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2009年11月の記事

2009年11月30日 (月曜日)

マリガン Meets モンク

寒くなった。11月も今日で終わり。早くも明日から12月、師走である。1年経つのが早いなあ。この歳になって、これだけ1年経つのが早いと、ちょっと焦る。新型インフル癒えて、今日から社会復帰。さすがに、ちょっと疲れた。

すきま風 師走の暦 安下宿    

さて、リバーサイド時代のセロニアス・モンクを聴き進めている。ジャズ入門書やジャズ盤紹介本に挙がるような定番の「モンクの有名盤」以外にも、リバーサイド・レーベルにはモンクのリーダー作で、なかなかの聴きモノが沢山ある。

今日、聴き込んだモンクのアルバムは『Mulligan Meets Monk』(写真左)。1957年8月の録音。パーソネルは、Gerry Mulligan (bs) Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Shadow Wilson (ds)。Gerry Mulligan(ジェリー・マリガン)といえば、米国西海岸ジャズの中心人物、バリトン・サックスの名手。そのマリガンと最盛期のモンク、二人のジャズ・ジャイアンツによるアルバムです。

モンクのあの独特と音の重ね方、あの独特なリズム感、あの独特なフレーズに、マリガンが、どうやって立ち向かうか、が興味の的です。マリガンも、結構柔軟で協調性が高いように見えるんですが、意外と自分のペースを貫き通すところがあるので、ジャズ界の最高の個性であるモンクとの組合せは如何に、というところですが、これが以外や以外、結構、充実した内容になっています。
 

Mullian_meets_monk

 
モンクの音に、モンクの演奏に合わせて、マリガンが非常に良く反応しています。モンクの独特のフレーズを良く理解して、変に重ならない様、効果的にユニゾン&ハーモニーが出来る様、注意深く、時に反射的にカウンターをかましていきます。あのでっかいバリトン・サックスを自由に操りながら、モンクの独特なフレーズとリズムに追従するマリガンって凄いですね。

冒頭の「'Round About Midnight」はすばらしい出来です。かなり有名なモンク・スタンダードなんで、どうなることやら、と思いましたが、2人の掛け合いは、程良い緊張感の下、なかなかのものです。

「Sweet and Lovely」は唯一のジャズ・スタンダードですが、モンクのピアノは「どこが、Sweet and Lovelyなんや〜」って感じで、モンクの個性をバンバン振りまいて、圧倒的に「硬派に」ガンガン弾き倒します。マリガンはそんな全快モンクを向こうに回して、モンクのピアノに絶好カウンターをかまして、印象的なフレーズをガンガンに繰り出します。このやりとりを聴くと、ジャズってええなあ、って思います。

ベースのWilbur Ware、ドラムのShadow Wilson は、モンクとマリガンの2人に比べて、あまり目立ちません。モンクとマリガンを自由にコラボさせるべく、しっかりとリズムとビートをキープする役割に徹しているようです。特に、ドラムのShadow Wilsonは目立たない。叩き出すリズムは「ツンツク、ツンツク、ツンツク」という単調な4ビートなリズムが多くて、リズムボックスのよう。もう少し、ドラムとして変化をつけて、モンクとマリガンに絡めば面白かったと思うんですが・・・。

モンクの名盤、マリガンの名盤という類のアルバムではありませんが、聴いていて楽しい二人のコラボ。特にモンクは楽しそう。絶好調にモンク・フレーズをガンガンに叩き出しています。逆に、マリガンはそんなモンクを向こうに回して、疲れたのかなあ。このアルバムの後、二人のコラボが再現されることはありませんでした。

なかなか良いアルバムです。モンクとマリガンの「一期一会の出会い」を心ゆくまでお楽しみ下さい。
 
 
 
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2009年11月29日 (日曜日)

ビートルズを知らない子どもたちへ

タミフルを5日分飲みきった。やっと明日から社会復帰。振り返れば、結局、先々週の土曜日から9連休になったことになる。いやはや、新型インフルはもう懲り懲り。まだ、気管支に炎症が残っているのか、なんだか喉がイガイガして、すっかり全快、快調とはいかない。やれやれ。

咳ひとつ 受話器の向こう 冬便り    

さて、日曜日は恒例のビートルズ・リマスターの特集といきたいが、今週は、新型インフル感染にて、落ち着いてビートルズを聴き込むことが出来なかった。ビートルズ・リマスターの話題は来週に繰り延べ。とは言いつつ、今日はビートルズ「関連」のお話しを。今回はCDの話からは離れて、久しぶりに「書籍」についてお話ししたいと思います。

9月9日にビートルズのリマスターCDがリリースされるのに呼応して、ビートルズ関連の書籍が結構な数がリリースされている。が、よくよく見ると、新装復刊が多い。今までに結構読んだことのあるものが多くて、ちょっぴりガッカリ。でも、昔、読みたいと思っていたけれど、なんだか知らぬ間に読みそびれて、そのままになってしまった本が復刻されると、ついつい触手が伸びる。

そんな嬉しい新装復刊の1冊が、きやたまおさむ著『ビートルズを知らない子どもたちへ』(写真左)である。1987年に発表された名著『ビートルズ』(講談社現代新書)の新装復刊である。1987年と言えば、ビートルズのアルバムが初めて正式にCD化された頃。当時、読みたい読みたい、と思っていて、なんだか知らぬ間に読みそびれてしまった「後悔の一冊」であった。

Ok_beatles_unknown

きたやまおさむ氏と言えば、精神科医・作詞家、元フォーク・クルセダーズのメンバー。先月、自ら死を選んだ加藤和彦は「あの素晴しい愛をもう一度」を作曲した著者の盟友。この加藤らとの音楽活動で旋風(フォークル革命)を起こし、作詞家として活躍した著者だが、現在の本業は精神科医。この波瀾万丈な経歴から、冷静かつ客観的に、専門的な視点から的確に、真摯にビートルズの時代を語っている。

ビートルズ関連の書籍には、評論家としての個人的な主観優先なもの、抽象的な感想優先な独善的なもの、専門的な裏付けが取れていない無責任な解釈もの、などなど、はなはだ「主観的な、個人的感想的」なものが多い。

が、この、きやたまおさむ氏の『ビートルズを知らない子どもたちへ』はそうではない。「ビートルズ現象」を通して、当時のマスメディアやポップカルチャーの持つ「ダーティーな面」にもしっかり触れていて、単なるビートルズ・ファンとしての「ビートルズ讃歌」的なものとは、明らかに一線を画する。

基本的な部分をしっかり押さえて、客観的に「ビートルズとは何か」を押さえることの出来る「理想的な教科書」の様な一冊だと思います。本当に簡潔に、必要な情報を選別〜網羅して、しっかりとまとめ上げてられており、文章の調子も良く、ボリュームの割に、かなり読み応えのある内容には感心します。

「ビートルズとはいったい何だったのか」を改めて考えさせてくれる、ビートルズ入門書としては最適な一冊だと思います。今回のリマスター発売で初めてビートルズに触れた人達に対して、また、昔からビートルズは聴いてはいたが、体系だって、彼らの歴史・彼らの行動・彼らの功績を見つめ直したことが無い方に対して、お勧めの一冊です。
 
 
 
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2009年11月28日 (土曜日)

クラプトンの70年代ライブは最高

新型インフルに感染して、伏せって4日目。今日からは外出OK。といって、別に行きたいところもなく、外出としては、もともと予約してあった「歯の定期検診」の為に、歯医者の間を往復しただけ。

病み上がり 小春日眩し 散歩道      

さて、せっかく(?)やむなく新型インフルに倒れて、長きに渡って隔離生活を余儀なくされたので、CDをまとめて聴く時間がかなりある。日頃聴けない、複数組のボックスもの中心に聴こうと心に決めて、さあ、と選んだ「今日のボックス盤」が、Eric Clapton『Crossroads 2: Live In The Seventies』(写真左)。70年代の未発表ライヴ音源を中心とした4枚組CDボックス盤。

これがまあ、絶品のライブアルバムなのだ。70年代クラプトンが好きな方、そして、最近のアルバム『Back Home』の、硬派だけれど「ゆったりと寛いだ」ブルース的な雰囲気が好きな方は、是非ともこのライブアルバムを一度は聴いて頂きたい。この『Crossroads 2: Live In The Seventies』には、当時の雰囲気言葉を使うと、とことんレイドバックしてはいるが、硬派な「ブルース&スワンプ」なクラプトンが満載である。

1枚目は、『461 Ocean Boulevard』にて再起なった1974年のライブ。2枚目は、レイドバック・クラプトン最盛期の1975年のライブ。3枚目は、『Slowhand』が大当たりの1977年〜1978年前半、4枚目は、『Backless』をリリースした直後の1978年後半のライブ。70年代クラプトンの黄金時代のライブ演奏が満載。

僕はこの4枚組CDボックス・ライブ盤を愛して止まない。こうやって書き上げているだけで、どんどんとわき上がるように音が浮かんでくる程だ。僕にとっての、ベストな「スローハンド・クラプトン」がここにある。
 

Ec_cr2_7

 
1枚目は、なんとあの名盤ライブとして愛して止まない『E.C. Was Here』と、ラストの「Further on Up the Road」以外、全5曲が被っているが、ご安心を。別ミックスかつ収録順を演奏順の自然な流れに直しています。僕は、この『Crossroads 2: Live In The Seventies』での収録バージョンの方がライブの音としても演奏の流れとしても、『E.C. Was Here』を上回っていると思います。逆に言うと、この『Crossroads 2: Live In The Seventies』さえあれば、『E.C. Was Here』は必須では無い、とも言える位の「別物」です。

とにかく、この1枚目が良い。70年代クラプトンのファンは、この1枚目でもう涙涙ですね。『461 Ocean Boulevard』にて再起なったクラプトンがここにいる。覇気溢れるスローハンド・クラプトンは実に聴き応えがあります。再起したばかりのクラプトンをサポートすべく、ジョージ・テリーが絶好調。胃ボンヌ・エリマンの女性ボーカル参入も大正解。

で、2枚目以降はと言えば、実は「更に素晴らしい」です(笑)。2枚目に至っては、もうその素晴らしい演奏の数々に、嬉しさ余って、もう「笑うしか」ありません。それほど充実したライブ演奏がギッシリつまっています。クラプトンはすっかり取り戻し、ここでは絶好調です。逆に、クラプトンが絶好調な分、ジョージ・テリーはちょっと控えめなのが気がかりなのですが、気になるほどではありません。

3枚目、4枚目は、1977年〜1978年のベスト・ライブ演奏をチョイスしているので、悪いはずがありませんよね。というか、もう素晴らしいの一言です。クラプトンが自分の思うままに、クラプトン流のブルースを探求し、そのクラプトン流のブルースを楽しんでいる様子が印象的です。1970年代クラプトンの集大成がこの3枚目、4枚目にはギッシリと詰め込まれています。聴き応え十分です。

1曲の演奏が10分を超えるテイクも少なくなく、70年代クラプトンを愛する「クラプトン・マニア」にとっては、この『Crossroads 2: Live In The Seventies』は、この上無く「おいしい」、至福の4時間を提供してくれます。僕にとっては宝物ですな、これは。
 
 
 
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2009年11月27日 (金曜日)

スタンダーズの充実6枚組ライブ

新型インフルに感染して、伏せって3日目。タミフル飲んで平熱に下がってから、48時間以降は外出しても良いと言われた。昨日の朝7時には平熱に下がっていたので、明日の9時以降は外出しても良いということになる。

逆に、今日一日はまだ隔離生活の続き。新型インフル感染の先達である、大阪のお嬢の言うとおり、隔離生活は「かなり暇」である(笑)。熱が下がって少し気管支に炎症が残ってはいるものの、激しく咳き込むほどでも無い。といって、タミフルの影響か、なんだかちょっと眠くて、頭がポーッとしている。

よって、ベットでゴロゴロしながら、CDを聴くこととする。日頃聴けない、複数組のボックスもの中心に聴こうと心に決めて、さあ、と選んだ最初のボックス盤が、Keith Jarrett(キース・ジャレット)の『Keith Jarrett at the Blue Note: The Complete Recordings』(写真左)の6枚組ボックスである。

この『at the Blue Note』は、1995年に購入して以来、6枚連続で聴き通したことが「2度」しかない。そりゃあそうで、CD一枚あたり収録時間が70分程度。それが6枚だから、総計420分=7時間となる。何度か連続して聴きたい、と思うんだが、なかなか時間が取れないんですよね。

7時間ぶっ通しで聴く時間が取れるのは、今回の様に、病気で寝込んで、体は快方に向かっているんだが、隔離生活を余儀なくされているか、日中かかる、まとまった趣味の作業があって、そのBGMに流す位しかチャンスが無い。今回、新型インフルのお陰で、久しぶりにぶっ通しで聴くチャンスが巡ってきた(笑)。

もともとこの6枚組ボックス盤は、1994年6月3〜5日にNYCのジャズ・クラブ、『ブルーノート』に出演した時の演奏をコンプリートな形で収録したもので、3日間で演奏した全38曲がそっくり収録されているのだ。6枚一気に聴き通すことは、1994年当時のブルーノートでのスタンダーズのライブを一気に追体験できることになり、それはそれで有意義なことではあると僕は思っている。
 

