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2009年10月 7日 (水曜日)

ザビヌル喜ぶ、やった売れた

大型の台風が日本列島を伺っている。特に、上陸コースにある近畿地方。あんまり台風馴れしていない地域だけに心配。もともと僕の故郷でもある。大丈夫なのか。今日の夜半から明日の午後にかけて、近畿地方、特に大阪、京都、滋賀の方々は気をつけて下さいね。

秋雨に 君の傘借り 足軽く

さて、『Black Market』で、第2期黄金時代の幕開けを告げたウェザー・リポート。「エスニック&ユートピアな音作りに、効果的なジャズ的エッセンスの付加」という、ウェザー・リポートの最大の特徴が花開いて、満開まで後一歩。エレベ(エレクトリック・ベースの略)の天才、ジャコ・パストリアスを迎えて、さあ、ということで、1977年リリースされた『Heavy Weather』(写真左)。

『Black Market』で「エスニック&ユートピアな音作りに、効果的なジャズ的エッセンスの付加」という、ウェザー・リポートの最大の特徴が花開いた。でも、ジョー・ザビヌルは「売れたい」。とにかく売れたい一心で、この『Heavy Weather』は、当時大流行だった「フュージョン」のエッセンスを大々的に取り入れた。

「エスニック&ユートピアな音作り」は後退、フュージョンの音作りを大々的に取り入れた。ポップ色が強まった。冒頭の「Birdland」は、ユートピアな音作りの面影は残っているが、とにかく「ポップ」。キャッチャーなリフ、印象的なフレーズ。まるでロック。これは売れて当然。判りやすくて印象的。実際に売れた。この『Heavy Weather』は売れた。ジョー・ザビヌルの満願達成である(笑)。

でも、よくよく耳を傾けてみると、単なるポップなフュージョン・チューンとは違う、ジャズ独特の要素が、そこかしこの散りばめられている。この「Birdland」のバックで鳴り響く、ジャコ・パストリアスのエレベのベースライン。実にえげつない、実にテクニカルなベースライン。粘りのビートがビンビンに効いている。このビートの効き方がロックとはまるで違う。この粘りのビートはジャズである。このポップな「Birdland」をジャズの名演たらしめているのは、ひとえにジャコのエレベである。

2曲目の「Remark You Made」、これはもう完全な「フュージョン・バラード」。エスニック&ユートピアな音作りは、どこかへ吹き飛んでしまった。心地良い演奏ではあるんだが、何回も聴くと、ちと飽きる。ジャズ性が希薄なのだ。確かに、ウェイン・ショーターのサックスは上手い。でも、彼のサックスは、こんなに素直なフュージョン的な演奏には全く向かない。でも、この曲も「売れた」。喫茶店やブティックなど、お洒落な店のそこかしこで流れていた。

Heavy_weather

でも、4曲目のショーター作の「Harlequin」から、ちょっと雰囲気が変わる。さすがはショーターである。「売り」に走ったザビヌルの首根っこを掴んで、グィッとジャズの世界に、ウェザー・リポートを引き戻している。ダイナミックでコズミックな音作り。初期の頃のウェザー・リポートをフュージョン寄りにしたような、実に現代的なジャズ。良い感じだ。

5曲目の「Rumba Mamá」の存在は今もって全く理解不能。LP時代はB面の1曲目だった。「売り」に走った、ポップでフュージョンなウェザー・リポートはここで終わり、という宣言にも聞こえる。続く、ショーター作「Palladíum」が実に素晴らしい。ウェザー・リポートの最大の特徴、「エスニック&ユートピアな音作りに、効果的なジャズ的エッセンスの付加」が戻ってきた。しかも、良い意味でフュージョンの要素を趣味良く取り入れ、実にクールでハードな演奏にハッとする。

そして、その ショーター作「Palladíum」に負けず劣らず素晴らしいのが、ラストのジャコ作「Havona」。この曲は、この演奏は凄い。変に捻れたテーマを持つ不思議な雰囲気を持つ曲。思わず惹き付けられる。凄いストレート・アヘッドなエレクトリック・ジャズ。この「Havona」でのバンドのテンションは凄い。これぞ、ウェザー・リポートの真骨頂だ。

こうやって聴き返してみると、とにかく「売れたかった」ザビヌル。その満願を達成したのは良いが、魂(ジャズ性)までも売りそうだったところを、ウェイン・ショーターとジャコ・パストリアスが救って、この『Heavy Weather』をエレクトリック・ジャズの佳作として留めた、といった感が強い。

アルバムのグループとしての統一感という点とジャズ性という点で、エレクトリック・ジャズという観点でみると、『Black Market』と比べて、ちょっと落ちるかなあ、と感じます。「佳作」だと思います。でも、大衆性という観点でみると、やっぱりこの『Heavy Weather』は大ヒットアルバムですね。

ちなみに、この『Heavy Weather』は、ザビヌルとジャコの共同プロデュースとなっています。が、全編を通じて、ジャコのプロデュース能力がアルバム全体を支配しているように感じます。「売れる」という要素も、「ストレート・アヘッドなエレクトリック・ジャズ」という要素も、どちらも、ジャコのプロデュースが生み出したのではないでしょうか。そのジャコの傑出したプロデュース能力が、次のアルバム『Mr. Gone』で花開くことになります。
 
 
 
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