ピアノ・トリオの代表的名盤・3
さて、ジャズ者初心者向け特集「ピアノ・トリオの代表的名盤」の第3回目。第3回目のジャズ・ピアニストは、ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)。ご紹介するアルバムは『Kelly at Midnight』(写真)である。パーソネルは、Wynton Kelly (p) Paul Chambers (b) Philly Joe Jones (ds)。1960年4月27日の録音。
ウィントン・ケリーは、健康優良児的に、ポジティブにスイングするピアノが特徴。コロコロと明るく転がるようにフレーズがスイングする。端正に転がるようにスイングするのではなく、独特の揺らぎをもって、この「揺らぎ」が翳りとなってスイングする。この「独特の揺らぎ=翳り」を楽しめるようになると、もう既にケリーのファンになっている。
そして、バックのリズム&ビートを司るのは、マイルス・グループで一緒の、ベースのポール・チェンバース、ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズである。これまた、二人とも名手中の名手。ここにコロコロと明るく転がるようにスイングするケリーのピアノ。悪かろうはずがない。
冒頭の「Temperance」だけで、ジャズのピアノ・トリオってこうじゃなきゃね〜、なんて感じ入って、聴いていて楽しくなってしまう。前奏の魅力的なユニゾンだけで、ハードバップの楽しさを耳一杯に感じてしまう。そんな「魔法」の様なアルバムである。
とにかく、ケリーのピアノが絶好調。冒頭の「Temperance」がまず良い。曲自体も良いので、余計に素晴らしいスイング感に感じ入ってしまうのだが、この「Temperance」でのケリーの演奏ほど、ケリーのピアノの特徴を体感できる演奏もないだろう。とにかく、聴いていて楽しい、の一言。
3曲目以降の「On Stage」「Skatin'」「Pot Luck」については、好調にスイングし続けるケリーの「コロコロ」ピアノのバックで、バシンビシンとスネアをひっぱたく様な、野趣溢れる奔放なフィリー・ジョー・ジョーンズのドラミングと、ブンブンブンと弦を鳴り響かせながら、堅実・冷静に魅力的なビートを供給するポール・チェンバースのベースが「聴きもの・聴きどころ」である。
野趣溢れる奔放なフィリー・ジョーのドラミングと、堅実・冷静にブンブン弦を鳴り響かせながら、魅力的なビートを供給するチェンバースのベースに煽られて、ケリーのピアノもボルテージが上がる上がる。タッチがとことん強くなり、三位一体のテンションの高い、レベルの高いピアノ・トリオの演奏を聴くことが出来る。
このテンションの高さのお陰で、僕は最初このアルバムはライブ盤だと思った位だ。そう、このアルバムはスタジオ録音ながら、ライブ盤の様なテンションの高さと奔放さ、そして、なによりトリオ演奏の全編の底に流れる「楽しさ」が魅力。
良いアルバムです。収録時間は33分弱と短いですが、忙しい中、就寝前にちょっと耳を傾けるには、ちょうど良い収録時間です。アルバムの収録時間は、長ければ良いというものではありません。短くても、しっかりとした内容があれば「良好盤」でしょう。
そうそう、この『Kelly at Midnight』、代表的なものとして、2種類のジャケットデザインがあります。どちらも同じ内容なんですが、僕は、LP時代からの左のジャケットデザインに愛着があります。
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