寛ぎのフュージョンの素晴らしさ
シビアなジャズをシビアに聴く。これって当たり前のことで、ジャズのアルバム全て、ミュージシャン達が、自分の持てる技術の全てを尽くして、演奏している。いい加減にアルバム制作に携わっているミュージシャンなんていない。
そんなアルバム達である。しっかりと対峙して、しっかりと聴く。僕たちはジャズ演奏に関しては素人である。素人がプロの技を批判したり、さげずんだりする資格は無い。どんなジャズ・アルバムにも、絶対に良いところはある。
でも、シビアなジャズをシビアに聴く。これって、流石に、数枚聴くと疲れてくる。疲れてくると、ちょっとリラックスして、ノンビリ聴けるアルバムが欲しくなる。そんなアルバムの一枚。大学時代からの「寛ぎのフュージョン・アルバム」の一枚。
Bob James『Two』(写真左)である。1974年12月、1975年1月録音。冒頭の「Take Me to the Mardi Gras」からして、もう寛ぎの逸品である。ポール・サイモンのポップな楽曲。これをボブ・ジェームスは、実にポップなフュージョン・ジャズにアレンジしている。僕の私見では、ボール・サイモンのオリジナルより、ボブ・ジェームスのアレンジ版の方がポップで聴きやすく、そして、すこぶる楽しい。
この「Take Me to the Mardi Gras」の存在が大きくて、このアルバムは大学時代早々に購入して以来、相当数、ターンテーブルに載り、カセットデッキにセットされ、カセットテレコから流れ、CDプレイヤーのトレイに載った。ジャズを聴き続けて、ちょっと一服したい時、朝起きて、ちょっとポップな音楽が欲しい時、このボブ・ジェームスの『Two』は最適なアルバムの一枚。
そして、このアルバムのハイライトは、LP時代、B面の1曲目に鎮座ましましていた「Farandole (L'Arlesienne Suite No. 2)」。フランスの作曲家ビゼーの「アルルの女 組曲第2番」をアレンジしたもの。これがまた「良い」。フルートのHubert Laws(ヒューバート・ロウズ)が大活躍。凄いフルート・ソロを聴かせてくれる。これだけでも「聴きもの」である。
この「Farandole」は、純ジャズからすると、きっと「外れている」。でも、このボブ・ジェームスのアレンジのセンスは素晴らしい。広く「音楽」として、十分に優れ、楽しめる逸品だと僕は思う。
そして、全編に渡って思うのが、ボブ・ジェームスのフェンダー・ローズの上手さ。恐らく、フェンダー・ローズを弾かせたら、相当上位にくる上手さだと僕は思う。ツンツンと突くような、チュッチュッとつまむような特徴ある弾き方。フェンダー・ローズの音出しの特性を良く理解した、とても素晴らしいフェンダー・ローズが聴ける。僕は、このセンスあるボブ・ジェームスのフェンダー・ローズが大好きだ。
ボブ・ジェームスの天才的なアレンジと作曲センスが炸裂する『Two』。ジャズとして聴くより、このアルバムは、純粋にフュージョンとして聴くのが正解なアルバムです。前作の『One』よりも、ポップ度が増した『Two』。大学時代からの「寛ぎのフュージョン・アルバム」の一枚である。
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