ザビヌル、孤軍奮闘!
ウェザー・リポートの聴き直しを進めている。第4作『Mysterious Traveller』のテーマは、ジョー・ザビヌル(写真右)の「一人で出来るもん」(笑)。第3作『Sweetnighter』で、創設メンバーのビトウスを退団に追いやったザビヌル。第4作で、もう一人の創設メンバー、ウェイン・ショーターも蔑ろにして、ウェザー・リポートを私物化しようと思ったら、完全に「転けた」。
第4作『Mysterious Traveller』では、ビトウスの退団が、実に大きなマイナスだったことを証明した様な内容になった。バンドの基本ビートは、ファンクから、アーシーな野趣溢れるアフリカンなビートに変化したが、全編に渡って、ザビヌルのキーボードは精彩が無い。
原因はリズム・セクション。ビートが上手く供給されないと、そのビートの上に旋律を乗せていく電子キーボードは辛い。加えて、ザビヌルは、ハービーやチックに比べて、キーボードの扱い、特にシンセサイザーの扱いがイマイチ。とてもじゃあないが「一人で出来るもん」どころでは無い。
そして、第5作目の『Tale Spinnin'(邦題;幻祭夜話)』(写真左)。まず、脱・ビトウス、脱・コズミック・ジャズの対策。キャッチャーでアーシーな曲を用意して、コアなジャズファン以外にも、売れるようにしなければならない。確かにその対策の成果が出ている。冒頭の「Man in the Green Shirt」や、4曲目の「Badia」など、実にキャッチャーな旋律を持ったアーシーな名曲である。
加えて、後のバンドの音楽的指向のベースとなる「エスニック&ユートピア」への傾倒と効果的なジャズ的エッセンスの付加である。これが無いと、アイデア優先のチープなフュージョンとして扱われる可能性がある。その対策は、そう、ウェイン・ショーターのカムバックである。
この『Tale Spinnin'』では、いつになく、ショーターが吹きまくっている。やはり、ショーターが腰を据えて吹く、モーダルなサックスは魅力抜群。このショーターの本格的参戦により、「エスニック&ユートピア」な音作りに、効果的なジャズ的エッセンスが付加されて、アルバム全体が、ジャズ・アルバムとしても魅力的になった。
キャッチャーな曲を用意した。「エスニック&ユートピア」な音作りに、効果的なジャズ的エッセンスを付加して、後のバンドの音楽的指向のベースとなる「エスニック&ユートピア」的アプローチも定着できた。でも、最後の難問、アーシーでファンキーなビートを供給するリズム・セクションの問題は解決されていない。ドラマーに Leon "Ndugu" Chancler に代わり 、ベースは Alphonso Johnson が継続。まだまだ弱い。よって、まだまだ、ザビヌルのシンセは「なんとなく不完全燃焼」。
でも、この『Tale Spinnin'』、前作『Mysterious Traveller』よりは、その内容は遙かに良くなった。ザビヌルの努力たるや、涙ぐましいばかりである。「もっと売れたい」、加えて「俺一人でもいける」。でも「俺一人では駄目だ」、でも「売れたい」。その「売れたい」という強い心が、この過渡期のウェザー・リポートを突き動かしている。
動機は不純だが、内容的には、ジャズとしてもフュージョンとしても、魅力的な内容を持ち合わせるようになってきている。ザビヌルの執念、恐るべしである(笑)。しかし、このザビヌルの想いが満願達成されるのは、かの天才エレベ奏者、ジャコ・パストリアスが、ウェザー・リポートに参戦してからのこと。そして、いよいよ次作『Black Market』の制作途中で、そのジャコ・パストリアスが参戦してくるのである。
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