Kj_bluenote

 
で、約7時間強、費やして聴き通したんだが...、う〜ん、やはり素晴らしいピアノ・トリオである。Keith Jarrett (p) Gary Peacock (b) Jack DeJohnette (ds) のスタンダーズ・トリオの演奏が、名人芸が、心ゆくまで堪能出来ます。確かに、スタンダード曲を演奏させたら天下一品。このトリオが、世間では、その功績に敬意を表して「スタンダーズ」と呼ばれるのが納得できます。

スタンダード曲のジャズでの解釈は様々であり、ピアノ・トリオでも多種多様な解釈やアプローチ手法があります。よって、このキースの「スタンダーズ」が「最高、全て」とは言えませんが、ピアノ・トリオでのスタンダード曲のジャズでの解釈、演奏としては、一つの到達点を示していると思います。このスタンダーズの演奏内容、演奏レベルは、今後のジャズ界での一つの指針となって然るべき内容を持っています。

スタンダーズのピアノ・トリオは、それぞれの楽器の持つ特性、役割を十分に認識して、3者でしっかりと役割分担した上で、密度のある一体感を持った演奏の「塊」で、スタンダード曲を表現していく感じだと僕は感じています(よって、相当綿密なリハーサルが積まれていることは、彼らの演奏を聴けば容易に想像できますね)。ジャズ・クラブの限定されたスペースの中での至近距離でのライブ録音は、その雰囲気を良く伝えてくれます。

いや〜、良い時間でした。ほぼ日中丸一日かかりますが、それだけの時間をかけても、聴く価値のある6枚組ボックス盤だと思います。7時間連続して聴けない場合は、せめて3分割して、6月3日の1st.&2nd.セット、6月4日の1st.&2nd.セット、6月5日の1st.&2nd.セットと、2枚ペアで聴いて欲しいです。当時のライブの雰囲気がしっかりと追体験できて、なかなかの雰囲気が楽しめます。

最後に、このブルーノートの録音から演奏をチョイスして、2枚組程度のアルバムに縮退してリリースしなかったのは大正解だと思います。この判断にも、キースの慧眼を感じることができますね。
 
 
 
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2009年11月26日 (木曜日)

どこで「もらってきた」のだろう?

もともと、僕は、流行を追い回すタイプでは無いが、好奇心が強いので「トレンドもの」には、とりあえず、触れてみるタイプではある。加えて、昔から嫌だ嫌だと避けているものには、決まって「はまる」タイプではあった。

しかし...  どこで「もらってきた」のだろう。新型インフルに感染した。昨日は大変だった。朝から、38.3度の熱。医者に行きたいのだが、どこも水曜日が休みときた。ネットで調べて、やっと、駅向こうの内科がやっている、ということで、フラフラ歩いて駅向こうまで。

診療を待つこと1時間。まずは、インフルエンザキットによる検査。結果が出るまで15分ほどかかります、と言われたが、5分弱で「もう結果が出ましたよ、陽性です」。ちょうど、症状のピークにさしかかるところだったらしく、医者も感心するほどの結果の出方だったらしい。さんざん医者や看護師に感心されるんだが、あまり嬉しくはない。

昨日の午後は、39度まで熱が出て、ウンウン唸っていたが、さすがはタミフル。昨晩遅くから、熱が引き始め、今朝は平熱に。凄いぞ、タミフル。でも、ちょっと眠たくなるというか、頭がポッとなる感じなので、タミフルを飲んだら、2〜3時間はゴロゴロしている。熱が下がってから、48時間で外出可ということなので、来週の月曜日から社会復帰予定。
 

Paul_ge_nyc_17

 
今朝から平熱に戻ったが、タミフルの影響で、ちょいと眠たいので、ベットで伏せっている間、日頃、なかなか落ち着いて聴くことの出来ない、CD2枚組やボックス盤などの「長編」を聴く。

昨日、医者からフラフラ戻ってきたら、ポストのアマゾン・メールが... 。なんだろう、と思ったら、そうそう、ポール・マッカートニーの最新ライブを予約しておいたんだった。

正式名称は、Paul McCartney『Good Evening New York City』(写真左)。CD2枚組+DVD1枚の豪華盤である。ポールのライブ盤は結構出ているが、というかポールはライブ盤が好きなんだが、またまた最新のライブ盤である(笑)。それでも、僕は、ポールがライブ盤を出す度に、どうしても手を出してしまう。あの「良い意味で」脳天気な明るいライブの雰囲気が良いんだろうな。

選曲については、ビートルズ時代の曲が3分の2を占める割合は相変わらずです。怒濤のビートルズ攻撃は続いています(笑)。さすがにポールも67歳。声の衰えは隠せませんが、一所懸命に歌っているポールは美しい。曲によっては「練習不足?」と思われる曲もありますが、それもご愛嬌。それから、この歳になって、ポールの唄う「Give Peace A Chance」が聴けるとは思わんかった(一部分だけやけど)。

けど、「The Long And Winding Road」では、あのポールが忌み嫌った、フィル・スペクターのアレンジ、あの仰々しいストリングスがバックに入ってるやん。このフィル・スペクターのアレンジ、ポールは大嫌いやなかったんか〜(笑)。

でも、そんな「良い意味で」脳天気なポールには馴れました(笑)。そこがポールの良いところ。そんなポールだから、長生きできるのかも。ここまできたんやから、もっともっと元気でいて欲しい。新型インフルの床で、そんな感慨も持って聴いた最新ライブ盤でした。
 
 
 
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2009年11月24日 (火曜日)

『ジャズの小径』11月号アップです

体調が優れないのだが、今日は、本業の方が「振替休日」。一日、寝たり起きたりの、何とはなしにグズグズした生活に終始。それでも、今日こそは、ジャズ・フュージョン館の『ジャズの小径』の11月号をアップせねばならず、うだうだしながら、ホームページを更新。

立冬を 過ぎてたちまち 風邪薬

今月の『ジャズの小径』の特集は「コール・アンド・レスポンス」。「コール・アンド・レスポンス(call and response)」は、その「ゴスペル」で活用される歌唱法。ソロ・パートの人が歌った部分をその他のメンバーや観客が繰り返し歌う歌唱法です。

最近、ゴスペル合唱がブームのようです。一昔前までは、年の暮れのアマチュア合唱といえば、ベートーベンの交響曲第9番の第4楽章を皆で合唱しよう、というのがほとんど定番だったんですが、最近は「ゴスペル合唱」が台頭してきたようです。でも、日本における「合唱」というジャンルで、従来のクラシック一辺倒から、音楽の選択肢が増えるのは大変良いことだとは思います。

ジャズにおいても、「ゴスペル」の要素を巧みに取り入れ、主に、ファンキー・ジャズのジャンルで、この「コール・アンド・レスポンス」の歌唱法を楽器に置き換えて使われることが多々あります。今月の『ジャズの小径』では、「コール・アンド・レスポンス」が特徴の、ファンキー・ジャズの名盤2枚をご紹介しています。

Komichi_200911

「コール・アンド・レスポンス」には、黒人の苦難の歴史が隠されているんで、諸手を挙げて、楽観的に「良い感じやな~、ファンキーやな~」なんて楽しめないんだけれど、クラシックなどヨーロッパ音楽に無い、米国黒人音楽ならではの歌唱&演奏手法として、十分に優れているものだと思います。

ご紹介しているのは、Art Blakey & The Jazz Messengers『Moanin'』。そして、もう一枚は、Nat Adderleyの『Work Song』。どちらも、ファンキー・ジャズのジャンルの中で「名盤の誉れ高い」アルバムです。「ファンキー・ジャズ、ここに極まる」。ジャズの「ノリ」という面では、この「コール・アンド・レスポンス」は無敵です。

ゴスペル調の前奏が実にファンキーな「モーニン」。出だしの前奏で、かの有名な「タッタタタララタッタ~、タ~タ」。ボビー・ティモンズのピアノのメロディーに、トランペットとサックスが応答する。ジャズでの一番有名な「コール・アンド・レスポンス」。至福の時である(笑)。

ナット・アダレイの「Work Song」の「コール・アンド・レスポンス」も、「モーニン」に負けず劣らずに有名。「ン、タッタラ~ラタッタラタ~ラ、タッタラ~ラタッタラタ~」。なんと印象的なフレーズだろう。ナット・アダレイのファンキーなコルネットに、ギターとベースが応答する。至福の時である(笑)。

詳しくは、バーチャル音楽喫茶『松和』の「ジャズ・フュージョン館」(左をクリック)へお越し下さい。お待ち申し上げております m(_ _)m。
 
 
 
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2009年11月23日 (月曜日)

京都にまつわる「70年代Jポップ」

体調を崩した。いつものように気管支がやられて、咳が止まらない。なんだか熱っぽくて、今日は一日寝たり起きたり。新型インフルとは違うと思うが、最近の仕事上の心痛に加えて、このところの早い冬の寒さにやられた感じ。

昨日、京都の話を書いたら、久しく忘れていた、京都にまつわる「70年代Jポップ」の名曲たちが記憶に甦ってきた。高校2年生の秋から大学にかけて、実はフォーク・デュオをやっていて、自分たちでコピーして唄った、京都にまつわる名曲が甦ってきた。今日は、体調が悪く、床の中でこの「京都にまつわる名曲」をじっくりと聴いた。

秋うらら 君と寄り添い 銀閣寺

京都にまつわる「70年代Jポップ」。まずは、風の「古都」。「風」と言えば、かぐや姫の伊勢正三と、猫の大久保一久が1975年に結成したフォーク・デュオ。1970年代のJポップを彩る「名フォーク・デュオ」のひとつである。

その「風」のセカンド・アルバム『時は流れて…』(写真左)の、LPA面の3曲目に名曲「古都」がある。このセカンド・アルバム『時は流れて…』は、四畳半フォークと呼ばれた、男女の仲を中心に私生活の感情を表現したジャンルの「総決算的アルバム」である。アレンジも秀逸、唄われる世界もほとんどが4畳半フォークの世界である。

「風」というフォーク・デュオは、元かぐや姫の伊勢正三が主体だと思われがちだが、パートナーの大久保一久の曲の世界が独特の雰囲気を持っていて、この大久保一久の曲の世界が、このフォーク・デュオ「風」を特別な存在にしたと言っても過言では無い。そんな大久保一久が、伊勢正三の歌詞を基に作曲した、京都にまつわる名曲が「古都」である。

Kaze_tokihanagarete_2


別れた人には 京都が似合うと
初めて気付いた 木屋町通り
古い都への 出逢いとはいつも
こうして始まる ものでしょうか

いつかいつか こんな時が来るねと
君は君は 遠い空を見つめて
呟くように云った

いつも賑やかな 四条通りにも
悲しい目をした 人がいる
嵯峨野の辺りに 沈む夕陽さえ
急いで僕たちから 逃げていく

何もかもが僕に 背中を向けて
僕は僕は 一人取り残されて
しまったような気がする

「古都」 歌:風 作詞:伊勢正三 作曲:大久保一久


伊勢正三については、その作詞の世界については独特の個性がある。その個性をしっかりと受け止めて、大久保一久独特の節回しの展開を充てて、作り上げた名曲が「古都」である。京都を意識した前奏のアレンジ、曲全体の「ちょっと和風なコード進行」も小粋で、この歌は聴いていても、自分で歌っても、ちょっとした「カタルシス」を感じることが出来る。

大久保一久のボーカルは、はっきり言うと「下手」であるが、この弱いボーカルでも、作詞の持つ情感が表現できる曲作りは見事である。それだけ、作詞を十分に活かした「曲作り」の才能を、大久保一久は持っていたということだろう。それだけ、大久保一久の作曲能力は優れていたと、今でも僕は思っている。

良い曲です。前奏のオープンコードのギターのストロークを聴いただけで、グッと京都の情景が浮かびます。そして、出だしの歌詞「別れた人には、京都が似合うと...」と唄う「くぼやん」の歌声を聴いただけで、なんだか心がウルウルしてきます(笑)。それだけ、京都には、学生時代の「悪い思い出」が一杯に詰まっていると言えるでしょう(笑)。

今日は体調を崩したお陰で、なかなか日頃聴けない曲が聴けました。咳が抜けなくて、気管支が痛いけど、とりあえず...感謝感謝。
 
 
 
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2009年11月22日 (日曜日)

beatles『Abbey Road』は音抜群

朝からどんよりと鉛色の空。すっかり冬めいた気候にちょっと顔をしかめる。昼からは冷たい雨。時雨の様にパラパラと降っては止んで降って・・・。こんな時雨の様な天気を見ると、決まって「京都」を思い出す。

晩秋から冬にかけて、京都盆地の「天候の名物」と言えば「時雨」。さあっと冷たい風が吹いて、さ〜っという感じで降って、暫くして止む通り雨。時雨と言えば、決まって京都を思い出す。京都の時雨の思い出は沢山ある。京都は大好きな土地。学生時代、大切な思い出の地のひとつである。懐かしい。

時雨来て また清水の 遠くなり

さて、今日は日曜日、日曜日恒例のBeatlesのリマスターCD特集、今日は『Abbey Road』(写真左)である。正式なスタジオ録音盤としては、先週ご紹介した『The Beatles(White Album)』が、モノラル・ミックスとステレオ・ミックスが併存発売された、つまりは、モノラル・ミックスがリリースされた、ビートルズ最後のアルバムとなった(サウンドトラックとしては『Yellow Submarine』があるが事情が複雑なので、またの機会に語りたい)。

