ジャズ喫茶で流したい・13
久しぶりに「ジャズ喫茶で流したい」シリーズ、今日は第13回目である。ジャズ喫茶で流したいアルバムは、なにもジャズの歴史の中での有名盤ばかりではない。また、ジャズファンの人気の定盤ばかりではない。
ジャズの楽しみを十分に感じることが出来る、知る人ぞ知る、隠れ名盤、隠れ佳作が、この「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの対象となり得るアルバムになる。この「ジャズ喫茶で流したい」の対象となるアルバムのチョイスが、その「ジャズ喫茶」の見識であり、格式になる。
今日の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」で流れているのは、『The Jack Wilson Quartet Featuring Roy Ayers』(写真左)である。ピアニスト、ジャック・ウィルソン (Jack Wilson) の処女作。ロイ・エアーズ (Roy Ayers) のバイブラフォンが加わったカルテットの編成。改めて、パーソネルは、ROY AYERS (vib) JACK WILSON (p) AL McKIBBON (b) NICK MARTINS (ds)。1963年、Atlanticレーベルからのリリースです。
1曲目はボサノヴァの「コルコバード」。この演奏を聴くと、ピアノのジャック・ウイルソンの特徴が良く判る。ジャズとしての黒さは希薄ではあるが、演奏のベースに、そこはかとなくファンキーさが漂い、ジャジーさよりもポップさが上回る、ジャズというジャンルの中では「中性的な音」。
黒っぽくジャジーでもない、かといって、ファンキーコテコテでも無い。その両者の要素を演奏の底にそこはかとなく漂わせながら、表面上は、ポップでシンプルな、聴き易く、それでいて、全体を覆う雰囲気は紛れもない純ジャズという、ジャック・ウイルソン独特の音世界を楽しませてくれる。
そのジャック・ウイルソン独特の音世界に、これまた貢献しているのが、ロイ・エアーズ のヴァイヴ。ロイ・エアーズ はフュージョンというか、ジャズとファンクを融合させた音楽での成果の方で、アシッドジャズやヒップホップに関わる人々に評価されている。決して、純ジャズ側のミュージシャンでは無い。
でも、このアルバムでのロイ・エアーズのヴァイヴは、しっかりと純ジャズしている。ロイ・エアーズのヴァイヴの特徴は、透明なヴァイブの音色。ファンキーさは希薄、ジャジーな雰囲気は漂わせてはいるが、決して米国的では無い。どちらかと言えば欧州的。透明感と爽快感、そしてアーシーな雰囲気を底に漂わせながら、テクニックは正統派。ブルージーに攻めてきても、しっかりと透明感、爽快感が全面に出るところが面白い。
2曲目以降は、全て、ジャック・ウイルソンのオリジナル曲が並ぶ。どの曲を聴いてみても、ジャック・ウイルソンの非凡な作曲センスにビックリする。いずれも良い曲なんですよね。実にわかりやすいブルース・ナンバーが印象的。
地味で全面に出てくることはあまりないが、アル・マッキボン (AL McKIBBON) のベースも心地良い。ニック・マーティンズ(NICK MARTINS )のドラミングは堅実。とにかく、何度聴いても飽きの来ない、上質で品の良い、透明感と疾走感をベースに、ライト感覚溢れる、聴き易いポップなジャズ演奏を聴くことが出来ます。
良いアルバムです。ジャック・ウイルソンって、BlueNoteレーベルの人かと思っていたら、デビューはAtlanticレーベルの人だったんですね〜。でも、この人のジャズ・ピアノの音を聴いていると、Atlanticレーベルからのデビューって判るような気がします。このアルバムのリリースされた1963年当時、このジャック・ウイルソンのジャズ・ピアノとオリジナルの楽曲は、ポップさという面で、なかなか新しい感覚のものではなかったか、と思います。
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