« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »

2010年2月の記事

2010年2月28日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・13

久しぶりに「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ、今日は第13回目である。ジャズ喫茶で流したいアルバムは、なにもジャズの歴史の中での有名盤ばかりではない。また、ジャズファンの人気の定盤ばかりではない。

ジャズの楽しみを十分に感じることが出来る、知る人ぞ知る、隠れ名盤、隠れ佳作が、この「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの対象となり得るアルバムになる。この「ジャズ喫茶で流したい」の対象となるアルバムのチョイスが、その「ジャズ喫茶」の見識であり、格式になる。

今日の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」で流れているのは、『The Jack Wilson Quartet Featuring Roy Ayers』(写真左)である。ピアニスト、ジャック・ウィルソン (Jack Wilson) の処女作。ロイ・エアーズ (Roy Ayers) のバイブラフォンが加わったカルテットの編成。改めて、パーソネルは、ROY AYERS (vib) JACK WILSON (p) AL McKIBBON (b) NICK MARTINS (ds)。1963年、Atlanticレーベルからのリリースです。

1曲目はボサノヴァの「コルコバード」。この演奏を聴くと、ピアノのジャック・ウイルソンの特徴が良く判る。ジャズとしての黒さは希薄ではあるが、演奏のベースに、そこはかとなくファンキーさが漂い、ジャジーさよりもポップさが上回る、ジャズというジャンルの中では「中性的な音」。

黒っぽくジャジーでもない、かといって、ファンキーコテコテでも無い。その両者の要素を演奏の底にそこはかとなく漂わせながら、表面上は、ポップでシンプルな、聴き易く、それでいて、全体を覆う雰囲気は紛れもない純ジャズという、ジャック・ウイルソン独特の音世界を楽しませてくれる。

Jackwilson_roy_ayers

そのジャック・ウイルソン独特の音世界に、これまた貢献しているのが、ロイ・エアーズ のヴァイヴ。ロイ・エアーズ はフュージョンというか、ジャズとファンクを融合させた音楽での成果の方で、アシッドジャズやヒップホップに関わる人々に評価されている。決して、純ジャズ側のミュージシャンでは無い。

でも、このアルバムでのロイ・エアーズのヴァイヴは、しっかりと純ジャズしている。ロイ・エアーズのヴァイヴの特徴は、透明なヴァイブの音色。ファンキーさは希薄、ジャジーな雰囲気は漂わせてはいるが、決して米国的では無い。どちらかと言えば欧州的。透明感と爽快感、そしてアーシーな雰囲気を底に漂わせながら、テクニックは正統派。ブルージーに攻めてきても、しっかりと透明感、爽快感が全面に出るところが面白い。

2曲目以降は、全て、ジャック・ウイルソンのオリジナル曲が並ぶ。どの曲を聴いてみても、ジャック・ウイルソンの非凡な作曲センスにビックリする。いずれも良い曲なんですよね。実にわかりやすいブルース・ナンバーが印象的。

地味で全面に出てくることはあまりないが、アル・マッキボン (AL McKIBBON) のベースも心地良い。ニック・マーティンズ(NICK MARTINS )のドラミングは堅実。とにかく、何度聴いても飽きの来ない、上質で品の良い、透明感と疾走感をベースに、ライト感覚溢れる、聴き易いポップなジャズ演奏を聴くことが出来ます。

良いアルバムです。ジャック・ウイルソンって、BlueNoteレーベルの人かと思っていたら、デビューはAtlanticレーベルの人だったんですね〜。でも、この人のジャズ・ピアノの音を聴いていると、Atlanticレーベルからのデビューって判るような気がします。このアルバムのリリースされた1963年当時、このジャック・ウイルソンのジャズ・ピアノとオリジナルの楽曲は、ポップさという面で、なかなか新しい感覚のものではなかったか、と思います。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月27日 (土曜日)

2010年2月号の更新です...

朝から大荒れの、我が千葉県北西部地方の今日の天気。強い雨の強い南風。まだ2月とはいえ、これって「春の嵐」の風情である。昼には雨は上がったが、夕方から、今度は時雨のような天気に早変わり。これって、初冬の天気でしょう。今年の季節の変わり目は、実にダイナミックである。

さて、我がバーチャル音楽喫茶『松和』のジャズ・フュージョン館、月次更新のコーナー『ジャズの小径』の2月号をアップしました。2月って、そう言えば28日まででしたね~。今月は可愛いお客さんもあり、2月度の「ジャズの小径」のアップがギリギリになりました。危ない危ない(笑)。

今月の『ジャズの小径』の特集は「山中千尋」。「ジャズの小径」では、山中千尋についてはデビューアルバムから、ずっとご紹介してきた。ちょっと、まとめてみると

『Living Without Friday』:2002年4月『ジャズの小径』
『When October Goes』:2003年3月『ジャズの小径』
『Madrigal』:2004年6月『ジャズの小径』
『Lach Doch Mal』:2006年10月『ジャズの小径』
『Abyss』:2007年9月『ジャズの小径』
『Bravogue』:2008年11月『ジャズの小径』
『After Hours』:2008年4月『ジャズの小径』

そう言えば、2005年9月にリリースされた『Outside By The Swing』のレビューが見当たらない。アップするのを忘れているようだ。近々アップしますね〜。

Runnin_world

さて、2010年2月、今回の『ジャズの小径』の特集は、ちょっと遅くなったが、その山中千尋の新譜。この山中千尋の最新作がなかなか良くて、今でも、気分転換にちょくちょく聴いている。

山中千尋の新作のテーマは「ベニー・グッドマン」。ベニー・グッドマン生誕100周年記念作品。なぜ、ベニー・グッドマンなのか。スイング・ジャズなのか。実は、山中千尋は、日頃からグッドマンのスモール・コンボを聴き込む大のグッドマン・ファンだという。そんな山中千尋が、得意の編曲・作曲の腕をふるって、スイング・ジャズを料理する。なかなか内容の期待できる、コンセプト・アルバムである。

ヴァイヴにティム・コリンズ、クラリネットにジャネル・ライヒマン、ギターにアヴィ・ロスバードを迎え、そのゲスト3人に山中千尋トリオを加えた、セクステットでの録音。アルバムタイトルは『Runnin' Wild』。今回の『ジャズの小径』では、この『Runnin' Wild』を特集。2月11日のブログ記事に加筆修正を加えて、『ジャズの小径』にアップしています。

さあ、バーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」にお越し下さい。ジャズ初心者の方々も、マニア、ベテランの方々も、ジャズ好きの方でしたら、基本的に大歓迎。私、松和のマスターをはじめ、従業一同、心から、お待ち申し上げております m(__)m  
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月26日 (金曜日)

懐かしのアルバムに出会った

昔々、良く聴いたアルバムなんだが、なんかの拍子に聴くこと無くなって、暫く忘れ去ってしまっているアルバムが幾枚かある。そのほとんどが、学生当時、財政難でLPとして購入できず、ジャズ喫茶でのリクエストで凌いでいたか、貸レコード屋で借りてきてカセットにダビングして良く聴いていたが、そのカセットがどこかへ行ってしまったか、である。

先日、iTunes Storeを徘徊していて、懐かしいアルバムに再会した。Gary Burton & Steve Swallow 『Hotel Hello』(写真左)。1974年5月の録音。Steve Swallow(スティーブ・スワロー)がベースとピアノ、Gary Burton(ゲイリー・バートン)がヴィヴラフォン、マリンバ、オルガン、エレクトリック・ピアノを担当した多重録音を含めたデュオ・アルバムである。

バートンのヴァイブは、ジャズ・ヴァイヴの最高峰、ミルト・ジャクソンのファンキー&ジャジーなヴァイヴとは正反対の、ファンキー色とは全く無縁の、爽快感豊かなクリスタルな響きとバートン独特の4本マレットが奏でる印象的な和音が特徴。ミルトのヴァイヴを米国的な音だとすると、バートンのヴァイヴは欧州的。印象的なエコーと音の深みが特徴なECMレーベルにピッタリなヴァイヴである。

そして、バートンの音楽の個性は、アメリカン・ルーツ・ミュージックをベースとした、シンプルでメロディアスなフォーキー調、賛美歌の様な響きを湛えたゴスペル調、8ビートがベースのビートの効いたロック調、そして、クリスタルなヴァイヴの響きを全面に活かしたロマンチシズム豊かなバラード調。そんなバートンの音楽の個性が、このアルバムでは全開である。

収録されたどの曲も、バートンのヴァイヴが美しい。躍動感溢れる曲も、しっとりと浪漫の花咲くバラードも、フォーキーでシンプルな曲も、どの曲においても、バートンのヴァイヴは美しく楽しい。特に、4本マレットの和音効果が独特の個性として響いてくる。そして、このバートンのヴァイヴは、スワローのベースと良く合っている。実に愛称の良いデュオである。

しかし、そのスワローのベースとのデュオにも増して、バートンのヴァイブと愛称が良いのが、スワローのピアノ。そして、自身が弾くオルガン&エレクトリック・ピアノである。特に、スワローのピアノとのデュオが実に良い感じで、今の耳で聴き直してみて意外な気がした。案外、チックとバートンとの歴史的なデュオは、このアルバムが事の発端かと思ったりもする。
 

Hotel_hellow

 
多重録音を採用していると思われるが、これがジャズなのか、と訝しがるジャズ・ファンの方々もいらっしゃると思われるが、このアルバムの様に、ファンキー色、ジャジーな雰囲気が希薄なジャズを録音し、我々に供給する、これってECMレーベルならではの仕業である。

でも、これもジャズ。音が粒だっていて、効果的なエコーが音を際立たせ、聴いていて、ただただ演奏の美しさを楽しさを愛でるのみ。ECMレーベルならではのアルバム内容だろう。

このアルバムには、大学時代、1人で密かに通っていた「秘密の喫茶店」で初めて出会った。ジャズを聴き始めて間もない頃である。このアルバムの音の美しさと楽しさ、そして躍動感に耳は釘付け。でも、どのレコード屋を探しても、このアルバムは見当たらず、「秘密の喫茶店」で、度々リクエストした。

大学の小径を抜けて、細い路地のような坂道を、川に向かって降りていく。坂の途中に、真っ白な壁の洋館が建っており、その白壁の向こうには、青々とした芝生の庭があって、その一角、趣のある古木の扉の向こうに、その喫茶店はあった。その中は、古い木調の雰囲気に囲まれた、15人程度しか座れないコンパクトなスペースで、オシャレな観葉植物があしらわれたその雰囲気は、学生街の雰囲気ではなかった。シックな大人の雰囲気だった。この喫茶店は、粗雑な友人達とは決して訪れない、僕だけの「秘密の喫茶店」だった。

オーナーは、とても品の良い、美しい、物静かな妙齢の女性だった。なんで、こんな所で、こんな女性が、喫茶店をお守りしているかが、とても不思議だった。しかも、その喫茶店で流れる音楽は、小粋なモダン・ジャズであったり、オシャレなフュージョンだったり、その趣味の良い、良く選ばれたアルバム達は、いつも、リッチな音空間を現出していた。

そんな「秘密の喫茶店」で流れていた、Gary Burton & Steve Swallow 『Hotel Hello』。躍動感溢れる曲も、しっとりと浪漫の花咲くバラードも、フォーキーでシンプルな曲も、どの曲においても、バートンのヴァイヴは美しく楽しい。その印象的なモノクロ・ジャケットと共に、しっかりと覚えている。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月25日 (木曜日)

チック・マニア「ご用達」ライブ

僕の一番好きなジャズ・ピアニストは「ビル・エバンス」。その次は「チック・コリア」。現役ジャズ・ピアニストの中では、圧倒的に「チック・コリア」のファンというか「マニア」である。

チックのピアノは、硬質でメロディアス。ロマンティシズム溢れるフレーズと、幾何学的でフリーなフレーズが「程良く」ブレンド。スパニッシュな香りと打楽器的な現代音楽的奏法が同居している、現役ジャズ・ピアニストの中で独特の個性を持つ「マルチ・キーボーダー」。最近、やっと、チックのフォロワーが出てきたのは、実に、チック・マニアとしては喜ばしいことである。