そして、Beatlesの正式なスタジオ録音盤としては、最後に『Abbey Road』が残ることになるが、この『Abbey Road』はモノラル・ミックスが存在しない。この最後のスタジオ録音盤にして、Beatlesは正式にステレオ・ミックスを主体としたことになる。つまりは、Beatlesの聴き手(ファン)は、単発の小さなスピーカーを搭載したラジオしか持たない人達から、少なくとも何らかのステレオ・セットを持った人達へとシフトした、ということだろう。

Beatlesはライブ・バンドである。その最大の特徴である「ライブ感」を、スタジオ録音盤にも出来る限り再現すべく、録音方式はスタジオ・ライブに近いものだった。リハーサルも無い。今で言うヘッド・アレンジ方式とジャム・セッション方式で演奏曲を煮詰めていったという感じだろう。そのスタジオ録音盤に詰め込まれた「ライブ感」は、モノラル・ミックスで最大限に再現された。だから、巷では「Beatlesはモノラル・ミックスでこそ、そのバンドの真価が発揮される」と言われるのだろう。

マルチトラックの録音装置が導入され、オーバーダビングでのスタジオ・ワークが採用される時代になる。しかし、Beatlesはライブ・バンドである。このスタジオ・ワーク方式が、Beatlesに合うはずがない。しかし、悪いことに、このオーバーダビング方式に、ポールが思い切り「はまってしまう」。そして、『Revolver』から、大々的に採用されたオーバーダビング方式は、Beatlesに破綻をもたらした。

とにかく、ポールがこの方式に「囚われの状態」になってしまったのが大きな問題だった。気に入らない演奏パートは何度でも録音し直せる、気に入らない演奏パートは、別の誰かの演奏と差し替えることが出来る。サウンド・エフェクトを後から被せるのも比較的容易に出来る。後から必要となった楽器の音も容易に追加して、その演奏に被せることが出来る。でも、これって、ライブ・バンドの基本精神に反するものなんですよね。
 

Abbey_road_remaster

 
そもそもが、Beatlesは使用楽器数が少ない。そして、サウンド・エフェクトも必要最低限にて、効果的なものにしか採用していない。Beatlesは、そのバンドの音の「シンプルさ」が最大の特徴のひとつだと僕は睨んでいるので、やはり、本来のオーバーダビング方式は基本的に必要ないだろう。

そして、ライブ・バンドにはサポートミュージシャンの参加は必要が無い。自分たちで、自分たちの楽器の分担で、サポートミュージシャンの参加無しに演奏することが原則である。そのバンドの中での「メンバー間の楽器の分担」を、オーバーダビング方式を前提として犯し始めたら、バンドの連帯は一気に無くなる。

そんなこんなで、解散寸前のアルバムが、この『Abbey Road』である。さすがに、このアルバムのA面を占める楽曲+B面の1曲目「Here Comes the Sun」は、往年のBeatlesの演奏と言える。 どの曲も素晴らしい演奏で、そのライブ感が堪らない。このまま、ステージで演奏可能な曲ばかりだ。しかし、「Maxwell's Silver Hammer」だけがちょっと異質で困った存在なのだが、う〜ん、ポール、何故ここにこの曲を入れた。B面に持って行ってくれれば、気持ちがスッとしたのに(笑)。

B面の2曲目「Because」以降、「The End」までの一連のメドレーの流れと、最後に唐突に存在する「Her Majesty」は、ポールのソロの世界だろう。ポールをリーダーに、ビートルズの他のメンバーがバックバンドとして参加した感じかな。巷で言われるように、確かに良く出来たメドレーだ。でも、1曲1曲が独立して成立した曲ではない。歌われる内容にもテーマ性は無い。この辺が、このB面メドレーの辛いところ。この脈略のないメドレー形式は『Sgt. Pepper's』に似ているが、あのアルバムは1曲1曲が独立した曲として成立していた。

さて、今回、リマスターされたステレオ・ミックスの音はどうなのか。もともと、この『Abbey Road』は、LP時代から音が良く、マスターテープの録音の良さが偲ばれていたのですが、1986年の初CD化の時も、かなり素晴らしい音質で、当時「これがCDの音か」と驚いたのを覚えています。今のステレオ装置で聴いても、1986年リマスターCDは良い音で鳴ります。今回のリマスターに先立ち、この『Abbey Road』については、リマスタリングの効果はほとんど無いのでは、と思ったくらいです。

ところがどっこいぎっちょんちょん(笑)。今回のステレオ・ミックスは更に音が良くなっています。「劇的に」とは言い過ぎかと思いますが、1986年リマスターよりも音の分離が、更に良くなっています。ジョージの名曲「Something」での、ジョージが出来る限りシンプルにしてくれと懇願した、ポールの異常な程の驚愕ベースラインが、くっきりと浮き出てくるところなんか、鳥肌モノです。特にA面にこの効果が顕著ですね。リンゴのドラミングも「張りと艶」が増して、音量を上げると目の前でリンゴが叩いている様です。

加えて、これは今回のリマスター全般に言えることなんですが、音のエッジが円滑になって、音が非常に滑らかに感じます。そして、ノイズ感が非常に抑制されている。といって、必要なノイズはしっかり残っていて、不要なノイズだけを選択して抑えたって感じです。ですから、とても聴き易い、というか、耳に優しいというか、何回聴いても疲れないというか、飽きないというか、本当に良い耳当たりの音になっています。確かに、アナログ時代の、LP時代の音と同じ感じになってきています。

『Abbey Road』の今回のリマスターCDは、絶対に「買い」です。『Abbey Road』は、今回のリマスターCDが有れば良い。そんな感じの音に仕上げられています。デジパック仕様の様なジャケットが、ちょっと「愛」を感じない、味気ないものですが、仕方がありませんね(笑)。う〜ん、ステレオ・ミックスしか存在しない『Abbey Road』と『Let It Be』だけ、日本製紙ジャケで追加リリースして欲しいなあ〜。
 
 
 
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2009年11月21日 (土曜日)

冬に楽しむフュージョンは...

小春日和の良い天気。朝から快晴の千葉県北西部地方です。気温もやっと平年に向けて回復して、17度まで上がった。なんとなく長閑で過ごしやすい気温。良い感じの土曜日です。

転た寝も 小春日浴びて 昼下がり

立冬を過ぎて、暦の上では「冬」である。確かに寒くなった。我が千葉県北西部地方の11月はとりわけ寒く、10月が結構暖かかっただけに、一気に冬が来た、って感じである。

冬になると、冬にピッタリというか、冬じゃないとしっくり来ないジャズが聴きたくなる。このところ、ボブ・ジェームスの『H』(写真左)を聴く機会が増えた。このアルバムは、ボブ・ジェームス8枚目のアルバム。「H」はアルファベットの8番目。ジャケット写真のホットドックの頭文字は「H」。そして、ジャケットを90度回転させると、つまり、ホットドックを縦から見ると「H」の文字のようにも見える。いつもながら、なかなか洒落たジャケットである(笑)。

さて、何故、冬になると、このアルバムが聴きたくなるのだろう。恐らく、1曲目の「Snowbird Fantasy」の存在がそうさせるのだと思う。Snowbirdとは、snow bunting = ユキホオジロという鳥とのこと。ユキホオジロとは、ユーラシア大陸から北アメリカの北極圏で繁殖し、冬季はユーラシア大陸の中緯度地帯と北アメリカ中部に渡り越冬する、ホオジロの仲間とのこと(Wikipediaより)。

最初鳥のさえずりから始まって、ややクラシカルなアレンジは、ちょっと野暮ったい感じがするんですが、聴き進めていくうちに、野暮ったい感じからスリリングな雰囲気に展開し、躍動感溢れる演奏に盛り上がっていくところは、アレンジャーとしてのボブ・ジェームスの面目躍如。

Bobjames_h

この「Snowbird Fantasy」を聴きたくなるのは、決まって「冬」に入ってから。やはり題名と曲の雰囲気が、この「Snowbird Fantasy」を聴くのは「冬」と決めつけるのだと思いますね(笑)。実際、冬に聴く、このアルバム『H』は季節感にフィットしていて実に良い感じ。逆に、夏に聴く『H』は、蒸し暑い環境とのギャップが激しくて、夏にはこの『H』を聴く雰囲気には決してなりません(笑)。

この『H』というアルバム、そのキャッチャーな1曲目「Snowbird Fantasy」ばかりがクローズアップされているみたいですが、2曲以降の演奏こそが、ボブ・ジェームスの成熟したフュージョン、ボブ・ジェームスの成熟したアレンジ&プロデュースの成果だと感じます。というか、成熟しきっているかも...。

ボブ・ジェームスのキーボーディストとしての力量も存分に楽しめます。特に、この『H』は結構、アコースティック寄りで、ボブ・ジェームスのフュージョン・ピアノが満載です。もともと、ジャズ・ピアニスト、しかもかなりアブストラクトなジャズ・ピアノを弾いていたボブ・ジェームスが、ここまで、メロディアスで堅実なタッチのインプロビゼーションを展開するとは、いやはや、人って変われば変わるもんですね(笑)。

しかも、ピアノを弾きまくる傍らで、しっかりと、十八番のエレクトリック系の鍵盤楽器もしっかりと弾きこなしており、特に、このアルバムでは、シンセサイザーの使い方が見事だと思います。先行する誰かの演奏をベースにすること無く、個性をしっかりと全面に押し出した、ボブ・ジェームス流のシンセサイザーの使い方になっているところが素晴らしい。

ボブ・ジェームスの『H』。良いアルバムだと思います。先に書きましたが、「冬に楽しむフュージョン」の佳作アルバムの中の1枚だと思います。冬にピッタリというか、冬じゃないとしっくり来ないフュージョン・アルバムの一枚でしょう。今の季節から春まで、気軽にフュージョンでも、という時にぴったりのアルバムです。
 
 
 
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2009年11月19日 (木曜日)

Deep Purpleの「僕の一押し」

寒い。寒いぞ(笑)。なんと今日の東京の最高気温は9度。真冬の寒さである。おいおい、まだ11月中旬やで。しかも、朝からどんより曇り空。午後からは冷たい雨も降ってきた。帰宅時にいたっては、結構、雨も強くなって、北風寒く、なんだか機嫌が悪い。

鬱々と 氷雨の空も 恨めしく

さて、今日は70年代ロックの話題を。純ジャズを聴き続けると、ちょっと耳休めしたくなる。耳休めには、70年代ロック。今日は久しぶりに、Deep Purple を聴きたくなった。さて、何を聴こうか?

実は、Deep Purple のアルバムの中で、僕の一番のお気に入りアルバムは、『Who Do We Think We Are (紫の肖像)』(写真左)。Deep Purple のアルバムの中で、このアルバムが一番、聴いた回数が多い。

一般的には、第2期黄金時代、最後のスタジオ録音。この頃は、メンバー間の人間関係が悪化し、とりわけ、リッチー・ブラックモアとイアン・ギランの関係が最悪。大した打合せも無しに製作されたアルバムと言われている。でも、巷で言われるほどの険悪な雰囲気は無いと思うんだけど・・・。

冒頭のキャッチャーな「Woman From Tokyo」もなかなかだが、2曲目の以降の演奏が素晴らしい。大した打合せも無しに製作した、とあるが、それ故、ジャムセッションの様なラフさが堪らない。当然、それぞれの演奏テクニックもピークの頃なので実に良い。

Who_do_we

意外とリッチー・ブラックモアが弾きまくっている。ジョン・ロードもいつになく、ファンキーなフレーズを連発、これまた弾きまくっている。かつ、リッチーとロードがバランス良く、五分五分に弾きまくっている。これって、なかなか、Deep Purple のアルバムでは無い。どっちかが目立って、どっちかが引っ込むパターンが多いんだが、この『紫の肖像』は違う。バランスが良い。

収録された楽曲については、ブルージーでアグレッシブな曲が多い。活き活きと演奏しているパープルである。メンバー間の人間関係が悪化した、第2期黄金時代最後のアルバムとは思えない。イアン・ギランのボーカルも絶好調、ロジャー・グローヴァーのベースもブンブン唸り、イアン・ペイスのドラムスも「神懸かりな」叩きまくり。バンドが一体となった塊のような演奏が素晴らしい。

パープルのハードロック的な演奏としては、このアルバムが一番ではないでしょうか。ブルージーな雰囲気の曲もあるが、ブルージーな雰囲気は必要最小限、パープル独特のジャンル不明な、パープルならではのハードロックが展開されている。そう、この『紫の肖像』は、パープル独特のハードロックの演奏が詰まっている。そこが良い。

この『紫の肖像』は、2002年にリリースされた、25thアニバーサリー盤は音が良い。充実したリマスター、リミックスです。この充実したリマスター、リミックスのお陰で、各楽器の分離が良くなり、リッチーのギターがとても良く聞こえます。グローヴァーのベースもキッチリ締まって重心重く、ペイスのドラムは、ダイナミック&タイト。恐らく、この音の良さが、このアルバムを更に良いものにしているような気がします。

思いがけない贈り物は「Woman From Tokyo」のリミックス。正規テイクと全く同じマスターからのリミックスなんですが、カットされていたリッチーのギターが、ここでは延々と聴くことが出来ます。このリッチーのソロが抜群。この『紫の肖像』は、25thアニバーサリー盤が絶対のお勧めです。
 
