ビッグバンド・ジャズは楽し・8
さてさて、こじらせた風邪もやっと快方に向かいかけた、今日この頃。やっとパンチの効いたビッグバンド・ジャズを聴く気力が戻って参りました。ということで、今日のブログは、久しぶりに「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズ。今日は第8回目。
今日は、ボーカル付きのビッグバンド・ジャズ。遠い昔より、ビッグバンドと言えば、ジャズ・ボーカルのバックを担い、そのゴージャズな響きと演奏をバックに、朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルには、子供心にも心躍らせたものだ。
その「心躍らせる」ところは今も同じ。朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルと、バックのジャズ・ビッグバンドとのせめぎ合い、コラボレートには今でも惚れ惚れとする。しかし、最近のジャズ・ボーカルはひ弱なものが多い。フルスロットルなジャズ・ビッグバンドを向こうに回して、堂々と渡り合える、ジャズ・ボーカルは本当に少なくなった。
そんな中、このアルバムは、従来からの、朗々と歌い上げるジャズ・ボーカルと、バックのジャズ・ビッグバンドとのせめぎ合い、コラボレートを心ゆくまで楽しめるアルバムである。
そのアルバムとは、Charito With Manhattan Jazz Orchestraの『Nica's Dream』(写真左)。2006年2月の録音。ボーカリストのCharito(チャリート)のボーカルが凄まじい。朗々としたボリュームで、ガンガンに歌い上げていくのだ。緩めることは無い。可愛い子ぶることも無い。堂々と朗々とアルバム全曲に渡って歌い挙げている。
これだけ、フロントの女性ボーカルが堂々と朗々とガンガンに歌い上げてくれるのならば、バックのビッグバンド側としては非常にやり易い。フロントのボーカルに対して手加減することなく、フルスルットルで、ビッグバンドをドライブすることが出来る。しかも、このバックのビッグバンドは、そのテクニック、演奏内容、アレンジ、どれをとっても超一流かつ優等生的なビッグバンド、Manhattan Jazz Orchestraである。その迫力たるや素晴らしい。
冒頭のタイトル曲「Nica's Dream」を聴くだけで、それを実感できる。チャリートのボーカルの堂々とした朗々とした、音量ある歌いっぷり。そして、その堂々とした歌いっぷりに応える様に、フルスロットルで、バンバンにドライブしまくっていく。ボーカルが凄いとバックのビッグバンドも凄くなる。こんなに「ど迫力」な、ジャズ・ボーカル+ビッグバンドの演奏を久しぶりに聴いたような気になる。
選曲が面白い。従来のジャズ・スタンダードと、1970年度以降のロックやR&Bの名曲を素材にしたニュー・ジャズ・スタンダードとが上手い具合にミックスされていて、最後まで、聴く者を飽きさせない。ちなみに収録曲は以下の通り。
1. Nica's Dream
2. Superstition
3. Caravan
4. Sunday Morning
5. Sir Duke
6. Dance Of Love
7. Against All Odds(Take A Look At Me Now)
8. The meaning Of The Blues
9. Just The Way You Are
10.Master Blaster(Jammin')
11.I'll Make Love To You
スティービー・ワンダーの初期のヒット作「Superstition」、これまたスティービーの十八番「Sir Duke」、「Master Blaster(Jammin')」フィル・コリンズの「Against All Odds(Take A Look At Me Now)」、ビリー・ジョエルの「Just The Way You Are」など、1970年度以降のロックやR&Bの名曲を素材にしたニュー・ジャズ・スタンダードの出来が実に良い。やっと、ニュー・ジャズ・スタンダードの可能性を感じた次第です。
そして、やはり、Manhattan Jazz Orchestraの総帥、デビッド・マシューズのアレンジとプロデュースが秀逸です。とにかく判り易い、とにかくシンプルに、ジャズ・ビッグバンドの楽しさを僕たちに届けてくれています。
ちなみに、チャリートは、日本在住のベテラン実力派ジャズヴォーカリストなんですね〜。チャリートのレパートリーの幅も広く、チャリートの正統派ボーカルのお陰で、ジャズ・ビッグバンドの楽しさが堪能できる。そんな、ジャズ者初心者からジャズ者ベテランまで、ジャズ者であれば、どんなレベルの方々も、それぞれレベルでの楽しみ方が堪能できる。ジャズ・ボーカルとバックのジャズ・ビッグバンドの優秀盤だと思います。
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