さて、今日聴いているアルバムは、そのチック・コリアの『Live in Montreux』(写真左)。1981年、スイスはモントルー・ジャズ・フェスティバルのライブ録音。パーソネルは、Joe Henderson (ts), Chick Corea (p), Gary Peacock (b), Roy Haynes (ds)。1997年、チック・コリアの主宰するストレッチ・レーベルから未発表音源としてリリースされたライブ盤である。

このライブでのチックは、ロマンティシズムとスパニッシュな香りを封印。実に質実剛健な、実に現代的なメインストリーム・ジャズをベースとした、どこかセロニアス・モンクを彷彿とさせる、個性的で現代音楽的な、モーダルでハードなジャズ・ピアノを展開している。

バックがゲイリー・ピーコックのベースというのが、このライブの特徴。正に、質実剛健な、実に現代的なメインストリーム・ジャズなベースワークを聴かせてくれる。このピーコックのベースって、とてもマニアックなんだが、聴き耳を立てると、それはそれは、凄いテクニックと素晴らしいベースラインを聴かせてくれている。
 

Cc_jh_montreux

 
そして、ドラムのロイ・ヘインズ。ロイ・ヘインズは、こんな個性的で現代音楽的な、モーダルでハードな演奏も直感的なドラミングで、グイグイとチックのピアノを鼓舞するのだ。そして、そんな先進的なピアノ・トリオのバッキングを得て、テナーのジョー・ヘンダーソンは、何時にも増して、先鋭的なテナーを聴かせてくれる。

全編、辛口で硬派なメインストリーム・ジャズで統一されています。チックのキーボードのコマーシャルな特色である、ロマンティシズムとスパニッシュな響きは全く無い。ただただ、モーダルでハードな、そして現代音楽的な、実に尖った、切れ味鋭いジャズ・ピアノを聴かせてくれる。

とにかく超辛口の日本酒のようなジャズ・ピアノ・カルテットです。甘さは全くありません。とにかく辛口、硬派、禁欲的。ゆったりと寛ぎながら聴くライブ盤ではありません。

チックのファンの中でも、マニアのレベルに達した、チック・マニア上級向けのライブ盤です。ジャズ初心者の方々、そして、チック・マニア初級の方々、チックの名前に惹かれて、決して、このアルバムを手にしないように(笑)。  
 
 
今日は凄く暖かな一日。この気温は既に春である。カレンダーを見ると、まだ2月。今年の2月は超寒いひと暖かな日が極端に訪れる、年配の身にとっては体調維持に苦労する2月だった。でも、これだけ暖かくなると、つい先週までの超寒かった日が遙か昔の様に思い出される。先週の超寒い日には、寒さに辟易してこんな俳句を詠んでいるのだ(笑)。

とぐろ巻き 寒波居座り ふて寝かな  
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

保存

2010年2月24日 (水曜日)

時にはこんなフュージョンを...

フュージョン・ジャズは裾野が広い。70年代初頭からのクロスオーバー系、70年代半ばから80年代前半にかけてのフュージョン系、そして、最近では耳当たりの良い、ライトジャズ的なビートに乗せたスムース・ジャズというジャンルがある。

そもそも、フュージョンって「融合」という意味なので、ジャズに他の音楽ジャンルの要素を上手く融合させれば、その音楽は「フュージョン・ジャズ」と呼んで良い、と思っている。まあ、音楽のジャンル分けなんて便宜上のものなんで、あんまり深刻に議論する話では無い。

今日は、時にはこんなフュージョンを、ということで、Vicente Amigo (ビセンテ・アミーゴ)の『Ciudad de Las Ideas(邦題 : イデアの街)』(写真左)を聴いている。2000年のラテン・グラミー賞で最優秀フラメンコディスクに選ばれたアルバム。ジャジーなアレンジとリズムに乗って、アミーゴのフラメンコ・ギターが縦横無尽に響き渡る。

ビセンテ・アミーゴは、セビージャ生まれのコルドバ育ち。子供のころからパコ・デ・ルシアを崇拝する、最も著名なフラメンコ・ギタリストのひとり。

Vicente_amigo_ciudad

敬愛するパコ・デ・ルシアのフラメンコ・ギターより、柔らかでモダン、ポップで判りやすく、多くのファンが親近感を持って接することの出来るフラメンコ音楽を達成している。

この『Ciudad de Las Ideas(邦題 : イデアの街)』も、とても聴き易く、とてもモダンでポップ。正統なフラメンコ・ギターではあるが、ジャジーなアレンジとリズムに乗って、耳当たりの良い、実に判り易いフラメンコ・ギターを聴かせてくれる。収録されたどの演奏も聴いていて実に心地良く、実に判りやすい。そして、実にリラックスした気分で聴くことのできるフュージョン・ジャズに仕上がっている。

曲によっては、フラメンコ音楽ならではの、印象的なボーカルが入っているものもあるが、違和感は全く無い。スムース・ジャズとフラメンコ・ギターのコラボ、融合である。まさに、こういう音楽をフュージョン・ジャズというんだろう。この『Ciudad de Las Ideas(邦題 : イデアの街)』を聴くと、フュージョンという言葉の意味を再認識してしまう。

特に、1曲目の「Tres Notas Para Decir Te Quielo」がとても美しい。天気の良い昼下がりに聴く、「Tres Notas Para Decir Te Quielo」は至福の時である。ジャズからはちょっと遠いかもしれないが、時にはこんなフュージョンも良いもんだ。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

2010年2月23日 (火曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・4

今日も「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズ、第4弾は「MJOをもう一丁」(笑)。

MJOとは「Manhattan Jazz Orchestra」の略。リーダーは、デビッド・マシューズ(写真右)。このオーケストラの編成は、オーソドックスなビッグバンドの編成とは異なり、4トランペット、4トロンボーン、2サックス、2フレンチ・ホーン、ベース・クラリネット、チューバ、ピアノ、ベース、ドラムから成り、ギル・エヴァンス・オーケストラに酷似している。

フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成が実に効果的。加えて、デビッド・マシューズのポップ性の高い、そして「判りやすくて楽しい」アレンジが素晴らしく、エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と寛ぎ感を効果的に配備して、とにかく聴いていて、あっけらかんとリラックスして聴ける、加えて、演奏者それぞれのテクニックも優れ、ビッグバンド・ジャズ入門として最適。

昨日は『Birdland』をご紹介したが、「判りやすくて楽しい」、あっけらかんとリラックスして聴けるビッグバンド・ジャズのアルバムはもう一枚ある。『Swing Swing Swing』(写真左)である。とにかく、収録曲を見て欲しい。

1. アイアンサイド
2. スウィング,スウィング,スウィング
3. ジャンピン・アット・ザ・ウッドサイド
4. ムーンライト・セレナーデ
5. A列車で行こう
6. 愛のコリーダ
7. マンテカ
8. サヴォイでストンプ

ねっ、なんか、アルバムに収録された曲目を見渡すだけで、ワクワクするでしょう(笑)。

Mjo_swingx3

冒頭は、70年代人気TVシリーズ『鬼警部アイアンサイド』のテーマ曲で、最近では『キル・ビル』にも使用された超有名曲「アイアンサンド」。ちなみに、この鬼警部アイアンサイドのテーマは日本テレビ系列で放映されていた「ウィークエンダー」のテーマ曲でした。僕には、この「ウィークエンダー」のテーマ曲のほうが馴染みがあるかな(歳がばれる?)。

5曲目の「A列車で行こう」は、下手にこねくり回したアレンジは無用。シンプルに疾走感を追求した、マシューズのアレンジが秀逸な、とにもかくにも、疾走感を撒き散らしながらのハイ・テクニック集団が奏でる、快速列車「A列車」で行こう、です。「判りやすくて楽しい」アレンジの「A列車で行こう」は、ついつい身体が動きます。

クインシー・ジョーンズの80年代初頭の大ヒット・ディスコ曲「愛のコリーダ」。こんな、いかにも俗っぽいディスコ曲を、魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズに仕立て上げている。リーダー、デビッド・マシューズの面目躍如である。

アルバム・タイトルの、2曲目「スウィング,スウィング,スウィング」は、リーダー、デビッド・マシューズの作曲によるオリジナル曲。これも、徹頭徹尾、魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズに仕立て上げられていて、聴いていて楽しく、意外と新鮮味がある。正統派ビッグバンド・ジャズのアレンジについては、この曲のアレンジが実に参考になる。

デビッド・マシューズのアレンジは、単純にジャズ・クインテットのアレンジをビッグバンドに置き換えつつ、フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成で「音の個性」を全面に出しつつ、決して、過去のビッグバンド・ジャズのアレンジ囚われない、現代のジャズならではの、シンプルでハードバピッシュな、そして「判りやすくて楽しい」アレンジが実に良いと感じます。

このMJOこと「Manhattan Jazz Orchestra」の演奏を聴くと、「シンプル・イズ・ベスト」という言葉を思い出す。魅力的かつ「判りやすくて楽しい」ことに勝ること無し「ビッグバンド・ジャズ」、である。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

2010年2月22日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・3

ちょっと間が開いたが「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズの第3弾である。

ビッグバンドの演奏曲って、ジャズ・スタンダードやポピュラーなポップス曲やロック曲が多く、やたら判りやすくて楽しいものが多い。若い頃は、その「判りやすくて楽しい」という部分がなんとなく嫌で、ビッグバンド・ジャズを食わず嫌いで通していた思い出がある。

でも、最近、ジャズを30年以上も聴いてきた結果、「判りやすくて楽しい」というのは、とても良いことなんだと思うようになった。判りやすくて、楽しくて、聴き応えがあるって、これって単純に楽しいのだ。そんな「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズを提供してくれるのが、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(Manhattan Jazz Orchestra:以下MJOと略す)である。

MJOの演奏するビッグバンド・ジャズは、とにかく判りやすい。迫力のある分厚いユニゾン&ハーモニー。判りやすく印象的なソロ、底を這う重低音ブラス、そして、曲の展開はドラマチックでメリハリ抜群。

エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と寛ぎ感を効果的に配備して、とにかく聴いていて、あっけらかんとリラックスして聴ける、加えて、演奏者それぞれのテクニックも優れ、ビッグバンド・ジャズ入門として最適。

ビッグバンド・ジャズ入門のみならず、オーケストラ率いるデビッド・マシューズの判りやすく、ビッグバンドの本質を良く踏まえたアレンジは、ビッグバンド・ジャズのマニアの耳にも十分に耐えるハイレベルなものだと思っている。

Mjo_birdland

そんなMJOのアルバム、どのアルバムの「判りやすくて楽しい」ものばがりであるが、そんな中でも、僕のイチ押しは『Birdland』(写真左)。収録曲は以下の通り。ジャズメンのオリジナル曲を中心に、有名な曲を取り揃えたアルバムである。

1. Birdland
2. Take five
3. Dania
4. The Chicken
5. Fever
6. September
7. Sing sing sing

冒頭の「Birdland」なぞ絶品である。ジャコのベースを重低音ブラスに置き換えて、ウェザー・リポート独特の「あく」を秀逸なアレンジで取り除いて、判りやすくて楽しいビッグバンド・ジャズの演奏に仕立て上げている。4曲目の「The Chicken」も、エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と重低音ブラスの音が魅力の、絵に描いたようなビッグバンド・ジャズ演奏に舌を巻く。とにかく、聴いていて楽しくて、自然と身体が動いて、足でリズムを取っている(笑)。

5曲目の「September」は、1970年代後半、ディスコ・フィーバーの中、一世を風靡した、アース・ウィンド&ファイアーの大ヒット曲。こんな俗っぽい曲をもってくるなんて、などと眉をひそめるビッグバンド・ジャズのマニアの方々もいらっしゃるでしょうが、これがまた、なかなか良いんですね。良くこんなコテコテファンキーなディスコ曲をビッグバンド・ジャズの楽曲にアレンジするもんだと感心する。

