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2010年5月12日 (水曜日)

チャールズ・ミンガスの到達点・1

僕はチャールズ・ミンガス、この希有なベーシストの最高傑作は、1976年リリースの『Cumbia & Jazz Fusion』だと信じて疑わない(2009年7月12日のブログ参照・左をクリック)。

しかし、ミンガスは、この『Cumbia & Jazz Fusion』の後、3枚のアルバムを残している。チャールズ・ミンガスは亡くなるその時点まで、前進するアーティストであった。『Cumbia & Jazz Fusion』の後、この『Cumbia & Jazz Fusion』の成果を確固たるものにする為に、生前、後3枚のアルバムを作成した。その一枚が『Me Myself An Eye』(写真左)。1978年の録音。

このアルバムの録音時点で、ミンガスは車椅子に座っている。演奏はせず(できず)、自身のオーケストラを率いての「リーダー」という肩書だが、ミンガス・ミュージックは、あくまで前進している。その「前進」している音が、限りなく感動をさそうのだ。

1. Three Worlds of Drums
2. Devil Woman
3. Wednesday Night Prayer Meeting
4. Caroline Keikki Mingus

の4曲で構成されているが、どの曲も、ミンガス・ミュージックが色濃く反映されていて、出だしの3分位を聴くと、明らかにミンガス・ミュージックである、ということが明確に判る。
 

Mingus_memyselfaneye

 
テーマの作りが「制御された整然とした混沌」という、ミンガス・ミュージック独特な音で構成されている。感情のおもむくままの、垂れ流しのフリーキーな世界では無い。あくまで「制御された整然とした混沌」である。

一糸乱れぬアンサンブルと限りなく自由を与えられたアドリブ部と、そのコントラストが美しい。アンサンブルもアドリブも、良く耳を傾けると、かなり複雑なかなり高度な演奏を繰り広げている。力量のあるミュージシャンでないと対応できない、実に難解で、実に複雑なミンガス・ミュージックの「肝」である。

リーダーのミンガス自身がベーシストが故に「ビートとリズム」を重視した音作りは、今の耳にも「先進的」。ワールド・ミュージック的な要素もふんだんに取り入れている。1978年当時で、本質的に、真のフュージョン・ジャズを追求していたあたり、ジャズ界屈指のコンポーザー&アレンジャーであるミンガスの「矜持」をビンビンに感じる。

攻撃的でフリーキー、それでいて制御された構築美を誇るミンガス・ミュージックは、ここに極まれり、の感がある。単に感情にまかせてフリーキーに垂れ流す音楽を諫め、純ジャズとしての「行き方」を示した模範的演奏のひとつとして、是非とも再聴すべき、チャールズ・ミンガスの到達点、チャールズ・ミンガスの最後の成果である。

「制御された整然とした混沌」の世界は、まさにハードボイルド、まさに硬派な演奏である。決して甘くはないが、このミンガス・ミュージックの世界に、ジャズの良心が見え隠れする。ミンガス・ミュージックの面目躍如である。
 
 
 
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