演奏する上での協調性って...
唐突ではあるが、リンゴが好きである。ちなみに、ビートルズの「リンゴ」では無い(笑)。果物の「林檎」である。僕は大阪育ちなので、林檎と言えば「信州リンゴ」。ちょっと酸っぱさが入った甘さが堪らない。東京では、リンゴと言えば「青森リンゴ」。とにかく、密が入っていて甘い。でも、子供の時から親しんだ味は「信州リンゴ」。今年は、美味しい「信州リンゴ」を食することができたので、幸せな秋である。
信州の 林檎便りに 君想う
さて、昨日、コルトレーンのテナーの「守備範囲」について書いた。テクニックに優れているあまりに「空気が読めない」雰囲気のコルトレーン。そこが彼の愛おしいところでもあり、厄介なところでもあり(笑)。
『Cannonball Adderley Quintet in Chicago』の、場違いなコルトレーンの躁病的な喧噪フレーズを聴いていて、なんだか、他にも同じような感覚を感じたような気がする。なんだろう、とずっと考えていたら、ふと思い出した。『Duke Ellington & John Coltrane』(写真左)である。
大学時代、ジャズ者初心者の頃、早々にこのアルバムを聴いた。なんせ、ジャズ・ミュージシャンの殆どが影響された、ジャズの巨匠Duke Ellingtonとコルトレーンの共演盤である。聴きたいと思うじゃないですか。大学近くの「隠れ家ジャズ喫茶」で、聴かせて貰いました。
冒頭の「In a Sentimental Mood」は素晴らしい演奏です。エリントンの枯れたような、シンプルで味のあるピアノと、高音だけで、センシティブにリリカルに追従するコルトレーンのテナー。そのコントラストと陰影が実に素晴らしく、思わず溜息をつきたくなる。そして、もう一つ、感心したのが、デリケートで細やかなビートを供給するエルビン・ジョーンズのドラミング。この曲に限っては、大巨匠エリントンの薫陶よろしく、実に奥深いジャズ演奏が繰り広げられる。
しかし、である。2曲目の「Take the Coltrane」以降は、コルトレーンは好き勝手に吹きまくる。大巨匠エリントンが「ジャズは粋。粋なジャズはこういうもんだろう」と、枯れたような、シンプルで味のあるピアノでコルトレーンの傍若無人な振る舞いをたしなめるが、コルトレーンはお構いなしに、時には「シーツ・オブ・サウンド」で疾走し続ける。エリントン、思わず「苦笑」(だったと思う)。
「これって、ええんかいな」と僕は思う。大巨匠エリントンの薫陶を無視して、疾走し続けるコルトレーン。それに追従するエルビン。この『Duke Ellington & John Coltrane』って、ジャズ評論家の方々が言うほど、名盤では無いと思います。確かに、冒頭の「In a Sentimental Mood」は素晴らしい演奏です。本当に素晴らしい。でも、2曲目以降は、コルトレーンの先走りだけが目立って、僕はあまり評価できません。
ここでのコルトレーンのテクニックは凄いんですけどね。でも、相手であるエリントンが、枯れたような、シンプルで味のあるピアノを奏でている訳です。グループ・サウンズというものは、お互いの音楽性を活かしあってこそ、アーティスティックな世界が広がるってものでしょう。これでは、コルトレーンの「自己中」の世界です(笑)。エリントンがピアノを弾き始めたら、テナーのボリュームを下げるだけでは、ちょっと芸がないでしょうが・・・(笑)。
よくよく考えてみると、コルトレーンって、ほとんど他流試合が無いんですよね。マイルスの下で、マイルスの薫陶を受けながらも、かなり自由に演奏させてもらっていましたし、以降、ドラムのエルビン、ピアノのマッコイを得てからは、自分のグループで、とことん自由に演奏していました。他は、自分の自由に吹きまくれる「ジャム・セッション」ばかり。
他のミュージシャンに合わせて、自らが相手の引き立て役になりつつ、逆に相手が自分の引き立て役になる、つまりは「他流試合」なんていうコラボレーション演奏なんて、コルトレーンには、ほとんど無かったように思います。
意外とコルトレーンって「他流試合」には弱かったのかもな。なんせ、『Duke Ellington & John Coltrane』の2曲目以降は、大巨匠エリントンを置き去りにして、自分のやりたいように吹きまくっている。不器用というのか、脳天気というのか、そんなところが、実はコルトレーンの隠れた魅力だったりするから、ジャズって面白い。
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こんばんは
In a Sentimental Mood いいですよね
凄く 素敵な曲です
確かに あとの曲は結構 コルトレーンてっ感じになってますね
このアルバムはIn a Sentimental Mood が全てですかね
実は スティービーという曲があるんですが これは素直にカッコイイなと思います
センチメンタル・ムードと言えば バーバラ・キャロル もアルバム出しているんですが これもいいですよ
Lady be goodが特にいい
Fly me to the moonの弾き語りも 八十歳のおばあちゃんとは思えない チャーミングさが素敵です
投稿: ケン | 2009年10月20日 (火曜日) 22時34分