ゴンサロ第2弾『ロマンティック』
今日は久々にゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba)を聴く。ゴンサロの2枚目のリーダー作『Suite 4 y 20(邦題:ロマンティック)』(写真左)。邦題の如く、ゴンサロの叙情的でリリカルな面にフォーカスを当てたアルバムである。
デビュー作『Discovery: Live at Montreux』で、超絶技巧、光速パッセージなジャズ・ピアノを披露したゴンサロ(11月10日のブログ参照・左をクリック)。それはそれは、絵に描いた様な「超絶技巧」さで、超絶技巧、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気が、次作を期待させた。
で、このリーダー第2作『Suite 4 y 20』は、打って変わって、叙情的でリリカルな演奏が中心のアルバムになっている。ただ、ところどころ「超絶技巧、光速パッセージ」そして、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気が見え隠れしているので、このリーダー第2作は、プロデューサーとの合意の中で作成した、一種「企画物」的なアルバムと思われる。
「企画物」的なアルバムとは言え、2曲目の「Transparence」、4曲目のビートルズもの「Here, There and Everywhere」など、ゴンサロのピアノは、実に叙情的でリリカル、実にロマンティシズム溢れる、美しいもので、これはこれで惚れ惚れする。それでも、「Here, There and Everywhere」などは、後半の展開で、超絶技巧でアグレッシブな盛り上がりがあって、やはり、ゴンサロはこれが本質なんだろうなあ、と妙に納得してしまう。
全編に渡って大雑把に言って、叙情的でリリカルな面が7割、超絶技巧でアグレッシブな面が3割な感じで、叙情的でリリカルな面が一般受けすることを狙ったのであろうが、叙情的でリリカルな面の存在が、かえって、ゴンサロの本質である、超絶技巧でアグレッシブ、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気を効果的かつ魅力的に浮き立たせている。
これは、ゴンサロのアレンジの力量が優れていることにもよる。この『Suite 4 y 20』に収録されている曲は、どの曲も実に良くアレンジされている。ゴンサロのピアノのテクニックもさることながら、ゴンサロのアレンジ能力にも注目して欲しい。ゴンサロは単にジャズ・ピアニストに留まらず、優れたコンポーザー&アレンジャーとしての面も、このアルバムでは見え隠れしている。
ジャズ・ピアノの叙情的でリリカルな演奏には、優れたベーシストとドラマーの存在が必須であるが、このアルバムのベーシスト、ドラマーのバッキングは実に素晴らしい。異常に上手い。特に、アコースティック・ベースは尋常では無い。加えて、ドラムも凄い。
と思って、パーソネルを見ると、Gonzalo Rubalcaba (p), Reynaldo Melian (tp), Felipe Cabrera (el-b), Charlie Haden (ac-b), Julio Barreto (ds)。やっぱりね。アコースティック・ベースはチャーリー・ヘイデンでした。ドラムのフリオ・バレットは初めて聞く名前。ゴンサロがキューバから招聘したドラマーである。
オーバー・プロデュースのにおいがプンプンする、このリーダー第2作『Suite 4 y 20』ですが、オーバー・プロデュースなどで、個性が陰るゴンサロでは無かった。ところどころ「超絶技巧、光速パッセージ」そして、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気を思い切り表出して、あくまで、ゴンサロの個性が散りばめられた、ゴンサロ主導型のリーダーアルバムになっていることは、実に立派である。そして、次作『RAPSODIA』で、ゴンサロは大いに気を吐くことになるのだ。
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