う〜む、凄く「上手い」
ジャズのアルバムって、音楽ジャンルとしてのジャズって、そこそこ歴史が長い分、廃盤になることもあって、欲しいけれど、なかなか手に入れることが出来ないアルバムも多々ある。
そんな一枚が『The Artistry of Freddie Hubbard』(写真左)。このアルバムの評判が良いのは知っていた。でも、長らく廃盤になっていて手に入らない。LPでも良いから手に入れたと思うようになっていた。
しかし、最近、米国で、VERVE MUSIC GROUPの名盤が続々とORIGINALSで再発されるようになった。オリジナル・マスター・テープからの新リマスター化+オリジナルLPデザインを元にデジパック化でリリースという魅力的なリイシュー。いや〜、念願のリイシューです。
早速、入手した『The Artistry of Freddie Hubbard』。パーソネルは、Art Davis(b) Tommy Flanagan(p) Curtis Fuller(tb) John Gilmore(ts) Louis Hayes(ds) Freddie Hubbard(tp) 。1962年7月の録音。面子を見渡すと、なんと魅力的なセクステットであろうか。この面子で、悪かろうはずがない。
とにかく、主役のフレディ・ハバードのトランペットには惚れ惚れとする。とにかく上手い。上手すぎる。テクニック的には、現代のジャズ・シーンで、このハバードのテクニックに匹敵するトランペッターは、かのウィントン・マルサリスのみだと、僕は思う。過去を振り返っても、このハバードを、総合的なテクニックで凌駕するトランペッターは、クリフォード・ブラウンとマイルス・デイビスの2大トランペッターのみだろう。
「Caravan」「Bob's Place」「Summertime」「7th Day」と、7分を超える長尺の演奏が、収録5曲中、4曲を占める。でも、これが全く飽きが来ない。セクステットの演奏が実に充実しているのだ。
そんなセクステットの演奏の中で、やはりリーダー、ペットのフレディ・ハバードが秀逸。抜きんでている上手さである。特に「Caravan」と「Summertime」でのハバードは凄い、の一言。とにかく上手い上手い。1960年代のハバードは、心から「上手い」と思わせる上手さ。まだまだ、円熟味は伴わないんだけれど、とにかく「上手い」のだ。
1950年代、ブルーノートの諸作は、若々しい、荒削りだけれど、切れ味鋭い「上手さ」。1960年代の諸作は、とにかく「上手い」という形容詞しか浮かばないほどの、絶対的な「上手さ」。若かりしころのハバードは、正統なハードバップから、フリーに近い前衛的な演奏まで、最高に近いテクニックで吹きこなす器用さがあった。1960年代のハバードは、ハードバップからジャズロックまでを幅広く吹きこなす器用さがあった。
そう、ハバードの長所でもあり弱点でもあったのが、この「器用さ」。この「器用さ」と「上手さ」が、生真面目なジャズファンには鼻につくらしく、日本では、どうもハバードは劣勢。でも、器用で上手くて、どこが悪いんだろう。ハバードの「器用さ」と「上手さ」は次元が違う。我々素人がとやかく言えるような「器用さ」「上手さ」ではない。天才とよばれる最高峰の才能のレベルでの「器用さ」であり「上手さ」である。素人の我々が「気安く評論できる次元」ではない、と僕は思う。
この『The Artistry of Freddie Hubbard』は、ハバードの代表作の1枚に挙げて良い、素晴らしい内容のアルバムである。セクステットの面々も、とにかく素晴らしい演奏を繰り広げている。特に、なかなか、まとまった録音が残っていない、テナーのJohn Gilmoreの優れたブロウが聴けるのは、このアルバムの想定外の収穫でもある。
良いアルバムです。フレディ・ハバードの卓越した「上手さ」を体験するには、絶好の「好盤」だと思います。特に、ジャズ・トランペットの好きなジャズ者の方には、お勧めですね。
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