そして、極めつけはラストの「Sing sing sing」。ベニー・グッドマン楽団の代表曲であるが、これがまた絶品。エッジの立ったシャープな音が眩しく、ビッグバンド・ジャズならではの躍動感が素晴らしい。そして、デビット・マシューズのアレンジは、まさに今風の現代的な響きを湛え、ベニー・グッドマンのスイング時代とは異なる、あくまで現代のジャズのトレンドを下敷きとした疾走感溢れるビッグバンド・ジャズを提供してくれる。

良いビッグバンド・ジャズのアルバムだと思います。フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成は、あまり他に例がないんですが、この色彩豊かなブラスの響きが、これまたMJOの代表的な特徴だったりします。いやはや、素晴らしいですね。デビッド・マシューズ御大、隅に置けませんね〜。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月21日 (日曜日)

カナダ出身の70年代ロックバンド

バンクーバー冬期五輪も中盤に差し掛かり「宴もたけなわ」な状態である。メダルや入賞を目指して「悲喜こもごも」、選手達の熱戦が繰り広げられていて、毎日、ハイライト番組でそれを鑑賞するのが日課になっている。

さて、2月15日のブログ(左をクリック)では、カナダ出身の「ジャズ・ジャイアント」として、オスカー・ピーターソンをご紹介した。それでは、カナダ出身の70年代ロックにおける「有名なバンド」はいるのか、と問われれば「ありますよ〜」と答える。

そのバンド名は「ザ・バンド」。「ザ・バンド」は、オリジナル・メンバーとしては、1967年から1976年に活動した米国のロック・バンド。そのオリジナル・メンバーは、カナダ人4人(ロビー・ロバートソン、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、リック・ダンコ)とアメリカ人1人(リヴォン・ヘルム)という構成。基本的にはカナダ出身のロックバンドと言って良いかと思う。

ザ・バンドは僕の大のお気に入りで、高校時代に彼らの音楽に填って以来、今まで約30年以上、僕の中では、最高のロックバンドのひとつとして君臨している。

「アメリカン・ルーツ・ミュージック」のエッセンスを部分的に取り込んで、アレンジの妙としてそれを活用した米国系ロックバンド、ロック・ミュージシャンは大勢いるが、それは、部分的にエッセンスを取り入れただけで、本格的に「アメリカン・ルーツ・ミュージック」をベースとしたものでは無い。

The_band_beforeflood

彼らの音は「アメリカン・ルーツ・ミュージック」の数々の要素を演奏のベースとしており、70年代において、完全な「アメリカン・ルーツ・ロック」を表現していたバンドは、この「ザ・バンド」だけである。そういう意味では、最近トレンドとなって来た「アメリカン・ルーツ・ロック」の源と言えるだろう。

オリジナル・アルバムのご紹介は、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の懐かしの70年代館、「まだまだロック・キッズ」のコーナーに、「アメリカン・ロックの最高峰」(左をクリック)としてご紹介しているので、こちらをご覧頂きたい。どのオリジナル・アルバムも内容の濃いものばかりで、アメリカン・ルーツ・ロックを愛でるには最高のバンドであることは間違い無い。

でも、ライブ録音の音源が少なく、ザ・バンドのライブ演奏の素晴らしさが追体験できなくて、それだけがちょっと淋しい限りです。僕は、ボブ・ディラン&ザ・バンドの『Before The Flood (邦題:偉大なる復活)』(写真左)の、ザ・バンド単独のライブ演奏が、メリハリが効いていて、ライブならではの疾走感がまずまず表現されていて一番好きです。

ボブ・ディランのバックに回った時も、このメリハリと疾走感が良く効いていて、ディランのボーカルをガッチリとサポートしていて、結構格好良いです。ということで、ザ・バンドのライブ録音を愛でるに最適なアルバムは『Before The Flood (邦題:偉大なる復活)』に落ち着きますかね。

ミュージシャンズ・ミュージシャンとして、今なお、多くのロック・アーティストからリスペクトの念を持って扱われている「ザ・バンド」。カナダ人4人とアメリカ人1人が見た、感じた「米国の原風景」が、ザ・バンドのアルバムの中に散りばめられています。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月18日 (木曜日)

スムース・ジャズの源の一つです

僕の大学時代は、フュージョン全盛真っ盛り。フュージョン・ジャズも成熟指揮って、マンネリの影が忍び寄る、そんな峠を越えた「斜陽の時代」に入りかけたそんな時代。

当然、大学生活では、純ジャズは構えて聴き、生活の中で聴くジャズはフュージョンが中心。そんな生活の中で、しばらくの間、毎朝、起き抜けに聴いたフージョン・ジャズのアルバムがある。Spyro Gyraの『Catching The Sun』(写真左)。

冒頭の表題曲「Catching the Sun」が良い。ジャケット・デザインのイメージそのままに、トロピカルで爽快感溢れる、ネイチャー・ジャズという雰囲気が、朝の起き抜けにピッタリなのだ。爽快感が寝ぼけた頭を突き抜ける。実に清々しい気分になる。

起き抜けに決まって「Catching the Sun」。下宿の同居人からは「またこれか〜」なんて、毎日小言を言われたけれど、気にしない気にしない。このトロピカルで爽快感溢れる、ネイチャー・ジャズという雰囲気が良いのだ。今も良いのだ(笑)。

Catching_the_sun

しかし、このアルバム、ジャケット・デザインから受けるイメージとは違って、2曲目からは、アーバンな雰囲気の、ちょっとハードでファンキーなフュージョン・ジャズが続きます。1曲目「Catching the Sun」からの、この雰囲気の落差が、これまた「良い」。このアーバンでハードな雰囲気の楽曲で、起き抜けのボンヤリした頭がはっきりと覚醒する。

このアルバムは、2曲目以降の、ちょっとハードでファンキーなフュージョン・ジャズの楽曲が、実に内容が良く、優れていると思います。後の、現代の「スムース・ジャズ」の源と言って良い、当時のフュージョン・ジャズとは一線を画した、内容とレベルが一段上がった演奏が印象的です。

そして、Spyro Gyraの良さは、キャッチーで親しみやすいメロディーと絶妙なアンサンブルです。そして、歌心あふれるソロも魅力的。とにかく判りやすいし、親しみやすい、聴きやすい。これが、Spyro Gyraの最大の武器ですし、僕が、スムース・ジャズの源とする所以です。

『Morning Dance』『Catching the Sun』『Carnaval』。僕が勝手に名付けた「spyro gyraのトロピカル3部作」の2枚目。カリビアンな雰囲気から入って、アーバンな雰囲気の、ちょっとハードでファンキーな世界へ。良い感じです。今もこの『Catching The Sun』は大好きなフュージョン・アルバムの一枚です。 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月17日 (水曜日)

フュージョン・パーカッション

寒い日が続いている。とはいっても、2月半ばという時期からすると、これくらい寒い日がちょっと続くのは、当たり前といえば当たり前。と、寒さが嫌いな僕は、なんとか、この寒い日が続くことを、ポジティブにポジティブに考えるように努力している(笑)。

さて、こんな寒い日が続くと、トロピカルな、カリビアンな、明るくて暖かなジャズが聴きたくなる。そう言うことであれば、やはり、フュージョン・ジャズから、そんなアルバムを探すことになる。

なぜか冬になると、良く聴く、トロピカルで、カリビアンで、明るくて暖かなフュージョン・ジャズのアルバムがある。Ralph MacDonald(ラルフ・マクドナルド)の『Trippin』(写真左)。パーソネルを見渡すと、Ralph MacDonald (Per), Steve Gadd (ds), Arbaham Laboriel (b), Robert Mounsey (key), Jeffrey Mirnov (g), Robert Greenidge (Steel ds), Tom Scott (ts) 等々。なかなかの布陣。2000年のリリースである。

ラルフ・マクドナルドはパーカッション奏者。ドラマーのリーダー作は、ドラムだけでは音のバリエーションが少なく、なかなか演奏面をフィーチャーしてのリーダー作をまとめるのは、ちょっと辛いが、パーカッショニストは様々な種類の打楽器を使用することができるので、演奏面をフィーチャーをするにしても、様々なバリエーションのリーダー作をまとめることが出来るのが利点。

Trippin

ラルフは、この『Trippin』で、様々な種類の打楽器を使用して、様々なパーカションの音色を駆使して、アルバム全編に渡って、明るく暖かい打楽器の音を聴かせてくれる。聴いていて、単純に楽しいアルバムである。

冒頭の「Mango Island」を聴けば、このアルバムの全体の雰囲気が判る。仰々しいストリングスに乗って、チャカポコとラルフのパーカッションが鳴り響いて、続いて、ロバート・グリーニッジのスチール・ドラムが旋律を奏でる。ジャマイカ名産、スチール・ドラムの音を聴けば、気分は既にカリビアン。「Mango Island」の題名どおり、トロピカルな、カリビアンな、明るくて暖かな、ノンビリ長閑なフュージョン・ジャズが展開する。

このアルバムには、ボーカル曲が沢山入っている。ボーカルの入る曲は、ラルフのパーカッションが、ちょっとファンキーに響いて、これがまた良い。R&Bとフュージョン・ジャズを融合したような、スムース・ファンキー・ボーカルと呼びたい、リラックスした、ちょっとトロピカルで明るい楽曲が楽しい。ここまで来たら、純ジャズとはかけ離れてしまっているが、フュージョンとしてはギリギリ、ライトなスムース・ジャズとしても良いでしょう。

「名は体を表す」というが、とっても目立つ黄色いジャケットに、アロハを着たラルフが右手を挙げて「アイヤ~っ」て感じで立っている、このジャケットのイメージ通りの内容です。トロピカルな、カリビアンな、明るくて暖かな、ノンビリ長閑なフュージョン・ジャズ。寒い日に、暖かな部屋の中でビール片手に、夏の日を懐かしみながら、カリビアンな雰囲気に浸る。これ、実は結構個人的に気に入っているんですね(笑)。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。  
 
 

2010年2月16日 (火曜日)

美しく麗しき「カナダ組曲」

バンクーバー冬期五輪たけなわである。今日は、男子スピードスケート500mで、銀・銅2つのメダルを獲得。待望のメダル獲得である。前回のトリノの様に、最終日までメダル無しという状況を早々にクリア。立派である。

さて、昨日、カナダ出身のジャズ・ジャイアント、オスカー・ピーターソンのお話しをした。彼は、1964年9月、カナダ出身の証となるアルバムを録音している。その名も『Canadiana Suite(カナダ組曲)』(写真左)。パーソネルは鉄壁のトリオ、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。
 
このアルバムでのピーターソンは、「スイングの権化」と呼ばれる、力強く、圧倒的推進力で、グイグイと引っ張りつつ、圧倒的迫力でスイングしまくるジャズ・ピアノを横に置き、ピアノ・トリオの美しさ、表現力の豊かさを全面に出して、彼の祖国カナダへのオマージュをこめて、美しく麗しい「カナダ讃歌」を歌い上げている。

このアルバムを初めて聴いたのは、もう30年以上も前のこと。ジャズ・ピアノと言えば、ファンキーでスインギーと思っていたが、こんなに美しく、アーティスティックな表現が出来るんだ、と感じ入った思い出が甦る。このアルバムの演奏は、決して「商業音楽」では無い。このアルバムの演奏は「芸術」である。
 

Op_canadiana_suite

 
収録曲は次の通り。

1. Ballad To The East
2. Laurentide Waltz
3. Place St. Henri
4. Hogtown Blues
5. Blues Of The Prairies
6. Wheatland
7. March Past
8. Land Of The Misty Giants

曲名を眺めると、ピーターソンの祖国カナダへの「愛情」を強く感じることが出来る。8曲ともピーターソンのオリジナル。ピーターソンのピアノの精細さ、緻密さが十分に味わえる名盤だと思います。内省的なピーターソンも、これまた魅力的です。

