心地良く「捻れた」ギター
ジャズ・ギターには「正統派ギタリストの流れ」というものがある。ウエス・モンゴメリーしかり、ジム・ホールしかり、バニー・ケッセルしかり、ケニー・バレルしかり。ジャズ・ギターには「これ」と言った正統な流れがある。
でも、その流れに沿わない、個性溢れるジャズ・ギターが、70年代以降、現れ出でつつある。恐らくは、ロック・ギターの影響、フュージョン・ギターの影響だと思われるが、正統なジャズ・ギターを底に置きながらも、シンセサイズされた、若しくは、フレーズが捻れた、フレーズが不協和音している「個性派ジャズ・ギター」の活躍が楽しい。
そんな中で、僕の一番のお気に入りが、ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)。このギタリストの、心地良く「捻れた」ギターがお気に入りになって久しい。ジョンスコのギターは、心地良く「捻れて」いる。時には「変態ギター」とも言われる。でも悪い意味での「変態」では無い。良い意味での「変態」である。
僕は、特に、70年代〜80年代の、伝統的なジャズのフォーマットをしっかり意識しながら、心地良く捻れたジャズ・ギターを聴かせてくれるジョンスコが好きだ。例えば、1981年にリリースされたライブ盤『Shinola』(写真左)などは、大のお気に入りアルバムの一枚である。
どう心地良く捻れているかは、実際に聴いてもらうのが一番なんだが、普通に弾けば良いものを、独特の感覚で、不協和音を押し混ぜて、ちょっと「グニョん」と捻る。この「グニョん」と捻る、不協和音と協調和音が上手く交じったフレーズがたまらなく「良い」。
その音色もクリアなトーンではない。独特のディストーションが聴いた「くすんだ」トーンが、これまた「心地良い」。例えば、4曲目の「Jean the Bean」のジョンスコのソロを聴けば、その感じが良く判る。この独特のくすんだディストーションが病みつきになると、もうジョンスコから離れられない(笑)。
そして、ラストの「Shinola」が、これまたジョンスコの個性を物語る。これって、もうヘビメタでしょう(笑)。でも、ロックの「ヘビメタ」ではない。しっかりとジャズした「ヘビメタ」で、70年代ハード・ロックを体験したジャズ者からすると、これはもう絶対に「はまる」ハードさ、です。
この心地良く「捻れた」ジャズ・ギター、時には「変態ギター」と崇め奉られる、ワン・アンド・オンリーな世界。そして、しっかりとジャズした「ヘビメタ」ギター。後に、1983年より、マイルス・デイヴィス・グループに加入する。さすがは「我らがマイルス」。その慧眼たるや、恐るべしである(笑)。
この伝統的なジャズのフォーマットをしっかり意識しながら、心地良く捻れたジャズ・ギターを聴かせてくれる、『Shinola』というライブ盤。良い感じです。永遠のお気に入りにギターアルバムの一枚です。
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