、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、当時のジャズ界を牽引したWeather Report。1980年代に入って、急に失速気味となる。

Weather Report の黄金時代は、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) の4メンバーの時代。1978年から1981年までの4年余りの期間になる。この期間のWeater Reportの音は、完全にグループ・サウンド中心の真に「Weater Reportの音」。それ以前と以降の音は、雰囲気的に「Joe Zawinul の音」。

Weather Reportが、コンテンポラリーな純ジャズの旗頭として、ジャズ界の頂点に躍り出たのは、アルバム『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作によるところが大きい。この『Black Market』『Heavy Weather』の2枚の傑作については、コ・リーダーの一人、Joe Zawinul の功績というよりは、エレベの天才Jaco Pastoriusの功績の方が大きい。特に、Weather Report最大のヒット盤『Heavy Weather』は、Jaco Pastoriusのプロデュースの成果の方が大きいと思っている。

そして、次の『Mr. Gone』に至っては、もうJaco Pastoriusのプロデュースの成果のみの傑作となっている。Weather Reportの2枚組ライブ盤『8:30』を聴くと、Weather Reportの音の要は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人(写真右)のビートとリズム展開に因るところが大きく、そのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスの音が、このWeather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして成立させていた。

逆に言うと、Joe Zawinul のキーボードは、Weather Reportの大衆化、ポップス化には貢献してはいるが、Weather Reportの音をコンテンポラリーな純ジャズとして捉える時には、Joe Zawinul のキーボードの音の必要性は薄れて来ている。大衆性、ポップス性を全面に出すことにより、Joe Zawinulの目標であった「売れたい思い」は達成されたが、コンテンポラリーな純ジャズとしての芸術性の面では、Joe Zawinulのキーボードはあまり必要が無くなっている。皮肉なものである。

Wr81

実質リーダーのJoe Zawinulにとって、そんな相反する皮肉な現象が明確に感じることが出来るアルバムが『Weather Report '81』(写真左)。1980年代録音の最初のリリースということで、その意味も込めて、アルバム・タイトルは、デビュー盤と同様、グループ名だけを冠した『Weather Report』としている。1971年のデビュー盤と紛らわしいので、一般的には『Weather Report '81』と呼び分けている。このアルバムは、実に当時のWeather Reportらしいアルバムである。

ただ、面白いのは、収録された楽曲の殆どが、コ・リーダーの2人、Joe Zawinul とWayne Shorterが担当しているのにも拘わらず、当時、音の要となっていた、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの2人のビートとリズム展開が中心となっていて、特に、Peter Erskineの縦横無尽で変幻自在、千変万化なドラミングが素晴らしい。Peter Erskineの代表作の一枚と言っても良いくらいの素晴らしさである。当然、Jaco Pastoriusのベースは素晴らしい。この『Weather Report '81』は、Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds) のリズム・セクションの素晴らしさとそのビートに分け入る様に響くWayne Shorterのサックスを愛でるアルバムである。

で、Joe Zawinul のキーボードについては、若干響きが「古い」というか、大衆性、ポップス性を全面に押し出し過ぎて、先が読めてしまうような単調さが目立つ。ジャズの面白みは「先の読めないインプロビゼーション」にあるが、このアルバムでのJoe Zawinul のキーボードは、ジャズという観点で聴くと、ちょっと後退気味、停滞気味な音に響く。Joe Zawinul のキーボードでなくてはならない、という楽曲が本当に少なくなっている。

それでも、アルバム全体の出来は良い。冒頭の「Volcano for Hire」は、ポップでキャッチャーな旋律を持った従来のWeather Reportらしい楽曲となっていて、聴いていて楽しいし、2曲目以降の楽曲は、コンテンポラリーな純ジャズな演奏として、インプロビゼーションに重点を置いた、意外に「硬派」な内容になっている。故に、大衆化、ポップス化に貢献していたJoe Zawinul のキーボードが浮いた格好になっているのは、実に悩ましい。

このアルバムの録音の頃には、ベースのJaco Pastoriusは精神障害が進行し、言動にかなりも問題が出てきていた、という。そんなベースのJaco Pastoriusと、素晴らしいドラミングを披露したPeter Erskineを、なぜか、Joe Zawinulは解雇してしまう。当時の音の要、貴重なリズム・セクションを一気に失うこととなる。そうしてでも、バンドのメンバーを再構成したかったJoe Zawinulの本当の気持ちは、いったい何だったのか。

