高校時代のリベンジ
今日も70年代ロックの話題を。昨日、先週週末から昨日にかけて「里帰り」の話をした。昨日のクラプトンは「里帰り」の往きの話。では、帰りは何を聴いて帰ったか?
そのアルバムは、高校時代、ちょっと天邪鬼的に購入した。CSN&Yといえば、『デジャ・ヴ』(2007年5月7日のブログ参照)だが、これは誰でも買おうと思うし、これは誰もが持っている。どうもそれが僕の場合、気に入らなくて、定盤『デジャヴ』をパスして、一気に『Four Way Street』(写真左)に走った。
当時LP2枚組。当時、高校生の身分では、決して安い買い物じゃなかった。天邪鬼的とは言いながら、満を持して購入したCSN&Yのライブアルバムである。しかも2枚組である。針を下ろす瞬間、その期待感は最高潮に達している(CSN&Y=Crosby, Stills, Nash & Young。パーソネルは、David Crosby、Stephen Stills、Graham Nash、Neil Youngの4人)。
が、である。このアルバム、アコースティック演奏が中心の曲がずらりと21曲並んでいる。ドラムやベース、つまりビートが効いた曲がかなり少ない。聴き進める曲という曲がアコースティック・ギターと静的なコーラス中心の「思索的」な楽曲ばかり。これには、当時、高校2年生、レッド・ツェッペリン中心のハードロックとクリムゾン+イエス中心のプログレが大好きな僕の耳には大人し過ぎた。とにかく、つまらないというか飽きてくる。
しかし、である。天下の西海岸ロックの伝説グループ、CSN&Yである。大人しい、つまらないでは済まされない。しかも、LP2枚組。大枚はたいて投資したアルバムである。自分の感性、自分の耳が悪いんだ、と思い込んで、かなり精神的に落ち込んだのを覚えている。
今回、「里帰り」を機会に、久方ぶりに、この『Four Way Street』を聴き返してみた。アコースティック・ギターと静的なコーラス中心の「思索的」な楽曲がズラーッと続く。やっぱり10曲目以降、飽きてきてた。ロックを聴き始めて早35年の月日が流れている。経験も豊富だ。やはり、このLP2枚組って、楽曲のチョイスと並べ方が問題だという結論に至った。
1曲1曲を取りあげて見ると、どれもが魅力的な楽曲、演奏ばかりである。いかんせん、統一感が無いのだ。ライブとしての大きな流れが無い、とでも言ったら良いのか。C&N、S単独、Y単独、と3つのユニットにバラバラになった、CSN&Yのライブって感じかな。
どうも、このCSN&Yって、C&Nの音楽性、音楽観をベースに、SとYが客演したという感じである。C&Nだけの演奏を聴いても、CSN&Yの演奏を聴いても、なんか同じ雰囲気。逆に、SとYが前に出ての演奏は、無理をして、S&Nの雰囲気に合せているような感じなのだ。
これでは、統一感もライブとしての流れもあったものではない。メンバー個々の個性を発揮してこそ、ライブとしてのメリハリが出てくるんだろうし、個性の差異をグループサウンドの基本思想に合せていくからこそ、グループとしての統一感が醸し出される、ってもんだろう。
このライブを聴くと、CSN&Yが当時、ポスト・ビートルスの旗頭、70年代をリードするスーパー・グループとしてロック・ファンの期待を一身に集めたにも関わらず、短命に終わったことが納得できる内容になっている。まあ、簡単に言うと、グループでは無かった訳で、先にも述べたが、このCSN&Yって、C&Nの音楽性、音楽観をベースに、SとYが客演した形のテンポラリーなグループだったんだろう。
でも、何度も言うけど、1曲1曲の出来は良いんですよね。そんな中で、このCSN&Yで音楽的に一番得をしたのがC&N。超然としていて、そんなものに左右されない、 真のシンガー・ソング・ライターだったのがY。C&Nの音楽性に一番そぐわなくて、一番割りを食ったのがS。そんな構図が見え隠れる、
そういう面からすると、意外と含蓄のあるライブ・アルバムではある。このライブ・アルバムって、結構、マニアックな内容ですね。高校時代の僕に、そんなことを理解できる訳が無い。今の耳で、やっとこさ、そういう観点から、その内容を楽しめる、マニア向けのアルバムだと僕は思います。
それにしても、ニール・ヤングって、やっぱり凄い。このライブ・アルバムの中でも、その個性は突出していてニールの楽曲になると、C&Nの音楽性を踏襲しているにも関わらず、ガラッと、ニール・ヤングの色に染まる。さすがである。CSN&Yの中で、現在でも第一線で活躍しているのは、ニール・ヤングだけ、ということが至極納得できる、そんな、このライブ・アルバムでのニールである。
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マスター、お久しぶりです。里帰りですか、いいですね~!