バックのRay Brown (b), Ed Thigpen (ds)も、実に優れたバッキングを披露します。いつもとは違う、精細で緻密、内省的なピーターソンに、しっかりと反応して、これまた、柔らかで優しい、それでいてシッカリとしたビートを供給しつつ、アーティスティックなピーターソンをしっかりとサポートします。

このアルバムについては多くを語る必要は無いでしょう。聴けば判る。オスカー・ピーターソンの作曲の才とジャズ・ピアニストとしての懐の深さが感じられる素晴らしいアルバムです。  
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

保存

2010年2月15日 (月曜日)

カナダ出身のジャズジャイアント

バンクーバー冬期五輪が開幕した。日本はまだメダルの獲得は無いが、若手の入賞が幾つか出ている。入賞だって素晴らしい。メダル獲得だけが全てではない。入賞だって最低世界8位。凄いじゃないか。素晴らしいじゃないか。さすが、オリンピックは単純に素晴らしい。

バンクーバーと言えば「カナダ」である。カナダ出身のジャズ・ミュージシャンはいるのか。これがいるんですよ。それも「ジャズ・ジャイアント」と呼ばれる伝説のピアニストです。その名は「オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)」。

オスカー・ピーターソンと言えば「スイングの権化」。心ないリスナーは、オーバードライブ気味に、圧倒的迫力でスイングしまくるピーターソンのピアノを評して、「粋じゃない、奥ゆかしくない、派手だ、はしたない」という理由で、悪い意味で「スイングの権化」と呼ぶ。

でも、それは違います。力強く、圧倒的推進力で、グイグイと引っ張りつつ、圧倒的迫力でスイングしまくるジャズ・ピアノは、ピーターソンのピアノの以外に見当たらない。しかも、目眩くハイ・テクニック。高速パッセージの右手は、ジャズの歴史上、最高峰に位置するもの。加えて、ミッド・テンポからスロー・テンポな曲での圧倒的表現力、繊細な歌心は素晴らしいの一言。圧倒的迫力と繊細な歌心。この正反対の音が正しく同居し、お互いを引き立たせる、それが、ピーターソンのピアノの特徴。

残念な事に、ピーターソンは、1993年に脳梗塞で倒れ、歩く事が出来なくなったが、リハビリを重ね、その後、まだ左手が不自由ではあったが再びピアノを弾けるようになった。僕は、この再起後のピーターソンのピアノも、彼の人間性に直接触れることができるような演奏で、これまた大好きなのだ。

ここに『A Night in Vienna』(写真左)というアルバムがある。2004年9月20日のライブ録音。オーストリア・ウィーンでのコンサート・ライブ。パーソネルは、Oscar Peterson (p), Ulf Wakenius (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Martin Drew (ds) 。ベースのペデルセン以外は、あまり有名なミュージシャンでは無いが、これがなかなかの内容のライブです。脳梗塞に倒れてから、9年後のライブ。ピーターソンは、2007年12月23日に逝去しているので、逝去3年前のライブになります。
 

Peterson_vienna

 
ウィーンの観客が素晴らしい。ピーターソンに対して、リスペクトの念をしっかりと持って、演奏が終わる毎に、素晴らしい拍手をピーターソンに贈っている。そんな素晴らしい聴衆に見守られて、ピーターソンは持てる力を最大限発揮して、全編に渡って、素晴らしい、味のあるジャズ・ピアノを聴かせてくれる。

当然、左手は不自由である。でも、右手の回りは往年の「スイングの権化」という愛称を彷彿とさせる、スイング感、ドライブ感溢れる、一聴して「ピーターソンのピアノ」と判るもの。ハイ・テクニックでは無いが「味のある」ピアノを聴かせてくれる。特に、スローバラードは絶品。「When Summer Comes」「Requiem」での、ピーターソンのピアノは、限りなく美しい。

バックもしっかりとピーターソンのピアノを盛り上げる。特に、ギターのWakeniusは大健闘。ピーターソンの不足部分をしっかりサポートし、ピーターソンなれではの、バンド演奏全体のスィング感、ドライブ感をしっかりと維持する。そして、 PedersenのベースとDrewのドラムが、全体のビートを統制し、ピーターソンをガッチリと支え、かつ、ピーターソンを鼓舞するポジティブなビートを供給する。

そして、感動のフィナーレは「Hymn to Freedom(自由への讃歌)」。往年のテクニックは無いが、この「Hymn to Freedom」を演奏するピーターソンに触れるだけで、感動の一曲である。キング牧師の暗殺により、本来のアフリカン・アメリカンの公民権運動の挫折を経験、その先行きに絶望し、身の危険を感じつつ、この「Hymn to Freedom」の演奏を止めてしまったピーターソン。

しかし、晩年になって、脳梗塞に倒れ、奇跡の復活を遂げてから、ピーターソンは「Hymn to Freedom」を再び演奏するようになった。そのピーターソンの心意気や良し。演奏テクニックの良し悪しなど関係ない、その心意気、その精神が全面に出た、この「Hymn to Freedom」の演奏は実に感動的である。

ピーターソン最晩年の佳作ライブ盤だと思います。聴衆の暖かい雰囲気がダイレクトに感じることが出来て、その雰囲気に囲まれて、ピーターソンとバックメンバーが楽しそうに演奏を繰り広げていて、聴いていて、実にほのぼのとする内容です。ジャズはテクニックだけでは語れない。そんなことを再認識させてくれる、ピーターソン晩年のライブ盤です。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 
 

2010年2月14日 (日曜日)

未知のアルバムとの嬉しい出会い

クラシック同様、ジャズのアルバムはかなりの数に上り、ジャズのアルバムには、今まで見たことも聞いたことも無いものも多々ある。ジャケットを見ながら、こんなアルバムもあったんだ、と思いつつ、iTunesストアなどで試聴してみると、これがなかなか良かったりする。意外性というか、嬉しい出会いというか、こういうところが、ジャズのアルバム・コレクションの醍醐味だったりする。

今回、ゲットしたアルバムも同様な感じ。Billy Higginsの『Once More』(写真左)なんだが、こんなアルバム、今まで見たことも聞いたことも無かった。1980年5月の録音。パーソネルは、Billy Higgins(ds) Cedar Walton(p) Bob Berg(ts) Tony Dumas(b) 。

まず、リーダーの Billy Higgins(ビリー・ヒギンス)って誰?、ってことになるんだが、彼ってジャズ・ドラマーです。彼の全キャリアは、基本的にフリーランサーで、バップ・ドラミングの忠実なフォロワーでした。結構、1960年代前半のブルーノートの諸作にサイドメンとして登場することが多く、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンのお気に入りドラマーだったことが窺えます。

ビリー・ヒギンスのドラミングは、ハードバップ・ドラミングの最終形とでも形容できる、絵に描いたようなバップ・ドラミングが特徴で、大胆かつ繊細、メリハリの効いたドラミングは、ハードバップから、ハードバップよりのモード演奏に、その実力を発揮しました。特にシンバルの音が素敵です。

フロントのテナーは、若き日のBob Berg(ボブ・バーグ)。これまた、ボブ・バーグって誰?、ってことになる。彼は、1951年生まれのジャズ、フュージョン両刀使いのテナー・プレイヤーです。彼はクラシックで有名なジュリアード音楽院出身。テクニックには素晴らしいものがあり、そのハイ・テクニックが故に、ちょっと器用貧乏なところがあったが、1983年から、アル・フォスターの紹介で、マイルス・デイヴィスのバンドに3年間在籍、注目を集め、日本でもその名を知られるようになった。
 

Billyhiggins_oncemore

 
ボブ・バーグのテナーは、全音域を駆使しつつ、ダイナミックで歌心のある、実にオーソドックスなもので、そのテクニックとともに、聴き始めると、ついつい引き込まれてしまうような不思議な魅力のあるテナーです。チック・コリアのエレクトリック・バンドでのコンテンポラリーなブロウも良いですが、彼は、4ビートのオーソドックスなジャズの世界で、実に映える音をしていました。

しかしながら、2002年末、突然の訃報。ボブ・バーグは交通事故により逝去してしまった。享年52歳。ジャズ・ミュージシャンとしては、まだまだこれから円熟の時代を迎える時期だったので、あまりに早すぎる逝去であった。

さて、この『Once More』は、内容としては、実に真っ当なハードバップ・ジャズである。ハードバップ・ジャズと言っても、懐古趣味的なハードバップでは無い。しっかりとメインストリーム・ジャズの先端を行く、結構、ジャズ演奏としては「尖った」、ハードバップ・ジャズである。

ボブ・バーグのテナーは良く走り良く歌う。疾走感溢れるテナーの絶唱は、若き日のボブ・バーグを感じる事が出来て、ついつい聴き耳を立ててしまう。決して、コルトレーンの様では無い。コルトレーンの先を行く様な、コンテンポラリーな個性。ドライな音色とハイテクニックはフレーズ。一聴して、ボブ・バーグと判る個性では無いが、ずっと彼のテナーのフレーズを追いかけていると、彼のテナーは、今までのジャズ・テナー奏者には無いものだということを再認識する。

ビリー・ヒギンスのドラミングは、そのボブ・バーグをがっちりとサポートしつつ、結構、思いのままに叩きまくっている。そして、ピアノのシダー・ウォルトンが意外と良い。しっかりとしたタッチで、シダー・ウォルトンの転がるようなマイナーフレーズが気持ち良い。このアルバム全編に渡って、シダー・ウォルトンが結構弾きまくっています。シダー・ウォルトンのファンの方にはお勧めです。

1980年の録音ということですが、フュージョンの晩年期、時代的には、ソフト&メロウな音が流行だった時代に、このアルバムの演奏は、しっかりと純ジャズしていて、しっかりとメインストリーム・ジャズの先端を行く演奏内容に感心しました。僕の中では、意外と愛聴盤化しています。今まで、見たこともない、聞いたことも無いアルバムでしたが、このアルバムとは「嬉しい出会い」でした。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

2010年2月13日 (土曜日)

コルトレーンの「組曲」の最高作

コルトレーンの聴き直しを進めていて、最近、『A Love Supreme(至上の愛)』(写真左)を繰り返し聴いている。コルトレーン・ミュージックの神髄、コルトレーンの最高傑作との評価されるアルバムであるが、これがまあ、ジャズ初心者の頃、さっぱり理解できなくて、しばらくの間(それもかなり長い間)、全く聴かなかった時期がある。

コルトレーンの「聴きどころ」は3つあると思っている。1つは「卓越したアレンジ&作曲能力」、2つ目は「独特なバラード解釈」、3つ目は「高速ブロウ=シーツ・オブ・サウンド」。この3つの個性・特徴がコルトレーンの魅力。

で、この『A Love Supreme(至上の愛)』は、コルトレーンの「卓越したアレンジ&作曲能力」を愛でる最高の作品だということで合点がいったのは、恥ずかしながら「ここ5〜6年前」のこと。このアルバム全体を覆う「宗教性」がどうしても肌に合わなかったのが原因。

さて、このコルトレーンの『A Love Supreme』は、全体が一つの曲で、「承認」「決意」「追求」「讃歌」という四つの楽章からなる組曲の構成をとっています。組曲ということは、各章に共通する、アルバム全体を貫く「理念」があります。

コルトレーンはこのアルバムを『神への小さな捧げもの』と呼びました。この組曲形式のアルバムのテーマは「神」であり、宗教的な組曲ともいうべき作品です。「宗教的な告白と祈りの音楽」と言えるでしょう。

ジャズのアルバムに「理念」を持ち込み、そのテーマが「神」である、という部分はいろいろと意見が分かれるところだとは思いますが、少なくとも、この『A Love Supreme』は、コルトレーンの卓越した「コンポーザー&アレンジャー」能力の最高到達地点だと思います。

A_love_supreme

1964年12月9日の録音。時代的にも、ベトナム戦争への介入、ケネディ大統領の暗殺、黒人の解放を求める公民権運動の高まり等、米国は激動の時代を迎えつつありました。そんな時代背景を踏まえながら、コルトレーンが出した音楽的回答のひとつだと思います。