 
 
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2009年11月18日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・4

朝は少し愚図ついた小雨が残って、朝の通勤は傘をさしての通勤。とにかく雨が嫌いな性格なので、朝から機嫌が良くない。昼前、気がつくと打って変わって、眩しいほどの晴天が広がっている。う〜ん、これってなんだか会社の中で働いている場合じゃないよな(笑)。

木枯らしに 煽られ吹かれ 千鳥足

さて、今日は「ピアノ・トリオの代表的名盤」の第4弾。今日は、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)の『Overseas』(写真左)。フラナガンの代表作の一枚。ピアノ・トリオの名盤誉れ高いアルバムです。

トミー・フラナガンがジャズピアニストとしてプレイするようになって10年目に録音した初リーダーアルバム。1957年8月15日の録音です。パーソネルは、Tommy Flanagan (p), Elvin Jones (ds), Wilbur Little (b)。なかなかに実力のあるドラムとベースを従えてのトリオ録音。

このアルバム、1957年当時在籍していたJ.J.Johnsonのクインテットの一員としてヨーロッパ・ツアーをした時、そのリズムセクション3人がストックホルムで吹き込んだアルバムです。旅先という環境面での新鮮さとピアノ・トリオという、ピアノがメインの編成からだろうか、いつになく、フラナガンが伸び伸びと自由に演奏している様子が印象的である。

前にも書いたが、フラナガンは、ジャズ・ピアノの名手の一人でありながら、なぜがリーダー作に恵まれず、脇役の名手、脇役名盤請負人などと変なレッテルを貼られていた。トミー・フラナガンは「伴奏でこそ、その真価を発揮する」なんて、お門違いな評価をされていたりするが「とんでもない」。

フラナガンのピアノは、優雅でハッキリとしたタッチで、ドライブと歌心溢れ、近代的な響きと、そこはかとなくファンキー芳るもの。アグレッシブで刺激的なフラナガン。もともと、バップ・ピアニスト出身、これが彼の本質でしょう。決して力任せではない、抑制されたドライブ感が素晴らしい。これぞ、職人芸ですね。
 

Overseas_6

 
そんなフラナガンが、寛ぎながら自由に好きなだけ、自分の本質を露わにしながら、バンバンとピアノをドライブさせている。トミー・フラナガンは、純正バップ・ピアニスト。しかも、彼の演奏技術は非常に高く、伴奏時には、それぞれのソロイストに合わせて、そのソロイストを引き立てるような弾き方、音色でサポートすることができる。ここでのフラナガンは彼が主役。好きなだけ、バンバン弾き倒しているところが凄い。

そして、エルヴィンのドラミングが、バッシバッシと絡む。アルバムを通して、エルヴィンはブラシのみを使ってドラミングしているんだが、ブラシのみにして、この迫力ある、かつダイナミックなドラミングにも脱帽である。フラナガンと絡む時の、絶妙なバランス・間・タイミング。フラナガンとエルヴィンの相性は抜群である。

ウィルバー・リトルのベースの侮れない。重心の低いベース、堅実なビートの供給。しっかりとトリオのボトムを押さえて、その上で、フラナガンとエルヴィンが自由にバンバン弾きまくる、叩きまくる。これだけ、フラナガンとエルヴィンが心ゆくまで演奏出来たのは、ウィルバー・リトルのベースの貢献が大きいと僕は思っている。

曲についてはフラナガンのオリジナルが多いので、スタンダードなど、お馴染みの旋律が少ないですが、フラナガンのオリジナルも結構イケます。リズミカルで疾走感溢れる曲が結構あるので、心ゆくまで、ハードバップ時代の代表的なピアノ・トリオの演奏を楽しむことができます。

良いアルバムです。ビリー・ストレイホーンの書いたバラード「Chelsea Bridge」などはじっくりと耳を傾けたくなる名演です。実にしみじみと聴き入ってしまいます。アルバム全編に渡って、切れ味鋭いシャープなリズム感と、小気味の良いタッチ、溢れる歌心。全体を通して、フラナガンの勢いある素晴しい演奏を聴くことができます。

ちなみに、このフラナガンの『Overseas』のジャケットですが、今、発売されているのは、左のフラナガンの横顔写真のもの。LP時代は右の「C」の文字をあしらった小粋なデザインでした。この「C」のジャケットデザインのCDは、US盤で入手することが出来ます。僕は圧倒的に「C」のデザインに愛着があります。
 
 
 
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2009年11月17日 (火曜日)

時には「こんなジャズも良い」

寒い。冷たい雨。朝から冷たい雨。そして、帰宅時には、寒くて強い北風と横殴りの冷たい雨。今日の我が千葉県北西部地方は「大荒れの天気」。ハーフコートを羽織っていって良かった。嫁はんの言うことは聞くものである(笑)。

背を丸め 氷雨の先に 我が家かな

さて、この大荒れの寒い雨の朝、往きの始発を待ちながら、iPhoneを指タッチしながら、アルバムをサーチ。そう言えば、最近、トランペットのジャズを聴いていないなあ、と想いながら、タッチタッチ。すると、フレディ・ハバードの項に行き当たった。

アルバムを見ていくと、フュージョン・ブームの立役者、CTIのアルバムが目に付いた。1970年11月の録音。フレディ・ハバードの『Straight life』(写真左)である。1970年と言えば、フュージョン黎明期、まだ、フュージョンが、エレクトリック・ジャズとか、クロスオーバーと呼ばれた時代。

パーソネルは、Freddie Hubbard (tp) Joe Henderson (ts) Herbie Hancock (p) George Benson (el-g) Ron Carter (b) Jack DeJohnette, Richard "Pablo" Landrum (ds) Weldon Irvine (tamb)。エレクトリック・ジャズっぽいメンバーは、エレキギターのジョージ・ベンソンくらい。1970年といえば、クロスオーバー・ジャズと呼ばれた時代。どんな演奏だったっけと思って「選択」。

「Straight life」「Mr. Clean」「Here's that rainy day」の、たった3曲しか収録されていない。しかし、1曲目の「Straight life」と2曲目の「Mr. Clean」は、絵に描いたようなクロスオーバー・ジャズである。でも、決して、フュージョンっぽくは無い。安っぽくも無い。今の耳で聴くと、これはこれで立派なハードバップ・ジャズと言って良いんじゃないか、という充実した内容。
 

Freddie_straight_life_2

 
ハバードは勿論のこと、テナーのジョー・ヘンダーソン、ドラムスのジャック・デジョネットが好調である。3人とも、実にエモーショナルなインプロビゼーションを繰り広げる。ハービー・ハンコックのピアノも何時に無くノリノリ。ビートは8ビート。8ビートのハードバップとしては、実に秀逸な演奏である。

このアルバムの「Straight life」「Mr. Clean」の演奏を聴いて、これだけテンションが高くとテクニックが優れた8ビートのハードバップを演奏できるバンドが、今のジャズ界にどれだけあるだろう。さすが、1950年代のハードバップ期から第一線を張ってきた一流ミュージシャン達である。演奏がひと味もふた味も違う。

そして、3曲目の「Here's that rainy day」が素晴らしい。美しい。ハバードは、トランペットを持ち替えて、フリューゲルホーンを実に朗々と情感豊かにしっとりと吹き、伴奏では、あのジョージ・ベンソンがアコースティック・ギターで優しくサポートする。実に見事なバラード演奏となっています。

この1曲だけは、iPhoneやiPodではなく、ちゃんとしたステレオ・セットで聴きたい。実に情感豊かなジャズ・バラードがここにあります。これが1970年のクロスオーバー全盛期のジャズ演奏とは、いや〜、ジャズって奥が深い。

気軽にチョイスして、グルービー、ムーディーで、テンションが高くとテクニックが優れた8ビートのハードバップと、実に見事なバラード演奏が同時に楽しめる。良いアルバムです。外の冷たい雨音を聞きながら、フレディ・ハバードの『Straight life』を愛でる。そして、心から思う。時には「こんなジャズも良い」。
 
 
 
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2009年11月16日 (月曜日)

米国ルーツロックの大御所

う〜ん寒くなってきた。立冬過ぎて、寒い空気が少しずつ流れ込んでくる。一雨毎に寒い空気が流れ込んでくるようなこの季節。もの淋しい時期は過ぎ去って、もうすぐ冬がやってくる。

立冬に 湯割り焼酎 相応しく

さて、唐突であるが、僕はアメリカン・ルーツロックが大好きである。アメリカン・ルーツ・ミュージック、ブルースやフォーク、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどをベースとしたロックが大好きである。

アメリカン・ルーツ・ロックの雄といえば「ザ・バンド」。ザ・バンドは、1967年から1976年にアメリカで活動したロック・バンド。オリジナル・メンバーは、カナダ人4人(ロビー・ロバートソン、リチャード・マニュエル、ガース・ハドソン、リック・ダンコ)とアメリカ人1人(リヴォン・ヘルム)。

ロックにカントリー、フォーク、R&Bといったアメリカン・ルーツ・ミュージックの要素を色濃く反映させた音楽性は非常に高く、ミュージシャンズ・ミュージシャンとして今なお多くのアーティストから尊敬を集めている。ザ・バンドについては、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」の「My Favorite Rocks」のコーナー、『アメリカンロックの最高峰/ザ・バンド』(左をクリック)を参照されたい。
 

Dirt_farmer

 
さて、そのザ・バンドの唯一の米国人、ドラマーのリヴォン・ヘルムの『Dirt Farmer』(写真左)を手に入れた。久しぶりのリヴォン・ヘルムである。ザ・バンド解散後、リヴォン・ヘルムは、RCOオール・スターズを結成し、ソロ活動を展開。しかし、1996年、ヘルムは喉頭ガンと診断され、以後歌うことは困難になり、その治療費の為、金銭的にも苦しんだが、その後、奇跡的とも言える回復を見せ、この『Dirt Farmer』では元気な歌声を聴かせてくれている。

とにかく、冒頭の「False Hearted Lover Blues」から徹頭徹尾、米国ルーツロック満載である。印象的なフィドルの音、マンドリンの音、C&Wな雰囲気をプンプンさせながら、アコースティック・ギターをフィーチャーしてフォーキーな雰囲気をプンプンさせながら、しかも、ビートはR&B基調。いいぞ、いいぞ。リヴォン・ヘルムの世界を満足いくまで聴かせてくれる。

収録された全13曲は、いずれも古いトラディショナルな曲ばかりがズラリと並ぶ。娘のエイミー・ヘルムを加えた二人の女性シンガーも、絶妙のバックコーラスで、リヴォン・ヘルムのボーカルを盛り立てる。実に良い雰囲気だ。しかも、13曲それぞれがアレンジ良く、メリハリが効いていて飽きない、というか実に楽しい。

良いですよ〜。所謂、アメリカン・ルーツ・ミュージック、ブルースやフォーク、カントリー&ウエスタン、ゴスペルなどが好きな方々には絶対のお勧めです。また、ザ・バンドのファンの方々にも絶対お勧め。ザ・バンドの往年の世界がここにあります。現代の音で、ザ・バンドの伝説の米国ルーツロックの世界が、リヴォン・ヘルム流に再現されています。

しかも、本盤は音が非常に良い。録音もグッド。リヴォン・ヘルムの考える「米国ルーツロック」が心ゆくまで味わえます。なお、このアルバムは、2008年のグラミー賞(Grammy Award)のベスト・トラディショナル・フォーク・アルバム(Best Traditional Folk Album)を受賞しました。

米国ルーツロックの大御所、リヴォン・ヘルムの米国ルーツロックの名盤。晩秋の夜長、現代の米国ルーツロックの名盤を愛でる。至福の時である。
 
 
 
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2009年11月15日 (日曜日)

Beatles 最後のモノラル盤

今日は朝から快晴の千葉県北西部地方。おおよそ1週間ぶりの青空である。しかも暖かい。日差しもふんわり柔らか、実に心地良い一日。こんな日はノンビリと本でも読みながら過ごしたいんだが、なかなかそうもいかない。車の整備、本の整理などなど、細々と片付けものはいろいろある。

うららかな 小春日浴びて 至福かな

さて、日曜日恒例のBeatlesのリマスターCD特集、今日は『The Beatles(White Album)』(写真左)である。このアルバムまでが、モノラル・ミックスとステレオ・ミックスが併存している。つまりは、モノラル・ミックスがリリースされた、ビートルズ最後のアルバムである。

もともと、このアルバムについては、僕は複雑な心境を抱いている。正直に言うと、どうしても心から好きになれないのだ。巷では「名盤」の誉れ高いのだが、どうも、僕にとっては、頭では理解できるのだが、感覚的にはどうも好きになれない、厄介なアルバムである。よって、ビートルズのアルバムの中で、ターンテーブル、及び、トレイに載る回数が一番少ないアルバムである。

この『The Beatles(White Album)』を初めて聴いたのは高校1年生の秋。なんだか未完成の曲ばかりが並んでいるようで、その時は、この未完成みたいな曲が実は素晴らしく、自分はそれが理解できないだけだと思っていた。で、大学時代にじっくり何度も聴き返してみて、やっぱり、どうもしっくりこない。どうもデモ・テープを聴いている感じばかりがする。逆にこんな未完成な曲ばかりを2枚組に詰め込んでリリースするなんて、聴き手を軽んじているんではないのだろうか、とさえ思った。

