欧州的なウネウネ捻れたギター
今日は朝から「寒の戻り」の我が千葉県北西部地方。どんより鉛雲。こんなにヒンヤリ冷え込んだ寒い朝、鉛色の空。ふと、昔、訪れたロンドンの冬を思い出す。
こんな寒い朝、鉛色の空を見ると、欧州的なジャズを聴きたくなる。しっとりとウェット感のある、それでいて、一筋縄ではいかない、プログレッシブで個性的な音。そんな音が聴きたくてたまらなくなる。
そんな欧州的なジャズが聴きたくなった時、必ず聴くジャズ・ギターがある。ジョン・アバークロンビーである。出身地は米国ニューヨーク州ポートチェスター。ジャズギタリストで、1944年12月生まれ。ジョン・アバークロンビー、長い名前である。「ジョン・アバ」と呼んでいる。
そう言えば、もう1人、同じような名前のお気に入りギタリストがいたぞ。そうそう、こちらはジョン・スコフィールド。略して「ジョン・スコ」。出身地は米国はオハイオ州デイトン。ジョン・アバ、ジョン・スコ、どちらとも、ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターを弾く、多彩なプレイ・スタイルでおなじみのギタリスト。
どちらも米国出身で、ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターを弾くんだが、ジョン・アバは、欧州的に音が濡れている。逆に、ジョン・スコは、米国的に音が乾いている。同じウネウネ捻れギターなんだが、音の性質は正反対。恐らく、所属したレーベルによる音の違いなのかもしれない。ジョン・アバは、かの欧州を代表するレーベル、ECMレーベルの所属。
そんなジョン・アバを初めて聴いたアルバムが『Timeless』(写真左)。1974年6月の録音。栄えあるジョン・アバの初リーダーアルバムである。パーソネルは、John Abercrombie (g), Jan Hammer (org, syn, p), Jack DeJohnette (ds)。凄いメンバー構成だ。特に、音楽ジャンル範疇不明なキーボーダー、ヤン・ハマーの存在が妖しい光彩を放っている。
ジャズを聴き始めた頃、友人に紹介された。プログレッシブ・ロックが好きなら、このアルバムがプログレらしくていいぞ、と勧められた。が、プログレとは全く違う、実にジャジーな演奏。そもそも、バンドを統率する「ビート」が全くロックとは異なる。このアルバムの「ビート」は、どこから聴いてもジャズのビートである。
もともと欧州という環境は、プログレッシブ・ロックとジャズの境界線が曖昧である。確かにロックっぽい音はするにはするが、ビートやフレーズの作り、コードの捻れた展開はジャズならではのもの。ロックでは、これだけアカデミックな演奏にはならない。
このアルバムがちょっとプログレ的雰囲気を宿しているのは、ヤン・ハマーの存在だろう。彼のキーボードがちょっとプログレ的な響きがこのアルバムの面白いところ。ジョン・アバのウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターは全開。欧州的に音は、しっかり濡れている。サスティーンが効いたロングトーンなフレーズは彼独特のもの。好きになれば、とことん病みつきになる。
そこに、音楽ジャンル範疇不明なヤン・ハマーのキーボードが絡む。不思議なグルービーが蔓延する。このグルービーを更に煽るのが、デ・ジョネットのドラム。凄くポリリズミックな疾走感溢れるデ・ジョネットのドラムが、ジョン・アバとハマーを煽りまくる。
収録されたどの曲も魅力的。初ソロ・アルバムで、既に、個性を確立していたジョン・アバのギターは爽快の一言。しかし、その「爽快感」は素直で万民に判りやすいものではない。ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターが耳に馴染めば「お気に入りのギタリスト」に、馴染まなければ「単なる変態ギタリスト」。
ジャズの優れたスタイリストは聴く人を選ぶ。ジョン・スコもそんなジャズ・ギターの代表的スタイリストの1人。この『Timeless』は、ジョン・スコのギターの起源を捉えたアルバムでもあり、「ジョン・スコ」のマニア御用達の必聴盤でしょう。
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