ドラマティックな「モンク体験」
以前、このブログ、そう2009年6月10日のブログ(左をクリック)で、セロニアス・モンクの「強烈すぎる個性」を感じるには、やはり、リバーサイドの諸作が良い。そんなリバーサイドの諸作の中で、セロニアス・モンクの個性を十分過ぎるほど感じる事ができるアルバムが『Brilliant Corners』。と書いた。
『Brilliant Corners』は、モンクの音楽を感じるアルバムの中でも、ナンバーワンの「優等生的アルバム」である。全編、整っていて実に良くできた、一種アーティスティックなアルバムである。モンクのアルバムの中でも「ナンバーワン」だと僕は思っている。
でも『Brilliant Corners』って、ちょっと整い過ぎかなあ、と思われる向きも無いではない。ジャズ的な一過性を感じるアルバムは無いのか。これがあるんですねえ。同じ、リバーサイド・レーベルから、『Brilliant Corners』の次(?)のリーダー作である『Monk's Music』(写真左)。
1957年6月26日の録音。パーソネルは、Ray Copeland (tp), Gigi Gryce (as), Coleman Hawkins (ts), John Coltrane (ts), Thelonious Monk (p), Wilbur Ware (b), Art Blakey (ds) 。コールマン・ホーキンス(ts)の参加が目を惹く。それから、ドラムのアート・ブレイキー。モンクのピアノは、ブレイキーのドラムと相性が抜群。というか、モンクのピアノに追従できるのはブレイキーだけ、と言って良いのかもしれない。そして、テナーの雄、若き日のコルトレーンも参加。
このアルバムについては、ジャズ本でいろいろと紹介され尽くしているので、敢えて、ここではくどくどと言わない。コルトレーンが、ソロとして出るタイミングが判らず(寝ていたのか?)、モンクに「コルトレーン、コルトレーン」と呼ばれて、いきなりブワーっと出る、とか、小節割りが間違っているだとか、結構、このレコーディングは混乱していた風だが、そりゃあそうで、モンクの音楽は、適当なリハーサルだけで演奏しきれるほど甘くはない(笑)。
でも混乱していた風ではあるが、この『Monk's Music』に収録されている演奏は、ダイナミックかつ繊細、実にメリハリの効いた演奏ばかり。これぞハードバップ、って感じで、ジャズを強く感じさせてくれる。そして、それぞれのミュージシャンの演奏に、妙に気合いが入っているのが感じられて、それぞれのインプロビゼーションは清々しい。
1曲目の、ゴスペルチックで、賛美歌のような合奏「Abide with Me」で幕を開ける。ジャズは黒人の音楽、ジャズは黒人の誇り、という演奏者達の「矜持」を感じる。そして、モンクのパーカッシブなピアノの前奏で始まりながら、途中でブワッーっといきなり盛り上がって、モンク・ミュージック一色に染まる「Well, You Needn't」。この「Well, You Needn't」が一番の聴きものである。
「Well, You Needn't」のテーマ演奏が終わって、いきなりモンクのソロが展開される。このモンクのソロが凄い。鬼気迫るものがある、というか、凄いテンションのソロ。モンクの特徴、モンクの特質が思いっきり露わになったソロ。このソロに、モンクの個性が詰まっている。クラシック音楽を中心とした、協調和音がベースの「西洋音楽」の真逆を行く「非西洋音楽」的なモンクのピアノ。
この『Monk's Music』と『Brilliant Corners』を聴いて、「モンクって面白い、モンクって個性的」と、モンク・ミュージックに対して好意的になれば、そのまま真っ直ぐ「モンク道」へまっしぐら。でも「コレって何、コレって変」と思ったら、暫くモンクは「お休み」。
実の所、私もジャズ者初心者の時、『Monk's Music』と『Brilliant Corners』、共に、初めて聴いた時、混乱の極みでした。もともと、自らクラシック・ピアノを経験していた耳には、しかも予備知識も無い状態での「モンクのピアノ」は、コペルニクス展開的な「大ショック」でした。それから10年位、モンクは「お蔵入り」でしたね(笑)。
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