ゴンサロの今のところの最新作
今週、ジャズ・ピアニストとして、ゴンサロ・ルバルカバを2回採り上げているので、週末の金曜日、ゴンサロ・ルバルカバの「今のところの最新作」で締めたいと思います。
ゴンサロの「今のところの最新作」は『Avatar(邦題:化身)』(写真左)。2008年のリリース。録音は、2007年5月。パーソネルは、Gonzalo Rubalcaba(p,key), Yosvany Terry(as,ss,ts,per), Mike Rodriguez(tp,flh), Matt Brewer(b), Marcus Gilmore(ds) 。ちなみに、ドラムのMarcus Gilmoreは、かのベテラン伝説的ジャズドラマー Roy Haynes の孫だそうだ。いやはや恐ろしい時代になったもんやなあ。
で、この『Avatar(邦題:化身)』、ゴンサロの今を伝える好盤となっている。ゴンサロ曲が1曲と、ヨスヴァニー・テリー曲が3曲、マット・ブルーワー曲が1曲、あとはホレス・シルバー曲の「Peace」とその他1曲で全7曲。リーダーである自らの作曲よりも、テナー奏者テリーの作曲の才を全面に押し出している。う〜ん、アレンジャー&オーガナイザー的能力が高いゴンサロならでは、である。
アルバムの全体的な雰囲気であるが、ゴンサロの個性の一つである「ポジティブなラテン色」はほとんど無い。あからさまでは無いが、そこはかとなく漂う変拍子ファンク的な雰囲気が、聴き耳のあちこちに引っ掛かる、所謂「玄人好みのサウンド」である。
曲によって、4ビートが混じったコンテンポラリーなジャズ、はたまた純粋な4ビートジャズがあったり、基本的にメインストリーム・ジャズ路線のど真ん中を突き進んでいる感じ。決して、ポップな世界に迎合していないところが実に良い。
たまにシンセサイザーを音の色づけ程度に使用しているところもあるが、あくまで生ピアノがメインで、バリバリ弾きまくっている。けれども、若い頃、デビューした頃の様に、超絶技巧なテクニックにまかせて、ガンガンに弾きまくる訳では無い。しっかりと抑制を効かせつつ、バリバリ弾きまくるが、グループ全体のトータルサウンドを十分に意識した、アレンジャー&オーガナイザー的な立場、現場プロデューサー的立場を十分に意識した演奏に仕上がっている。
メインストリーム・ジャズとして、ハイレベルな内容ではあるが、採用された曲の曲想がちょっと暗い。完全にモーダルで複雑な曲調のものが多くて、聴いていて、ダークな雰囲気にドップリ染まってしまうところが、ちょっと損をしているところ。ゴンサロの個性のひとつである、ポジティブな哀愁感漂うラテンチックなところ、明るくカリビアンな雰囲気を抑えすぎたかな、ちょっと真面目に構え過ぎたかな、という感じ。
でも、ゴンサロのピアノのテンションは高く、決して緩まることは無い。このゴンサロのテンションがなかなか癖になる。テリーのテナーもアグレッシブで、硬派なメインストリーム・ジャズとして、じっくりと構えて聴くと、これがなかなか気分が良い。暗い曲想にちょっと疲れる割には、時々、引っ張り出してきては聴き耳を立て、ダークな雰囲気にドップリ染まってしまって後悔する割に、また引っ張り出してきては、また聴き耳を立てる。なんだか不思議なアルバムである。
そして、録音の良さも特筆に値する。ゴンサロの超絶技巧なピアノの音が全くけばけばしく無く、良い感じで丸い感じが心地良い。テリーのテナーも耳につかない、というか、アグレッシブなブロウの時も、耳につかない感じは、ちょっと感動ものである。ちなみに録音は誰かと調べてみると、録音はジム・アンダーソン。この名前、覚えておこう。
ゴンサロのストイックなメインストリーム・ジャズですね。ゴンサロのグループ全体のトータルサウンドを十分に意識した、アレンジャー&オーガナイザー、プロデューサー的才能を十分に感じることが出来ます。ゴンサロの円熟した超絶技巧なピアノも聴き応え、切れ味共に充分。グループサウンドとしても良く仕上がっていると思います。
ただ、ストイックすぎて、かなり硬派なメインストリーム・ジャズに仕上がっているので、ジャズ者初心者の方々は避けた方が良いでしょう。ジャズ者中上級者向け。
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