「至高のカルテット」と呼ばれた、テナーのコルトレーン、ピアノのマッコイ、ベースのギャリソン、ドラムのエルヴィン。ピアノのマッコイは重厚かつ分厚いバッキングでガッチリとコルトレーンを支え、ギャリソンは緊張感溢れる、ゴリゴリとした太いベースでビートを供給する。ドラムのエルヴィンは、コルトレーンに挑むように、自由奔放にポリリズムを叩きまくる。

当時のジャズの最先端の演奏と言えるでしょう。ハードバップの演奏フォーマットを限りなくフリーに近づけ、コードからモードまでの演奏形式を柔軟に使い分け、ジャズの演奏フォーマットの表現の幅を最大限に拡げた、素晴らしい演奏と言えるでしょう。

ただ、LP時代から感じていることなんですが、どうしても演奏時間が短いと感じるんですよね。「神への捧げ物」である壮大な組曲であるが故、LP一枚分の長さだと、何か物足りなさが残るんですよね。所謂、コンセプト・アルバムの類なので、プログレッシブ・ロックのアルバムの様に、LP2枚組のボリュームでブワーッと大々的にやって欲しかったなあ。

さすがに、コルトレーンの「組曲」の最高作だけあって、味わい深いアルバムであることには間違い無く、最近、ちょくちょく引き出してきては聴いています。この『A Love Supreme』は、とりわけ、コルトレーンの「卓越したアレンジ&作曲能力」を様々な角度から愛でることのできる傑作と言えるでしょう。
 
 
昨日より寒い日が続く。今日は朝から小雪が降る一日。気温も4度位までしか上がらず。昨日からずっと続く曇り空には、ちょっと気が滅入る。でも、この気候って、3月に入ってからよくあるパターン。やっぱり1ヶ月ほど季節は先に進んでいるんだろうか、と思いたい。早く暖かくならないかなあ。
 
にわか雪 不意を突かれて 猫走る 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月12日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・7

ピアノ・トリオの代表的名盤のご紹介シリーズの第7弾。今回は、僕の大のお気に入りピアニストのチック・コリア(Chick Corea)である。

チックのピアノ・トリオ盤は多々あるが、まず、真っ先に挙げたくなるのが『Now He Sings, Now He Sobs』(写真)だろう。パーソネルは、チック・コリア(p)、ミロスラフ・ヴィトウス(b)、ロイ・ヘインズ(ds)。1968年NY録音。Solid State盤でブルーノート・レーベルから発売されている。

このピアノ・トリオは、ビル・エバンスの確立した「3者3様のインプロビゼーション」を基本とした、メロディアスかつモーダルな展開を、ハードバップな展開を限りなくフリー・ジャズに近づけながら、「3者3様のインプロビゼーション」を超絶技巧なテクニックで、より高速に、より柔軟に、よりモーダルに仕立て上げた、メインストリーム・ジャズの最先端の演奏である。

ピアノのチックも、ベースのビトウスも、ドラムのヘインズも、ハイテクニックにバリバリと弾きまくっていて、その疾走感とテンションの高さは特筆もの。冒頭の「Steps - What Was」なんか、それはそれは、もう凄みのある演奏に押されて、知らず知らずのうちに襟元を正したりする(笑)。

「Steps - What Was」の出だしは、当時のチックお気に入りの、ハードバップな展開を限りなくフリー・ジャズに近づけ、現代音楽的なアブストラクトな響きを醸し出しながら、いきなり疾走し始める。それに呼応するヘインズのドラムとビトウスのベース。特に、ヘインズのドラミングが凄い。こんなにフリーに近い、柔軟で臨機応変でダイナミックなドラミングをする人とは思わなかった。

ビトウスのベースもブンブンと高速フレーズを連発して、ロインズのドラミングに併走し、フロントのチックのピアノを追撃する。そして、目眩く展開の中で、チックのスパニッシュでロマンティシズム溢れるフレーズを飛び出したりして、うへ〜っ、という感じになって、3者が渾然一体となって、フィニッシュへと突入する。一糸乱れぬ展開に、手に汗握り気分である。

2曲目の『Matrix』は、歌うような印象的なフレーズを持つ名曲。これまた、チックお気に入りの、ハードバップな展開を限りなくフリー・ジャズに近づけ、現代音楽的なアブストラクトな響きを随所に織り交ぜながら、ビ・バップ時代、ハード・バップ時代のジャズ・ピアノとは全く異次元の、切れ味の良い、高速パッセージを振りまいていく。この音は、唯一無二、チックのピアノ・トリオならではの音ですね。ここまでが、LP時代のA面です。
 

Cc_now_he_sings

 
3曲目からが、LP時代のB面。タイトル曲の「Now He Sings, Now He Sobs」から始まりますが、このB面は、チックの個性がより判りやすい展開が実に魅力的です。チックならではの黒いブルージーな感覚とチックお得意のスパニッシュ系ロマンティシズム溢れるフレーズが、実に魅力的です。チックの個性が一番輝くビートは、速すぎない落ち着いたミッドテンポなビートなのですが、その落ち着いたミッドテンポなビートに乗って、チックの個性的なピアノが浮き出てくるようです。

ラストの「The Law Of Falling And Catching Up」は、徹頭徹尾、現代音楽的なアブストラクトな音で固められている。しかし、ラストでのこのアブストラクトでフリーな音は、チックの個性で忘れてはならないもので、これはこれで、何故がジックリと聴き耳をたててしまうのだ。そして、これもジャズ、これもチック、と思いながら、LP時代A面の「Steps - What Was」に戻って、もう一度のこのアルバムを聴き直す。そんな「繰り返し」の魅力のあるピアノ・トリオ・アルバムです。

この『Now He Sings, Now He Sobs』は、

1. Steps - (with What Was)
2. Matrix
3. Now He Sings, Now He Sobs
4. Now He Beats The Drum, Now He Stops
5. The Law Of Falling And Catching Up

の5曲で聴くべきアルバムです。LP時代の曲構成が実に優れていて、アルバム『Now He Sings, Now He Sobs』としては、LP時代の5曲に限って、心ゆくまで鑑賞して頂きたいと思います。

というのも、オリジナルLPは、上記で述べた5曲入りだったんですが、現在出ているCDは13曲入りとボートラ大盤振る舞い。チックのファンにとっては、それはそれで嬉しいんですが、ピアノ・トリオ・アルバムとして、『Now He Sings, Now He Sobs』を心ゆくまで鑑賞するには、ボートラの8曲は、はっきりいって邪魔です。なお曲順も、上記のような曲順が正式なものです。リリース時期の異なるアルバムの中で、LP時代の曲順を全く無視して、単純に録音順に13曲を並べたものもあるので注意が必要です。

『Now He Sings, Now He Sobs』を楽しむには、本来の5曲に絞って聴くべきだと思います。僕は、iTunesにてプレイリストを組んで、本来の5曲だけを繰り返し聴けるようにしています。そうすると、5曲目ラストでのこのアブストラクトでフリーな音を聴きながら、これはこれで、何故がジックリと聴き耳をたててしまいつつ、これもジャズ、これもチック、と思いながら、LP時代A面の「Steps - What Was」に戻って、もう一度のこのアルバムを聴き直すという、そんな「繰り返し」の魅力を気軽に味わうことが出来ます。

CD時代のこのアルバムに触れる度に思います。ボーナス・トラックの追加も良し悪しだな、と。LP時代には、LP時代のフォーマットと収録時間との兼ね合いで、収録曲について良く考え、良く吟味して選択し、演奏順を決定しているアルバムも多々あって、LP時代のアルバムの成果については、それはそれで実に重要かつ実に貴重な成果なのだと思います。

チック・コリアのピアノ・トリオの源が体験出来る良いアルバムです。LP時代の5曲に絞れば、ジャズ初心者の方々にもお勧めです。ジャズ初心者の方々ほど、LP時代の5曲に絞って、じっくりと繰り返し聴いてほしいなあ、と思います。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

2010年2月11日 (木曜日)

遅まきながら「山中千尋の新作」

ちょっと遅くなったが、山中千尋の最新作がなかなか良くて、ちょくちょく聴いている。山中千尋の新作のテーマは「ベニー・グッドマン」。ベニー・グッドマン生誕100周年記念作品。ヴァイヴにティム・コリンズ、クラリネットにジャネル・ライヒマン、ギターにアヴィ・ロスバードを迎え、山中千尋トリオを加えた、セクステットでの録音。アルバムタイトルは『Runnin' Wild』(写真左)。

ベニー・グッドマンとは、1930年代後半にスウィング時代の原動力となり、常に時代の最先端をいくクラリネットのフレーズで強烈な印象を刻み続けたスィング・ジャズの偉人である。僕がジャズに触れた最初のきっかけが、高校時代に観た、映画の「ベニー・グッドマン物語」。スウィング・ジャズの楽しさ、乗りの良いビートがとても気に入った。マニアックにスウィング・ジャズを蒐集することは無かったけれど、今でも聴くのは好きな音ですね〜。

で、この山中千尋『Runnin' Wild』ですが、そのスウィング・ジャズを忠実に再現するなんて野暮なことは、当然してはいません(笑)。山中千尋は、ピアニストとしても実に魅力的であるが、僕は、とりわけ作曲、アレンジの才に注目している。今回のアルバムでも、その作曲、アレンジの才能が全開である。

聴いていて、アレンジが実に良い。これは面白いなあ〜、これは小粋やなあ〜、というが随所にあって、アルバム全編に渡って聴いていて楽しい、サクッと「ジャズの演奏を楽しめる」アルバムに仕上がっています。スウィング・ジャズの雰囲気をしっかりと掴み取って、スウィング・ジャズのエッセンスをしっかりと踏まえた、全編、ポジティブで明るく、現代のジャズのビートを織り交ぜて、山中千尋ならではのジャズを聴かせてくれているところが良いですね。

Cy_runnin_wild

ピアニストとしての山中千尋も忘れてはいません。随所随所で、ガンガンに弾きまくっています。効果的なタイミングで、山中のピアノが印象的に響く。

う〜ん、弾きまくるだけが、ジャズ・ピアノでは無いんやな〜。個性を如何に表現し、アピールするか。それが大事なんだよな。それを支えるのがアレンジであり、作曲なんですよね。演奏家には、良きアレンジ、良き作曲が必要なんだな〜ということを再認識しました。

このアルバム、「企画もの」といえば「企画もの」だけど、山中千尋の個性と才能が十分に活かされていて、「企画もの」ならではの「人工的な匂い」がしません。スウィング・ジャズのポジティブで明るいビートと雰囲気を根底に流しつつ、その上に自分の個性とバンドの個性を効果的に配し、魅力的な演奏としてアルバムにまとめ上げた、山中千尋のアレンジと作曲の才の「たまもの」でしょう。

ピアノ・トリオで弾きまくる山中千尋も魅力的ですが、僕は、彼女のアレンジと作曲の才に一番の魅力を感じます。また、今回はあまり全面には出ていませんが、シンセサイザーなど、エレクトリック・キーボードの使い方も堂に入ってきました。彼女のオリジナル曲での直球勝負的なアルバムも好きですが、今回の「企画もの」はなかなかのものだと思います。チック・コリアの様に、童話や物語に題材を求めた「コンセプト・アルバム」的な成果を期待してしまいますね〜。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。  
 
 

2010年2月10日 (水曜日)

企画盤と言って侮る無かれ

企画盤だからと言って、端から「作られたジャズなんて聴く気も起こらない」と憤る先輩評論家諸氏がいたりする。確かに以前、企画盤には、その内容がよろしくないものが多かったのも事実。でも、どんなアルバムだって、ちゃんと聴いてみなければ判らないでしょう、というのが僕の持論。

