ロック、今年の「聴き初め」・2
70年代ロックの「聴き初め」のアルバムはもう一枚ある。僕のロックバンドの中で一番好きなバンド、ザ・バンドの『Islands』(写真左)である。
ザ・バンドのアルバムならば、他にもあるだろう、と思われる方もあるかと思うが、「聴き初め」には絶対に『Islands』なのだ。いや、「聴き初め」というには、ちょっと正確ではない。年末から年始にかけて、ずっと流れているロック・アルバムである。年始にかけてずっと流れているので、自動的に「聴き初め」になるというアルバムである(笑)。
なぜ年末から聴き始めるかというと、5曲目の「Christmas Must Be Tonight(今宵はクリスマス)」の存在がある。実に良い感じの、ザ・バンドのクリスマスソング。この曲があるから、12月の半ば過ぎには、このアルバムは必ずCDトレイに載り、8曲目の「Georgia on My Mind(わが心のジョージア)」のリチャード・マニュエルの最高の名唱に年の瀬を強く感じる。
そして、冒頭の「Right as Rain(優しい雨のように)」や4曲目の「Ain't That a Lot of Love(胸にあふれる想い)」のような、実に優しい、ミドルテンポのアメリカン・ルーツ・ロックに新年の明るさを感じ、インスト・ナンバー「Islands」の、トロピカルでカリビアンなポジティブな長閑さに癒されながら、新年に英気を養う。
以上のような流れで、僕はこのアルバムを、年末から年始にかけて、毎年、ずっと流し続けるのだ。振り返ると、このアルバムって、確かに、僕にとって、ずっと冬のアルバムですね。圧倒的に冬の季節にCDトレイに載る機会が多い。恐らく、自分にとって、前述のような雰囲気や流れがアルバムに充満しているのでしょうね。
このアルバムとの出会いは、昨日のJackson Browneの『Running on Empty』と同様、浪人時代に遡る。このアルバムのリリースは、1977年3月。確か、日本盤は1ヶ月遅れだったかと思う。受験校に全て綺麗サッパリ振られた僕は、浪人時代は絶対にレコードは買わない、と決めた。が、当時より最愛のロック・バンドである「ザ・バンド」の最新作である。しかも、解散が噂されており、最後のオリジナルアルバムになる可能性が高い。これは絶対に欲しい。ということで、このアルバムを最後に、浪人時代は絶対にレコードは買わない、と決めた(笑)思い出のアルバムである。
自ら覚悟していたとはいえ、浪人の身になった時に、社会の中での正式な所属のない「言いようのない孤独感」はかなり辛いものがあった。辛うじて仲の良い友人達は残ったものの(一緒に浪人になった・笑)、高校時代の大切な人達のほとんどが、自分の近くから去ってしまったことは、かなり辛かった。そんな辛さを緩和してくれたのが、このザ・バンドの『Islands』である。
このアルバム全体に詰まった優しさ、明るさ、シンプルさには癒された。6曲目のインスト・ナンバー「Islands」を聴くと、「ザ・バンド」には、まだまだ先があった、と感じる。アメリカン・ルーツ・ロックを追求し、南部はニューオリンズへ到達したバンドは、メキシコ湾へ漕ぎ出し、カリブ海を目指したような雰囲気がある。アルバム全体に流れる、ポジティブでのんびりした明るさは、恐らく、このカリビアン志向が作用したのではないか、と勝手に解釈している。
そんなこんなで、個人的にも思い入れの強い、大切な「聴き初め」アルバムです。このアルバム全体に詰まった、優しさ、明るさ、シンプルさには癒されて、年末、一年を振り返り締めくくり、年明けて、新年には、新年に向けての鋭気を養う。一粒で二度美味しい、ではありませんが、一枚で二度美味しいアルバムです(笑)。
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