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2009年12月16日 (水曜日)

叙情的なジャズ・ピアノの優秀盤

叙情的でリリカルな演奏が中心のアルバム、ゴンサロ・ルバルカバ『Suite 4 y 20(邦題:ロマンティック)』をご紹介した。で、叙情的でリリカルなジャズ・ピアノと思って、ん〜っと思って、そう言えば、叙情的でリリカルなジャズ・ピアノで代表的なアルバムがあった、と。

そうそう、即、思い出したのが、ビル・エヴァンスの『Moon Beams』(写真左)。Herbie Mann『Nirvana』に続いて、自動車事故で急逝したScott LaFaroに代わって、Chuck Israelsがベーシストを担当した、Bill Evans (p) Chuck Israels (b) Paul Motian (d) のトリオでの初録音である。1962年6月の録音になる。

アルバム・ジャケットからも想像できる様に、このアルバムは、ビル・エヴァンスの叙情的でリリカルな面にフォーカスを当てた、企画型のアルバム。リバーサイド・レーベルのプロデューサー、オリン・キープニュースの慧眼のなせる技である。

冒頭の有名なエヴァンスのオリジナル「Re: Person I Knew」では、まだ、ハードタッチ中心なモードで、エヴァンス節を展開していて、これはこれで惚れ惚れと聴き耳を立ててしまうのだが、次の2曲目「Polka Dots and Moonbeams」が絶品中の絶品。叙情的でリリカルなエヴァンスのピアノが素晴らしく、途中、ハードなタッチで盛り上がる部分も実に自然で、エヴァンスの硬軟強弱は実に自然で、人工的な感じが全くしない。

続く「I Fall in Love Too Easily」も絶品だ。というか、このアルバムの収録曲の全てが、エヴァンスの叙情的でリリカルな面を全面に押し出していて、見事な出来となっている。決して、叙情的でリリカルなピアノを全編に渡って弾き続けているのでは無い。そこがエヴァンスの優れたところ。
 

Evans_moonbeams

 
意図的にハードタッチでテクニカルな面もしっかりとタイミング良く展開し、そのハードタッチでテクニカルな面が、エヴァンスの叙情的でリリカルな面を強調する効果が出ている。エバンスの作戦勝ちである。このアルバムは、自然発生的に生まれたのではない。オリン・キープニュースの慧眼とエヴァンスのアレンジ力が一体となった、意図的に仕組まれた「企画型アルバム」の圧倒的な成功例である。

このアルバムで判るのは、Scott LaFaroに代わって、ベースを担当したChuck Israelsのベーシストとしての力量。とにかく上手い。そして、エヴァンスのハードタッチでテクニカルな面に十分に対応し、もちろん、叙情的でリリカルな面にも、しっかりと対応している。

ビートと音のベースをしっかりと押さえるChuck Israelsのベースは、特に、エヴァンスのハードタッチでテクニカルな面のサポートに貢献度大である。この部分は、Scott LaFaroを凌駕するのでは、と僕は思う

ビル・エヴァンスは、決して、叙情的でリリカルな音が特徴のピアニストではない。タイトでハードなタッチと計算されたアレンジ、そして、そのアレンジに応えるテクニカルな面が極めて優秀な、唯一無二なピアニストである。叙情的でリリカルな面は、エヴァンスの「オプション」に過ぎないと僕は思っている。

魅惑的なジャケットと相まって、実に良いアルバムです。休日の天気の良い昼下がりに、一人で小説でも読みながら、じっくり聴き耳を立てるのにピッタリの優秀盤です。そうそう、このジャケットの魅惑的な女性の横顔は、後に、1960年代ロックの世界で、ベルベット・アンダーグラウンドとのコラボで有名になる、モデルとして活躍していた、若かりし頃の「ニコ」の横顔とのこと。
 
 
 
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コメント

はじめまして。
ニコ検索でたどり着きました。
ある方のブログで Moon Beams の女性が
ニコと書いてあり、40年間このレコードの女性に無関心でありましたが、ベルベット時代の
写真と見比べてしました。
顔の長さとか鼻が似てない感じはしますが・・・

チャックは独特な音を拾いますので
在り来たりのベースラインじゃないところが
好きなんです。

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