ジャズ喫茶で流したい・9
昨日の秋晴れとは打って変わって、朝から愚図ついた天気。朝、通勤の道すがら、早々に雨がポツポツ降り出して、昼前には本降りに。夕方、帰宅の道すがらも雨。鬱陶しいことこの上無し。秋雨って、特に高校時代、良い思い出が無い。体育祭、文化祭がという2大イベントが終わって、燃え尽き症候群の中、人淋しくて仕方のない10月。心が淋しい上に「淋しい雨」。
秋雨に 君の傘追う 下校道
さて、「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第9弾である。このアルバムは、ジャズ喫茶でかけても、まず誰の演奏なのか、恐らく大多数のジャズ者の方が判らないと思う。僕も最初判らなかった。
端正でテクニック確かで歌心のある「芯のあるテナー」。もろビ・バップな音だけど柔らかで、なかなか小粋な音色を奏でるトランペット。趣味の良い、硬質ながら流れるような正統派ピアノ。確実で硬派でしなやかなビートを供給するベース。硬軟自在、緩急自在な堅実なサポート、テクニック確かなドラム。
ビ・バップの様な、疾走感、テクニック溢れる演奏を繰り広げる、冒頭の「Little Chico」。ハードバップらしさ溢れる、ミッドテンポでファンキーな、2曲目「Social Call」。この2曲の演奏だけで、「これって誰のアルバム? パーソネルは?」と心穏やかで無くなること請け合い。でも、判らない。再び、アップテンポでファンキー溢れる、テナーとペットのユニゾン、ハーモニーがニクイ、3曲目「Half Nelson」。ここまで、聴き進めると、もう「アカン」、我慢できん。誰のアルバムなんや〜。
このアルバム、Charlie Rouse & Red Rodney の『Social Call』(写真左)。1984年録音の渋いハードバップ作品。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Red Rodney (tp), Albert Dailey (p), Cecil Mcbee (b), Kenny Washington (ds)。これぞハードバップって感じで、アグレッシブに、はたまたリリカルに、実に味わい深い演奏を聴かせてくれる。
バラード演奏も秀逸。5曲目の「Darn That Dream」なんぞ、惚れ惚れする。情感タップリに歌い上げていくチャーリー・ラウズのテナー。まあるく優しいトーンで語りかけるように吹き上げるレッド・ロドニーのトランペット。リリカルに堅実に硬派なバッキングを供給するアルバート・デイリーのピアノ。当然、リズムセクション、セシル・マクビーのベースとケニー・ワシントンのドラムがバックにあっての、秀逸なバラード演奏である。
チャーリー・ラウズとは誰か。伝説のピアニスト、セロニアス・モンクとの共演で最も知られるテナーサックス奏者です。ラウズはモンクとの相性が抜群でした。テクニックに優れ、スケールの広い、モンクの音にぴったり呼応して、モンクの様に予期せぬフレージングで吹くことが出来ました。ですから、僕としては、モンクのバンドのテナー奏者という印象が強く、この『Social Call』の様に、端正でテクニック確かで歌心のある「芯のあるテナー」を吹くとは思わなかった。
とにかく、まずは「ラウズのテナーにビックリしながら、ラウズのテナーに酔う」一枚です。そして、ラウズの「芯のあるテナー」に、もろビ・バップな音だけど柔らかなロドニーのペットはピッタリ。選曲もお馴染みの曲が多く、1980年代前半のフュージョン全盛時代過ぎ去り後の、上質なハードバップ演奏が聴けます。絵に描いたような「ハードバップ」な一枚とでも言ったら良いでしょうか。良いアルバムです。
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