僕も音楽の作り手、演奏する側にいたこともあるんで、音楽の作り手としては、このアルバムは中々面白い。面白いアイデア、フレーズが満載なのだ。でも、アルバム全体の出来は、と問えば、どうしても、巷で言われるような「名盤」とは思いがたい。

おそらく、楽器やボーカルを別々のパートに分けて録音し、後でミックスしていくという、オーバーダビングという録音手法がビートルズという集団には不適だったように思える。生気に欠けるというか、アグレッシブな感じが他のアルバムに比べて乏しいように感じるのだ。元々、ビートルズは優れたライブ・バンドである。オーバーダビングという録音手法が、そのライブ・バンドとしての本質を阻害しているように感じる。

ビートルズとはどういう才能を持ったメンバーで構成されていたのか、ということを実感するには最適だが、ビートルズとはどういうグループだったのか、を理解するには、どうも相応しくないと思うのだ。つまり、ビートルズの「個」を理解するには最適だが、ビートルズの「集団」を理解にするには、どうも良くないなあ、という感じなのだ。

White_album_6

『The Beatles(White Album)』を、ビートルズ最高のアルバムと認識できない人間は、ビートルズの真の理解者とは言えない、とまで言われるが、そういう意味では、僕はビートルズの真の理解者ではないのだろう。どうしても思えないのだ、僕は『The Beatles(White Album)』が、ビートルズの最高傑作とは・・・。ビートルズらしさという面では、『Rubber Soul』と『Revolver』の対をなす2枚のアルバムの方が、ビートルズらしいと思うんだがなあ・・・。

さて、本題のリマスターCDの件だが、この『The Beatles(White Album)』から、ステレオ・ミックスにも本腰を入れだした形跡がありありと見える。ステレオ・ミックスの音の定位が、かなり良くなり、ステレオの音の広がりも改善されて、やっとこの『The Beatles(White Album)』に至って、ステレオ・ミックスの音に違和感を全く感じなくなった。モノラル・ミックスとステレオ・ミックス共に「甲乙付けがたい」音になっている。

曲毎に聴くと、モノラル・ミックスの方が良い曲もあるし、ステレオ・ミックスの方が良い曲もある。一概には言えないが、ステレオ・ミックスを前提とすると、オーバーダビングをする際に、音の定位を十分意識して、音のバランスを組み立てていく必要がある。この音のバランスと組み立ての部分で、当時の録音機材や録音ノウハウは、まだまだ技術的に不足な部分があったと思われる。

大雑把に言ってしまうと、ジョンの曲はモノラル・ミックスの方が良い、ポールの曲はステレオ・ミックスの方が良い、ジョージの曲は、モノラル、ステレオ共に味わい深く、リンゴの曲はステレオ・ミックスの方に軍配が上がる。つまりは、オーバーダビングという録音手法に「はまった」のがポール、オーバーダビングという録音手法を嫌ったのがジョン、ジョージとリンゴは、オーバーダビングにとりあえず付き合った感がある。

そんなメンバーの「個」としての音作りのスタンスの違いが、バンドの音という面で「不協和音」を起こしているのが、モノラル・ミックスとステレオ・ミックスを聴き比べていると良く判る。これだけ、音作りのスタンスが違うと、もうバンドとしての「トータルなアルバム作りは成立しない」だろう。

さらに、オーバーダビングを前提として曲を作り上げていくと、アルバムの収録曲をライブで再現するのが困難になるが、この『The Beatles(White Album)』に収録されている曲は、そのままの音をライブで再現するのは結構難しいものが多い。そういう意味で、この『The Beatles(White Album)』は、ライブ・バンドとしてのビートルズから一番遠い位置にあるアルバムだと僕は思っている。

ステレオ・ミックスがモノラル・ミックスと肩を並べた『The Beatles(White Album)』。そして、ステレオ・ミックスとモノラル・ミックスを聴き比べて見ると良く判る、当時のビートルズの状況。音楽の創造という面では、今の耳でも「ハッ」とするほどの煌めきに溢れている反面、音楽を演奏する集団という面では、既に「個」が優先されていて、バンドというユニットとしてはバラバラな状態であったことが良く判る。

音楽の創造という面に重きをおいて評価する向きにはステレオ・ミックス、音楽を演奏する集団という面に重きをおいて評価する向きにはモノラル・ミックス、というのは、ちょっと乱暴だろうか。本当に、聴く度に骨の折れるアルバムではある(笑)。
 
 
 
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2009年11月14日 (土曜日)

日本が誇るプログレ・バンド

今朝は雨。かなり強い雨。途中少し上がったが、正午を挟んで、強風+大雨の「大荒れ」の天気。夕方になって、やっと落ち着いたが、なんだか劇的な天候である。紅葉のライトアップなんて、無粋なニュースを見たが、今の日本人って、風流も粋もあったもんやないなあ。

散る落ち葉 ただただ自然の ままが良い

2009年9月9日、ビートルズのリマスターCDが出てからというもの、ビートルズを組織的に学び直している松和のマスターである。ビートルズはモノラルというが、初めて、モノラル・ミックスのビートルズを聴いたんだが、やっとこれでビートルズにまともに向き合える、と思った。僕がビートルズに対して、妙なわだかまりも持っていたのは、当時のステレオ・ミックスとチープな再生装置のせいである(笑)。

先週、『Magical Mystery Tour』を聴いていて、ふと高校時代のことを思い出した。きっかけは3曲目の「Flying」。ちょっとシュールでサイケデリックな、何の変哲もないインスト曲なんだけど・・・。

僕は高校時代の前半、完全なプログレ小僧だった。とにかくプログレにはまって、プログレの名盤を手当たり次第聴き進めていた。日本のプログレ・バンドとしては、まず一番のお気に入りは「四人囃子」。そして、高校時代に新たにリリースされた新盤が『ゴールデン・ピクニックス』(写真左)。

この『ゴールデン・ピクニックス』の1曲目が、この「フライング」。実は、当時、この曲がビートルズの作品とは知らなかった。『ゴールデン・ピクニックス』を映研の部室で流していたら、かの「ビートルズに詳しい同級生」がやってきた。そして、この『ゴールデン・ピクニックス』の1曲目「フライング」を聴いて「あ〜、これ、ビートルズの「Flying」やん」。

「そ〜なんか〜」と真顔で問い返したら、その同級生は「そんなことも知らんのか」といった呆れた目で、「この「Flying」は、『Magical Mystery Tour』の3曲目、ビートルズの唯一のノン・ボーカル(と当時は言ったような・・・)の曲なんやで」と胸を張って言われた。そして、やっぱり次の日、頼んでもいないのに『Magical Mystery Tour』を持ってきて、有無を言わせず「やっぱし、聴いておかんとね」と言われて、これは大変と、『Magical Mystery Tour』を、必死で一晩集中して聴いたのを思いだした(笑)。
 

Golden_picnic_36

 
その1曲目の「Flying」から、日本人離れした、卓越したアイデアと超絶技巧なテクニック、そして、日本人ならではの印象的な旋律を伴った演奏が怒濤のように押し寄せてくる。2曲目の「カーニバルがやってくるぞ(パリ野郎ジャマイカへ飛ぶ)」なんぞは、僕に取っての永遠のエバーグリーンである。

壊れかかった真っ赤な車に乗って
奴らが地獄の果てから、舞い戻ってきた
昔唄った歌を唄えば、街中はお祭り騒ぎ

よそいきに着替えて みんな出ておいで
学校から街から家の中から
誰が入って来てもいいさ
俺たちは唄い続けるから 

この「奴ら」が自分たちに被って、本当にこの曲は大のお気に入り。というか、僕にとっての人生の応援歌である(笑)。3曲目以降「なすのちゃわんやき」「空と海の間」「泳ぐなネッシー」「レディ・ヴァイオレッタ」、どの曲も、日本人のプログレって感じの演奏ばかりで、僕は今でもこのアルバムは、大のお気に入りである。そうそう、ラストの「レディ・ヴァイオレッタ」は、プログレとちゃうな。この曲は、フュージョン、森園勝敏(写真右)のフュージョンやなあ。

そうそう、詳しくは、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の懐かしの70年代館、「青春のかけら達」のコーナー『日本プログレッシブ・ロックの雄、四人囃子』(左をクリック)へどうぞ。

ビートルズにまつわるエピソード、思い出は沢山ある。今回、2009年9月9日、ビートルズのリマスターCDが出てからというもの、ビートルズを組織的に学び直している中で、忘れていたエピソード、思い出を色々と思い出してきた。思っていたより、ビートルズにまつわるエピソード、思い出は多い。

それも、良い思い出では無く、悪い思い出の方が多いっていうのが、「青春のエピソード、思い出」ならでは、って感じがして、実は悪い気はしていないのだ(笑)。 
 
 
 
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2009年11月13日 (金曜日)

ストレス解消の「最終兵器」

今日は朝から曇り空。しかも寒い。いや〜冬がすぐそこまで来ていますなあ。鉛色のドンヨリした空。僕はその鉛色のドンヨリした空が大嫌い。浪人時代、京都で見上げた、未来の希望を打ち砕くような、11月の鉛色のドンヨリした空を思い出す。

縁側に 小春日恋し 曇り空

昨日は、あっけらかんとしたフュージョン・バンド「パスポート」を聴いた。う〜ん、まだまだ頭の中がスッキリしない。もっとフュージョンを聴きたい。今日は、懐かしのスパイロ・ジャイラを選択。ほんと、久しぶりだなあ。

「スパイロ・ジャイラ」。1975年にアメリカで結成され、2009年現在も活動を続けるフュージョン・グループ。最大のヒット作は、1979年にリリースした『Morning Dance』(写真左)。ビルボードのポップチャートを上昇して70万枚以上のセールスを上げ、ゴールド・ディスクも獲得。

僕は、このアルバムのカリビアンな雰囲気が大好きです。1979年当時は「カリビアン」って言葉は無かった。「トロピカル」な雰囲気、って表現だったかな、当時、流行った言い方は(笑)。今から思えば、「カリビアン」は「トロピカル」じゃないよな〜。

Morning_dance_49

でも、初めて聴いた大学時代、スチール・パンの音が衝撃的だった。なんてトロピカルな柔らかで優しい音なんだろう。そして、爽やかで伸びやかなサックスの音。堅実で健康的なビートを刻むリズム・セクション。このフュージョン・ジャズを「軟弱軟派な商業音楽」なんて決めつけるのは、実に愚かな所業だ。この柔らかで優しいリズムを聴け、この爽やかで伸びやかなフレーズを聴け。これって、プロフェッショナルのなせる技だ。

僕はこの『Morning Dance』『Catching the Sun』『Carnaval』の、僕が勝手に名付けた「トロピカル三部作」が大好きだ。アルバム・ジャケットのイラストも共通性があって大好きだ。この「トロピカル三部作」は、僕が心をリラックスさせ、ストレスを解消させる「最終兵器」である。

『Morning Dance』、収録されているどの曲も良い演奏です。ちゃっかりと、ブレッカー・ブラザースなどをゲストに迎えたりして、なかなか、その隠し味も侮れません。「Morning Dance」「Jubilee」「Rasul」「Song for Lorraine」「Starburst」「Heliopolis」「It Doesn't Matter」「Little Linda」「End of Romanticism」、あ〜、どの曲もどの曲も良いなあ。大学時代のセピア色の思い出が、ふと「よぎる」。

その懐かし過ぎる思い出と共に、今の耳でも十分に心地良い、ハイレベルな歌心のあるフュージョン・ジャズ。ハイレベルな歌心のあるフュージョン・ジャズは、今でも僕の疲れた心を、疲れた精神を癒してくれる。う〜ん、今週は本当にお疲れ様・・・。暫く隠遁したい気分だ。
 
 
 
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2009年11月12日 (木曜日)

クロスオーバー・イレブン御用達

昨日の雨がやっと上がった千葉県北西部地方。朝、起きたら「寒っ」。寒いぞ。いきなり冬の雰囲気。それでも、コートを着込むほどでは無く、冬のスーツを着込んでの出勤である。今日の東京は一日、どんよりとした曇り空。いよいよ、冬がほんにそこまで来ていることが実感できる。

立冬を 過ぎて寒空 鉛色

さて、このところ、ハードにジャズを聴き込み過ぎた感がある。ちょっとリラックスして、何も考えずに、気持ちの良いフュージョンなどを聴きたくなる。しかも、今日は寒くてどんより曇り空。心がスカッとしつつ、爽やかなフュージョンが良い。

そんな時、結構、ピックアップするのが「パスポート」。「パスポート」とは、ドイツのジャズ・ロック・フュージョンのバンド。パスポートのリーダーはサックスのクラウス・ドルディンガー(Klaus Doldinger)。 この人は、ニューオリンズの名誉市民の称号も与えられた人。そのドルディンガーがドイツに戻り、結成したジジャズ・ロック・フュージョンのバンドである。

「パスポート」と聴いて、NHKーFMの番組「クロスオーバー・イレブン」を思い出す方は「通」です(笑)。このドイツのフュージョン・バンド「パスポート」の曲が良く採り上げられたんですよね。ハイテクニックで端正で、どの曲にも展開力・構成力があり、マンネリズムに陥らないよう、押さえるべきところはカッチリ押さえて、流石はドイツのフュージョン・バンドである。