今の時代から振り返ると、このアルバムまでが、Weater Reportの音が、完全にグループ・サウンド中心の、真に「Weater Reportの音」。このアルバムが、Weater Reportの最終作と言っても良いだろう。Weater Reportの音の要は、デビュー当時から、リズム・セクションのビートとリズム展開に因るところが大きい。リズム・セクションのビートとリズムを中心から外し、キーボード中心となったWeater Reportは、次作『Procession』で、バンドの当初コンセプトとは全く違った「別のバンド」として再登場するのだ。 
 
 
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2010年6月 4日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・17

昨日、ゴルソン・ハーモニーについて語った。ゴルソン・ハーモニーの主は、テナー奏者のベニー・ゴルソン(Benny Golson)。そんなベニー・ゴルソンの実に渋い、実にハードバップらしいアルバムがある。ジャズ盤の紹介本では、決してお目にかからない、そんなマニアックなアルバムである。

今日は、「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第17弾。ベニー・ゴルソンのマニアックな一枚をご紹介する。そのアルバムの名は『Gettin' With It』(写真左)。1959年12月の録音。ベニー・ゴルソンのリーダー3作目。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb) Benny Golson (ts) Tommy Flanagan (p) Doug Watkins (b) Art Taylor (ds)。

メンバーにしっかりと盟友のトロンボーン奏者、カーティス・フラーが名を連ねている。となると、このアルバムもゴルソン・ハーモニーが堪能できるアルバムだと想像がつく。そして、ピアノは伴奏の名手トミー・フラナガン、そして、ドラマーは、当時ファースト・コール・ドラマーの一人、アート・テイラー。ベースは早逝が惜しまれる、重厚堅実なベーシスト、ダグ・ワトキンス。パーソネルを見渡すだけで、このアルバムは、ジャズ本などでは、ほどんど挙げられることは無いけれど、その内容が期待できる、って感じのメンバー構成。

期待にたがわず、1曲目の「Baubles, Bangles and Beads」から、ドップリと絵に描いた様なハードバップな演奏が繰り広げられている。しかも、ミッドテンポで、コード進行が実にジャジー。加えて、魅惑のゴルソン・ハーモニーが炸裂する。これぞハードバップ、これぞジャズという演奏が心地良い。

全編に渡ってポイントは、やはりベニー・ゴルソンとカーティス・フラー中心に展開される「ゴルソン・ハーモニー」の響き。トロンボーンのホンワカ、ボワンとした響きと、ベニー・ゴルソンのウネウネ、ボヨヨンとしたテナーが実に良い相性。ゴルソン・ハーモニーは、ゴルソンのウネウネ、ボヨヨンとしたテナーの音を活かすことの出来る、あくまで、ゴルソンのテナーの為のハーモニーであることが良く判る。

Bennygolson_gettin_with_it

ジャズ・テナー単体で考えると、ゴルソンのテナーは決して誉められたものでは無いと、常々思っている。でも、ゴルソン・ハーモニーを奏でる場合、ゴルソンのテナーのウネウネ、ボヨヨンとした音が最適になるのだがら、ジャズは面白い。しかも、ベストな組合せは圧倒的にトロンボーン。特に、ホンワカ、ボワンとしたフラーのトロンボーンの響きが最適。ジャズって相性がとても重要だということが良く判る。

実にリラックスした内容の佳作である。フロントの2管が良質のゴルソン・ハーモニーを供給し、その勢いを受けて、それぞれのソロも充実。それをサポートするフラナガンのピアノも力強く優雅、ダグ・ワトキンスのベースは堅実堅守。そして、全体を取りまとめ、しっかりとグループサウンド全体を引き締める、名手アート・テイラーのドラム。メンバー全員がアルバム全編に渡って、リラックスしながらも、実に内容の濃い、派手では無いが地味に職人芸的テクニックを繰り広げている。

何しか聴いていて心地良いこと「この上無し」。ゴルソン&フラーのフロントにフラナガンのピアノとくれば名盤『ブルースエット』を思いだすが、どちらかと言えば『ブルースエット』は全編がキャッチャーで大向こう狙い。

でも、この『Gettin' With It』は、演奏する自分達が楽しめる、実にミュージシャンズ・アルバム的な世界。売れようとも思っていないし、受けようとも思っていない。ミュージシャン達自らが楽しむために演奏したジャム・セッションをひっそりと録音してアルバム化したような、シンプルで素直で小粋な音世界。

アルバム・ジャケットも実に渋い。Prestigeの傍系レーベルのNew Jazz からのリリースとは思えない、実に渋くて、実にジャジーなアルバム・ジャケット。このアルバムから出てくる音は、このアルバム・ジャケットから受ける印象と全く同じ音が出てきます。実にジャジーで実にハードバップな、穏やかで優しい音が素晴らしい。ゴルソン・ハーモニーの面目躍如です。
 
