遅まきながら「山中千尋の新作」
ちょっと遅くなったが、山中千尋の最新作がなかなか良くて、ちょくちょく聴いている。山中千尋の新作のテーマは「ベニー・グッドマン」。ベニー・グッドマン生誕100周年記念作品。ヴァイヴにティム・コリンズ、クラリネットにジャネル・ライヒマン、ギターにアヴィ・ロスバードを迎え、山中千尋トリオを加えた、セクステットでの録音。アルバムタイトルは『Runnin' Wild』(写真左)。
ベニー・グッドマンとは、1930年代後半にスウィング時代の原動力となり、常に時代の最先端をいくクラリネットのフレーズで強烈な印象を刻み続けたスィング・ジャズの偉人である。僕がジャズに触れた最初のきっかけが、高校時代に観た、映画の「ベニー・グッドマン物語」。スウィング・ジャズの楽しさ、乗りの良いビートがとても気に入った。マニアックにスウィング・ジャズを蒐集することは無かったけれど、今でも聴くのは好きな音ですね〜。
で、この山中千尋『Runnin' Wild』ですが、そのスウィング・ジャズを忠実に再現するなんて野暮なことは、当然してはいません(笑)。山中千尋は、ピアニストとしても実に魅力的であるが、僕は、とりわけ作曲、アレンジの才に注目している。今回のアルバムでも、その作曲、アレンジの才能が全開である。
聴いていて、アレンジが実に良い。これは面白いなあ〜、これは小粋やなあ〜、というが随所にあって、アルバム全編に渡って聴いていて楽しい、サクッと「ジャズの演奏を楽しめる」アルバムに仕上がっています。スウィング・ジャズの雰囲気をしっかりと掴み取って、スウィング・ジャズのエッセンスをしっかりと踏まえた、全編、ポジティブで明るく、現代のジャズのビートを織り交ぜて、山中千尋ならではのジャズを聴かせてくれているところが良いですね。
ピアニストとしての山中千尋も忘れてはいません。随所随所で、ガンガンに弾きまくっています。効果的なタイミングで、山中のピアノが印象的に響く。
う〜ん、弾きまくるだけが、ジャズ・ピアノでは無いんやな〜。個性を如何に表現し、アピールするか。それが大事なんだよな。それを支えるのがアレンジであり、作曲なんですよね。演奏家には、良きアレンジ、良き作曲が必要なんだな〜ということを再認識しました。
このアルバム、「企画もの」といえば「企画もの」だけど、山中千尋の個性と才能が十分に活かされていて、「企画もの」ならではの「人工的な匂い」がしません。スウィング・ジャズのポジティブで明るいビートと雰囲気を根底に流しつつ、その上に自分の個性とバンドの個性を効果的に配し、魅力的な演奏としてアルバムにまとめ上げた、山中千尋のアレンジと作曲の才の「たまもの」でしょう。
ピアノ・トリオで弾きまくる山中千尋も魅力的ですが、僕は、彼女のアレンジと作曲の才に一番の魅力を感じます。また、今回はあまり全面には出ていませんが、シンセサイザーなど、エレクトリック・キーボードの使い方も堂に入ってきました。彼女のオリジナル曲での直球勝負的なアルバムも好きですが、今回の「企画もの」はなかなかのものだと思います。チック・コリアの様に、童話や物語に題材を求めた「コンセプト・アルバム」的な成果を期待してしまいますね〜。
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