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2009年6月11日 (木曜日)

実はジャズ者ベテラン御用達

ケニー・ドリューのピアノは、黒くブルージーでありながら、クラシック的な優雅さを底に湛えた、端正でテクニック豊かなピアノである。そのドリューのピアノが一番映えるのが、ジャズ・スタンダードをピアノ・トリオで演奏する時。印象的に旋律、キャッチャーな旋律を持つジャズ・スタンダードは、ドリューのピアノが実に映える。

しかしながら、ドリューのピアノは、端正でテクニック豊かなので、やもすると、ジャズ・スタンダードを演奏しているのを聴くと、ちょっと軽音楽的な、カクテル・ピアノっぽい、判りやすいイージーな響きと誤解されることもある。

特に、ジャズ者初心者の場合、この「判りやすいイージーな響き」を誤解して、ドリューのピアノは素人っぽい、判りやすくてなんだか軽い、と思ってしまうこともある。なにを隠そう、ジャズ者初心者時代の私がそうだった。

う〜ん「判りやすい」って、大切な要素なんだけど、底に湛えたクラシック的な優雅さが拍車をかけて、ドリューのピアノを軽んじてしまうことがある。その代表的な例が『By Request』(写真左)である。収録曲の曲名を眺めてみると、錚々たる大ジャズ・スタンダードの名曲がずらりと並んでいる。

この「名曲ずらり」を見ると、逆に、ジャズ者ベテランの方々が引きそうですね(笑)。でも、このアルバムのドリューの演奏に耳を傾けてみると、どうしてどうして、なかなかに含蓄のある内容なのだ。スタンダード曲の解釈、アレンジ、これが実に楽しめる。
 

Kenny_drew_by_reqest

 
もともと、ジャズ・スタンダード演奏を聴く楽しみというのは、曲の解釈、アレンジはもとより、他のミュージシャンの演奏との比較をしながら、今演奏しているミュージシャンの個性を感じるという「比較の楽しみ」というのがある。この「比較の楽しみ」を最大限に味わうには、ジャズ者初心者の方々は、比較するだけの他の演奏を聴きこんでいないから、ちょっと辛い。

この「比較の楽しみ」を前提とすると、このドリューの『By Request』は、ジャズ者ベテランの方々こそが、最大限に楽しむことのできる、ベテラン御用達の佳作ということになる。そういう意味で、ジャズ者初心者の方々には、ドリューを感じ、ドリューを理解するには、以前御紹介した『Dark Beauty』(5月23日のブログ参照)や『Kenny Drew Trio』(5月11日のブログ参照)をお勧めします。こちらの方が、ジャズっぽくて、ちょっとマニアっぽくて、ジャズ者初心者の方々にお勧めです。

逆に『By Request』は、ジャズ者ベテランの方々に是非一度、聴いて頂きたいですね。ドリューがなぜ、BAYSTATEの企画物に手を染めたのか。この企画物って、ドリューをしっかりと理解した、真のドリュー・ファンへのプレゼントに思えます。

スタンダードを演奏するドリューほど、ドリューの個性を感じることの出来るものは無い。この一連の企画物って、決して、一般向けの安易なイージーリスニング物ではないですよ。ドリューは結構硬派に弾きまくっています。ペデルセンのベースも最高。シグペンのドラムも職人芸。良いアルバムです。
 
 
 
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コメント

おお♪
ケニー・ドリューだケニー・ドリューだ♪
スキスキ
なんかコレしか書かないといたずらコメントに見えますね。。。
困った困った

yurikoさん、どうも。松和のマスターです。

ふふふっ、「スキスキ」って気持ち、判ります判ります。ジャズって
直感的に好きかどうか、ですから。大体、後で理屈がついてくる(笑)。
ドリューのピアノって、直感的に感じるタイプなので、「スキスキ
って感じ、よ〜く判りますよ。そうなんだよな〜。ドリューのピアノって
「ええなあ」とか「カッコエエなあ」とかじゃなくて、確かに「スキスキ
って感じなんですよね。なんでかなあ〜(笑)。

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