確かに、最初、このアルバムの情報を見た時は「胡散臭かった」。マイルスに繋がりの深いメンバーが、題材もマイルスに縁のあるものを選んで演奏し、その演奏を御大に捧げた盤なので、余計に「胡散臭かった」。よって、恥ずかしながら、発売された時には、購入を控えた経緯がある。しかし、前にも書いたように、ちゃんと聴いてみなければ判らないでしょう、ということで、大いに自分の行動を反省し、ちゃんと聴いてみました。

で、これがなかなかの内容なんですね。アルバムのタイトルは『A Tribute to Miles』(写真左)。パーソネルは、Wallace Roney (tp), Wayne Shorter (ts, ss), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。1992年9月の録音。

う〜ん、これは絵に描いたような、企画盤的人選ですよね。 Wayne Shorter (ts, ss), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds) って、1960年代、マイルスの黄金のクインテットのバック・メンバーではないですか。トランペットは、マイルスの代わりに、マイルスを敬愛し、マイルスのコピーを自認するウォレス・ルーニー。これも絵に描いたような企画盤的人選(笑)。

でも、企画盤であるが故に「作られたジャズなんて聴く気も起こらない」の一言で評価するのは明らかな間違いな、なかなかに優れた内容に、ちょっと軽い驚きを感じる。

Tribute_to_miles

とにかく、演奏メンバー全員が溌剌と、イマージネーション豊かに演奏を繰り広げている。企画盤でありがちな、表面を撫でるような演奏では決してない。マイルスのモード演奏の思想を、現在の、メンバーの最大のテクニックとイマージネーションを持って演奏表現する。そんな気概と、そんな強迫観念を感じる演奏である。

「強迫観念」とはどういうこと、と思われる方々がおられるでしょうが、この「マイルスに縁のあるものを選んで演奏し、その演奏を御大に捧げた」演奏において、表面を撫でるような演奏に終始したら、マイルスが何て言うのか、想像しただけで、このアルバムの参加メンバーは「ゾッと」するのではないだろうか。マイルス御大に叱られぬよう、駄目出しされぬよう、しっかりとハード・バップし、しっかりとモード・ジャズし、加えて、最新のジャズ演奏の要素をしっかり加えないと、マイルス御大は満足すまい。

そんな、マイルス門下生ならではの強いテンションと強迫観念の中で、メンバーそれぞれが、マイルス配下のいた時よりも、遙かにグレードアップしたモード・ジャズを聴かせている。マイルスがこの演奏を聴いたら思うだろう。なんだ俺とやっていた時よりテンションが高いじゃないか。でも、イマージネーションはまだまだだけれどな、なんて声が聞こえてきそう(笑)。

マイルスは辛口だからなあ。でも、このアルバム『Tribute to Miles』は良い内容だと思います。メンバーそれぞれがハイテンションの下、現時点で、自らの最高の演奏を展開するよう心がけていることが手に取るように判ります。

特に、ジャズ初心者の方々に、マイルスの考える「モード・ジャズ」って、どんな雰囲気なのか、それが実に判りやすい形で表現された、実に格好のサンプル的内容のアルバムです。それから、1960年代、マイルスの黄金のクインテットのバック・メンバーって、どれだけ凄かったのか、非常に良く判る演奏内容です。ハービーもショーターも、そして、ロンもトニーも素晴らしいです。

そして、マイルスの息子的存在である、ルーニーも溌剌としていて、ペットの音もブリリアント。マイルスのペットを明るく溌剌としたような音は、正にルーニーの個性と言っても良いでしょう。このアルバムでのルーニーのペットは立派だと思います。マイルスのコピーなどという揶揄に負けず、どんどんこの路線で、ガンガン行って欲しいと思っているんですが・・・。ルーニー頑張れ(笑)。    
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。  
 
 

2010年2月 9日 (火曜日)

時には「和みのジャズ」も良い

テンション溢れるジャズ、歴史的に名盤と言われるジャズ、そんなジャズを聴くのは楽しいが、長時間、そんなジャズを聴き続けると、耳が感性が疲れてくる。ちょっと休みたくなる。耳を感性を休めたくなる。

そんな時に聴く「和みのジャズ」がある。そんな「和みのジャズ」を聴いて、耳を感性を休めて、ジャズが楽しいものであることを、ずっと維持しつつけるのだ。

そんな「和みのジャズ」の一枚が、Milt Jackson『Ballads & Blues』(写真左)。1956年1月、2月の録音。パーソネルを述べるまでも無い。このアルバムは、ミルトの、バグス(Milt Jacksonの愛称)のヴァイヴを愛でるアルバムである。

ポジティブなブルース・フィーリング、そして、端正で流麗なバラード表現。若き日のミルト・ジャクソンの溌剌とした、ソロ・アルバムの第1弾。ヴァイブの音がとても活き活きとして、弾けるような硬質な響きがとても若々しい。

バグスの素晴らしいテクニックと歌心溢れる演奏で、ヴァイブの粒立ちの良い音が際立って、ヴァイブがこんなにも歌う楽器だったことを再認識させてくれます。『Ballads & Blues』とは言い得て妙なタイトル。ソロ・パフォーマンスのバグスのトレード・マークですね。

Milt_ballads_blues

この『Ballads & Blues』って、ミルト・ジャクソンのアルバム紹介に出ることは殆ど無いし、もとより、ジャズの歴史を揺るがす名盤でも無い。でも、このアルバムでのミルト・ジャクソンのヴァイヴは、それはそれは絶品であり、それはそれは聴き応えのある名演である。

そのミュージシャンの代表盤として紹介されることは殆ど無いし、ジャズの歴史に残る名盤でも無い。ジャズのアルバムには、こんなアルバムがゴロゴロしているんですよね。あるミュージシャンのアルバムを組織的に聴き進めていたり、たまたまネットをサーフィンしていて、そんな「個人的な隠れ名盤」に出会うんですよね。

時には「和みのジャズ」も良い。ゆったりとリラックスして、耳を感性を休めて、ジャズが楽しいものであることを、ジャズが素晴らしいことを、心ゆくまで楽しむ。今回は、Milt Jackson『Ballads & Blues』。このバグスのヴァイブを聴いて「ジャズってええなあ」と、微笑みを湛えながら、本当に心から思うのだ。
 
 
暖かい一日。というか暖かすぎる一日。東京では最高気温が21度(!)。4月中旬から下旬の気温ではないか。はて、今って、2月9日だよな〜。う〜ん、今年の冬の気温の上がり下がりって、実に激しいものがあるなあ。それでも、明日は寒さがちょっと戻るとか。先週は雪が降ったり、なにかと忙しい今年の2月である。

それでも、夜空を見上げれば、春の兆しがしっかりと見て取れる。夜半前、寝る前に北の空を見上げれば、北斗七星が、その柄杓で、春の雰囲気を地上に振りかけているようだ。そんな北斗七星を見れば春は近い。
 
春近し 夜空に高く 寒北斗 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

2010年2月 8日 (月曜日)

素晴らしく伴奏上手のハービー

昔から、ハービー・ハンコックは伴奏上手であると睨んでいる。マイルスの下でピアニストしている時から、そうだったと思っている。マイルスのバックで、ショーターのバックで弾くハービーのピアノは絶妙だった。

ハービーの伴奏上手は、マイルスの薫陶の賜だろう。マイルスはハービーに究極の薫陶を垂れている。「どうバッキングして良いか判らない時は何も弾くな。無理して弾くことは無い」。なんと含蓄のあるアドバイスだろう。これぞ、バッキング(伴奏)の極意だろう。

ハービーのバッキングは「間」と「音を選んだ」、音数の少ない、実に効果的なバッキングが特徴。決して、フロント楽器のソロを邪魔すること無く、しっかりとその合間を縫うように音を重ねていく。その絶妙の「間」と音の選び方が素晴らしい。なんだか「沈黙は金、雄弁は銀」という諺を思い出す。

その絶妙の伴奏テクニックを駆使して、ハービーは、ジャズ・ボーカルとのコラボを始めた。その直近の成果が『River: The Joni Letters』(写真左)。2007年のリリース。ハービーとしては、9年ぶりの純ジャズ・アルバム。

シンガーソングライター、ジョニ・ミッチェルへのトリビュートがテーマ。ジョニ・ミッチェル本人、ノラ・ジョーンズ、コリーヌ・ベイリー・レイなど著名な実力派女性ヴォーカリストが参加した豪華絢爛なボーカル・アルバムである。

当然、それぞれのフロントの女性ボーカルが出色の出来だが、それ以上に、バックを務めるバンドの伴奏が素晴らしい。パーソネルは、Herbie Hancock (p), Wayne Shorter (ss,ts),  Dave Holland (b), Vinnie Colaiuta (ds), Lionel Loueke (g)。う〜ん、良く考えられた、素晴らしい人選ではないだろうか。
 

Hh_river

 
フロントのボーカルのバッキングで飛び抜けて素晴らしいのが、ハービーのピアノとショーターのサックス。この2人のバッキングが出色の出来である。遠い昔のマイルスの薫陶そのままに、「間」と「音を選んだ」、音数の少ない、実に効果的なバッキングが素晴らしい。

そして、意外と言っては失礼なんだが、ホランドのベースとカリウタのドラムが、これまた、テンション溢れ、実にしなやかで音数は少ないが、ハイテクニックを武器に、効果的に、実にメリハリの効いたビートを供給する。特にリズムの野生児、ビニー・カリウタが、こんなに繊細でしなやかなドラミングをするなんて、とにかくビックリした。

このアルバムに収録された楽曲の全てが、ミッドテンポの曲からスロー・バラードと、静かで、ゆったりとした地味目のテンポの曲ばかりなんだが、これが不思議と一本調子にならず、マンネリに陥らず、最初から最後まで飽きずに聴き通せる。これは、ハービーとショーターの出色のバッキングと、ホランドとカリウタのハイテクニックでメリハリのあるビートの供給の賜だろう。

ハービーは伴奏上手。ハービーのソロは「間」を活かしつつ、モーダルで流れるようなフレーズが持ち味。ちょいとキャッチャーなフレーズからは離れたところに、彼のソロの素晴らしさがあるので、どうしても、メリハリの効いた、大向こうを張ったソロを期待されると、ちょいと辛い。

それでも、この伴奏の素晴らしさは絶品である。このアルバムのハービーこそが、純ジャズ・ピアノのハービーの究極の姿だと僕は思っている。それほど、このアルバムでのハービーのピアノは絶品である。  
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

2010年2月 7日 (日曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・6

2月5日のブログ(左をクリック)で、ブルーノートの『Sonny Clark Trio』をご紹介したが、同一タイトルの『Sonny Clark Trio』は、もう一枚存在する。Timeレーベルからリリースされた、タイム盤『Sonny Clark Trio』(写真左)である。

1960年3月の録音。パーソネルは、Sonny Clark (p), George Duvivier (b), Max Roach (ds)。収録された楽曲は、全作オリジナル作品で構成されており、ソニー・クラークの作曲の個性を愛でるに最適なトリオ・アルバムである。

ソニー・クラークのピアノの特徴は「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」である。タッチは強くて深い。独特な打鍵のタイミング。テクニックは端正。しかもハイ・テクニック。速いパッセージもしっかりと弾きこなす。バラードも情緒的で良し、ソロ・ピアノもなかなかの内容。けれど、どの曲調でも「マイナーな雰囲気」がしっかりと漂う。

この、タイム盤の『Sonny Clark Trio』は、ソニー・クラークのピアノの個性と、ソニー・クラークのオリジナル曲にて、そのピアノの個性を最大限に愛でること、そして、クラークの作曲の才を体験出来る、素晴らしい、ピアノ・トリオである。

逆に、ブルーノートの『Sonny Clark Trio』は、スタンダード曲中心の構成で、スタンダード曲の演奏を通じて、他のピアニストと比較して、ソニー・クラークのピアノの個性を確認することが出来る。

Time_sonny_clark

ソニー・クラークの個性である「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」は、ジャズ・ピアノを聴き込んだマニアでないと、判り難いと言えば判り難い。スタンダード曲を通じて、その個性を他のピアニストと比較することで明確にする、という、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンの戦略は正しい。

