ソロピアノは個性を表す
晩秋もたけなわ。急に周りの広葉樹が色づいて、風に揺られてハラハラ散る様は、実に物寂しい。特に、凛と晴れ渡った、抜けるような青空の下、人の気配も無い、静かすぎる公園に一人佇んで、静かに散る落ち葉を見ると、より一層、寂しさが募って人恋しくなる。
晩秋の昼下がり、午後の日差しが差し込む中、誰もいない部屋で聴くソロピアノは風情がある。晩秋は季節も良く、じっくり耳を傾けることが出来る季節。確かに、この季節は、ソロピアノがCDプレイヤーのトレイに載る機会が、他の季節に比べて多い。
ジャズのソロピアノは、そのピアニストの個性がモロに表れて面白い。一人で好き勝手に演奏できる開放感と気安さがそうさせるのか、普段とは違った表情やニュアンス、嗜好がヒョッコリ顔を出して、ビックリすることもしばしば。
チック・コリア(Chick Corea)の『Piano Improvisations,Vol.2』(写真左)など、その典型的な例である。チック・コリアと言えば、現代ジャズ界における代表的ピアニストの一人。ボサノヴァ、ロック、クラシックなどといった要素を織り交ぜた、多彩なプレイが特徴。ラテン色漂うメロディやリズムが特徴で、フレーズには一貫した彼独特の響きがあり、モードからエイトビートまで多才に適応する、オールラウンド・プレイヤーである。
そんなチックのソロピアノ集なので、ロマンチックな楽曲、リリカルな演奏がギッシリ詰まっているかと思いきや、これが全く違う。冒頭の「After Noon Song」は確かにロマンチックで、リリカルな演奏なので、しっかりと「騙される」(笑)。
2曲目以降、曲が進むにつれ、フリーフォームな演奏、前衛的な演奏の色合いが濃くなっていく。6曲目の「Preparation 1」から7曲目の「 Preparation 2」で、完全フリーな演奏になって、チックは尖りに尖る。「Departure from Planet Earth」などは前奏から、もう前衛的な演奏。現代音楽的と言っても良い。決して、メロディアスでは無い。でも、チックの技術は確かで、この前衛的な演奏を一気に聴かせる。
もともと、1960年代後半、マイルス・バンド在籍時の頃は、アバンギャルドなアプローチ、かなりフリーな演奏が特徴だった。そういう意味では、このフリーフォームな演奏、前衛的な演奏は、彼の個性と一部なんですね。
でも、若かりし頃、ジャズ者初心者の頃、チックがお気に入りになって、彼のロマンチックでリリカルな演奏を期待して入手した2枚のピアノソロ・アルバム『Piano Improvisations,Vol.1』『Piano Improvisations,Vol.2』を初めて聴いた時、このフリーフォームな演奏、前衛的な演奏に出くわした時の驚きと落胆と言ったら・・・(笑)。今でも、言葉では言い表せません(笑)。
ジャズのソロピアノは、そのピアニストの個性がモロに表れて面白い。でも、バックにドラムやベースのリズムやビートが無い分、ジャズ者初心者の方々には聴き難いものかもしれません。心してかかって下さい。そして、ソロピアノの演奏を聴きながら、そのピアニストの個性が掴み取れるようになったら、ジャズを聴くことがより一層楽しくなること請け合いです。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
« Rod Stewart のロック・カバー | トップページ | モンクのソロピアノは上級向け »
コメント