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2010年2月15日 (月曜日)

カナダ出身のジャズジャイアント

バンクーバー冬期五輪が開幕した。日本はまだメダルの獲得は無いが、若手の入賞が幾つか出ている。入賞だって素晴らしい。メダル獲得だけが全てではない。入賞だって最低世界8位。凄いじゃないか。素晴らしいじゃないか。さすが、オリンピックは単純に素晴らしい。

バンクーバーと言えば「カナダ」である。カナダ出身のジャズ・ミュージシャンはいるのか。これがいるんですよ。それも「ジャズ・ジャイアント」と呼ばれる伝説のピアニストです。その名は「オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)」。

オスカー・ピーターソンと言えば「スイングの権化」。心ないリスナーは、オーバードライブ気味に、圧倒的迫力でスイングしまくるピーターソンのピアノを評して、「粋じゃない、奥ゆかしくない、派手だ、はしたない」という理由で、悪い意味で「スイングの権化」と呼ぶ。

でも、それは違います。力強く、圧倒的推進力で、グイグイと引っ張りつつ、圧倒的迫力でスイングしまくるジャズ・ピアノは、ピーターソンのピアノの以外に見当たらない。しかも、目眩くハイ・テクニック。高速パッセージの右手は、ジャズの歴史上、最高峰に位置するもの。加えて、ミッド・テンポからスロー・テンポな曲での圧倒的表現力、繊細な歌心は素晴らしいの一言。圧倒的迫力と繊細な歌心。この正反対の音が正しく同居し、お互いを引き立たせる、それが、ピーターソンのピアノの特徴。

残念な事に、ピーターソンは、1993年に脳梗塞で倒れ、歩く事が出来なくなったが、リハビリを重ね、その後、まだ左手が不自由ではあったが再びピアノを弾けるようになった。僕は、この再起後のピーターソンのピアノも、彼の人間性に直接触れることができるような演奏で、これまた大好きなのだ。

ここに『A Night in Vienna』(写真左)というアルバムがある。2004年9月20日のライブ録音。オーストリア・ウィーンでのコンサート・ライブ。パーソネルは、Oscar Peterson (p), Ulf Wakenius (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Martin Drew (ds) 。ベースのペデルセン以外は、あまり有名なミュージシャンでは無いが、これがなかなかの内容のライブです。脳梗塞に倒れてから、9年後のライブ。ピーターソンは、2007年12月23日に逝去しているので、逝去3年前のライブになります。
 

Peterson_vienna

 
ウィーンの観客が素晴らしい。ピーターソンに対して、リスペクトの念をしっかりと持って、演奏が終わる毎に、素晴らしい拍手をピーターソンに贈っている。そんな素晴らしい聴衆に見守られて、ピーターソンは持てる力を最大限発揮して、全編に渡って、素晴らしい、味のあるジャズ・ピアノを聴かせてくれる。

当然、左手は不自由である。でも、右手の回りは往年の「スイングの権化」という愛称を彷彿とさせる、スイング感、ドライブ感溢れる、一聴して「ピーターソンのピアノ」と判るもの。ハイ・テクニックでは無いが「味のある」ピアノを聴かせてくれる。特に、スローバラードは絶品。「When Summer Comes」「Requiem」での、ピーターソンのピアノは、限りなく美しい。

バックもしっかりとピーターソンのピアノを盛り上げる。特に、ギターのWakeniusは大健闘。ピーターソンの不足部分をしっかりサポートし、ピーターソンなれではの、バンド演奏全体のスィング感、ドライブ感をしっかりと維持する。そして、 PedersenのベースとDrewのドラムが、全体のビートを統制し、ピーターソンをガッチリと支え、かつ、ピーターソンを鼓舞するポジティブなビートを供給する。

そして、感動のフィナーレは「Hymn to Freedom(自由への讃歌)」。往年のテクニックは無いが、この「Hymn to Freedom」を演奏するピーターソンに触れるだけで、感動の一曲である。キング牧師の暗殺により、本来のアフリカン・アメリカンの公民権運動の挫折を経験、その先行きに絶望し、身の危険を感じつつ、この「Hymn to Freedom」の演奏を止めてしまったピーターソン。

しかし、晩年になって、脳梗塞に倒れ、奇跡の復活を遂げてから、ピーターソンは「Hymn to Freedom」を再び演奏するようになった。そのピーターソンの心意気や良し。演奏テクニックの良し悪しなど関係ない、その心意気、その精神が全面に出た、この「Hymn to Freedom」の演奏は実に感動的である。

ピーターソン最晩年の佳作ライブ盤だと思います。聴衆の暖かい雰囲気がダイレクトに感じることが出来て、その雰囲気に囲まれて、ピーターソンとバックメンバーが楽しそうに演奏を繰り広げていて、聴いていて、実にほのぼのとする内容です。ジャズはテクニックだけでは語れない。そんなことを再認識させてくれる、ピーターソン晩年のライブ盤です。
 
 
 
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