逆に、このタイム盤の『Sonny Clark Trio』は、ソニー・クラークのオリジナル曲を通じて、ソニー・クラークの個性を確認することが出来る優秀盤。加えて、ソニー・クラークの作曲能力の高さを確認することができる、ソニー・クラークの代表盤の一枚となっている。

このタイム盤の『Sonny Clark Trio』では、ソニー・クラークのオリジナル曲を通じて、したたり落ちるような「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」が、どの曲からも感じ取る事が出来る。スタンダード曲の演奏よりも、ソニー・クラークの個性が強く出ることが、このタイム盤の特徴だろう。

同時に、ソニー・クラークの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」が、より強く出るタイム盤は、ジャズ初心者の方々には、ちょっとアクが強いかもしれない。スタンダード曲に比べて、キャッチャーな旋律にやや乏しいのだ。

それでも、ソニー・クラークの個性は、このタイム盤で最大に感じる事ができるのだから、このタイム盤『Sonny Clark Trio』は、ジャズ・ピアノ・トリオの歴史を感じる上でも、必須のアイテムといえるだろう。
 

今日の千葉県北西部地方は、日中は台風の様な西風、北風の強い一日。とっぷりと日が暮れて、夜空を見上げれば、南の空にド〜ンとオリオン座が目に飛び込む。夜8時頃、この位置にオリオン座が来ると、いよいよ「春立てり」である。南の空にすっくと立つオリオン座は、春を呼ぶ星空のサインである。
 
凍みる夜 闇にオリオン 仁王立ち 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 
 

2010年2月 6日 (土曜日)

米国西海岸ロックの歌姫

ウェストコースト・ロックの歌姫と言えば、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)」。70年代の米国西海岸ロックの中心ミュージシャンの1人で、そのルックスと併せて、女性ボーカリストの中で、圧倒的な人気を誇っていました。僕も好きでしたね〜。

バンド時代とソロ2枚目あたりまではカントリーフォーク中心の曲構成でしたが、徐々にロック色を強め、1971年にリリースされた『Linda Ronstadt (album)』(写真左)あたりが、リンダにとっての、米国西海岸ロックの始まりでしょうか。なんせ、後の米国西海岸ロックの雄、イーグルスがこのアルバムのバックバンドを務めていたんですからね〜(当時はまだ無名でした)。

このアルバムの特徴は、Jackson Browne, Eric Kaz, Johnny Cash, Livingston Taylor, Woody Guthrie, Neil Young, Eric Andersen 等のシンガー・ソングライター(以降SSWと略)、そして、バックバンドのイーグルスのメンバーからは、Raynard Minerの作品を取り上げており、さしずめ、当時の米国西海岸ロックのSSWのショーケースの様な面持ちです。

収録された楽曲の全体的な雰囲気は、当時、「カントリーの歌姫」と呼ばれていただけあって、カントリー・フォーク色の強いソフト・ロックって感じです。そのカントリー・フォーク色の強い雰囲気の中に、幾曲か、キラリと光る、趣味良くロック色の濃い楽曲があり、その曲でのリンダのボーカルはパンチと「こぶし」が効いていて、実に活き活きと歌っている。そこが、このアルバムの良いところです。
 

 Linda_ronstadt_album

 
決して、カントリー・フォーク色の強い楽曲が悪いと言っている訳ではありません。逆に、カントリー・フォーク色の強い楽曲の出来が良いが故、その出来の良いカントリー・フォーク色の強い楽曲の中で、キラリと光る、趣味良くロック色の濃い楽曲が配置されている、というところがこのアルバムの「ミソ」となっています。

LP時代の収録曲の構成は、A面がスタジオ録音、B面がライブ録音。僕はB面のライブ録音が好きで、内容的にも評価してました。なんせ、バックバンドの演奏含めて「上手い」。リンダも声量もタップリ、独特の艶とパンチのある、ちょっとセクシーなボーカルが実に良く映えている。加えて、ライブ録音の方が「ロック」しています。

僕は、このアルバムは70年代の後半、大学時代に手にしました。一回聴き終えて、もう暫くはこのアルバムにドップリ(笑)。今の言葉で言う「ヘビー・ローテーション」でした。冒頭の「Rock Me On The Water」がかかると、友人達が「またこれか〜」って閉口していたのを思い出しました(笑)。

このアルバムを聴いていると、遙か彼方、米国西海岸の風景が頭の中にブワ〜ッと広がるんですよね。カントリー・フォーク色の曲とロック色の曲が上手くブレンドされて、リンダの個性が良く判る、良い内容のアルバムになっています。リンダ・ロンシュタット入門盤としてもお勧めです。

今日はとても寒い一日。我が千葉県北西部地方は、最高気温は7度あたりまでしか上がらず。お昼前頃から強い西風がビュービュー吹きつけ、外に出るとあっと言う間に体温を奪われる、そんな一日。それでも、太陽の日差しは着実に力強さを増し、日も長くなった。立春を過ぎ、春の兆しが徐々に忍び寄る雰囲気が実感として感じられる、そんなここ2〜3日の気候である。

残雪も 心細げに 春立てり  
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

2010年2月 5日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・5

久しぶりに「ピアノ・トリオの代表的名盤」シリーズである。今日は第5弾。ケニー・クラークである。

ケニー・クラークは、ジャズを聴き始めた、ジャズ初心者の頃からのお気に入りのジャズ・ピアニスト。初めて聴いたアルバムが、ブルーノートの『Sonny Clark Trio』(写真左)。ジャズ入門本で読んで、これは、と思い購入。

冒頭の「Be-Bop」と2曲目の「 I Didn't Know What Time It Was」で一目惚れ(2曲だから二目惚れか?)。何と言ったらいいのか、ジャズ特有のマイナーさ、というか、ジャズ特有の「ほの暗さ」が、当時、ジャズ初心者の心に響いた。ソニー・クラークのピアノのマイナーな響きは、ジャズ初心者の僕にも「これはなんか実に個性的で、自分の感性に合う」と思った。

ソニー・クラークのピアノの特徴は「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」である。タッチは強くて深い。独特な打鍵のタイミング。テクニックは端正。しかもハイ・テクニック。速いパッセージもしっかりと弾きこなす。バラードも情緒的で良し、ソロ・ピアノもなかなかの内容。けれど、どの曲調でも「マイナーな雰囲気」がしっかりと漂う。

ハイ・テクニックでスインギーだからといって、ウィントン・ケリーの様なハッピー・スインガーでは無い。タッチは強くて深く、独特な打鍵のタイミング。そして、シンプルで端正。しかもハイ・テクニック。速いパッセージもしっかりと弾きこなす。バラードも情緒的で良し、ソロ・ピアノもなかなかの内容。とくれば、ビル・エバンス的と思うが、それも違う。

う〜ん、なんと表現したら良いか。そう、ビル・エバンスのロマンティシズムをマイナー調に捻った、とでも表現したら良いか。そして、こもったような「ほの暗さ」をまぶしたようなピアノ。

Sonny_clark_trio

タッチは強くて深く、独特な打鍵のタイミング、そして、シンプルで端正なので、ポジティブな雰囲気が底に流れ、決して「暗く」は無く、決して「ネガティブ」では無い。そこはかとなく漂うファンキーさ、明確なジャジー的雰囲気と相まって、「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」なピアノの音が実に魅力的かつ個性的。

その「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」という特徴が、5曲目「Softly As In A Morning Sunrise」で全開となる。実に印象に残るマイナーに捻ったシンプルな響き。底に漂う「ほの暗さ」が堪らない。それでいて、タッチは強くて深い。テクニックは端正。いやはや、この曲の演奏には「ジャズらしさ」を強烈に感じる。

改めてパーソネルは、Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1957年10月の録音。ソニー・クラークの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」なピアノには、メリハリの効いた、チェンバースのベースとフィリー・ジョーのドラムが相応しい。さすが、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンの慧眼である。

極めつけは、恐らく、ソニー・クラークのピアノの音にじっとりと漂う「ウェット感」。この「ウェット感」は米国的では無い。ロックで言えば、実に「英国的」。僕は、このソニー・クラークの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」と、そのピアノの音に漂う「ウェット感」に、今でもしっかりと「やられた」ままである(笑)。

ジャケット・デザインも秀逸(LPサイズなら「なお良し」)。今でも、ソニー・クラークのピアノを聴くと、じわーっと心が優しくなって、しっかりと内省的になる。そして、心がリラックスして、ストレスが解放される。ブルーノートの『Sonny Clark Trio』は、僕のジャズ・ライフの源の一つである。
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 
 

2010年2月 4日 (木曜日)

マッコイ・タイナーの面目躍如

マッコイ・タイナーは伝説のピアニスト。かのジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのメンバーである。1938年生まれなので、今年、72歳になる。スケールが大きく、ガーン、ゴーンという、明確で力強い、男性的で輪郭が鮮やかなピアノ・タッチが特徴のピアニストである。

あのテナーの最高テクニシャンであったコルトレーンのバッキングを長く務めただけあって、自らが全面に出てガンガンに弾き倒すよりは、フロント楽器のバッキングに回って、ガーン、ゴーンという、明確で力強い、男性的で輪郭が鮮やかな「バッキングのピアノ」が素晴らしい。

僕は、マッコイの本質は「バッキング」にあると睨んでいる。マッコイの本質は「バッキング」にあるとすると、フロント楽器を含めたカルテットやクインテットの演奏が、そのマッコイの本質を心ゆくまで愛でることのできる「最適な演奏フォーマット」だと思っている。

そんなマッコイ・タイナーの「バッキング」の素晴らしさを感じることのできるアルバムが2008年にリリースされている。その名も『Guitars』(写真左)。

McCoy Tyner (p), Ron Carter (b), Jack Dejohnette (ds) との豪華なピアノ・トリオをバックに、Bill Frisell、Marc Ribot、John Scofield、Derek Trucks の4人のギタリスト、そしてバンジョー奏者のBela Fleck をフロント楽器に迎えてのスタジオ演奏を収録した「企画盤」。このギタリスト+バンジョー奏者の人選がニクイ。アルバムのプロデューサーであるジョン・スナイダーの大手柄である。

さすがに、かのジョン・コルトレーンのバッキングを長年勤め上げたピアニストらしく、それぞれの個性が全く違うギタリスト達のバッキングを実にガッチリとサポートしている。特に、マッコイのピアノは、ガーン、ゴーンという、明確で力強い、男性的で輪郭が鮮やかなピアノが特徴であるが、この「輪郭が鮮やか」な部分が、特にギターのバッキングの時に、実に効果的に作用する、ということが、この『Guitars』を聴いて見て非常に良く判った。
 

Mccoy_tyner_guitars

 
特に、ややアブストラクトで直感的な音色を供給するBill Frisell、しっかりと捻れて捻りが効いた音色を供給するJohn Scofieldでのバッキングが冴え渡っている。さすがに、コルトレーンに従事しただけあって、モーダルでアブストラクト、捻れて捻りが効いたジャズ・ギターのバッキングが得意な様子。実に頼もしいジャズ・ピアノとしてのバッキングである。

Marc Ribotは主に実験音楽、フリー・ジャズの分野で活動しているギタリスト。メインストリーム・ジャズ系のギタリストでは無いが、このアルバムでは、なかなか印象的なメインストリーム・ジャズ系のしっかりとしたジャズ・ギターを聴かせてくれている。

そして、Derek Trucksの参加にはビックリした。彼はもともとはサザン・ロックの雄、オールマンズのギタリストの1人。しかし、ジャズ・ギター系のアルバムもリリースしているという「変わり種」。そのDerek Trucksがガンガン弾きまくる音は実に素晴らしい。

Bela Fleckはプログレッシブなバンジョー奏者。僕は、チック・コリアとのデュオで、その名を知った。実に先進的なバンジョーを弾く。その音はバンジョーなのだが、このアルバムでは十分に「ジャズ」している。よくこれだけジャジーな演奏、ジャジーな音色をバンジョーでだせるものだ、と感心することしきり。

