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2010年2月22日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・3

ちょっと間が開いたが「ビッグバンド・ジャズは楽し」シリーズの第3弾である。

ビッグバンドの演奏曲って、ジャズ・スタンダードやポピュラーなポップス曲やロック曲が多く、やたら判りやすくて楽しいものが多い。若い頃は、その「判りやすくて楽しい」という部分がなんとなく嫌で、ビッグバンド・ジャズを食わず嫌いで通していた思い出がある。

でも、最近、ジャズを30年以上も聴いてきた結果、「判りやすくて楽しい」というのは、とても良いことなんだと思うようになった。判りやすくて、楽しくて、聴き応えがあるって、これって単純に楽しいのだ。そんな「判りやすくて楽しい」ビッグバンド・ジャズを提供してくれるのが、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ(Manhattan Jazz Orchestra:以下MJOと略す)である。

MJOの演奏するビッグバンド・ジャズは、とにかく判りやすい。迫力のある分厚いユニゾン&ハーモニー。判りやすく印象的なソロ、底を這う重低音ブラス、そして、曲の展開はドラマチックでメリハリ抜群。

エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と寛ぎ感を効果的に配備して、とにかく聴いていて、あっけらかんとリラックスして聴ける、加えて、演奏者それぞれのテクニックも優れ、ビッグバンド・ジャズ入門として最適。

ビッグバンド・ジャズ入門のみならず、オーケストラ率いるデビッド・マシューズの判りやすく、ビッグバンドの本質を良く踏まえたアレンジは、ビッグバンド・ジャズのマニアの耳にも十分に耐えるハイレベルなものだと思っている。
 

Mjo_birdland

 
そんなMJOのアルバム、どのアルバムの「判りやすくて楽しい」ものばがりであるが、そんな中でも、僕のイチ押しは『Birdland』(写真左)。収録曲は以下の通り。ジャズメンのオリジナル曲を中心に、有名な曲を取り揃えたアルバムである。

1. Birdland
2. Take five
3. Dania
4. The Chicken
5. Fever
6. September
7. Sing sing sing

冒頭の「Birdland」なぞ絶品である。ジャコのベースを重低音ブラスに置き換えて、ウェザー・リポート独特の「あく」を秀逸なアレンジで取り除いて、判りやすくて楽しいビッグバンド・ジャズの演奏に仕立て上げている。4曲目の「The Chicken」も、エッジの立ったシャープな音をベースに疾走感と重低音ブラスの音が魅力の、絵に描いたようなビッグバンド・ジャズ演奏に舌を巻く。とにかく、聴いていて楽しくて、自然と身体が動いて、足でリズムを取っている(笑)。

5曲目の「September」は、1970年代後半、ディスコ・フィーバーの中、一世を風靡した、アース・ウィンド&ファイアーの大ヒット曲。こんな俗っぽい曲をもってくるなんて、などと眉をひそめるビッグバンド・ジャズのマニアの方々もいらっしゃるでしょうが、これがまた、なかなか良いんですね。良くこんなコテコテファンキーなディスコ曲をビッグバンド・ジャズの楽曲にアレンジするもんだと感心する。

そして、極めつけはラストの「Sing sing sing」。ベニー・グッドマン楽団の代表曲であるが、これがまた絶品。エッジの立ったシャープな音が眩しく、ビッグバンド・ジャズならではの躍動感が素晴らしい。そして、デビット・マシューズのアレンジは、まさに今風の現代的な響きを湛え、ベニー・グッドマンのスイング時代とは異なる、あくまで現代のジャズのトレンドを下敷きとした疾走感溢れるビッグバンド・ジャズを提供してくれる。

良いビッグバンド・ジャズのアルバムだと思います。フレンチホルンやチューバが入ったビッグバンド構成は、あまり他に例がないんですが、この色彩豊かなブラスの響きが、これまたMJOの代表的な特徴だったりします。いやはや、素晴らしいですね。デビッド・マシューズ御大、隅に置けませんね〜。 
 
 
 
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