Passport

変拍子、スピード、スリルの三種の神器を抱えた怒濤の演奏の数々。面白いことに「パスポート」のアルバムに収録された曲は、どれもが良く似ているんですよね。でも、金太郎飴、マンネリに陥らないところが「ドイツのフュージョン・バンド」である。結構、きめ細やかな配慮が行き届いていて、どのアルバムを聴いても、爽やかで、ポジティブで、そして「変拍子、スピード、スリル」、揃いも揃った三拍子(笑)。

「パスポート」の演奏って、米国のフュージョン・ジャズと英国のプログレッシブ・ロックを足して、2で割った様な雰囲気です。プログレを嗜んだ方々には、この「パスポート」は結構「はまる」と思います。超絶技巧、構成美、メロディアス、そして「演奏が長い」(笑)。プログレの要素が満載です(笑)。でも、流石はドイツのフュージョン・バンド、英国プログレ独特の「諦念感・淋しさ」はありません。どこまでも「変拍子、スピード、スリル」です。

「パスポート」のアルバムは、1970年代のアルバムは、どのアルバムも良い出来なのですが、僕が愛聴しているのは1974年リリースの『Looking Thru』(写真左)と1973年リリースの『Hand Made』(写真右)ですね。あまり確固たる理由はありません。ジャケットが何となく好きなんです(笑)。

とにかく、変拍子、スピード、スリル、超絶技巧、構成美、メロディアスと米国のフュージョン・ジャズと英国のプログレッシブ・ロックを足して、2で割った様な雰囲気がたまりません。リラックスしてフュージョンを聴きたい時に最適なバンドです。
 
 
 
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2009年11月11日 (水曜日)

サンフランシスコのモンク

11月、立冬を過ぎて、僕はこの季節の日だまりが大好きである。今日は残念ながら久しぶりの、まとまった雨。この季節に雨は似合わない。もっと後だ。11月の下旬から12月中旬かな。この季節は、やはり「小春日和」だろう。僕はこの「小春日和」が大好き。高校時代からたしなむ俳句も「小春日」のストックは沢山ある。

小春日に 哲学の道 君と行く

さて、セロニアス・モンクの真髄を感じるには、ソロ・ピアノが一番。そして、モンクのソロ・ピアノの最高峰として『Thelonious Himself』(11月5日のブログ参照・左をクリック)をご紹介した。しかしながら、この『Thelonious Himself』は、凛とした雰囲気漂い、「寄らば切るぞ」というような、強いテンションが張った、清冽な雰囲気漂う孤高の世界である。よって、僕は「モンクのソロピアノは上級向け」とした。

しかしながら、じゃあモンクのソロ・ピアノはジャズ者上級者しか体験できないのか、という反論もあろうかと思う。それがですね、ジャズ者初心者にも、このソロ・ピアノ集であれば、ジャズ者初心者にも良いのではないか、というアルバムがある。ちょっと易しすぎるので、あまりジャズ者初心者の方々には、進んでお勧めすることはないんだけれど・・・。

そのジャズ者初心者でも、なんとか「イケる」のでは無いかと思われる、セロニアス・モンクのソロ・ピアノ集が、Thelonious Monk『Thelonious Alone in San Francisco』(写真左)。1959年10月の録音。僕が、モンクのソロ・ピアノの最高峰とする『Thelonious Himself』は「孤高の世界」である。ちょっと、ジャズ者初心者には敷居が高い。というか、高すぎる。
 

Monk_san_francisco_2

 
でも、『Thelonious Alone in San Francisco』は、『Thelonious Himself』の凛とした、「寄らば切るぞ」というような、強いテンションが張った、清冽な雰囲気漂う孤高の世界に比べて、何故だか判らないんだが、暖かくて、優しくて、ほのぼのとしたソロ・ピアノ集に仕上がっている。

冒頭の「Blue Monk」「Ruby, My Dear」を聴けば良く判る。確かに「どうしてそういう風に変に和音を重ねるのか」というアブノーマルなアプローチはあるが、それはそれで、モンクのソロ・ピアノなんだから仕方が無い(笑)。でも、演奏する雰囲気は「暖かくて、優しくて、明るい」のだ。時に、モンクは歓喜の声を上げ、時に、笑い声さえ聞こえる。

モンクのピアノは、おおよそ、クラシック音楽の対極にある、インプロビゼーション中心の、二度と再現されることのない「非再現性」の最たるものである。これを感じるには、やはり凛とした雰囲気漂い、「寄らば切るぞ」というような、強いテンションが張った、清冽な雰囲気漂う孤高の世界である『Thelonious Himself』をお勧めしたいが、もうちょっと余裕をもって、もっと気軽にモンクのソロ・ピアノを体験したい、というジャズ者初心者の方々には、『Thelonious Alone in San Francisco』が良いのかもしれない。

とにかく、『Thelonious Alone in San Francisco』でのモンクのソロ・ピアノは、暖かくて、優しくて、ほのぼのとしていて、ジャズ者初心者の方々に対しても、モンクのソロ・ピアノの入門盤として、最適かも、と思うようになりました。

アルバムのジャケット写真も秀逸。このモンクのジャケット写真を見ていると、このアルバムの収録されている音が聴こえて来るようです。「暖かくて、優しくて、明るい」モンクのソロ。リバーサイド・レーベルに感謝である。よくぞ、こんなにマニアックなソロピアノを記録として残しておいてくれたと・・・。
 
 
 
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2009年11月10日 (火曜日)

ずっと注目しているピアニスト

先週前半の寒さが嘘のような、このところの暖かさ。立冬を過ぎたんだが、ちと暖か過ぎやせんか。小春日和というには、季節的に暖かすぎて、ちょっと風情の無い日々が続いている。

小春日に 欠伸する猫 昼下がり

さて、デビューアルバムで驚愕して以来、ずっと注目しているジャズ・ピアニストがいる。その名は、ゴンサロ・ルバルカバ(Gonzalo Rubalcaba)。キューバからやってきた超越技巧なジャズ・ピアニスト。チャーリー・へイデンやディジー・ガレスピーに見出され、1989年、スイスのモントルー・ジャズ祭に出演、その驚愕な演奏で一躍メジャーへ進出した。

そのスイスのモントルー・ジャズ祭でのライブアルバム『Discovery: Live at Montreux』(写真左)を聴いた時、それはそれは「ビックリした」というか「驚愕」である(笑)。ちなみに、パーソネルは、Gonzalo Rubalcaba (p), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds)。ベースとドラムにトップ・ミュージシャンを従えて、それはそれは颯爽たるデビューである。

冒頭の「Well, You Needn't」を聴いて「うへ〜っ」。超絶技巧、光速パッセージ。ガンガン飛ばす飛ばす。あのセロニアス・モンクの複雑で異常な捻れのある「難曲」を、である。しかも、モンク曲の特徴を、そこはかとなく匂わしながら、光速のパッセージである。今の耳で聴いても、これは凄い。良い意味で「ハイレベル」。良い意味で「超絶技巧」。
 

G_ruba_live_montreux

 
これだけ「超絶技巧」だと気持ちが良い。スカッとする。光速パッセージの嵐でも、崩れることがほとんど無い。このアルバムはライブ盤。一発勝負の中で、このテクニックは凄いの一言。しかも、彼のテクニックは「アクロバティック」では無い。「アーティスティック」である。

ソロピアノの3曲目「Prologo Comienzo」を聴くと、ゴンサロの素性が良く判る。超絶技巧ではあるが、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気が漂い、アプローチは意外と直線的。回りくどいことは無く、判りやすい光速のパッセージ。そう、超絶技巧な「キース・ジャレット」のような感じ。

ラストの「All the Things You Are」も聴き応え十分。高速デジタルのようなパッセージの嵐。当時、まだ27歳。若さと体力にまかせて「カッ飛んでいる」ところはあるが、それでも、このテクニックは素晴らしいの一言。でも、ただ若さと体力にまかせて「カッ飛んでいる」だけでは無い。しっかりと歌心を押さえているところが「ニクイ」。

この『Discovery: Live at Montreux』を聴いて、「こいつ、やるなあ」と嬉しくなった。超絶技巧、リリカルでメロディアス、そこはかとなくアーシーでワールドミュージック的な雰囲気が、実に気に入った。この若きピアニストをずっと追いかけていこう、と思った。来日公演にも足を運んだ。今でも、ゴンサロ・ルバルカバは、僕が「ずっと注目しているピアニスト」である。
 
 
 
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2009年11月 9日 (月曜日)

エバンスに一番似合う曲って...

なんだか暖かい一日。先週のあの冷え冷えとした日々はどこへやら、冬のスーツを着ていると、ちょっと汗ばむような陽気である。立冬とは名ばかりの、1ヶ月ほど季節が逆戻りした感がある。

立冬も 名ばかりだけの 陽向かな

ビル・エバンスのリバーサイド時代は名盤揃いである。スコット・ラファロとの4部作ばかりがクローズアップされているので、残りのアルバムは、あまり注目されることはないので困るのだが、これがなかなかの内容のアルバムばかりなのである。聴かずにおいては罰が当たる(笑)。

そんな中でも、ビル・エバンスの後の愛奏曲がタイトルになっている『How My Heart Sings !』(写真左)は大のお勧め。パーソネルは、Bill Evans (p) Chuck Israels (b) Paul Motian (ds)。1962年5〜6月の録音である。ベースが、Chuck Israelsだからといって侮ってはいけない。Scott LaFaroと違って、地味ではあるが、落ち着いた品のあるベースは、また違った味わいがあって良い。

その代表的名演が、タイトル曲の「How My Heart Sings !」。前奏無しに、いきなり「ポロロ〜ン、ロロン」と始まるピアノの旋律は実に愛らしい。愛らしくリリカル、そしてメロディアス。エバンスのピアノにピッタリのスタンダードである。Chuck Israelsのベースも気品に溢れ、Paul Motianのドラミングは繊細で小粋。あ〜、この1曲だけでも、このアルバムをゲットする甲斐があるってもんだ。

How_my_heart

2曲目の「I Should Care」のリズミックなトリオ演奏もなかなかの味わい。Scott LaFaroがベースだった、3者3様の対等なインプロビゼーションも良いが、Chuck Israelsに代わっての、しっかりと統制の取れた、ハードバップ的なピアノトリオも味わいがあるってもんだ。3曲目の「In Your Own Sweet Way」も絶品。大向こうを張った仕掛けは全く無いが、着実に堅実に、統制の取れた、ハードバップ的なピアノトリオ演奏は、実に味わい深いものである。

唯一、有名なスタンダード「Summertime」は、エバンスの感性に合わなかったらしく、ちょっとギクシャクした演奏で、不完全燃焼状態なのは「ご愛嬌」。独特の「ねばり」というか、「Summertime」の曲が持つ独特の「あく」のようなものが、エバンスの洗練された演奏によって、抜けてしまってるんですね(笑)。

改めて思うのは、タイトル曲「How My Heart Sings!」、この曲ほど、エバンスに似合う曲も珍しい。エバンスのピアノの為に書かれた、特製のスタンダード曲のようです。エバンスに洗練されても洗練されても、「How My Heart Sings!」の曲が持つ旋律の美しさは更に輝きを増す。そんな感じが実に印象的です。

良いアルバムです。スコット・ラファロとの4部作を聴いて、エバンスに興味を持ったなら、この『How My Heart Sings !』はお勧めです。
 
 
 
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2009年11月 8日 (日曜日)

Magical Mystery Tour は互角

日が短くなった。17時前後で「暮れなずむ黄昏時」である。17時を過ぎれば、夜のとばりが降り始め、18時ともなれば、すっかり夜、という感じの我が千葉県北西部地方。夜が早いというのは、あまり好きではない。もっと西の地方に住みたい・・・。

立冬の 淋しき夕日 暮れなずむ

さて、日曜恒例のBeatlesのリマスターCD特集である。今日は『Magical Mystery Tour』(写真左)である。同名のサウンドトラックに、1967年のシングル曲を加えたアメリカ編集アルバムである。もともと英国では、同名のサウンドトラックをEP2枚組でリリースしたが、EPに馴染まない米国はこれを拒否。1967年のシングル曲を加えたLPとしてリリースし、今では、このLP仕様が正式盤としてリストアップされている。

さすが、米国主導型でセットアップされたLPだけあって、ステレオ・ミックスが健闘している。『Sgt. Pepper's』までの、ステレオ・ミックス独特の違和感がかなり少ない。「Magical Mystery Tour」「Fool on the Hill」「I Am the Walrus」「Hello Goodbye」「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」「All You Need Is Love」は、僕は青盤が初体験だったので、今回の『Magical Mystery Tour』に収録されている青盤体験の曲は違和感が無い。

今回の『Magical Mystery Tour』は、モノラル・ミックス盤に収録されている演奏の方が違和感を覚えるのでは無いか、と思っていたのですが、それは無かったですね。モノラル・ミックスはモノラル・ミックスで、やはり凄いですね。今回、この『Magical Mystery Tour』のモノラル・ミックスは初体験でしたが、やっぱり「Beatlesはモノラル」を再認識しました。

