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2010年4月10日 (土曜日)

ノスタルジックだけど新しい...

ジャズの発祥は「ニューオリンズ・ジャズ」とされる説がある。トランペット、トロンボーン、クラリネットなどのフロント3管が中心となった集団即興演奏が特徴。ホンワカ、ノンビリな、ちょっととぼけた感じのフロント3管のユニゾン&ハーモニー。決して焦って走ることは無い。長閑な人間の生活テンポをキープしたような、心地良いビート。

そんな「ニューオリンズ・ジャズ」の要素を完全に取り入れながら、現代ジャズや現代ポップスの要素をシッカリと底に偲ばせた、実にユニークなアルバムがある。Allen Toussaint(アラン・トゥーサン)の『The Bright Mississippi』(写真左)。本人のソロとしては、1996年の「Connected」以来13年ぶりのリリース。

アラン・トゥーサンとは、米国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれのピアニスト、歌手、ソングライター、プロデューサー。1938年1月生まれだから、今年で72歳、大ベテランである。1975年リリースの『Southern Nights』は彼の代表作。僕もこの『Southern Nights』は大のお気に入り。クールなニューオーリンズ・サウンド、米国南部サウンドのど真ん中を歩いてきたミュージシャンである。

彼の活動のピークは確かに1970年代なんで、彼を「過去の人」の一言で済ましてしまうマニアもいるが、見識違いも甚だしい。今でも、アラン・トゥーサンは、米国南部サウンドのど真ん中を歩いている。その証拠が『The Bright Mississippi』である。
 

Allen_toussaint_bright_mississippi

 
アルバムの内容はインスト中心、しかも、初期のニューオーリンズ・ジャズを大々的に取り上げている。演奏のベースは現代ジャズ。でも、醸し出される音楽はニューオリンズ・ジャズ。このアルバムは徹頭徹尾、ノスタルジックだけど新しい「ニューオーリンズ・ジャズ」が溢れている。

採用されている曲は、エリントン、ビックス・バイダーベック、サッチモ、セロニアス・モンク、ジャンゴ・ライハルト等と、ジャズ者ベテランにとって、実にディープな選曲である。冒頭の「Egyptian Fantasy」を聴き始めるだけで、もう心はワクワク、ソワソワ。

ニューオリンズ・ジャズってジャズの起源のひとつ。実は、ニューオリンズ・ジャズって意外とお気に入りで、本業をリタイアしたら、絶対にニューオリンズに行って、本場のニューオリンズ・ジャズを聴かないとあの世に行けない、とまで思っているくらいだ。

は、ジャズへのリスペクトの念に溢れた、ニューオーリンズ・サウンドの重鎮である Allen Toussaint の最新アルバム。1970年代ロック、米国南部志向、Dr.John『Gumbo』、Little Feat『Dixie Chicken』、Allen Toussaint『Southern Night』にはまっていた方々には、Allen Toussaintの『The Bright Mississippi』は、最適な「ジャズ入門盤」。

単なる、ニューオリンズ・ジャズを愛でる「懐古趣味」ではなく、現代の音の先端、尖った「オルタネイティブ」も感じさせるサウンドは、実に「妖しい」魅力に溢れている。ジャンル不明の、国籍不明の、ノスタルジックだけど新しいニューオリンズ・ジャズの世界。

聴けば判る。唯一無二、これしかない、アラン・トゥーサンの下手上手ボーカルも心地良い、不思議なジャジーな魅力に溢れたアルバムです。 
 
 
 
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