 
 
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2010年6月 3日 (木曜日)

ゴルソン・ハーモニーが大好き

大学時代、アート・ブレイキーの『Moanin'』を聴いて、そのアレンジの素晴らしさに驚いた。ペットとサックスのハーモニー、そして、それに絡むピアノとベース。これって凄くないか、と何度も繰り返し聴いたことを昨日のことの様に覚えている。

ゴルソン・ハーモニーと呼ばれる独特のハーモニーのアレンジは、よくよく考えると、ドラムのアート・ブレイキーを際立たせるアレンジだったのかもしれない、と思ったりするのだ。でも、このゴルソン・ハーモニーって、本当に独特の響きで、真似をしたり、フォローをしたりする人がいない。これってどういうこと、って思ったりするのだが、深く追求すること無しに今日に至っている。

この独特な「ゴルソン・ハーモニー」。一番、その特色が現れるのは、盟友カーティス・フラー、トロンボーンの名手とのコラボである。もともとは、カーティス・フラーの『Blues ette』がゴルソン・ハーモニーの初期の頃の成果だと感じている。『Blues ette』のアレンジは、それはそれは凄いアレンジだった、と僕は感じた。僕もアレンジを担当したほうである(フォーク・デュオのアレンジだけど)。アレンジの「肝」は、体感的に心得ているほうであると思っている。

そんなゴルソン・ハーモニーが最近、突如、気になり出した。いきなりアート・ブレイキーの『Moanin'』に走れば格好良いのだが、どうも松和のマスターとしては、そうはいかない。嘘もつけないし、なんだかなあ(笑)。

僕がゴルソン・ハーモニーを思い出して、真っ先に聴いたアルバムが、これが不思議なことに『California Message』(写真左)。1980年のリリース。僕がジャズを聴き始めて約3年。まだまだ駆け出しのジャズ者初心者の頃である。時代はフュージョン全盛期後半。純ジャズ復権の兆しが見え始めた、実に微妙な時期である。

このアルバム、金がないので、貸レコード屋で借りてカセットにダビングさせてもらった。今から思えば、良く当時の貸レコード屋に、このアルバムがあったと思う。純ジャズとも言い難く、フュージョンとは言えない、こんな微妙なアルバムを置いておいてくれた、当時、行きつけの貸レコード屋は素晴らしい、と今、改めて思う。
 

California_message_2

 
ちなみに、パーソネルは、Benny Golson (ts,ss), Oscar Brashear (tp), Thurman Green (tb), Bill Mays (p), Bob Magnusson (b), Roy McCurdy (ds), Curtis Fuller (tb)。しっかりと、ベニー・ゴルソンとカーティス・フラーがいる。で、残りのメンバーを見渡すと、う〜ん、知らんなあ。当時は自分のジャズ知識が無くて知らないメンバーなんだと思っていたが、今の目で見ても、う〜ん、知らんなあ(笑)。

でも、これが僕に取っては実に心地良い演奏なんですよ。特に、Bill Maysのエレピと、Bob Magnussonのエレベが実に良い味を出している。今となっては誰も注目しない、誰も評価しない、このアルバムのエレピとエレベだが、僕は声を大にして言いたい。純ジャズのフォーマットでとエレピとエレベは絶対に共存できる。僕は、今から30年前、このアルバムを聴いてそう思った。

エレピ、エレベは純ジャズには向かない、っていうのは、耳音痴の「エセ・ジャズ評論家」の言う戯言だろう。それぞれの楽器について、奏でる演奏のフォーマットに向き不向きは絶対に無い。あるとしたら、楽器を演奏する側の技術の問題か、その演奏を評価する評論家の耳の問題だろう。

この『California Message』の収録されている楽曲はどれも出来が良い。スタンダードもオリジナルもどれもなかなかの出来。どの楽曲にも、ゴルソン・ハーモニーが満載であるが、決して「もたれない」ところに、このアルバムの良さがある。ゴルソン・ハーモニーはその重厚な響きが故に乱発されると、耳に「もたれたり」するのだが、このアルバムは決して「もたれない」。きっと、優れたエレピとエレベが醸し出す。一種「ライト」な雰囲気が故だろうと思っている。

この『California Message』は、このところ、全くジャズ雑誌やジャズ入門本に採り上げられるアルバムでは無い。もしかしたら、心ない評論家からすると、過去の遠い僕客の彼方に置き去られたアルバムかも知れない。でも、この『California Message』って、意外と内容が良いのですよ。1980年当時のファンキー・ジャズの佳作として、ベニー・ゴルソンの十八番、ゴルソン・ハーモニーの入門盤として、最適のアルバムの一枚だと思います。

