ピアノ・トリオの代表的名盤・6
2月5日のブログ(左をクリック)で、ブルーノートの『Sonny Clark Trio』をご紹介したが、同一タイトルの『Sonny Clark Trio』は、もう一枚存在する。Timeレーベルからリリースされた、タイム盤『Sonny Clark Trio』(写真左)である。
1960年3月の録音。パーソネルは、Sonny Clark (p), George Duvivier (b), Max Roach (ds)。収録された楽曲は、全作オリジナル作品で構成されており、ソニー・クラークの作曲の個性を愛でるに最適なトリオ・アルバムである。
ソニー・クラークのピアノの特徴は「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」である。タッチは強くて深い。独特な打鍵のタイミング。テクニックは端正。しかもハイ・テクニック。速いパッセージもしっかりと弾きこなす。バラードも情緒的で良し、ソロ・ピアノもなかなかの内容。けれど、どの曲調でも「マイナーな雰囲気」がしっかりと漂う。
この、タイム盤の『Sonny Clark Trio』は、ソニー・クラークのピアノの個性と、ソニー・クラークのオリジナル曲にて、そのピアノの個性を最大限に愛でること、そして、クラークの作曲の才を体験出来る、素晴らしい、ピアノ・トリオである。
逆に、ブルーノートの『Sonny Clark Trio』は、スタンダード曲中心の構成で、スタンダード曲の演奏を通じて、他のピアニストと比較して、ソニー・クラークのピアノの個性を確認することが出来る。
ソニー・クラークの個性である「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」は、ジャズ・ピアノを聴き込んだマニアでないと、判り難いと言えば判り難い。スタンダード曲を通じて、その個性を他のピアニストと比較することで明確にする、という、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンの戦略は正しい。
逆に、このタイム盤の『Sonny Clark Trio』は、ソニー・クラークのオリジナル曲を通じて、ソニー・クラークの個性を確認することが出来る優秀盤。加えて、ソニー・クラークの作曲能力の高さを確認することができる、ソニー・クラークの代表盤の一枚となっている。
このタイム盤の『Sonny Clark Trio』では、ソニー・クラークのオリジナル曲を通じて、したたり落ちるような「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」が、どの曲からも感じ取る事が出来る。スタンダード曲の演奏よりも、ソニー・クラークの個性が強く出ることが、このタイム盤の特徴だろう。
同時に、ソニー・クラークの「そこはかとなく芳しいシンプルなマイナー調」が、より強く出るタイム盤は、ジャズ初心者の方々には、ちょっとアクが強いかもしれない。スタンダード曲に比べて、キャッチャーな旋律にやや乏しいのだ。
それでも、ソニー・クラークの個性は、このタイム盤で最大に感じる事ができるのだから、このタイム盤『Sonny Clark Trio』は、ジャズ・ピアノ・トリオの歴史を感じる上でも、必須のアイテムといえるだろう。
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