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2009年10月19日 (月曜日)

テナー・サックスの「守備範囲」

楽器について。一番、好きな楽器はキーボード。ピアノは特に好きです。シンセサイザーも大好き。二番目に好きな楽器がサックス。

中学時代、岡山に転校して、いきなり、ブラスバンド部にスカウトされた。どの楽器がやりたい?、と訊かれて、選んだ楽器がサックス。小柄だったんで、テナーではなく、アルト。サックスのあのメカニカルな容姿、吹く時の格好良い姿勢、サックスを支えるネック・ストラップ。どれもが、とにかく「格好良い」。サックスって楽器を全く知らなかったのにね。一目惚れだったなあ。

長い夜 漆黒染まる サキソフォン

さて、ジャズ・テナー・サックスについて、思うところがある。ジャズの世界で、テナー・サックスといえば「ジョン・コルトレーン」。ジョン・コルトレーンが、ジャズ・テナー・サックスの最高峰とされる。テクニック、歌心、全てにおいて、ジャズの評論、ジャズの入門書では、ジョン・コルトレーンが最高とされる。

でも、僕はそうは思わない。見方、評価の切り口によって「最高峰」という評価は変わるのではないか、と最近思うようになった。そのきっかけが『Cannonball Adderley Quintet in Chicago』(写真左)。

1959年2月、マイルス・デイヴィス・6重奏団はコンサート・ツアーでシカゴを訪れていた。このアルバムはその機会に、マイルス親分抜きで、マイルス・バンドのサイドメン5人がマーキュリー・レコードの求めに応じて、キャノンボール・アダレイを名目上のリーダーとして録音したものだ。

その背景を聞けば触手が伸びるのも無理は無い。ジャズ者初心者2年目位で、このアルバムを入手した思い出がある。でも、針を落として聴き始めて「何か違う」。キャノンボールはアルト・サックスなので、その高音を中心とした、はしたないほどのファンキーで煌びやかな音色は、アルト・サックスなので、これはこれで良い。では、何故、躁病的な喧噪を感じるのだろう。 
 

Cannonball_chicago

 
それは、ジョン・コルトレーンのテナー・サックスが原因。アルトと同じ音程の高音だけでテナー・サックスを吹いていて、ジャズ初心者の時に聴けば、どちらがキャノンボールで、どちらがコルトレーンなのか、判らない。加えて、高音中心のユニゾン、ハーモニーが続くので、耳につくことおびただしい。簡単に言えば「うるさい」のだ。

ジョン・コルトレーンは、確かに、ジャズ・テナー・サックスの巨匠である。テクニック的には、コルトレーンを凌ぐ者はいない。でも、これは「やり過ぎ」でしょう。テナー・サックスの高音部だけで、旋律を演奏するなんて、相当なテクニックが無いと出来ない技である。だから、このアルバムのコルトレーンって凄いと言えば凄い。でも、この『Cannonball Adderley Quintet in Chicago』の全体の雰囲気からすると、テナーがアルトの音域で旋律を吹きまくることは無いでしょう。

楽器には、それぞれの楽器の「守備範囲」というものがある。音域、響き、弾きやすさ等の特徴が相まって、楽器同士の「守備範囲」が自然とできる。アルト・サックスがあるのなら、その低域以下を「守備範囲」とするのがテナー・サックス。その「守備範囲」を犯して、アルトの音域でテナーを奏でるテナーは「反則といえば反則」である。

その結果、アルバム全体の選曲は良いのに、なんだかアルバム全体の雰囲気が「躁病的な喧噪」で覆われている。惜しい。実に惜しい。この選曲ならば、テナーがテナーの「守備範囲」をきっちりと守っていたのなら、きっと歴史的名盤になったに違いない。

マイルス親分のいない間に、気分転換の気ままなセッション。そんな感じだったんだろう。コルトレーンのアルトの音域でテナーを吹きまくるのも、他のメンバーからすると、余興的楽しさがあったんだろう。それが証拠に、ベース、ドラム、ピアノのリズムセクションは、コルトレーンの躁病的な喧噪フレーズに煽られて、どんどん走りに走っていく。コルトレーンの常人を超えたテクニックに、ほとほと感心したぜ〜、って感じの雰囲気が、このアルバムの演奏のそこかしこに溢れている。でも、楽器の素人、聴き手にとってはどうなんだろう。

『Cannonball Adderley Quintet in Chicago』って、コルトレーンの躁病的な喧噪フレーズによって、名盤になり損ねた、と思っている。コルトレーンのテクニックは素晴らしい。というか天才的である。でも、その天才的なテクニックを使い間違うと、こんな結果になってしまうことになるということ。やはり、それぞれの楽器には楽器なりの「守備範囲」があるっていうこと。それって永遠の真理である、ってことを、このアルバムは教えてくれる。 
 
 
 
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コメント

テナー・サックスの「守備範囲」
確かにそう思います
コルトレーンは上手いし味がありますが毎日聞くにはちょっと重いなぁと・・

ジョニー・ハートマンとのアルバムやデューク・エリントンとのアルバムやバラードなんか聞くと これがすっと馴染んで心地よい・・

アイク・ケベックの春の如くのテナーなんかはおもいっきりブラックだけど雰囲気が凄くいい

対象的なのはスタン・ゲッツ

軽く力まず クールにキメるテナーの音色

自分的に極端に技巧に走るより メロディがしっかりわかるテナーが好きです

あと デクスター・ゴードンのGO!の中のチーズ・ケイクなんか好きです

こんばんわ、ケンさん。松和のマスターです。

今日のブログにも書きましたが、エリントンとの共演の唯一の
ハイライト、「In a Sentimental Mood」は絶品でした。

う〜ん、ケベック、ゲッツ、デックス、良いですよね。テナーの
テナー・サックスたる演奏は、堪えられない魅力が溢れています。
テクニック優先も良いですが、僕は、楽器の持っている本来の
特質を最大限に活かし切った演奏に、より惹かれます。
 

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