残念な事に廃盤状態ですが、中古市場に、質の良いCDが流通してくれています。実は私もダビングしたカセットが壊れた後、このアルバムは未入手な状態だったのですが、今回、中古市場で、なかなかの良品を手に入れました。これから死ぬまで、この『California Message』を愛でることが出来ます(笑)。なんだかちょっと幸せを感じています(笑)。

ちなみに、このアルバム・ジャケットの黄色が良い。この黄色が「たまらない」。この黄色があるから、このアルバムを決して忘れることが無いのだ。
 
 
 
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2010年6月 2日 (水曜日)

新しいジャズも聴けば心地良し

ジャズは今も活きている。どんどん新人は出てくるし、新しいアルバムもリリースされ続けている。私の周りではジャズ者はいないので、そんなに新人が出て、そんなに新しいアルバムがリリースして、聴くファンがいるのかしら、と時々不思議になるのだが、世界的に見て、まだまだジャズは活き続けている。

過去のジャズ・ジャイアンツをはじめとする、歴史的遺産である名盤、佳作を愛でることは、ジャズを理解し、ジャズを知る上で必要ではあるが、現在でもジャズは活きている。やはり、新しいジャズも聴かないと、ジャズ者としてのバランスを欠くことになるのでは無いか、と常々自戒している。

新しいジャズも聴けば心地良し。最近、息抜きというか、リラックスしてジャズを聴きたい時に、CDトレイに良く載るアルバムがある。Soulive(ソウライヴ)の『Rubber Soulive』(写真左)。2010年3月のリリース。ビートルズ解散40周年記念ということで、ビートルズの名曲カヴァーのみで構成したコンセプト・アルバムである。

ソウライヴ(Soulive)はアメリカニューヨーク州ウッドストック出身の、ギターの Eric Krasno (エリック・クライズノー)、ドラムの Alan Evans(アラン・エヴァンス)、キーボードの Neal Evans(ニール・エヴァンス)によるジャズ・バンド。1999年のデビュー。2000年秋に老舗ジャズ・レーベルのブルーノート・レコードと契約、2009年にはインディーズ・レーベルに移り、既に12枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。

彼らのバンドの音と形態は、ジャム・バンドともジャズ・ファンク・バンドとも評される。どうもピンと来ないが、シンプルに言うと、1950年代後半よりブルーノート中心に育まれてきた、ジミー・スミス〜リューベン・ウィルソンといったオルガン・トリオの後継者である。演奏曲によっては、とことん俗っぽくなるところ、コテコテなファンキーが過ぎてオーバーファンクになるところも、正しきオルガン・トリオの後継者と言えるだろう。

Rubber_soulive

そんなSouliveがリリースしたビートルズの名曲カヴァー集『Rubber Soulive』、単純に言って「聴いていて楽しい」アルバムである。このオルガン・トリオの演奏に難しい理屈をつけても仕方あるまい。とにかく、ビートルズの名曲をソウル、ファンクのアレンジでSoulive風に仕上げているところが個性的で聴き応えがある。アレンジや展開にそれぞれ異論もあるだろうが、全編通じて、とても楽しいビートルズ・カバー集である。ちなみに収録曲は以下の通り。

1. Drive My Car
2. Taxman
3. In My Life
4. Eleanor Rigby
5. I Want You (She's So Heavy)
6. Come Together
7. Something
8. Revolution I
9. Help!
10. Day Tripper
11. While My Guitar Gently Weeps
12. She Came In Through The Bathroom Window

曲名を眺めていて面白いのはジョンの曲が多くを占めること。次いでジョージ、そしてポール。ジョンの曲が意外にブルージーで、ジャジーなアレンジに耐える楽曲が多いということだろう。ジョージの曲も同じ事がいえる。逆に、ポールの楽曲はちょいと違和感がある。ポールの曲は、決してファンキーなアレンジには乗らない、ということなんでしょうね〜。

とにかく、ビートルズの楽曲のカバーをSoulive自体が難しく考えていないのが良いですね。アレンジは至ってシンプルです。ビートルズの楽曲はそれぞれ楽曲単体で完成度が高いので、捻ったり意外性を求めてアレンジすると、その苦労の割に思い切り「すべったりする」のですが、このアルバムは及第点。
 
新しいジャズも聴けば心地良し。松和のマスターは、バーチャル音楽喫茶『松和』で、こんなアルバムも気分転換にかけたりするんですよね〜。先にも書きましたが、このオルガン・トリオの演奏に難しい理屈をつけても仕方あるまい。ジャズは大衆音楽。まずは自分がリラックスして聴けて、楽しいなあ、と思えることが第一ではないでしょうか。 
 
