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2009年9月20日 (日曜日)

「復帰」を素直に喜びたい

台風が大きく東に逸れた。それでも、昨日より強い東風が吹く、もう秋の雰囲気一杯の我が千葉県北西部地方である。日中は日差しが強くちょっと汗ばむ陽気になったが、日が西に傾くにつれ、急速に秋の気配が濃厚になる。今年は季節の移り変わりが早い。

2000年3月の大阪公演を最後に活動休止。完全に「失踪〜引退」状態だった大西順子。2005年に活動再開の報が流れたが、それが恒常的なものかは判らなかった。そして、徐々に活動の頻度を高めながら、やっと今年7月、11年ぶりのリーダー作となる『Musical Moments/楽興の時』(写真左)が発売された。

大西順子と言えば、1993年、デビュー作『ワウ(WOW)』をリリース。大反響を巻き起こし、スイングジャーナル誌ジャズ・ディスク大賞日本ジャズ賞を受賞。1994年には、NYのヴィレッジ・ヴァンガードに、日本人として初めて自分のグループを率いて出演。10月からは、初の欧州ツアー。これら演奏はライブ・レコーディングもされ、アルバムとしてリリースされている。

1995年にはスイングジャーナル誌人気投票において、「ジャズマン・オブ・ジ・イヤー」「ピアノ」など4部門受賞。とにかく「破竹の勢い」であった。1998年9月『fragile/フラジャイル』が引退前の最後のリーダーアルバム。その後、急速に彼女に関する情報が途絶え始め、2000年4月以降、失踪状態になった。

とにかく、ジャズ関連雑誌、ジャズ評論家、こぞって手放しでの高評価、こぞっての賞賛。はたで見ていて気持ち悪いくらいだった。というか、なんでこんなにジャズ関連雑誌、ジャズ評論家が高評価をするのかが判らない。僕のジャズに関する「耳」が悪いのか、とも思った。

でも、今でも、僕の、当時の大西順子に対する、その評価は変わっていない。大西順子のミュージシャンとしての優秀性は、選曲能力とアレンジ能力である。こんな楽曲をピアノ・ジャズとして選択するのか、と感心するような楽曲を探し当ててくる。そして、そのアレンジが見事。どちらかと言えば、ピアノ・プレイヤーとしてより、アレンジャー・コンポーザーとしての才の方が秀でている、と僕は思う。

Junko_musical_moments

逆に、当時の彼女のピアノには、常に「無理をしている」感じがつきまとう。「ガ〜ン、ゴ〜ン、ドバ〜ッとガンガンやればいいのだ」なんて無責任な事を言うジャズ評論家が多かったが、それは違うだろう。ジャズ・ピアノはそんなに単純なものではない。特に女性ミュージシャンには、ピアノをパーカッシブに叩く部分で、どうしても体力的なハンディがつきまとう。つまりは、男性ミュージシャンに対しての同様の感覚で、無責任に評価してはいけないと僕は思うのだ。

僕は、引退前の『fragile/フラジャイル』が一番好きだ。彼女が周りの意見、評価に振り回されずに、弾きたいようにピアノを弾き、硬派なジャズ者の方々が忌み嫌う、電子キーボードに手を染めている。このシンセサイザーなどの使い方が実にユニークで良かった。現在活躍中の女子若手ピアニスト、上原ひろみや山中千尋につながるアプローチを、既に、大西順子は、1998年の時点で行っていたことになる。

で、今回の11年ぶりのリーダー作となる『Musical Moments/楽興の時』はどうかと言えば、一言でいうと「まだまだこんなものではないでしょう」と思います。なんか11年ぶりの復帰作ということで、またまた、ジャズ関連雑誌、ジャズ評論家、こぞって手放しでの高評価、こぞっての賞賛。ほんまかいな、って感じです。ネットで拝見していると、一般のジャズ者の方々の評価の方が、的を得てるのではないか、と感じます。やっぱり、ジャズ・ミュージシャン大西順子を良く理解しているのは、一般のジャズ者の方々、昔からの大西順子ファンの方々なんでしょうね。

でも、さすがに、このアルバムでも「選曲能力とアレンジ能力」は素晴らしいものがある。選曲は大西ならではの選曲が光るものが多く、そのアレンジも見事。その面では「聴きごたえ」満載。でも、ピアノの演奏そのものは、まだまだ「試運転」状態だと僕は感じている。

もう、他人の言うことを聞いて「ガ〜ン、ゴ〜ン、ドバ〜ッ」で勝負する意味も無い。といって、聴く方の反応も気になる。ということで、今回の大西順子のピアノは「安全運転」。ジャズ・ミュージシャンの本質はそうそう変わらないと思うので、以前のような「派手さ」を捨てたとも思えないし、「捻りをきかせた、ドライブ感溢れるピアノ」を捨てたとも思えない。

ピアニストとしてのテクニックは健在、指もまだまだ良く回る。今回のアルバム・リリースについては、「復帰」を素直に喜びたい。そして、次のアルバムが実に楽しみである。やはり、こういうミュージシャンが帰って来ると、ジャズ界も面白くなる。本当に、よくぞ戻ってきてくれました。
 
 
 
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