特集・夏の思い出のアルバム・4
さて「特集・夏の思い出のアルバム」特集の四日目。今日は大学1回生の夏である。前年の浪人時代は、全くアルバムを買わなかった。高校時代を好きなことをした報いとして浪人したんだから、それくらいの「苦行」は課してもいいか、と思った。
ながら族なので、音楽は毎日聴いていたんだろうが、全くと言っていいほど思い出が無い。あるのは、浪人になって予備校に入る前と、大学受験の2ヶ月前、プレッシャーに負けそうになった時に聴いたアルバムの思い出は強く残っているが、浪人時代の夏の印象に残るアルバムの思い出は全く無い。
そして、ソ連風邪にかかって、40度の高熱を発しながらも、なんとか志望校のひとつに引っ掛かった。そして、大学1回生の夏は、まずはバイトである。とにかく、旅に出るにもアルバム買うにも金がいる。家の近く、その近辺では1号店といわれたコンビニにバイトに出た。大学1回生の夏はバイト、そして聴き始めたジャズに没頭した。
ジャズ者初心者として聴き始めたジャズのアルバムの中で、最初にヘビー・ローテーションになったのが、MJQ(The Modern Jazz Quartet)の『Django(ジャンゴ)』(写真左)である。初めて買ったジャズ・アルバムの一枚なんだが、これは1回聴いて「はまった」。
MJQの持つクラシックな雰囲気と曲の構成が良かったんだろう。そして、ミルト・ジャクソンのヴァイヴが一発で気に入った。ジョン・ルイスのピアノのシンプルで典雅な雰囲気も良い。リズム・セクションのベースのパーシー・ヒース、それにドラムのケニー・クラークも、「これぞ純ジャズ」という雰囲気。僕は、このMJQの『Django』で、ジャズの世界に第一歩を踏み入れた。
浪人時代に吸い始めた煙草も慣れた手つきで吸えるようになった大学1回生の夏。マイルド・セブンをくゆらせながら、紫の煙たなびく部屋の中で、安いステレオ・セットから鳴り響く「ジャンゴ」には惚れ惚れとした。
蒸し暑い夏に、熱いコーヒーを飲むのが粋だ、と聞くと、即やってみた。とにかく格好をつけたがる年頃ある。熱いコーヒーを汗をかきかき飲みながら聴いた「One Bass Hit」。余計に暑くなった(笑)。
遠い地方の空の下に去ってしまった片思いの彼女を思い浮かべながらの「But Not for Me」も、歌詞を確認しながら聴き進めると、なんとなくドップリ暗くなって、それはそれは「おつなもの」だった(笑)。
They're writing songs of love, but not for me.
A lucky star's above, but not for me.
With love to lead the way
I've found more clouds of grey
than any Russain play could guarantee.
I was a fool to fall and get that way;
Heigh-ho! Alas! And also, lack-a-day!
Although I can't dismiss the mem'ry of his kiss,
I guess he's mot for me.
この大学1回生の夏の自室の風景を振り返ってみると、擬似「ジャズ喫茶」状態である(笑)。熱いコーヒーを飲みながら、煙草をくゆらせながら、何もせず、じっと聴き入る純ジャズの世界。クラシック音楽の経験があったので、「Ronde Suite: A: Piano/B: Bass/C: Vibes/D: Drums」や「Queen's Fancy」は大のお気に入りだった。
でも、このアルバムで一番のお気に入りは「Autumn in New York」。写真でしか見たことがないニューヨークに強い憧れを持った。美しいミルトのヴァイヴ、優雅なルイスのピアノ。なんと美しい演奏だろう。当時、ジャズ者初心者だった僕でも、この演奏の素晴らしさは直ぐに判った。ニューヨークなんて、一生のうちに訪れることは無いだろうと思った。後に何度か仕事で訪れることになろうとは、当然、当時は全く思いもしなかった。
大学1回生の夏の思い出アルバムは、いよいよジャズ登場。純ジャズのアルバムで初めて手に入れた、MJQの『Django』。このアルバムには「飛び散る汗と煙の中に、あの頃の俺がいた〜」って感じが、今でも一杯に詰まっている。
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