 
 
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2010年6月 1日 (火曜日)

Eliane Elias Plays Live

故あって、昨日まで2泊3日で大阪にいた。往き帰りの新幹線の中で、まとまって音楽を鑑賞できる時間がとれた。そんな中で、ある硬派なピアノ・トリオのライブ盤を聴いた。

そのライブアルバム名は『Eliane Elias Plays Live』(写真左)。昨年2009年のリリース。リーダーの女性ピアニストは、Eliane Elias(イリアーヌ・イリアス)。ブラジル出身の美貌の女性ジャズ・ピアニスト&ヴォーカリスト。伝説のブレッカー兄弟の兄ランディ・ブレッカーは元夫君。最近売出中の美貌若手の女子ボーカリスト、アマンダ・ブレッカーはランディとの間に生まれた娘。

このライブ盤『Eliane Elias Plays Live』は、2009年7月のリリース。邦題は『デサフィナード』。この邦題が良くない。この邦題だけ見れば、またまたボサノバ関連のボーカル集か(このところずっとボーカル中心なんですよね)、とちょっと敬遠しそうだが、このライブ盤は、かなり硬派なジャズ・ピアノ・トリオのライブが収録されている。ちなみにパーソネルは、Eliane Elias (p), Marc Johnson (b), Joey Baron (ds)。 ベースのマーク・ジョンソンは現夫君。

もともとイリアーヌはピアノスト出身。ピアニスト一本で勝負し、1989年暮れにリリースされた、イリアーヌならではの個性を十分に我々に知らしめた『Eliane Elias Plays Jobim』は実に優れたピアノ・トリオ盤であった。しかしながら、彼女のボーカルは、彼女のピアノの才能を凌駕して余りある力量である。特に、ボサノバ系の女性ボーカルとしては「ピカイチ」の才能である。

そんなイリアーヌが、このライブ盤『Eliane Elias Plays Live』では、得意のボーカルを敢えて封印して、ボーカルレスのピアノ・トリオのライブ盤として勝負している。もともとはピアニスト。では、最近の動向として、どのレベルまで、ジャズ・ピアノを弾きこなすことができるのか、その点に興味が集中する。

Eliane_plays_live

一言で言って「硬派」。激しく硬派なタッチで、指の回りも良く、インプロビゼーションの展開もダイナミックかつ広レンジ。超スタンダードからオリジナルまで、何でもこなす器用さも持ち合わせている。収録された7曲のどの曲にも、ピアノ・トリオとしての「魅力的な内容」がギッシリと詰まっていて、聴き応え抜群。

あまりに「硬派」で「真面目」なライブ盤なので、聴き終えた後、若干の疲れを感じることが「まま」ある。しかし、スタイルは安全運転志向なので、確かに「硬派」な内容のジャズ・ピアノ・トリオ盤なのだが、イリアーヌとしての個性が明確に表出されているわけではない。逆に、誰のピアノか判らないくらい。

イリアーヌはデビュー当時から、エバンス派と呼ばれたり、ハービー・ハンコックやチック・コリアのピアノ・センスとの関連が指摘されたりで、「イリアーヌはこれ」と言った個性が定着してはいない。逆に言うと、エバンス派直系では無く、ハンコック、チックのフォロアーでも無い。けど、どことなく、エバンスぽいところ、ハンコックぽいところ、チックぽいところが見え隠れしたりする。が、かといって、それを聴いただけで、イリアーヌだと聴き分けるだけの強烈な個性がある訳では無い。

この『Eliane Elias Plays Live』、内容は「硬派なピアノ・トリオ・ライブ盤」という観点では、実に優れた内容ではある。しかし、肝心のイリアーヌのピアニストとしての「個性的なタッチ」を披露している訳では無く、実に優等生的なダイナミズム溢れるピアノではあるが、確かに、評価の高いボーカルと比べるとやはり一歩劣るというところだろう。

それでも、バックのMarc Johnson (b), Joey Baron (ds) の好演に支えられ、煽られて、イリアーヌは近年聴くことの出来なかった、実にハードボイルドでハードドライブな純ジャズ・ピアノが堪能できます。イリアーヌの個性の表出という点では、ちょっぴり不満が残りますが、最近リリースのピアノ・トリオ・ライブ盤としては実に優れた内容となっています。適度にスタンダード曲も演奏されており、その聴きやすさという点からは、ジャズ者初心者の方々への推薦盤でもあります。
  
 
 
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