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2010年3月20日 (土曜日)

「記録」として価値のある盤

セロニアス・モンクのリーダーアルバムを中心に聴き直しを進めている訳であるが、モンクの絶頂期を捉えた、リバーサイド・レーベルのアルバムを聴き終えたと思ったら、一枚残っていた。『Thelonious Monk with John Coltrane』(写真左)である。正確に言えば「Jazzlandレーベル」での録音になる。

このアルバムは、ジャズ入門本やジャズ名盤紹介本に、モンクとコルトレーンの邂逅を捉えた名盤中の名盤として紹介されている。しかし、実は、僕はこの『Thelonious Monk with John Coltrane』は、あまり聴かない。皆がいうほどの「名盤中の名盤」なんだろうか。

確かに、コルトレーンが加入した「モンク・カルテット」はあまり録音が残っておらず、当時の様子を目撃した人々の話などにより、その演奏内容の素晴らしさ、凄まじさ、先進性について、脈々と伝えられ、今や伝説と化しているのだ。そのような背景の中で、録音状態が非常に良い、この『Thelonious Monk with John Coltrane』は貴重な「記録」としては価値があるだろう。

しかも、このアルバムは以下の2つのセッションに分かれている。つまりこのアルバムは、アルバム自体としては、『Thelonious Monk with John Coltrane』と銘をうつには、いささか苦しいところのあるオムニバス盤で、カルテットによる3曲を別にすれば、あとはアルバムの表題に合わせて、『Monk's Music』や『Thelonious Himself』のセッションの別テイクを、急拠探し出して来て補充したという格好になっている。

看板に偽りありとは言わないが、モンクとコルトレーンが一体となって、1枚のアルバムを残そうとしたセッションを収録したものでないことは確かである。ちなみに、ラストの「Functional」は、モンクのピアノ・ソロで、コルトレーンとは関係無いセッション。1957年の4月12日の録音である。

Ray Copeland (tp) Gigi Gryce (as) John Coltrane, Coleman Hawkins (ts)
Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Art Blakey (d)
Reeves Sound Studios, NYC, June 26, 1957
3. Off Minor (take 4)
5. Epistrophy (alt. take)

John Coltrane (ts) Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Shadow Wilson (d)
Reeves Sound Studios, NYC, July, 1957
1. Ruby, My Dear
2. Trinkle, Tinkle
4. Nutty
 

Monk_coltrane

 
さて、それでは、その内容はと言えば、確かに、モンクをバックにしてのコルトレーンは素晴らしい演奏を繰り広げてはいるが、当時のコルトレーンとしては、体調がまともな状態であれば、このアルバムでのパフォーマンスは、コルトレーンの標準レベルだろう。別に、モンクをバックにして、なにかコルトレーンに目立った変化がある訳では無い。

どの曲でも、コルトレーンは、初めは、モンクに追従して、モンク節のコルトレーンとして吹いているが、途中で我慢できなくなったのか、徐々にコルトレーン独自のフレーズになっていき、最後は、十八番の「シーツ・オブ・サウンド」一色になる。確かに、モンクとの出会いは、コルトレーンにとって有意義なものであったのだろうが、共演して何か「化学反応」が起こって、モンク+コルトレーンならではの演奏が生まれ出でたのか、といえばそうでもない。

コルトレーンが最後には、十八番の「シーツ・オブ・サウンド」を繰り広げてしまうが、モンクは全くそんなことは意に介さず、モンク節を連発する。コルトレーンのテナーの音が大きいので、逆に、モンクは、心ゆくまでピアノを叩くことができるので、結構、メリハリとパンチの効いたモンク・ピアノが聴けるのが、このアルバムでのモンクの特徴といえば特徴。モンクのハンマー打法は強烈である。歌心あるハンマー打法は「モンクならでは」のもの。
 
コルトレーンはコルトレーンで素晴らしいし、モンクはモンクで素晴らしいのだが、これら演奏が収録された1957年という時期を考えると、コルトレーンもモンクも絶好調の時期である。これくらいの演奏は当たり前だったと思われる。

ちなみに、僕はラストのモンクのソロ「Functional」に一番惹かれる。このアルバムの最後を飾るソロ・トラックは「Thelonious Himself」のセッションで録音された、同じタイトルの曲の別テイク。曲は自作のブルースだが、ここでは、オリジナル曲とは、全く違った解釈で演奏してみせる。1950年代後半のモンクの創造力+演奏能力がいかに凄かったか、改めて感じさせてくれる名演奏である。

「記録」として価値のある盤。この『Thelonious Monk with John Coltrane』は、まさにそれだと思う。コルトレーン、モンク、それぞれの演奏力は素晴らしい。でも、共演して何か「化学反応」が起こって、モンク+コルトレーンならではの演奏が生まれ出でたのか、といえばそうでもない。

「記録」としての「名盤」ではあるが、ジャズ初心者の方々に「入門的名盤」としてお勧めする類のものではないでしょう。でも、コルトレーン、モンク、それぞれの演奏は素晴らしいです。ジャズ者中級者向けでしょう。
 
 
 
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