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2010年3月18日 (木曜日)

優しく柔らかいコルトレーン

1962年後期から1963年初期にかけて収録した、コルトレーンの全曲バラードのアルバムが3枚ある。『Ballads』と『Duke Ellington and John Coltrane』、そして『John Coltrane & Johnny Hartman』(写真左)である。

僕は『Ballads』と『Duke Ellington and John Coltrane』については、全曲美しく穏やかなバラード集とするには異議がある。『Ballads』については、前半はバラード集という感じがあるが、曲が進むにつれ、コルトレーンは我慢できん、とばかりに「シーツ・オブ・サウンド」の封印を解き、ドラムのエルビン・ジョーンズは、欲求不満気味に抑えに抑えて叩いていたが、コルトレーンが「シーツ・オブ・サウンド」の封印を解いた瞬間、コルトレーンに追従してしまう。

『Duke Ellington and John Coltrane』についても、やはり前半は、バラード集ということで、神妙にデューク・エリントンに追従するが、曲が進むにつれて、エリントンと共演できて嬉しかったのか、エリントンに自分の凄さを認めて欲しかったのか、やはり、曲が進むにつれ、コルトレーンは我慢できん、とばかりに、トレードマークの「シーツ・オブ・サウンド」の封印を解き、吹きまくってしまうシーンが出てきて、ちょっとコレって、巨匠エリントンに失礼じゃないの、と戸惑ってしまう。

しかし、『John Coltrane & Johnny Hartman』は違う。全曲バラード集の最終の3作目。さすがに、これはマズイと思って、プロデューサーのボブ・シールがコルトレーンを諭したのか、コルトレーンがジョニー・ハートマンにびびったのか、殊勝にもボーカルの伴奏だからと自重し自制したのか、そのへんのところは良く判らないが、この『John Coltrane & Johnny Hartman』でのコルトレーンは、完全にバラードしている。

確かに、『Ballads』と『Duke Ellington and John Coltrane』と同様、中高音のみを駆使してのブロウは変わらないが、実に、優しくて柔らかい。決して、シーツ・オブ・サウンドしない。ドラムのエルビン・ジョーンズも神妙にバラードしている。特に、ブラッシュ・ワークが素晴らしい。溜息がでるほど。ピアノのマッコイ・タイナーは安心して、質の高いバラード的なピアノでバッキングし、ベースのジミー・ギャリソンも安心して、端正なバラードのビートを供給してカルテットの伴奏を下支えする。

Coltrane_hartman

この伝説のカルテットが自重し自制し、完全にバラード曲のバッキングに徹しているのである。当然、ボーカルのジョニー・ハートマンは、実に素晴らしい、最高な歌声を聴かせてくれる。テナー・サックスは男性の肉声に近いと言われるが、中高音を中心にバラードを吹くコルトレーンと、中低音を受け持つジョニー・ハートマンのボーカルは、実に相性が良い。ユニゾン&ハーモニー、そして、バックに回ったコルトレーンの情感溢れるバッキング、どれもが素晴らしく美しい。

ハートマンのつややかなバリトンボーカルのバックで、優しく柔らかにバッキングするコルトレーン。ドラムのエルビンも、内に情感を秘め抑制された、エモーション溢れる実に魅力的なドラミングを披露する。しかし、それにも増して、バラード演奏を弾き倒すマッコイのピアノが実に素晴らしい。そして、バラード演奏のビートを支える、ジミー・ギャリソンのベースがとても素晴らしいことにも驚いた。

激しく吹きまくるコルトレーンのイメージに合わない、という声もあるようですが、僕は、このアルバムでの、優しく柔らかいコルトレーンが、もともとコルトレーンの本質だと思っています。彼にとっての「実験、チャレンジ、鍛錬」を忘れて、「超絶技巧」を「シーツ・オブ・サウンド」を封印して、ジョニー・ハートマンのバッキングを、精一杯、初心に帰って、優しく柔らかくテナーを吹き上げる。実に、良いコルトレーンである。

実は、僕はこの『John Coltrane & Johnny Hartman』での、優しく柔らかなコルトレーンが好きだ。テナーを普通に吹いた時のコルトレーンほど凄いものは無い。彼にとっての「実験、チャレンジ、鍛錬」を忘れて、「超絶技巧」を「シーツ・オブ・サウンド」を封印して、シンプルに普通に情感を込めて吹き上げるコルトレーンは実に美しく、実に神々しい。 
 
『John Coltrane & Johnny Hartman』。1963年3月の録音。改めて、パーソネルは、John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Johnny Hartman (vo)。Englewood CliffsのRudy Van Gelder スタジオの響きが実に美しい。 
 
 
 
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