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2010年5月 7日 (金曜日)

マッコイ・タイナーの傑作である

最近、マッコイ・タイナーがなんだか気になって、良くチョイスする。まあ、バーチャル音楽喫茶『松和』のトレンドのアーティストという感じですかね。

今日は、マッコイ・タイナーの1970年代前半の傑作『Sahara』(写真左)である。Milestoneレーベルでのファースト・アルバム。パーソネルは、Sonny Fortune (as, ss, fl) McCoy Tyner (p, koto, fl, per) Calvin Hill (b, reeds, per) Alphonse Mouzon (ds, tp, reeds, per)。正確には、1973年1月の録音になる。

このアルバムは、タイナーが、コルトレーンの下で経験した、スピリチュアルでエモーショナルで、超越技巧なテクニックをベースにした「シーツ・オブ・サウンド」の、タイナーならではの集大成的な作品。メインストリーム・ジャズど真ん中、ストレート・アヘッドなジャズ路線。亡きコルトレーンのスタイルをタイナー流に継承したもの。

冒頭の「Ebony Queen」から、これまた、まあ呆れるほどに、スピリチュアルでエモーショナルで、超越技巧なテクニックをベースにした「シーツ・オブ・サウンド」の怒濤の演奏、怒濤のビート。

サックス担当のソニー・フォーチュンが頑張っている。単調になりそうでならないフォーチュン。しかし、コルトレーンの様に重厚で深刻にならない、ちょっとライトなフリーキーなブロウ。ドラムのムザーンとベースヒルのリズムセクションも、とにかく「頑張る」。良い演奏です。アブストラクトで完全フリー一歩手前ですが、しっかりと「音楽」になっているところが「聴ける」。
 

Mccoy_sahara

 
2曲目の「Prayer for My Family」のタイナーのソロが絶品である。ピアノという楽器はテナーの様な肉声に近い楽器とは正反対、肉声から最も遠い楽器なので、なかなかスピリチュアルでエモーショナルな表現は難しいはずなんだが、タイナーは、超越技巧なテクニックをベースにした「シーツ・オブ・サウンド」を武器に、ピアノ一本で、メインストリーム・ジャズど真ん中、ストレート・アヘッドなジャズ路線ど真ん中のピアノ・ソロを歌い上げてみせる。素晴らしい。美しい。

3曲目の「Valley of Life」での「琴」の採用は、ちょっとやり過ぎやなあ(笑)。あまり意味のない、あまり意図の感じられない「琴」を使用してのインプロビゼーションは、まあ「ご愛嬌」とでもしておきましょう(笑)。

しかし、その後、4曲目「Rebirth」「Sahara」は、再び、スピリチュアルでエモーショナルで、超越技巧なテクニックをベースにした「シーツ・オブ・サウンド」の怒濤の演奏、怒濤のビートの復活である。恐るべきタイナーのハンマーの如き左手、右手のペンタトニックスケール。ガンガンくる。グループが一体となった怒濤の演奏、怒濤のうねる様なビート。グワングワンと「うねるうねる」。各メンバー一丸となってガンガン突き進む様は「颯爽」の一言。硬派な爽快感抜群である。

ラストの長尺アフロジャズ「Sahara」では、後のワールド・ミュージック的なパーカションの響きも楽しく、もうこの「Sahara」を聴き終えた後では「お腹一杯」の精神的満腹感で「グッタリ」です(笑)。とにかく強烈。コルトレーン・ミュージックに対して、タイナーなりの「落とし前」をつけたような、メインストリーム・ジャズど真ん中、ストレート・アヘッドなジャズ路線ど真ん中な、誠実さ溢れる作品だと思います。

でも、このアルバムは、演奏内容があまりに「スピリチュアルでエモーショナル」なので、ジャズ者初心者の方々には、ちょっとハード過ぎる内容だと思います。タイナー入門には、ちょっと内容が「濃すぎ」ですかね〜。あえて、ジャズ者中級者以上向けの「濃い」内容のアルバムだと申し上げておきましょう。でも、一度は聴かねば。1970年代前半のメインストリーム・ジャズをバリバリに体感できます。
 
  
 
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コメント

「松和」のマスターご無沙汰してます。
ジャズ喫茶『松和』へは時々訪問し、楽しませていただいてます。
さて、マッコイ良いですね・・。
といっても最近彼のアルバムを聴くことが無かったので、この週末久しぶりに聴いてみようかな・・と思っています。
コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドを継承した、マッコイグループの圧倒的なパワーを久しぶりに体感してみようと思っています。小生は昨年、岡山県津山市郊外の田舎町であったライブを見ることができました。年老いたマッコイのプレーに往年のパワーを見ることは出来ませんでしたが、しっかりと彼を目に焼き付けてきました。
ではでは・・。

お久しぶりです。JAZZ好き団塊オヤジさん、松和のマスターです。
 
実は私も暫くタイナーのアルバムを聴いていなかったんですよね〜。
昨年から、コルトレーンのアルバムを組織的に聴き直していて、
昨年暮れ辺りから、タイナーのピアノが気になり出して、例の
ブルーノートの『リアル・マッコイ』を久しぶりに聴いて以来、
最近のトレンド・ミュージシャンになっています。

1970年代の諸作は、当時の流行の音が中心なので、ちょっと音が
古いかな〜、と思っていましたが、今の耳でもなかなか聴けるので、
意外にビックリです。やはり「良いものは良い」ということですね。
 
 

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