ビル・エヴァンスの初リーダー作 『New Jazz Conceptions』
昨日の夏日寸前の暑い一日とは打って変わって、グッと冷え込んだ千葉県北西部地方。グッと冷え込んだというか、「寒い」。そして、どんより曇り空。木枯らしの様な冷たい強い風。そして、今、激しいにわか雨が降っている。いよいよ、冬へのカウントダウンが始まった。でも、家の中は暖かく、晩秋の夜長、ジャズを聴く量も増えるというもの。
さて、今日は久々に、ビル・エヴァンスの初リーダー作を聴く。Bill Evans『New Jazz Conceptions』(写真左)。「新しいジャズの概念」とは大きく出た(笑)。でも、そのタイトルも、あながち間違いではない。ビ・バップからハード・バップの移行期ならではの代表的なピアノ・トリオの音の中に、後のビル・エヴァンスの個性が見え隠れしている。
パーソネルは、Paul Motian (ds), Teddy Kotick (b), Bill Evans (p)。1956年9月の録音。ウォーキングベースを主体としたビ・バップのビートだが、そこかしこにエバンスの個性が見え隠れするところが、ファンにとって楽しめるところ。
表向きには、Bud PowellやLennie Tristanoの影響が目立っていて、耳に付く「そこだけ」を聴けば、何ともない、ビ・バップからハード・バップの移行期ならではの、流行を追った「普通のピアノ・トリオ」のなんですが、特に、それぞれの曲の前奏に、ビル・エヴァンス独特の「和音の重ね方」と「インプロビゼーション部の間の取り方」、そして「右手と左手のバランス」が特徴的で、エヴァンス者からすると、この演奏は、冒頭「I Love You」の前奏で、エヴァンスのそれと判ります。
それほど、エヴァンスの個性が見え隠れしているところがこのアルバムの面白いところ。また、当時のエヴァンス、よほど売れたかったのでしょう(当然、初リーダー作やもんね)、トリスターノ的なブロックコードをガンガンしているところが、また面白い。2曲目の「Five」なんて、ちょっと無理しちゃって。でも、この「Five」の3拍4連などの変則リズムは、後のエヴァンスを彷彿とさせます。
エヴァンスは意外と流行を追ったアプローチが好きなんですが、もう既に初リーダー作でそうだったんですね(笑)。でも、話によれば、この初リーダー作は、一年間で800枚程度しか売れなかったとか。現実は厳しかったんですね。
に十八番となる「Waltz for Debby」「My Romance」が、エヴァンスのソロでの初出として収録されているんですが、その響きは、後のエヴァンスそのもの。でも、まだ「ソロ」なんで、まだまだどうやって、トリオのフォーマットに仕立てたら良いのか、エヴァンスは思案投げ首だったんでしょうね。
このエヴァンスの初リーダー作の『New Jazz Conceptions』は、エヴァンスのアルバムを10枚くらい聴きこんだ、エバンス者初心者の方々に聴いて欲しいアルバムです。決して、ジャズ者初心者の方々は手を出さないように。ジャズ者初心者の方向けの、エヴァンスの個性を感じることのできるアルバムは、他に沢山あります。
エヴァンスの響きと個性を十分知って聴く「初リーダー作」って、ええもんですよ。エヴァンスを知って、更にエバンスを知りたくなった時、この初リーダー作の『New Jazz Conceptions』を聴いてみて下さい。きっと、更に一層、エヴァンスが好きになること請け合いです。
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