冒頭の「Magical Mystery Tour」を聴き比べすると判るのですが、モノラル・ミックスのドライ感と音の密度が高い感じ、そして、音のエッジが優しく柔らかい感じが実に良いんですね。聴き心地が良いとでも言うのでしょうか。それに比べて、ステレオ・ミックスは少しキンキンするというか、音のエッジが立っている感じなんですよね。ちょっと派手派手しいって感じかな。この辺は、もう好みの問題でどちらが良いか分かれます。ちなみに僕はモノラル・ミックスの方が好きです。

「Fool on the Hill」については、ポールのボーカルを楽しむには、やはりモノラル・ミックスの「音のエッジが優しく柔らかい感じ」がポールの甘いボーカルにフィットしていて、心地良さは、モノラル・ミックスに軍配が上がりますが、この歌の持つ幻想感を上手く表現しているのは、ステレオ・ミックスです。モノラル、ステレオ双方甲乙付け難い。

Magical_mystery_tour_67

「I Am the Walrus」は、モノラル・ミックスの方が圧倒的に良いです。ステレオ・ミックスの方も、どうも途中からモノラルになっているみたいなんですが、モノラル・ミックスの方が、よりきめ細やかというか、丁寧にミックスされていて、なかなかに「ド迫力」な「I Am the Walrus」が聴けます。

「Strawberry Fields Forever」「Penny Lane」は、モノラル、ステレオ、甲乙付け難いなあ。聴いていると、やっぱりモノラル・ミックスは、どの曲も「ドライ感と音の密度が高い感じ」が際立ちます。そして、音のエッジが優しく柔らかい感じが独特ですね。このモノラル・ミックスの「聴き心地の良さ」は結構、クセになります。

ラストの「All You Need Is Love」は、モノラル・ミックスの音の分厚さと迫力に、ぶっ飛びます。前奏の「フランス国歌」部分のブラスの音とオーケストラの弦の質感と、そこに上から被さるように、浮かび上がるように入ってくるジョンのボーカル。これは圧倒的にモノラル・ミックス・バージョンが聴きものです。このモノラル・ミックスの「All You Need Is Love」にはビックリした。

ステレオ・ミックスの「音の拡がり感」は、この『Magical Mystery Tour』にきて、やっと「それなり」になってきました。ステレオ・ミックスの本来の特性を、長所して供給することが出来るようになったのは、この『Magical Mystery Tour』からではないでしょうか。今回の『Magical Mystery Tour』のステレオ・ミックスは良いです。モノラル・ミックスと互角に渡り合っています。

「Flying」「Blue Jay Way」などのサイケデリックものは、モノラルに軍配。「Your Mother Should Know」「Hello Goodbye」や「Baby You're a Rich Man」など、シンプルなボーカルものは互角。真ん中にボーカルが座っていた方が良い楽曲はモノラル、真ん中に座っていなくても違和感の無い楽曲はステレオでも可、ってところかなあ。

今回の『Magical Mystery Tour』は、モノラル・ミックス、ステレオ・ミックス、共に互角です。初めてビートルズを聴くという様な、若い世代にはステレオ・ミックスの方がお勧めかな。昔、LPで、ステレオ・ミックスを聴き込んだ年配の方々には、是非ともモノラル・ミックスを体験して頂きたいです。部分的にではありますが「やっぱりBeatlesはモノラル」を体感できます。
 
 
 
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2009年11月 7日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・3

本業の方で、緊急検討を要するトラブルが勃発し、集中検討をするべく、箱根の研修センターに「缶詰」になって来た。プライベートの小旅行で行くには、箱根はそれなりに楽しいところだが、仕事で行くんだから楽しいはずが無い。それでも、7合目くらいまで、雪で白くなった富士山を見ると、それはそれなりに美しくて、一瞬、尖った心が和む。

降り注ぐ 日差しに踊る 芒かな

さて、ジャズ者初心者向け特集「ピアノ・トリオの代表的名盤」の第3回目。第3回目のジャズ・ピアニストは、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)。ご紹介するアルバムは『Kelly at Midnight』(写真)である。パーソネルは、Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)。1960年4月27日の録音。

ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。この「独特の揺らぎ=翳り」を楽しめるようになると、もう既にケリーのファンになっている。

そして、バックのリズム&ビートを司るのは、マイルス・グループで一緒の、ベースのポール・チェンバース、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズである。これまた、二人とも名手中の名手。ここにコロコロと明るく転がるようにスイングするケリーのピアノ。悪かろうはずがない。

冒頭の「Temperance」だけで、ジャズのピアノ・トリオってこうじゃなきゃね〜、なんて感じ入って、聴いていて楽しくなってしまう。前奏の魅力的なユニゾンだけで、ハードバップの楽しさを耳一杯に感じてしまう。そんな「魔法」の様なアルバムである。
 

Kelly_at_midnight_17

 
とにかく、ケリーのピアノが絶好調。冒頭の「Temperance」がまず良い。曲自体も良いので、余計に素晴らしいスイング感に感じ入ってしまうのだが、この「Temperance」でのケリーの演奏ほど、ケリーのピアノの特徴を体感できる演奏もないだろう。とにかく、聴いていて楽しい、の一言。

3曲目以降の「On Stage」「Skatin'」「Pot Luck」については、好調にスイングし続けるケリーの「コロコロ」ピアノのバックで、バシンビシンとスネアをひっぱたく様な、野趣溢れる奔放なフィリー・ジョー・ジョーンズのドラミングと、ブンブンブンと弦を鳴り響かせながら、堅実・冷静に魅力的なビートを供給するポール・チェンバースのベースが「聴きもの・聴きどころ」である。

野趣溢れる奔放なフィリー・ジョーのドラミングと、堅実・冷静にブンブン弦を鳴り響かせながら、魅力的なビートを供給するチェンバースのベースに煽られて、ケリーのピアノもボルテージが上がる上がる。タッチがとことん強くなり、三位一体のテンションの高い、レベルの高いピアノ・トリオの演奏を聴くことが出来る。

このテンションの高さのお陰で、僕は最初このアルバムはライブ盤だと思った位だ。そう、このアルバムはスタジオ録音ながら、ライブ盤の様なテンションの高さと奔放さ、そして、なによりトリオ演奏の全編の底に流れる「楽しさ」が魅力。

良いアルバムです。収録時間は33分弱と短いですが、忙しい中、就寝前にちょっと耳を傾けるには、ちょうど良い収録時間です。アルバムの収録時間は、長ければ良いというものではありません。短くても、しっかりとした内容があれば「良好盤」でしょう。

そうそう、この『Kelly at Midnight』、代表的なものとして、2種類のジャケットデザインがあります。どちらも同じ内容なんですが、僕は、LP時代からの左のジャケットデザインに愛着があります。
 
 
 
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2009年11月 5日 (木曜日)

モンクのソロピアノは上級向け

これだけ、朝晩冷え込むようになると、決まって鍋が恋しくなる。この季節、土鍋の初出動が大体この10月の終わりから11月初旬。我が家でも、既にキムチ鍋、ラーメン鍋、味噌煮込み鍋など、鍋物が多くなってきた。

秋深し 鍋の蒸気に 曇る窓

さて、昨日、ジャズのソロピアノは、そのピアニストの個性がモロに表れて面白い、と書いた。ソロピアノの演奏を聴きながら、そのピアニストの個性が掴み取れるようになったら、ジャズを聴くことがより一層楽しくなること請け合いです、と書いた。しかしながら、駆け出しのジャズ者初心者の方でも、いや、音楽の好きな人なら、一度聴いただけで、その個性をつかみ取ることが出来るジャズ・ピアニストがいる。セロニアス・モンクである。

セロニアス・モンクのピアノは、独特のスタイルというか、和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方、どれもが独特、というか唯一無二というか、聴いたことが無いというか、かなり変というか、なにしか、決してフォロワーを生まない、一度聴いたら忘れられない、それはもう独特のものである。

しかし、その独特なものというのが、協調和音中心という「音楽」の次元から、かなり離れたもので、リズム的にも、自然発生的な変則拍子が中心という、おおよそポップス中心の音楽とは正反対の、クラシック音楽とは対極のモンクのピアノである。

そのモンクのピアノを、一番良く体感できるアルバムが、Thelonious Monk『Thelonious Himself』(写真左)。1957年のリリース。モンクの絶頂期のソロピアノである。モンクの独特なピアノを感じるソロピアノとしては、1954年録音のヴォーグ盤もあるが、音質という面で『Thelonious Himself』に軍配が上がる。
 

Thelonuous_himself

 
この『Thelonious Himself』はモンクのキャリアの中で、絶頂期でのソロピアノなので、とにかく「尖っている」。決してメロディアスとは言えない、ゴツゴツしたフレーズ。どう考えても外れているとしか思えない和音。おおよそ、おおよそポップス中心の音楽とは正反対の、クラシック音楽とは対極の音ばかりなで、テクニック的にも訥々としているので、モンクは下手くそだと思ってしまう。

しかし、これが、意図的に選ばれた音のかたまりなのである。意図的に重ねられた音なのである。意図的に構成されたビート感なのである。CD化にあたって追加されたトラック、6曲目「'Round Midnight (In Progress)」を聴けば良く判る。22分に及ぶ長いトラックのなかで、モンクはあれこれ考えながら、何度も慎重に音を選び直しながら、ブツブツと「あーでもないこーでもない」とつぶやきながら、演奏を組み立てていく。

そこで聴くとの出来る音が、独特のスタイルというか、和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方、どれもが独特、というか唯一無二の「響きとビート」。違和感をバリバリに感じる不協和音が、不思議と魅力的な音に昇華して、孤高のソロ演奏に仕上がっていく。本当にモンクの音楽って不思議です。

この「'Round Midnight (In Progress)」をじっくり聴くにつけ、他の曲も、同様のプロセスで検討され、構築されているんだ、と思って、何か感慨無量なものがあります。モンクの「芸術家として、考え抜かれた」個性的なソロ。しかし、あの独特のスタイルというか、和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方が「芸術家として、考え抜かれた」ものだとしたら、モンクの頭の中ってどうなっていたんでしょう(笑)。

『Thelonious Himself』の音世界は、ひとつひとつの音に意味がある訳ですが、何かいったいそうなのか、とても一朝一夕には判らない、とても深い深い音世界です。ジャズ者初心者の方には違和感だらけのソロピアノだと思います。モンクの音世界は、どれもが独特、というか唯一無二の「響きとビート」であるということだけは一聴して判りますが、後は「ちんぷんかんぷん」かと思います。迂回して下さい。

ジャズ者上級者になって、じっくり耳を傾けるようになっても決して遅くない、モンクの傑作の一枚です。モンクを理解する仕上げが、の一連のソロピアノのアルバムを楽しむことなのかもしれません。
 
 
 
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2009年11月 4日 (水曜日)

ソロピアノは個性を表す

晩秋もたけなわ。急に周りの広葉樹が色づいて、風に揺られてハラハラ散る様は、実に物寂しい。特に、凛と晴れ渡った、抜けるような青空の下、人の気配も無い、静かすぎる公園に一人佇んで、静かに散る落ち葉を見ると、より一層、寂しさが募って人恋しくなる。

静寂に 落葉を見つつ ソロピアノ

晩秋の昼下がり、午後の日差しが差し込む中、誰もいない部屋で聴くソロピアノは風情がある。晩秋は季節も良く、じっくり耳を傾けることが出来る季節。確かに、この季節は、ソロピアノがCDプレイヤーのトレイに載る機会が、他の季節に比べて多い。

ジャズのソロピアノは、そのピアニストの個性がモロに表れて面白い。一人で好き勝手に演奏できる開放感と気安さがそうさせるのか、普段とは違った表情やニュアンス、嗜好がヒョッコリ顔を出して、ビックリすることもしばしば。

チック・コリア(Chick Corea)の『Piano Improvisations,Vol.2』(写真左)など、その典型的な例である。チック・コリアと言えば、現代ジャズ界における代表的ピアニストの一人。ボサノヴァ、ロック、クラシックなどといった要素を織り交ぜた、多彩なプレイが特徴。ラテン色漂うメロディやリズムが特徴で、フレーズには一貫した彼独特の響きがあり、モードからエイトビートまで多才に適応する、オールラウンド・プレイヤーである。
 

Cc_inpro_vol2_2

 
そんなチックのソロピアノ集なので、ロマンチックな楽曲、リリカルな演奏がギッシリ詰まっているかと思いきや、これが全く違う。冒頭の「After Noon Song」は確かにロマンチックで、リリカルな演奏なので、しっかりと「騙される」(笑)。

2曲目以降、曲が進むにつれ、フリーフォームな演奏、前衛的な演奏の色合いが濃くなっていく。6曲目の「Preparation 1」から7曲目の「 Preparation 2」で、完全フリーな演奏になって、チックは尖りに尖る。「Departure from Planet Earth」などは前奏から、もう前衛的な演奏。現代音楽的と言っても良い。決して、メロディアスでは無い。でも、チックの技術は確かで、この前衛的な演奏を一気に聴かせる。

もともと、1960年代後半、マイルス・バンド在籍時の頃は、アバンギャルドなアプローチ、かなりフリーな演奏が特徴だった。そういう意味では、このフリーフォームな演奏、前衛的な演奏は、彼の個性と一部なんですね。

でも、若かりし頃、ジャズ者初心者の頃、チックがお気に入りになって、彼のロマンチックでリリカルな演奏を期待して入手した2枚のピアノソロ・アルバム『Piano Improvisations,Vol.1』『Piano Improvisations,Vol.2』を初めて聴いた時、このフリーフォームな演奏、前衛的な演奏に出くわした時の驚きと落胆と言ったら・・・(笑)。今でも、言葉では言い表せません(笑)。

