M・ブーブレ『Crazy Love』・2
マイケル・ブーブレの最新作『Crazy Love』(写真左)。昨日はカバー曲の面白さ、素晴らしさをお伝えした。さて、このアルバムのもう一つの面白さは、1970年代のロック・ポップスの名曲をジャジーにカバーしていること。
今日は、その「1970年代のロック・ポップスの名曲のカバー」についてご紹介したい。とにかく、アレンジが秀逸です。ジャズ界で「ニュー・スタンダード・ムーブメント」が提唱されて久しいのですが、やっと21世紀になって、素晴らしい成果がここに示されています。
さて、4曲目の「Crazy Love」って、どっかで聴いたぞ〜と思っていたら、そうそう、ヴァン・モリソンのヒット曲やん。で、何年にヒットしたのかなあと調べたら1970年。そうでしょうね。僕は中学生の時、FMで聴きました。この70年代のロック・ポップ・チューンを、ジャズ風にアレンジして歌い上げるなんざあ、なんて粋なブーブレなんでしょう。この曲は実に良い雰囲気。これはブーブレ陣営のプロデュースの勝利でしょう。
そして、このアルバムの中で一番度肝を抜かれた曲が、8曲目の「Heartache Tonight」。前奏を聴いて、これ、イーグルスの曲ちゃうか、と思ったら大当たり。1979年、イーグルスのラストアルバムと言われた『Long Run』の確かB面の1曲目だったかと。
当時、なぜかこの曲、イーグルスがディスコソングに迎合したと曲解され評判が悪かった曲ですが、良く聴くと判るんですが、どちらかといえば、ジャジーなビートを底に漂わせたオールディーズな曲で、この曲を正面切って、ジャズ・ボーカル曲として料理したブーブレの慧眼には敬服します。
素晴らしい出来ですね。この曲こそ、今回のアルバムの目玉でしょう。こんなにジャズ・オーケストラをバックにしたジャズ・ボーカル曲として、スッポリと収まるとは思わなかった。イーグルスのファンだった僕としては懐かしい限りです。
加えて、ラストの「Some Kind Of Wonderful」にもビックリ。こんな曲、採り上げるか〜。この曲、キャロル・キングの3rdソロ・アルバム『ミュージック』に収録された隠れ名曲。A面の4曲目でしたね。この曲を知っている人は「通」です(笑)。
この曲に対してのアレンジがまた素晴らしく、ちょいと打ち込みリズムを除かせながら、軽いR&B風にビートを流しながら、ジャジーに歌い上げていくブーブレが堪らない。実に快活&ハッピーなエンディングだ。この曲は、ブーブレの次の展開を期待させる。やってほしいなあ、1970年代のロック・ポップスの名曲のカバー集。やってくれないかな〜(笑)。
オリジナル曲の2曲、「 Haven't Met You Yet(素顔のきみに)」、「Hold On」の出来も良く、まさにこのアルバムは、ブーブレの最高傑作と言って良いだろう。
秀逸なアレンジとカバー対象曲の小粋な選曲、そして、そこに、マイケル・ブーブレの優れた歌唱力が加わって、最近、ちょっと低調だった男性ジャズ・ボーカルの世界に、実に大きな成果をもたらしたと思う。日本のジャズの老舗雑誌「スイング・ジャーナル」にも、マイケル・ブーブレは大きく採り上げられるようになった。それほど、今回の新譜『Crazy Love』の出来は素晴らしい。
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