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2009年7月27日 (月曜日)

ジャコの最後のスタジオ録音

昨日のブログで『ジャコ・パストリアスの肖像』の話をした。デビュー・リーダー作であった『ジャコ・パストリアスの肖像』。ジャコは、あと一枚しか、正式なスタジオ録音を残していない。その「あと一枚」のスタジオ録音を、最後のリーダー作について語りたい。

その盤は Jaco Pastorius『Word of Mouth』(写真左)。ウエザー・リポート在籍中の1980年に録音したアルバム。自身のバンド「ワード・オブ・マウス」によるものである。これが、である。「唯一無二」とはこのこと。凄まじい内容であり、凄まじい出来である。

冒頭の「Crisis」で、激しく戸惑う。ジャコのベースをテープで循環処理して、そこにテナーなどのフリー・インプロビゼーションが被さっていくのだが、この、心揺さぶられる「不安感」「動揺」はなんだ。これが、5分21秒も続く。暗くて「きつい」テンション。以降の演奏が不安になる。聴くのを止めようとも思う。

で、2曲目「3 Views of a Secret」が滑るように出てくる。優しいブラスの響き、そして、癒されるようなハーモニカの旋律。優しく美しい調べ。冒頭の「Crisis」が、暗くて「きつい」テンションだっただけに、この「3 Views of a Secret」で、心が解き放たれる様な、凄い開放感を感じる。美しく、素晴らしい演奏である。美しく、素晴らしい曲である。

そして、ビッグバンド・ジャズの楽しさを堪能できる、3曲目の「Liberty City」。吟味されたブラスの響き。キャッチーなベース・ライン。ノリノリのリズム・セクション。楽しい。とにかく楽しい。体がリズムに合わせて動く。心がポジティブになる。
 

Word_of_mouth

 
バッハの無伴奏チェロ組曲をモチーフにした4曲目「Chromatic Fantasy」のジャコのベース・ソロには唖然とする。超絶技巧とはこのこと。そして、演奏半ばで出てくる、チャイニーズな、日本の雅楽のような、韓国のサムヌノリのような、東アジア的な響き。ジャコのコンポーサー&アレンジャーの才能には驚くばかり。

ビートルズ・ナンバーの5曲目「Blackbird」。ジャコの唯一無二、決して誰も真似の出来ないアレンジが凄い。ジミヘンばりに、ファズをかけた、ドライブ感溢れるエレクトリック・ベースが凄まじい、6曲目の「Word of Mouth」。このビートの効いたハードさには舌を巻く。

そして、ラストの「John and Mary」。ジャコの子供達の名前を冠した名曲・名演。ピアノの静謐な響きから、明るいパーカッションのリズムに乗って、スティール・パンが旋律を奏でていく。エスニックな雰囲気が楽しい、ゆったりとしたグルーヴ。印象的なウエイン・ショーターのソプラノ・サックス。クラシカルなストリングス&木管の響きをいかした後半の展開。様々な音楽の要素を飲み込みながら、優しく明るく広がりのある、ポジティブな演奏が展開されていく。ジャズの奥深さを感じる。

ジャコの才能がぎっしり詰まった、凄い内容のアルバムだと思います。1980年にリリースされたと同時に手に入れて、一通り聴き終えた後、その凄まじい内容に感動して、暫く動けませんでした。今でもこのアルバムを聴くと、なにかしらの感動を覚えます。ジャコの最高傑作であり、最後のリーダー作でした。

その後、ジャコの生活は荒れはじめ、ドラッグに溺れたり躁鬱病に悩まされ、1987年9月21日 午後9時25分、喧嘩による負傷が原因でフロリダで死去。享年35歳。ジャコは「もういない」。逝去して、既に20年以上が経過した。でも、この『Word of Mouth』は、ジャコの音楽家としての存在を「絶対」にしている。
 
 
 
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