ジャズのソロピアノは、そのピアニストの個性がモロに表れて面白い。でも、バックにドラムやベースのリズムやビートが無い分、ジャズ者初心者の方々には聴き難いものかもしれません。心してかかって下さい。そして、ソロピアノの演奏を聴きながら、そのピアニストの個性が掴み取れるようになったら、ジャズを聴くことがより一層楽しくなること請け合いです。
 
 
 
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2009年11月 3日 (火曜日)

Rod Stewart のロック・カバー

寒い、寒いぞ。昨晩の気温の下がり方は尋常じゃなかった。家に帰りついたのが19時過ぎ。この時の気温が13度くらい。が、その4時間後には、気温5度。たった4時間の間に8度、気温が下がったことになる。なんと劇的な気温変化であろう。ここ千葉県北西部地方は、今日は朝から快晴だけど、とにかく寒い。冬到来である。でも窓から差し込む日差しは暖かい。柿を食しながらの音楽鑑賞である。

たなごころ 柿を転がし 笑顔かな

今日は、ロッド・スチュワートである。ロッドは、優れたロッカーである以前に、優れたシンガーだと僕は常々思っている。様々な歌を「自らの歌」として歌いこなせる天才的なシンガーだと思っていたので、ロッドのアルバムに時々収録されるカバー曲にはウキウキしたもんだ。あのテクニック溢れる、独特のしわがれ声で歌いこなすカバーは実に魅力的だった。

よって、『The Great American Songbook』と銘打ってリリースされた、4枚のスタンダード曲のカバーアルバムは、僕にとっては喝采ものだった。今、改めて聴き直しているが、どの曲も実に丁寧に歌われていて立派な出来。ロッドの歌声が大好きな僕にとっては至福の時である。
 

Great_rock_classics

 
そのロッドが、2006年に、今度はロックのカバーアルバムをリリースする。タイトルは『Still the Same… Great Rock Classics of Our Time』(写真左)。どういう基準で選曲したのか、その経緯は不明だが、なかなか魅力的な、なかなかに洒落た選曲である。

目に付いたところで言うと、CCRの「雨を見たかい」、Bob Segerの「Still The Same」、Elvin Bishopの「愛に狂って」、Bob Dylanの「If Not For You」、Van Morrisonの「Crazy Love」、Pretendersの「Stand By You」、Eaglesの「Best Of My Love」等々。難しい理屈無しに、屈託無く歌い上げていくロッド。この良い意味での脳天気さがロッドの「売り」でもある(笑)。

僕にとっては、冒頭の「雨を見たかい(Have You Ever Seen The Rain?)」と、9曲目の「我が愛の至上(The Best of My Love)」、続く10曲目の「If Not for You」は特別な存在。これらの曲を歌い上げるロッドは実に素晴らしい。完全にヘビー・ローテション。

ロッドは、優れたロッカーである以前に、優れたシンガーである。様々な歌を「自らの歌」として歌いこなせる天才的なシンガーである。これらのスタンダード曲のカバーアルバムについて、「商業主義で安易に稼ぐヤツ」という批評は当たらない。『Still the Same… Great Rock Classics of Our Time』は、実に魅力的なカバー集に仕上がっている。ロッドのファンは必聴、若いロックファンにも聴いて欲しい佳作である。 
 
 
 
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2009年11月 2日 (月曜日)

ビル・エバンスの初リーダー作

昨日の夏日寸前の暑い一日とは打って変わって、グッと冷え込んだ千葉県北西部地方。グッと冷え込んだというか、「寒い」。そして、どんより曇り空。木枯らしの様な冷たい強い風。そして、今、激しいにわか雨が降っている。いよいよ、冬へのカウントダウンが始まった。でも、家の中は暖かく、晩秋の夜長、ジャズを聴く量も増えるというもの。

寛ぎの 灯下にジャズの 調べかな

さて、今日は久々に、ビル・エバンスの初リーダー作を聴く。タイトルは『New Jazz Conceptions』(写真左)。「新しいジャズの概念」とは大きく出た(笑)。でも、そのタイトルも、あながち間違いではない。ビ・バップからハード・バップの移行期ならではの代表的なピアノ・トリオの音の中に、後のビル・エバンスの個性が見え隠れしている。

パーソネルは、Paul Motian (ds), Teddy Kotick (b), Bill Evans (p)。1956年9月の録音。ウォーキングベースを主体としたビ・バップのビートだが、そこかしこにエバンスの個性が見え隠れするところが、ファンにとって楽しめるところ。

表向きには、Bud PowellやLennie Tristanoの影響が目立っていて、耳に付く「そこだけ」を聴けば、何ともない、ビ・バップからハード・バップの移行期ならではの、流行を追った「普通のピアノ・トリオ」のなんですが、特に、それぞれの曲の前奏に、ビル・エバンス独特の「和音の重ね方」と「インプロビゼーション部の間の取り方」、そして「右手と左手のバランス」が特徴的で、エバンス者からすると、この演奏は、冒頭「I Love You」の前奏で、エバンスのそれと判ります。

New_jazz_conception

それほど、エバンスの個性が見え隠れしているところがこのアルバムの面白いところ。また、当時のエバンス、よほど売れたかったのでしょう(当然、初リーダー作やもんね)、トリスターノ的なブロックコードをガンガンしているところが、また面白い。2曲目の「Five」なんて、ちょっと無理しちゃって。でも、この「Five」の3拍4連などの変則リズムは、後のエバンスを彷彿とさせます。

エバンスは意外と流行を追ったアプローチが好きなんですが、もう既に初リーダー作でそうだったんですね(笑)。でも、話によれば、この初リーダー作は、一年間で800枚程度しか売れなかったとか。現実は厳しかったんですね。

後に十八番となる「Waltz for Debby」「My Romance」が、エバンスのソロでの初出として収録されているんですが、その響きは、後のエバンスそのもの。でも、まだ「ソロ」なんで、まだまだどうやって、トリオのフォーマットに仕立てたら良いのか、エバンスは思案投げ首だったんでしょうね。

このエバンスの初リーダー作の『New Jazz Conceptions』は、エバンスのアルバムを10枚くらい聴きこんだ、エバンス者初心者の方々に聴いて欲しいアルバムです。決して、ジャズ者初心者の方々は手を出さないように。ジャズ者初心者の方向けの、エバンスの個性を感じることのできるアルバムは、他に沢山あります。

エバンスの響きと個性を十分知って聴く「初リーダー作」って、ええもんですよ。エバンスを知って、更にエバンスを知りたくなった時、この初リーダー作の『New Jazz Conceptions』を聴いてみて下さい。きっと、更に一層、エバンスが好きになること請け合いです。
 
 
 
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2009年11月 1日 (日曜日)

Sgt. Pepper's はモノラルが凄い

季節が1ヶ月ほど逆戻り。酷く暖かな今日。昨日までの気候を前提に、上着をはしょって外出したら暑くて暑くて。気温も最高気温24度、夏日一歩手前である。この強烈な季節の逆戻り。この気温の劇的な変化に体がついていかない。体調最悪の日曜日である。紅葉前線も一歩後退の感。

時季を待つ 色付く前の 銀杏かな

さて、日曜日恒例、BeatlesのリマスターCD特集である(笑)。ん〜、日曜日恒例だったっけ、まあ良し。今日は、かのフラワームーブメント真っ只中の『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(写真左)である。

前作『Revolver』より、ジョンは、会社で言うと「会長職」に身を引いて、実際のビートルズの音作りの運営を司る「社長」的立場をポールに跡目を継がせてやらせてみる、という環境の変化があった。実質、Beatlesをトップで運営するのはポールである。前衛的、ヲタク的なスタジオワーク、サイケディック、どんな歌を歌っても良い、となると、この世界って、ポールが大好きな世界である。

でも『Revolver』では、会長職ジョンに、サイケ路線でポールを上回る成果をぶつけられて、ポールは「どんな歌を歌っても良い」というところに引きこもる。絶対に脳天気なポールにしか書けない名曲がぞろぞろ出てきて、ポールは「これだ、俺はコレで勝負する」と思った。

そこで思いついたのが、架空のライブバンド・グループを仕立てあげて、この架空のライブバンドとして演奏することで、ポールの大好きな音世界を実現しようと企てる。「何をやってもいいんだ。僕らはビートルズじゃないんだから」とポールは他のメンバーに言い聞かせて、架空の世界の曲を詰め込むことで、この『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』の制作に乗り出した。

このアルバムは、決して、コンセプトアルバムの類では無い。冒頭「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」とラスト前「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)」と、同じ主題の曲でサンドイッチされっているので、その間に挟まれた楽曲は、なんらかのコンセプトで統一された曲が並んでいるか、と言えばそうでもない。ポールの大好きな「どんな歌を歌っても良い」という方針には沿ってはいるが、コンセプトの統一感は希薄。大きく括って、サイケデリックってところが、なんとなく統一感として漂うくらいかな。

このアルバムでも、さすがはジョン。決して、全面的にポールの好きなようにはさせない(笑)。サイケデリックという面では、このアルバムでも、さすがはジョン。ポールをしっかりと押さえつけている。3曲目の「 Lucy in the Sky with Diamonds」、7曲目「Being for the Benefit of Mr. Kite!」、11曲目「Good Morning Good Morning」、そして共作ではあるが、ラストの「Day in the Life」。いずれもジョンの作であるが、十分にサイケデリックで、十分にシュールである。ジョンはサイケが苦手だったらしいが、これで苦手だと言われたら、他に立つ瀬がない(笑)。

Sgt_peppers

ポールは、ジャケットデザイン、服装、アルバムの付録、等々に手腕を振るってはいるが、フラワームーブメントの影響をモロに受けているだけに、21世紀の今になっては「ウムムム」という感じ。フラワームーブメントを代表する、一過性のブームに乗っかった代表的デザインとしては評価できるが、以前の様なそれ以上の評価は「ちと苦しい」。

さて、肝心の音であるが、「モノラル・ミックスでこそ、本当に『Sgt. Pepper's』を聴いたことになる」という、Beatlesのプロデューサーのジェームス・マーチン御大の強烈なお言葉通り、今回「白箱」として発売された、モノラル・ミックスCDの音が圧倒的である。これがモノラルか〜、と仰け反る、驚愕の立体感溢れる音。ステレオの左右のスピーカーの間にポッカリと浮かんだスクエアな音空間。このスクエアな音空間に、手前から奥にかけて様々な音が重なって、聴いたことのないような、迫力満点の音の塊が形成されている。

モノラル・ミックスは、レコーディング・セッションを通じて、何バージョンも作られ、どれがイメージに近いか、ビートルズとジョージ・マーティンの間で検討されたほどで、モノラル・ミックスの出来は「驚愕の出来」である。今まで、この『Sgt. Pepper's』のモノラル・ミックスは聴いたことが無かったが、今回、初めて聴いて、これほどとは思わなかった。しかも、モノラル・ミックスには、ステレオ・ミックスに無いエフェクトがあちらこちらに入っている。実に丁寧に作られている。

とにかく分厚い、ライブ感溢れる音の塊。架空のライブバンド・グループを仕立てあげて、この架空のライブバンドとして演奏する、というイメージが、このモノラル・ミックスを通じて、実に良く理解できる。確かに、この音の塊、この音の重なりは、従来からのビートルズのライブを彷彿とさせる。う〜ん、言葉では表現し難いなあ。うん、聴けば判る(笑)。

ステレオ・ミックスは、ビートルズ抜きで「たった2日半で終了した」とエンジニアのジェフ・エメリックが証言している通り、また「ステレオ・ミックスの時にビートルズは休暇に行っていた。いわばステレオ・ミックスは誰にも承認を得ずに発売された」とも言われる通り、ちょっと「???」な出来だと思う。初めて聴いた高校生当時から、この『Sgt. Pepper's』のステレオ・ミックスは苦手中の苦手で、このステレオ・ミックスを聴く限りは、この『Sgt. Pepper's』を決して好意的に評価することが出来なかった。

モノラル・ミックスを前提として、マルチ・トラックで収録された音源を無理矢理、左右のトラックに振り分けている感じがモロでていて、人工的な雰囲気が僕は苦手です。このステレオ・ミックスも、87年初CD化の時、ジョージ・マーティン御大自ら、手を加えることはありませんでした。効果的に、手を加えることが出来なかったと思われます。

でも、今回のモノラル・ミックスを聴くことが出来て良かった。やはり、この『Sgt. Pepper's』は、ビートルズの傑作とは言えないまでも、ポールのリーダー期のビートルズとしては、実に良い出来だと思う。恐らく、一番ポールが頑張って、それが一番良い効果として作用したアルバムではないか、と好意的に評価しています。でも、確実に、メンバー間のグループサウンズに関するバランスが崩れかけています。振り返れば、ポールのリーダーとしての手腕に問題があったのだと理解しています。
 
とにかく、この『Sgt. Pepper's』のモノラル・ミックスは「聴きもの」です。この『Sgt. Pepper's』のモノラル・ミックスも、何とかして、一度は耳にして頂きたい。借りてでも、はたまた、持ち主の所に押しかけてでも、一度、聴いて頂きたいと思います。
 
 
 
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