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2009年7月16日 (木曜日)

夏はいつも「Watermelon Man」

まことに「ベタな話」で申し訳ないのだが、いつでも夏になると、ハービー・ハンコックの「ウォーターメロン・マン(Watermelon Man・西瓜売り男)」が聴きたくなる。

ハービーのオリジナル初演の、ブルーノート4109番『Takin' Off』の純ジャズものの「ウォーターメロン・マン」も良いが、デックスのテナーが悠然としていて音が太くて、どうも真夏に聴いていると、暑苦しく感じてしまって、どうもいけない。

夏に聴くのであれば、エレクトリック・ファンクジャズ版の「ウォーターメロン・マン」が良い。さて、このエレクトリック・ファンクジャズ版の「ウォーターメロン・マン」は、ハービー・ハンコックのエレクトリック・ハービーの最初の傑作『ヘッド・ハンターズ(Head Hunters)』(写真左)に収録されている。

僕が若かりし頃、まだ、ジャズ者初心者駆け出しのころである。この『ヘッド・ハンターズ』の購入には苦労させられた。とにかく、ジャケット・デザインが「けばい」。見るからに「コテコテ」って感じのイラストレーション。これをレコード屋のカウンターへ持っていくのは、ちょっと恥ずかしかった。友達に見せるのも、ちょっと憚られるジャケット・デザインである。

米国風、ファンク風ではあるので、実は個人的には気に入っているのだが、若かりし頃は、なかなかこの「コテコテ」のデザインを「好みである」と公言するのには勇気がいった。まだジャズ者初心者の頃、レコード屋のカウンターに持っていく勇気が、なかなか出なくて、入手するまでにちょっとばかし時間がかかったのを覚えている。

さて、その内容であるが、絵に描いた様な「エレクトリック・ファンクジャズ」。スタジオ録音なので、ちょっと疾走感が足らず「もったり」しているのと、さすがに1973年の録音だけあって、キーボードを中心に音が古い。でも、演奏の底を支えるファンキーなビートは、今での十分通用するほど、黒く粘っていて「クール」である。
 

Head_hunters

 
ジャズ初心者の頃は、LP時代でいうところのA面の2曲、「Chameleon」と「Watermelon Man」ばかり聴いていた。キャッチャーでコマーシャルなフレーズが満載で、とにかく聴き易く、とにかく聴いていて「ノリノリ」である。ちょいと「もったり」しているところが気になるが、これはスタジオ録音の弊害が出ているんだろう。

でも、このアルバム、LP時代でいうところのB面が良いんですよ。特にB面1曲目の「Sly」が白眉。 ベニー・モウピンが、ソプラノサックスを吹きまくる。ハービーはエレピを弾きまくる。バックのベースはポール・ジャクソン、ドラムはハービー・メイソン、真っ黒で粘りと切れのあるビートを、これでもかと言わんばかりにガンガン供給し続ける。凄い音圧、凄い疾走感である。

2曲目の「Vein Melter」は、打って変わって、スローなテンポに変って、ファンキーで優しいフレーズが綿々と綴られていく。聴いていて、ほっとする。聴いていて優しい気持ちになって、実に癒される。この曲では、ハービーはメロトロンも弾いている。う〜ん、プログレな音やなあ(笑)。フェンダー・ローズで弾く、ハービーのスローなフレーズを聴くと、やっとハービーもフェンダー・ローズに慣れてきたというか、フェンダー・ローズならではの弾き方を習得してきた感じが良く判る。

この『ヘッド・ハンターズ』のB面の2曲が、ジャズ者中堅〜ベテランの方々には、特にお勧めです。この『ヘッド・ハンターズ』を聴いて、ハービーって、マイルスを尊敬していたし、マイルスが目標だったんだな〜、ってつくづく思います。

特に、先にお勧めと書いたLP時代B面の2曲は、楽曲のコンセプトについては、しっかりとマイルスのエレクトリック・ファンクジャズのコンセプトを踏襲しています。マイルスのエレクトリック・ファンクジャズのコンセプトを、一般リスナー向けに判りやすく、聴きやすく、ポピュラーにしたとでも言ったらいいのでしょうか。

マイルスから学んで、マイルス・ミュージックを判り易く、聴き易くして、一般向けに仕立て上げていく。ハービーって、マイルス・ミュージックの「伝道師」みないな役割を担っているようで、実に微笑ましく感じます。 でも、この『ヘッド・ハンターズ』は、ほんの序の口。次の『Thrust』から、ハービーの「エレクトリック・ファンクジャズ」の怒濤の快進撃が始まるんですが、その話はまた後日。
 
 
 
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コメント

私もこれ、大好きです!
この後のマンチャイルドのハングアップ~のイントロのギターカッコよくてコピーしましたし。
個人的には生のハンコックも好きですが、エレハンコックも好きです。
確か何年か後のツアーのときに、ハンコックとポール・ジャクソンに握手してもらいました!

これまたN1号さん、まいど〜。松和のマスターです。

私は、エレハンコックが圧倒的に好きです。生ハンコックは、フロント
楽器を従えた、伴奏の立場でのハンコックは超一流だとは思うんですが、
ピアノ・トリオでのソロイストとしてのハンコックはあんまり・・・(笑)。

エレハンコックは、キーボーダーとしても、コンポーザー&アレンジャー
としても超一流だと思います。特に、ブログの文中にも書きましたが、
エレクトリック・マイスルのフォロワーとしては、他の追従を許さない、
最高のミュージシャンだと思います。
 
 

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