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2009年9月 1日 (火曜日)

面白い「プログレ・ハンコック」

1970年のリリース『Mwandishi』で、悩めるハンコックとなった訳だが、どの曲にも、当時のハンコックの「どうしようかな〜」という悩みが、なんとなく見え隠れするところが実に興味深い。

しかし、ハンコックは更に悩む。エレクトリック・マイルスに追従するか、それとも別の道を模索するか。そこは、マイルス・スクールのナンバーワン優等生のハービーのこと、あからさまに「エレクトリック・マイルス」に追従すると、マイルスの逆鱗に触れかねない。マイルスは怖い。当然、あからさまに「エレクトリック・マイルス」に追従することはしない。

で、1972年2月に『Crossings』(写真左)を録音する。このアルバムの内容が実に面白い。どう聴いても、この『Crossings』は「プログレッシブ・ロック(略してプログレ)」である。キング・クリムゾンの『Islands』、ソフト・マシーンの『5th』など、ジャズ的な要素の強いプログレの特徴である「ブラスの使用・即興演奏・ロックビートでありながらジャージーな感覚」の3つの要素が、このハービーの『Crossings』に詰まっている。

冒頭の24分50秒の大作「Sleeping Giant」は、「Part One〜Part Five」までの5つのパートに分かれている。これって、当時、大作主義であったプログレの「常套手段」(笑)。激しいパーカッションの嵐から アンサンブルへと突入、パーカッションの多用、押し寄せる複合リズム、混沌とした即興演奏、幻想的なフェンダー・ローズ。これって「プログレやん」。でも、流石にジャズ畑出身の精鋭ミュージシャンが演奏しているだけあって、そのテクニックは凄まじい。

Crossings

2曲目の「Quasar」って「もろプログレ」。リズムがまだジャジーなのでかろうじて「ジャズしている」が、このリズムがロック風だったら、もう誰の演奏だか判らないだろうなあ。でも、優れたプログレだということは判る。それほど、プログレとして聴いた完成度は高い。

逆に3曲目の「Water Torture」は、アイデアが音としてまとまらないようで、混沌として収集がつかない。フリー・ジャズ的要素とプログレ的要素をドッキングしたような雰囲気の曲なのだが、エレクトリック・マイルスの様に、底にシッカリとしたビートが流れていないので、とりとめのない音の垂れ流し風で「退屈」。でも、個々の音は魅力的なもので、特に、ハービーのメロトロンの使い方、音の出し方は、プログレ真っ青である。

エレクトリック・マイルスに安直に追従すると、マイルスに怒られそうなので、プログレに走ったのだろうか。でも、「Sleeping Giant」と「Quasar」は、プログレの演奏として聴くと、実に味わいがあり、ジャジーなプログレとして、傾聴に値する名演である。

でも、ハービーってジャズの人だから、なかなかロック者には受け入れられなかったろうし、特に、米国では、この手のプログレは「うけない」。思索的で難しすぎるのだ。もっとシンプルに、もっとギミック満載にしなければならない。さてさて、この「プログレ・ハンコック」の展開や如何に。続きは、次作1973年リリースの『Sextant』を聴かねばならない。to be Continued...。
 
 
 
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