たぶん私とお歳が被りそうですね、この「4 WAY STREET」リアルタイムです。もちろん中3の時のCS&Nもリアル。このLPは日本グラモフォン盤を持っていますし、次の「デ・ジャヴ」も発売枚数の少ない日本グラモフォン盤です。私はこのライヴアルバムで一応CSN&Yは終わりました。
この「4 WAY STREET」はプロローグの「青い目の・・・」でショックを受け(だって最後だけですもの・・・)SとYのバトルとC&Nのちょっと違う世界とまったくグループとしてまとまりのなさにハマりました。特にY、すべての曲をコピーしました。まさしく私の青春時代そのものです。
血を吐くようなYのボーカルとSのゴスペル好きが大好きでした。オープンDチューニングですよね
投稿: N1号 | 2009年6月20日 (土曜日) 21時59分
ご無沙汰です、N1号さん。松和のマスターです。
ふふふ、中3の時、CS&Nがリアルであれば、N1号さんの方が
若干先輩ですね(笑)。
確かに、冒頭の「青い目のジュディ」はラストだけから入るのには、
ビックリしましたねえ。本来は目玉となる曲がラストだけ、なんで
「ええっ〜、そりゃないやろ〜」と思ったのを思い出しました(笑)。
とりとめの無さが、良くも悪くも『4 Way street』の特徴ですよね。
でも、内容はなかなかで、通して聴くのは、ちょっと辛いですが、
半分ずつ聴くには、今でも、なかなか良いアルバムです ヽ(´▽`)/。
投稿: 松和のマスター | 2009年6月21日 (日曜日) 19時03分
そうですか・・・私の方が少し上ですか
その中学時代は、ミュージックライフ誌の5星が気になって仕方がありませんでした。今では自分の耳だけが基準になっていますが・・・。
私もLツェッペリンのⅠとⅡが好きで、Ⅲでショックを受けたのですが、そんな私がCS&Nの流れに乗るなんて、好みとか若さはどんなシナリオなのか全くわかりませんでした。歳を重ねてキャパが広くなったんじゃないかと思っています。
投稿: N1号 | 2009年6月21日 (日曜日) 21時12分
N1号さん、どうも〜。松和のマスターです。
ミュージックライフを読み始めたのは、私の場合、高校からですが、
私も、当時のアルバム評が気になって仕方がなかった口です(笑)。
とにかく、自分の耳に自信が無くて、アルバム評を見る度に、赤く
なったり青くなったり ( ̄Д ̄;;。でも、そんな時代も遠い昔。
今では懐かしいですね。
私は、ジャズについて、歳を重ねてからのキャパの広がりを感じて
います。当時、どうしても冷静になって聴けなかったフリージャズ
が聴けたり、やっとこさ、デューク・エリントンの偉大さの一端が
判り始めたり。
どうも、歳をとることは、悪いことばかりでは無いですね(*^.^*) 。
投稿: 松和のマスター | 2009年6月21日 (日曜日) 21時40分