黄昏時のクラプトン
週末から今日まで「里帰り」していた。小学校、中学校と転校ばかりしていた僕が、ひとつの学校に入学から卒業まで在籍できたのは高校から。さすがに、高校〜大学と多感な時を過ごした土地への「里帰り」は、格別なものがある。
「里帰り」の時にiPhoneで聴く音楽は、いきおい高校〜大学時代に聴き親しんだアルバムになる。しみじみと当時を振り返り感傷的になる。その感傷的になるところが、これまた良い。「里帰り」ならではである。
今回の「里帰り」の往きに聴いたアルバムが、Eric Crapton『Another Ticket』(写真左)。俗名『アナチケ』(笑)。プロデューサーをトム・ダウトに戻して制作された、RSOレーベル最後のオリジナルアルバム。1981年のリリース。
冒頭の「Something Special」を聴くと、レイドバック路線ではありながら、その雰囲気は、健康的な乾いたレイドバックでは無い、ちょっと不健康なウェットなレイドバックである。それもそのはず、クラプトンがアルコール依存症にどっぷり浸かっていた頃のアルバムである。ちょっと、飲んだくれが歌うような雰囲気。これ、絶対に飲みながら、結構、酔っぱらって歌っていたんじゃないのか(笑)。
でも、その「飲んだくれレイドバック」な雰囲気が、このアルバムの最大の魅力。特に、冒頭の「Something Special」から、4曲目の「Another Ticket」までの流れが堪らない。飲んだくれレイドバックの「ダルで渋い」雰囲気が実に良い。この雰囲気は、このアルバムでしか聴くことのできないもの。
そして、アルバム全体を覆う「ウェットなエコーがかかった音」。70年代ブリティッシュ・ロック万歳である。「ウエットなエコーがかかった音」=「濡れそぼった音」が70年代ブリティッシュ・ロックの音と来れば、その音がバッチリ合う時間帯が「黄昏時」。黄金色に輝く夕日とあかね色に染まる西空。それらの窓の外に見ながら聴く、濡れそぼった音。
このクラプトンの『アナチケ』は、夕暮れ時、黄昏時によく聴いた。1981年2月のリリース。当時大学3回生。多感な生活を送って来た大学時代の残り1年。なんだか切なくなって、感傷的になって、黄金色に染まる窓を見ながら、この『アナチケ』を毎日聴いていた(天気の悪い日を除いて・笑)。『アナチケ』のウェットなエコーがかかった音が部屋に充満して、どんどん感傷的になって、しみじみしてしまうのだ。
そんな感傷的な、しみじみ泣きたくなるような黄昏時にぴったりのクラプトン。そのクラプトンがこの『Another Ticket』にある。1981年のリリースとはいえ、その内容は「70年代クラプトン」の最終作。次作から、クラプトンは作風をガラリと変えていく。洗練されたアルマーニを来たようなAOR的な音は、僕の耳に馴染まなかった。そして、今でも馴染まない。
この『Another Ticket』を聴く度に、多感だった大学時代を克明に思い出す。疾風怒濤な大学時代。特に印象的な1980年〜81年。若かりし頃、僕の『Another Ticket』な時代であった。
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