マッコイのピアノは、フロント楽器の個性が強ければ強いほど、その「バッキング」の真価を発揮する。そして、フロント楽器の演奏者のテクニックと歌心が確かであれば確かであるほど、マッコイのピアノはリラックスし、実に楽しそうに、フロント楽器の演奏者の音にフィットした、堅実かつ印象的なバッキングを供給する。

この『Guitars』、ギタリストの個性を愛でる前に、往年のマッコイを十二分に彷彿させる、そのギタリストの個性に合わせたマッコイのピアノ、特に「バッキング」を愛でるアルバムです。これって、やはりプロデュースの勝利でしょう。「企画盤」としても実に良くできたアルバムです。 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

2010年2月 3日 (水曜日)

ジャズと異種格闘技・3

昨日、3人のギタリスト、パコ・デ・ルシアとアル・ディ・メオラ、そして、ジョン・マクラフリンの、音楽の「異種格闘技」であるライブ名盤『Friday Night In San Francisco』をご紹介した。スパニッシュ・ギターとフュージョン・ジャズ・ギターとの「異種格闘技」。空前絶後の超絶技巧のギターが3本。めくるめくインプロビゼーションの世界は「至福の世界」だった。

この『Friday Night In San Francisco』はライブ盤。このパコ・デ・ルシアとアル・ディ・メオラ、そして、ジョン・マクラフリンの「スーパー・ギター・トリオ」で、スタジオ録音盤をリリースしている。1982年にリリースされた『Passion Grace & Fire(邦題:情炎)』(写真左)。「スーパー・ギター・トリオ」が唯一残したスタジオ録音盤である。

パコ・デ・ルシアのスパニッシュ・ギター。このスパニッシュ・ギターに、ディ・メオラとマクラフリンのフュージョン・ジャズ・ギター。この『Passion Grace & Fire』で、ガップリ四つに組んで、再び、ジャズとスパニッシュ・ギターの異種格闘技である。

『Friday Night In San Francisco』はライブ盤だったので、ラフな面もあるし、受け狙いのギミックもある。それでも、ライブ盤ならではの「熱気」が溢れていて、それはそれは、目眩く超絶技巧、目眩くアンサンブルの世界だった。

逆に、この『Passion Grace & Fire』はスタジオ録音。スタジオ録音ならではの、十分に練られた、十分に作り込まれた、整然とした、静謐な「熱気」が溢れている。ライブ盤の躍動的な「熱気」と相対する静謐な「熱気」。楽曲としての完成度は、前作のライブ盤『Friday Night In San Francisco』に勝るとも劣らないと思います。
 

Passion_grace_fire

 
スタジオ録音だけにミスは皆無。もともと「超絶技巧」なテクニックを持った「スーパー・ギター・トリオ」の3人。スタジオ録音で、その「超絶技巧」なテクニックを更に洗練、昇華したので、この『Passion Grace & Fire』での3人のギター・テクニックは凄まじいばかりである。

とにかく目眩く、超絶技巧の世界が展開される訳だが、スパニッシュ・ギター中心の曲調をベースに楽曲が取り揃っている為、インプロビゼーション部で「キャッチャーな旋律」が少なく、収録された楽曲それぞれに「印象に残る曲」が少ないのが玉に瑕ではある。それを差し引いても、このアルバムでの超絶技巧なギター・インプロビゼーションの世界は素晴らしいの一言。

ギター小僧の皆さんには是非とも聴いて頂きたいアルバムです。逆に、ギター小僧でないジャズ・ファンの方々に「どちらか一枚」と問われれば、ジャズやブルースの要素が見え隠れするライブ盤『Friday Night In San Francisco』の方がお勧めでしょうか。出来たら、2枚とも聴いて頂きたいですけど・・・。

ライブ盤にはライブ盤の良さがあり、スタジオ盤にはスタジオ盤の良さがある。そんな当たり前の話をしっかりと別々に一聴しただけで判るアルバムを残している。この「スーパー・ギター・トリオ」の実力については「推して知るべし」ですね。

今晩の我が千葉県北西部地方は再び雪がちらつき始めている。一昨日の雪がまだ残っているのになあ。また、積もるのかなあ。明日の朝が思いやられるなあ。

子らが踏む 名残惜しげに まだら雪 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
 

2010年2月 2日 (火曜日)

ジャズと異種格闘技・2

ジャズと異種格闘技、ジャズの世界では、特に、ジャズ・ギターの世界が直ぐに思い浮かぶ。ジャズ・ギターでの「異種格闘技」の一番印象的な例が「パコ・デ・ルシア」。

 

パコ・デ・ルシア(Paco de Lucía)は、スペインのスパニッシュ・ギタリスト。フラメンコの分野で活躍。しかし、アル・ディ・メオラ(Al Di Meola)のアルバム『エレガント・ジプシー』に参加したことがきっかけとなり、ラリー・コリエル(Larry Coryell)、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)と3人で、スーパー・ギター・トリオを結成。アコースティック・ギター3本だけのツアーを行う。

 

そして、その後、コリエルがアル・ディ・メオラに代わり、あのライブ名盤『Friday Night In San Francisco』(写真左)を世に出した。 1980年12月5日金曜日のサンフランシスコ、ワーフィールド劇場にてライヴ録音。これがまあ、とてつもなく凄い内容のライブアルバムだったのだ。

 

1981年のリリース。最初、耳にしたのは、FMの番組だったと記憶している。「Mediterranean Sundance/Rio Ancho」が紹介されたのだが、その出だしから「ビックリ仰天」(笑)。この超絶技巧なギターは「いったい、何なんだ〜」。その時、本当に大声を出した「なんや〜これ〜」。それはそれは、もの凄い、超絶技巧なギターの饗宴だった。

 

3人のギタリスト、パコ・デ・ルシアとアル・ディ・メオラ、そして、ジョン・マクラフリン(時々、ラリー・コリエルに代わる)。この3人を「スーパー・ギター・トリオ」と呼ぶ。当時、アコースティック・ギター3本だけのライブ自体が画期的だった。
 

 

Friday_night_in_sfo_2

 

 
この「スーパー・ギター・トリオ」の演奏の基本は、パコ・デ・ルシアのスパニッシュ・ギター。このスパニッシュ・ギターに、ディ・メオラとマクラフリンのフュージョン・ジャズ・ギターが絡んで、この3人にしか表現し得ない、唯一無二のギター・アンサンブルが実現している。スパニッシュ・ギターでも無い、かといって、フュージョン・ジャズ・ギターでも無い。その2つの要素を融合させて、独特の個性溢れるギター・ミュージックを創出している。

 

スパニッシュ・ギターとフュージョン・ジャズ・ギターとの「異種格闘技」の希有な成果である。しかも、空前絶後の超絶技巧のギターが3本。めくるめくインプロビゼーションの世界は、もう至福の世界である。フュージョン、純ジャズ、ラテン。ミュージック、スパニッシュ・ギター、クラシックが好みの方には是非とも聴いて頂きたい。

 

この「スーパー・ギター・トリオ」の演奏は、ジャンルを超えた、独特の個性である。これこそが、フュージョン(融合)であり、コラボレーション(協業)である。異なる分野の人が協力して制作すること。これこそが「異種格闘技」の極みである。

 

どれほど言葉で綴っても、このライブ盤の凄さは語り尽くせない。聴けば判る。一度、聴いてみて下さい。US盤は千円以下で手に入ります(Amazon.jp)。このアルバムが千円以下の値段で聴けるなんて、良い時代になったもんだ。
 
 
朝、起きたら5センチほどの積雪。窓から見る街は真っ白。朝日を浴びて、雪の白さは眩しいばかり。でも、5センチほどの積雪で済んで良かったなあ。朝の通勤については、さほどの混乱も無く、ただただ寒いだけで、なんとか乗り切った。西の空を見れば、ちょっと太めの下弦の月が印象的にポッカリと浮かんでいた。
 
雪の朝 空に戸惑う 下弦月 
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

2010年2月 1日 (月曜日)

ジャズと異種格闘技・1

ジャズは非常に懐の深い音楽である。ジャズ単体でも、様々なフォーマット、様々なジャンルの演奏形態がある。異種格闘技、いわゆる他の音楽ジャンルとの共演、融合も「お手のもの」。ロックとの融合、クロスオーバーから端を発したフュージョン・ジャズというジャンルもあるし、フュージョン・ジャズにAORの要素を融合して、スムース・ジャズというジャンルもある。

ジャズの得意とするところの「異種格闘技」。最近、リラックスしたい時に聴く「異種格闘技系ジャズ」のアルバムに、Willie Nelson & Wynton Marsalis の『Two Men with the Blues』(写真左)。このウィリー・ネルソンとウイントン・マルサリスとの共演ライブ盤が、実に良い感じなのだ。

ウィリー・ネルソンと言えば、米国のシンガーソングライターであり、カントリー界の大御所。1933年4月生まれだから、今年77歳、喜寿である。このカントリー&ウエスタンの大御所と、ジャズ界で最も著名なジャズ・ミュージシャンであり、トランペッターであるウィントン・マルサリスとの共演である。まとめると「カントリー&ウエスタン」と「ジャズ&ブルース」の異種格闘技的ライブである。

「カントリー&ウエスタン」と「ジャズ&ブルース」、どちらも米国ルーツ・ミュージックの根幹をなすものである。意外と相性が良いのには感心した。2007年1月にNYで行われた二夜限りの共演コンサートのライブ録音なんだが、それはそれは素晴らしいパフォーマンスだ。

ウィントン率いるジャズ・バンドを従えて、ネルソンが、カントリー&ウエスタンの、はたまた、ジャズのスタンダード曲を、いぶし銀のような渋さで歌い上げていく、そんな感じの1時間。
 

Nelson_wynton

 
ネルソン十八番のカントリー&ウエスタンのスタンダード曲は、とにかく楽しい。そして、カントリー&ウエスタンの曲のバッキングを担当するウィントン率いるジャズ・バンドの適応力というか、ジャズをベースにした「カントリー&ウエスタン」風のバッキングがとても素晴らしい。ウィントンのトランペットは、テクニック、そして歌心共に「鳥肌もの」。いや〜凄いわ、これは・・・。

逆に、カントリー界の大御所のネルソンが歌い上げるジャズ・スタンダード曲も素晴らしいの一言。カントリー&ウエスタンをベースにした「ジャズ」風の、そして「ブルース」風のボーカルが実に素晴らしい。ジャズには無い、米国中西部の風が吹く。「Stardust」そして「Rainy Day Blues」のネルソンのボーカルなど、これまた「鳥肌もの」である。

「Georgia on My Mind」や「Down By the Riverside (Bonus Track)」などは大感激。実は僕は、カントリー&ウエスタンの曲調が大好き。「Down By the Riverside」などは涙もの。そして、カントリー&ウエスタンの名曲のバックで、スウィング感溢れるバッキングを披露するウィントン率いるジャズ・バンドの「ハイテクニック&ジャジー感」。いや〜、この異種格闘技は素晴らしいの一言です。

余裕を持って全編を聴き通して頂きたいライブ盤です。ライヴならではの即興プレイも心地良く、まことに素晴らしい「カントリー&ウエスタン」と「ジャズ&ブルース」の異種格闘技的ライブ盤です。一期一会とはこのことでしょう。
  
寒い。今日夜半から雪になる、とのことだったが、帰宅途中で既に雪に変わった、我が千葉県北西部地方。これは積もるなあ。今年の冬は雪が降らないのでは、と油断していたら、いきなり雪である。でも、この天気って、2月の終わりから3月上旬の春を呼ぶ雪の気圧配置ではないのかと・・・。やっぱり、今年は1ヶ月ほど早く季節が動いている感じがする。

不意を打つ 見上げる顔に みぞれ雪
 
 
 
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。 
 

« 2010年1月 | トップページ | 2010年3月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2021年4月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー