最近のトラックバック

« エバンスの「本質と力量と本音」 | トップページ | GWです。音楽は少し横に置いて。 »

2010年4月30日 (金曜日)

マッコイ・タイナーの真骨頂

ジャズ・ピアノとして、ビル・エバンスが総合的な「ダイナミズムの極致」とするならば、マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、パッション、テンションの側に振れた「ダイナミズムの極致」と言えるだろう。

とにかく、マッコイ・タイナーのピアノは、「ガーン、ゴーン」という感じのハンマー打法とも言うべき、パーカッション的なタッチが特徴。このパーカッション的なタッチで、コルトレーン譲りの、ピアノ版「シーツ・オブ・サウンド」をやるから凄い。目眩くパッション、硬派なテンション、回る回るインプロビゼーションの右手。そんな感じのタイナーのピアノである。

そんなタイナーのピアノの原点を十分に堪能できるアルバムが『The Real McCoy』(写真左)。かのブルーノート・レーベルの4264番。1967年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts) McCoy Tyner (p) Ron Carter (b) Elvin Jones (ds)。時代はロック台頭の時代。 1967年7月には、コルトレーンが急逝する激動の時代。

このアルバムには、当時のジャズの最先端の音が詰まっている。シリアスな音の追求、ファンクネスなどポップス性の排除、極限まで追求されるインプロビゼーション、超絶技巧な世界をモードの世界で追求。つまりは、振り返って見ると、この頃のジャズの大半は、大衆性を否定し、少数のマニアにしか受けない音世界を追求していた。

しかし、この『The Real McCoy』の音世界は、ちょっと違う。このアルバムは、マッコイ・タイナーが初めてリーダーとしてブルーノート・レーベルで収録したもの。ブルーノートの総帥のアルフレッド・ライオンがプロデュースした最後の作品の一つ。
 

The_real_mccoy

 
タイナーがコルトレーンの下を離脱して、初のリーダーアルバム。コルトレーン・カルテットを辞めて、当時、仕事に恵まれなかったタイナーをライオンが支援しつつ、ブルーノートからリリースした盤故に、このセッションには特別かつ独特のクオリティが漂っている。

タイナーの目眩くパッション、硬派なテンション、回る回るインプロビゼーションの右手。激情的にかつ攻撃的なエルビンのドラム。モード演奏にピッタリの、ウネウネと妖艶なヘンダーソンのサックス。さすが、モード的な演奏を熟知した、モード的な演奏にこそ、その存在感を知らしめる、ロン・カーターのベース。収録されたどの曲も、伝統と革新技法が素敵にミックスされた、当時のジャズ最先端の、最良な音がギッシリと詰め込まれている。

冒頭の「Passion Dance」が実に格好良い。テーマの回転の良いフレーズの格好良さ。モード的な演奏で、論理的に構築された、理詰めのインプロビゼーション。決して下世話にポップに迎合しない、実に潔いインテリジェンスを感じる。疾走感溢れる目眩くインプロビゼーションの素晴らしさに、頭がクラクラしそうだ(笑)。

「Four by Five」や「Blues on the Corner」のような、ハードバップ時代から演奏される濃厚なブルースも、実に新しい響きで再構築されている。実に見事な「新主流派的な」演奏である。この先進的な美しさは奇跡的でもある。当時の、ストレート・アヘッドなジャズの「最先端の音」。アコースティック系ジャズの最良の成果の一つだと僕は評価している。

ちなみに「The Real Mccoy」というと、米語俗語で「こいつは本物やで!」って意味になります。確かに、このアルバムには、タイナーの真骨頂、本質が詰まっています。このアルバムの音世界こそが、タイナーの「本物」。なかなか洒落たタイトル。さすがブルーノートです。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

« エバンスの「本質と力量と本音」 | トップページ | GWです。音楽は少し横に置いて。 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80793/34459078

この記事へのトラックバック一覧です: マッコイ・タイナーの真骨頂:

« エバンスの「本質と力量と本音」 | トップページ | GWです。音楽は少し横に置いて。 »

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