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2009年10月31日 (土曜日)

遅まきながら「追悼・加藤和彦」

まだ、個人的に心の整理が付かないでいます。今年は、自分のお気に入りの芸能人やミュージシャンが沢山鬼籍に入りました。そして、去る10月16日には、加藤和彦さんが急逝されました。

軽井沢のホテルでの自殺とのこと。その自殺の動機を新聞記事などで知るにつけ、個人的に、かなり衝撃を受けました。人生の中間地点を折り返して、残された人生の時間があまり長くない、と思い始めた今日この頃、加藤和彦さんの取り巻く状況って、決して他人事では無いと・・・。

「これまでに自分は数多くの音楽作品を残してきた。だが、今の世の中には本当に音楽が必要なのだろうか。『死にたい』というより『生きていたくない』。消えたい」との趣旨が記されていたという。ある参列者は「音楽界で生きてきた自己の存在を否定しているような印象を受けた。うつで通院していたようで、相当悩んでいた印象です」と話した。(朝日新聞記事より)

加藤さんは3回結婚したが、子供はいない。かつては「いらない」と話していたが、同じ世代の友人の集まりでは子供や孫の話題になり、「そこに寂しさを感じ始めていたようにもみえた」(関係者)。周囲に気を配り明るく振る舞っていたが、心の中では衝動的に死を選ぶほどの孤独感を感じていたのかもしれない(Sponichi Annex記事より)。

確かに、加藤和彦さんの急逝に伴うマスコミの報道を見ていると、さもありなん、と思います。音楽の実績としては、北山修さんとのデュエット「あの素晴しい愛をもう一度」と、サディステック・ミカ・バンドとザ・フォーク・クルセダーズの話ばかり。加藤和彦と坂崎幸之助の2人による音楽ユニット、「和幸(かずこう)」だって、懐メロのユニット的な報道(本当は違うんだけどなあ)。それだけの、1970年代前半までの、過去の音楽家だったかのような報道にはほとほと呆れました(しかし、ネットでは、良心的なコメントをされているブログが多くあって心強かったです)。

ミカ・バンド解散以降の、あの天才作詞家、安井かずみさんとの作詞作曲コンビでの数々の佳作、特に、『パパ・ヘミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』のヨーロッパ3部作などには全く触れらることも無い。世の中から、先進的な音楽家として正しく理解されていたか、というとちょっと疑問を感じます。

Kkato_sorekara

これでは、自分の音楽家としての存在意義に疑義をかけたくなることも理解できます。自分は、世の中での評価とはどうなのか、存在意義はあるのか、と。加えて、うつ病だったとのこと。周囲の人達はなんとか出来なかったのでしょうか。うつ病の孤独感はかなり深刻なものだと聞いています。自らが、決して他人事ではない世代に差し掛かった今、なんとなく身につまされる話で、ちょっと憂鬱になっています(笑)。

さて、加藤和彦さんと言えば、僕が一番良く聴いたアルバムの一枚が『それから先のことは』(写真左)です。1976年のリリース。天才作詞家、安井かずみさんとのコラボ第1弾です。サディスティック・ミカ・バンド解散後の再出発作。ジミー・ジョンソン(g)、バリー・ベケット(key)、ロジャー・ホーキンス(ds)、デヴィッド・フッド(b)とお馴染みの錚々たるメンバーがサポート。特に、大学時代のヘビーローテーションの一枚です。懐かしい。

このアルバム全体を覆う雰囲気って、う〜ん、今で言う「ワールドミュージック」ですね、これは。1976年の時代に、このワールドミュージックへのアプローチを実現していたとは、改めて驚きます。『これから先のことは』の音世界は、プチ・ワールドミュージック。そして、加藤和彦の独特の浮遊感漂うボーカル、独特の歩くようなビート感、そして、何となく長閑で何となく物寂しい雰囲気。「楽しゅうて、なぜが淋しき」という雰囲気がお気に入りでした。

アルバム全体に散りばめられたJポップの王道を行くメロディーとフレーズの数々。冒頭の「シンガプーラ」の前奏から、雰囲気はもうエスニック。長閑でなぜか物悲しいボーカルが郷愁を誘う。続く「それから先のことは」は長く愛聴歌。この出だしのマイナーなフォーキーな雰囲気が良い。サビの部分に差し掛かる時にメジャーに転調するところがたまらない。名曲「キッチン&ベッド」も良いなあ。

そして、特にLPのB面を占めている5曲は、どれもが佳曲で、もう聴き始めたら止まらない(笑)。「貿易風」〜「春夏秋・・・」〜「光る詩」〜「二度目の冬」〜「淋しい歌のつくり方」。素晴らしい。加藤和彦の音世界が満載。今でいう「ワールド・ミュージック」の導入など、実験精神に溢れたもので、1976年という時点で、それが成功しているところが凄い。先進的な音楽家、加藤和彦の面目躍如です。

『それから先のことは』を手始めに、『パパ・ヘミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』のヨーロッパ3部作も聴き直している途中です。偉大な音楽家の一人をまた亡くしました。冥福をお祈りします。
 
 
 
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コメント

マスターさん、初めまして!こんばんわ。
加藤さんの自殺、残念でなりません。
まだまだやることがたくさんあったはずです。ご自分でお気づきではなかったみたいですね。 環境問題や後継者を育てたりしていただきたかったです。 とっても悩んで苦しんでいらしたようですね、幸宏さん、坂崎さん、細野さん・・・相談できるお友達はたくさんいらしたはずなんですけど・・・
比べてはなんですが、わたしは11年闘病、
母の介護で癌死を看取り、わたしも婚期が大幅におくれいまだ一人、子供もいません。
父にも捨てられたりと、壮絶な人生を送ってきました。
自殺も何度も考えましたが、絶対生きていればいいことがあるんだ!って自分に言い聞かせながら、親友に助けられながらここまで来ました。 加藤さんもお辛かったと思いますが、もうちょっと頑張って欲しかったですね。 もうちょっと一度しかない人生を楽しんで欲しかったです。 きっとマジメすぎて
あまり楽しみ方を知らなかったのかも、楽しみヘタだったんですね。父に捨てられて、Beatles、音楽のお陰で、生きていたような
わたしです。Beatlesが励ましてくれた恩人ですね。 あんまり深刻に考えるのもよくないんですよね。 ほどほどに、お気楽能天気が一番ですね笑。生きてるだけでまる儲けっていう言葉が大好きです(=^・^=)~♪
わたしもつたないブログをやっておりますのでよろしければ遊びにきてくださいませ。
てぃあらの秘密基地です笑Love & Peace⌒♪(幸’3-)ノ⌒☆ 

初めまして、てぃあらさん。松和のマスターです。

加藤和彦さんの急逝、本当にビックリしましたし、本当に残念でした。
今でも、この出来事をどう解釈して良いのやら、心の整理が付きません。

てぃあらさんの言葉「あんまり深刻に考えるのもよくないんですよね。
ほどほどに、お気楽能天気が一番ですね。生きてるだけでまる儲けって
いう言葉が大好きです」って、ほんと、そう思います。また、そう思える
年齢に差し掛かったことを実感します(笑)。
 

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